第310話 アレはアリ
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「さあて、やっていきますか……無理のない程度に」
『ゆらら♪』
いつもニコニコゆらゆらのネギ丸たちからお手々の草をもらって畑に出る。
「おはようございまーす」
「あ、スプラさん、おは」
「うっす、スプラさん」
なんかミクリさんもゲンジさんも言葉砕けてきたな。心を開いてくれてるみたいで嬉しい限りだ。
「どうですか、あの巨大フルーツ食べてます?」
「もちろん、それを楽しみに来てるからね」
「でも、農屋に山のように積んであるからな。チッチャーネもフルーツは食べようとしないからなかなか減らねえよ」
そうか、そうだよな。あんな大きなフルーツそんなすぐになくならないよな。そのうちジュースにでもしちゃうか?
「スプラさん、小さいほうの畑どうする? もうアレは植えないんだよね?」
アレ? アレっていうと……食虫植物か。ミクリさん嫌な思い出あるし気になるんだろうな。
「ミクリさん今って、畑どうなってます? 最近いろいろあって混乱してて」
「あ、えっとね……」
ミクリさんが地面に絵を描きながら説明してくれる。聞いた内容と俺の覚えている内容をまとめるとこんな感じだ。
中規模畑……バイオ肥料で進化野菜(定期契約とチッチャーネ味見)
小規模①……虫獣土畑(食虫植物)
小規模②……フルーツ栽培中止
チッチャーネ種(5種類)
・パパーヤ(星形模様)
・ババナ(黄色の縦線)
・マンガー(丸模様)
・ドラゴル(トゲトゲ)
・パッチョン(赤の波模様)
で、俺がすることは……
●国家建設
・壁を作る
・行政府を作る
・薬房を作る
→岩魔を飛ばしてくる狂化ムガンさんを何とかする
●極凰の子ども
・一陣二陣の呼び戻し
●クレオ
・餌の種
・いつか装備作る
●ゴマッキ
・指名手配対策
・熟睡対策
●畑関連
・種のコーティング
・食虫植物を北の街へ持って行く
……多すぎんか?
「うーん、どうしよ…」
「おーい、スプラ兄ちゃん!」
「お兄ちゃーん」
「おはよう、スプラさん」
いつものゆっくり出勤で3人が現れる。
「なんだよ、兄ちゃん、浮かない顔して」
デッカイが俺の顔を覗き込んでくる。
「いや、自分が何したらいいのか分からなくなって…」
「は? 何言ってんだよ。街作るんじゃねーのかよ。おれたちもう畑ですることねーから、今日はすぐに北の街で働くぞ」
「働くぞ!」
二人が拳を握ってやる気をアピールしてくる。
「じゃあ、俺もできれば向こうで食べたいなあ。今度は俺も戦うんだ」
チッチャーネさんもやる気勢だ。
「そっか、じゃ今日は一緒に行きますか?」
3人を連れて癒楽房へ移動する。
「だああー、もうなんなんじゃ、これは鬱陶しい!」
「ガガン、こやつら、後ろから狙ってくるようじゃ。後ろを注意するんじゃ!」
「こら、岩魔、そこに居たら邪魔じゃ」
「岩魔、こっち来なくていいからあっちに行っとれ!」
癒楽房を出たところでマグマ工房の隣でガガンさんとムガンさんがハンマーを振り回しながら何かをしている。その周りにはのっそのっそと動く岩っ子班。
「ガガンさーん!」
「お、スプラか。ここは危ないから来るでないぞ」
「ガガン、後ろじゃ」
「そりゃあ。ああ、また逃げられた」
ガガンさん達がどうやら何かと戦っているようだ。と言っても、俺には何と戦っているかはすぐに分かるんだが。多分、次はあの辺にこのタイミングで現れるはず。
「散弾狙撃!」
ピギー
俺の放ったダーツがダガンさんの後ろに現れた飛蛇に直撃してポリゴンに変える。
「おお、今のはスプラがやったのか」
「どうして、このすばしっこい奴がわかったんじゃ?」
ポリゴンを見ながらガガンさんが不思議そうにする。
「これまで散々戦ってきたい相手なんで慣れてるんですよ」
「ほう、地上はこんなすばっしこい奴がたくさんおるのか。多少は推察しておったが、思った以上に地底とは違うものじゃの。音もなく現れおってからに、厄介すぎるわい」
そうか、地底と地上ではモンスターの傾向が違うのか。話の感じからすると地底は大型で筋力と耐久寄り、地上は敏捷と器用が増したバランス寄りって感じだな。
「しかし、参ったの。このすばしっこい奴らはわしらにはちと相性が悪い。こんなのがいるとなると、建設は捗らんぞい」
そう言ってダガンさんが腕を組む。
そう、そうなんだよな。俺もそれがずっと気になっていた。なんで街建設をモンスターが邪魔してくるんだよって。で、今はこう考えている。
──この街作りは防衛システム作りも兼ねている。
つまり、この街の建設はモンスターの襲来に対応しながら建設していく事になる。その結果、街が出来上がった時に街としての防衛システムも出来上がっているって感じだ。
となれば、これからも飛蛇はずっと発生する相手だろう。
「飛蛇とダガンさん、ガガンさんは相性が悪い。動きが鈍い岩っ子班はそれ以上に相性が悪い。となると……チラッ」
「な、無理だぞ、おれたち。あんな見えない奴とは無理」
「無理~」
「俺も無理だあ、スプラさん、ごめんなあ」
チッチャーネさんはともかく、天才肌のちびっこ召喚獣使い兄弟ならなんとかしてくれるかと思ったが、流石に無理か。
「となると……そうだ、飛蛇と言えば仙蜘蛛じゃん。仙蜘蛛の糸に絡まってたよな、確か」
ストレージを探って仙蜘蛛の糸を探す。が、見つかったのは2個だけ。そういえば仙蜘蛛の侵攻イベントで網やら釣り糸やらで使いまくったんだっけか。
「スプラさん、仙蜘蛛って、前に大侵攻があったあれのことかあ?」
「あ、チッチャーネさんご存じでした? そうなんですよ。さっきの飛蛇っているモンスターの天敵が仙蜘蛛なんです。その糸なら何とかなるかなって」
「あのモンスターなら、大侵攻以後は今までみたいにどこかの洞窟に隠れてなかなか外には出てこないって聞いたなあ。そのドロップの糸もレアドロップだから滅多に手に入らないって衛兵さんが言ってたけど」
ああ、そうそう、そういやそうだった。そもそも仙蜘蛛自体が本来あんまり姿を見せないモンスターだった。しかも糸はレアドロップ。だから俺の道化服も価値が高かったんだ。卒業前の一連のレアドロップ祭で価値観がおかしくなってるな。
「そうですか、だとすると、この街全体を覆うような網は作れそうもないですね…」
「この街全体? 覆う?」
「ガガン、ここは地上じゃ。地底の価値観で考えるな。地上では町全体をモンスタードロップで覆うのが普通の防衛方法なんじゃろう」
ガガンさんとダガンさんが二人でゴニョゴニョと話しているが、ここはスルーで。早く対応策を考えないと、またいつ飛蛇が来るかわからないからな。
「飛蛇に反応するのは無理なら、罠しかないんだけどな……」
ツンツン
「ん? なんだオッキイ」
俺の背中をツンツンしてくるオッキイ。なにか言いたげにモジモジしている。
「オッキイ、なにか言いたいの?」
「あのね、アレを持ってきたらどうかなって」
アレ? アレってなんだ?
「あ、オッキイ、分かったぞ! アレだな?」
「うん」
なんかデッカイとオッキイだけで分かり合ってるな。お兄ちゃんも入れてくれないかな…
「兄ちゃん、アレだよ。アレ」
「そうそう、アレアレ」
なんだアレって。全く分からん。アレアレ詐欺か?
「コレだよコレ」
デッカイが手のひらで何かを挟むジェスチャー。
「コレだよー」
オッキイがコップに蓋をするジェスチャー。
「拍手して…閃いた?」
「「ちがーーーう!」」
ちょっとふざけたら二人してかわいいツッコみ。あはは、楽しい。
「ったく、もう忘れちまったのかよ。畑に生えてるじゃん」
「生えてるじゃん!」
「あー、なるほど、アレな、アレ」
んじゃ、アレを持ってくるか。どうせ持ってくるつもりだったし、役に立つなら願ったりかなったりだな。
「なんじゃ、そのアレというのは」
ガガンさんが二人を見て首を傾げる。
「ガガンさん、俺たちアレを持ってきます。ちょっと待っててください」
よし、じゃあ、アレを持ってこよう。
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「先輩、スプラさん、今、飛蛇を直感で倒しませんでした?」
「【危険察知NZ】はヘイトが小僧に向かなけりゃ発動しないからな。そういうことになっちまうな」
「飛蛇って、察知スキルなしで倒せる相手でしたっけ?」
「……なあ、ライス、これは見なかったことにするか」
「そうっすね。考察するとバグりそうで怖いっす」
「ま、小僧が飛蛇をどうしようが大勢には影響ないだろ。ここは見てないってことで行くぞ。で、それより小僧がこの問題をどうするかだな」
「街建設が進むにつれてモンスターの襲来も増えますからね。本来ならここは他のプレイヤーも巻き込んでいくのが常道っすね」
「ってことは、こりゃプレイヤー呼び戻しを計画してるアマデウスの嬢ちゃんが喜んじゃうな。ってか、もうプロモーションの準備始めてるかもな」
「あ、先輩、DIとOIが…」
「あああ、コラ、お前ら、要らんこと言うんじゃない! 小僧だけで完結しちまうだろ。他のプレイヤーを巻き込ませろ」
「あ、スプラさん、二人の言いたい“アレ”に気づいたみたいっすね」
「…ってか、DIとOIが言ってるのはアレだろ? いや、アレを移動させるなんて無理だろ。アレをどうやって持ってくるんだ?」
「先輩、そこはほら、“スプラさん”だし?」
「コラ、そんな万能ワード作んじゃねー、管理AIに広まったらどうすんだ」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・自分のやる事リストを作って茫然となる
・3人組を連れて北の街へ
・無自覚に飛蛇を自力駆除
・デッカイとオッキイをからかって楽しむ
・アレを持ってくることにする
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【カッティングLv10】【融合鍛冶Lv6】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【高級料理Lv4】【魔力操作Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【空間描画Lv1】【コスパ料理Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約4240万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
名前:チク坊
種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]
属性:依存
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:20
MP:410
筋力:5
耐久:4
敏捷:14
器用:12
知力:14
装備:なし
固有スキル:【僕を守って】■■■■
スキル:【逃走】
名前:ペン坊、ミケ坊、タツ坊(岩っ子班)
種族:岩魔[★☆]
属性:岩
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:555
MP:33
筋力:255
耐久:255
敏捷:3
器用:3
知力:3
装備:なし
固有スキル:【岩食】
スキル:【叩き潰しLv1】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋
・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)
・癒楽房(格式Ⅲ)
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【原種進化】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




