表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

307/316

第307話 王家槌術

「えっと、この食虫植獣の葉を……チラ」

「うんうん」


 あ、だめだ。クレオ、完全に期待の目になってる。


 くっそ、全然作れる気がしないんだが?


 誰か来ないかな……あ、みんな帰っちゃってるか。うーん、どうしよ、この期待を裏切るのは俺的にキツイんだが。でもムガンさん戦で助けてもらって死に戻り避けられたしな。あ、でもナガちゃん進化と種の餌では協力してるしな、服までは……


「ん? スプラ君どした? あ、お金? お金ならあるよ。100万? 200万? ……えっと、900万までなら出せるけど、ごめんね、相場が分からなくてさ」


「あ、いやお金の問題ではなくて…」


 クレオが今着てる装備以上の者を作れる気がしないだけなのだ。どうにかしてやり過ごしたいんだが……ガガンさんたち入ってこないかな。



プルプル


「ん?」


プルプル プルプル


 おお、このSEは紛れもなくフレンドコール。誰か知らんけどナイス!



『はい、スプラ…』

『スプラっち? やっと目が覚めたの、今どこにいる?』


 おお、ゴマッキさん、丁度良かった。


『今、癒楽房です』

『オッケー、今わたし南の平原なんだ。これからラスプに向かうからログハウスに行ってもいい?』


『あ、ログハウスですね、了解……あ、いや、迎えに行きますよ。南の街道まで出られますか?』

『え、迎えに来てくれるの? スプラっち優しいな〜。じゃあ街道に向かうね〜』


 よし、これでクレオの防具作りから開放される。



「フレコ?」

「あ、うん、知り合いを迎えに行くことになったから」


「んじゃ、わたしも一緒に行こっかな」

「え?」


「あははは、焦ってる焦ってる。もうスプラ君は人が良すぎるよ〜。わたしの防具断れなくて、今のフレコにホッとしてたんでしょ?」

「え?」


 いやいやいや、ミーナ張りの心読みとかマジか…


「スプラ君はわかりやすいって言われるでしょ? 大丈夫だよ、ナガちゃんにここまでしてくれた人に無理言わないから。わたしはただ、スプラ君がお金いるんじゃないかなって思って頼んでみただけだから。ほら、国家建設なんてお金かかりまくるんでしょ?」

「え、あ、まあ……え、そういうことだったの?」


「アハハハ、本当に分かりやすいんだから。これで、あのプロモーションみたいな活躍するんだからギャップすごいよね。絶対年上からモテるでしょ?」


 いや、人生でモテたことは一度もない。ゴマッキさんとかセリカさんとか優しくてできた女性から哀れんで良くしてもらうことはあるが…。


「ははは、俺、モテる要素ないから」


「……なるほど、天然かあ。それはそれでニーズが…」


 天然? なんかゴマッキさんからも言われたよな……俺マジで天然に見られんのか? いや、そんなにズレてるか? そういや天然の人は自分を天然だとは認めないって聞いたことあるな。って事は、俺って天然だったのか…。マジか。確かに妹からはしょっちゅう怒られ…うーん


 って、今はそんな場合じゃない。早いとこ迎えに行かないと。


「じゃ、行きましょう」





「ああ、よかった〜。土竜鮫に遭って道わかんなくなっちゃってさ。こんな早く見つけてくれるなんて全然思てなかった」

「この子、ナガちゃんが見つけてくれたんですよ」


「いや〜ん、なにこのこ、めちゃくちゃ可愛いんだけど」


 合流したゴマッキがクレオの肩に止まっているナガちゃんにメロメロだ。ちなみにナガちゃん、今は肩の上でまん丸だけど、飛ぶときはめっちゃカッコよくて……かわいくてカッコいいとか反則だろ。


「あ、わたしゴマッキ。見つけてくれてありがとう」

「いえいえ、スプラ君にはお世話になったので」


「お世話?」

「はい、いろいろと」


「へえ…そうなんだ」

「そうなんです」


 ん? 急に静かになったな。こういう時はなにか話したほうがいいのか?


「しっかしゴマッキさん、岩魔で吹っ飛ばされるゴマッキさんに熟睡させられるとは思いませんでしたよ」

「え、あ、スプラっち、ちょっ」


 ゴマッキさんが急に慌て出す。そしてクレオをチラチラと。あ、そっか。固有スキルだもんな、こりゃ俺が無神経過ぎた。


「熟睡?」


 あ、まずい、クレオが興味を持ってしまったか? ヤバい、どうしよ。ここはなんとか誤魔化さないと。


「ゴマッキさん、いつから“熟睡”なんて魔法使えるようになったんです……」


 ドサッ ぐううううううう


「は? あ、ああ、そう?」


 ゴマッキさんに話しかけたクレオがいきなり倒れる。そしてそのまま控えめなイビキを……今回は早かったようだ。じゃあ。


「熟睡キュアポーションっと」


 クレオはそのままにして、キュアポーションをゴマッキさんに使う。そのパジャマアバターが水色のエフェクトに包まれる。


「ごめん、スプラっち、今回はめちゃめちゃ早かった。あ、この子起こす?」

「あ、いえ、その前にこれ、ゴマッキさん用に作って見ました」


「えええっ、なにこのドレス。葉っぱのドレスなんて、こんなの〇ィズニーの世界じゃない!」

「ゴマッキさん専用装備です。耐久が高くなってますから。どうぞ、着用してみてください」


「え、本当にいいの?」

「はい、いろいろとお世話になってますし」


「お世話になってるのはこっちなんだけど……でも嬉しい! 実は指名手配されてから大変なんだ。服装変ればなにか変わるかもだし、遠慮なくいただくわね」


 ゴマッキさんが【眠れる森の微笑】を着用する。すると、ゴマッキさんの童顔も相まって本当に森のプリンセスみたいに見える。肩出しがちょっと気恥ずかしいけど、その丸出しの肩を守るかのように蔓が腕にふんわり巻かれ、それが手のひらまで伸びている。


 幻想的で神秘的にも見える。うん、ゴマッキさんの固有スキルにバッチリ合ったミステリアスな雰囲気だ。


「うわ、耐久エグっ!」

「+66ならこの近辺じゃ死に戻りしないはずです。それにミステリアスな感じがすごく似合ってますし」


「……もう、スプラっち、君って子は」


 ゴマッキさんがなんか俯いてしまった。気に入らないようには見えなかったんだけどな。似合ってるし。っと、それよりも大事なことが。


「それはそうと、ゴマッキさん、クレオが起きる前にムガンさんの事を聞きたかったんですよ。真視の眼鏡、発動したんですよね?」


「え? あ、そうそう、そのことよ。丁度、あの厳ついドワーフの武器を視れたの。それがまた変な武器だったのよね」


 そうか、やっぱり視てたか。


 それを確認するまではガガンさんたちに報告できないからな。



「で? どんな情報でした?」

「えっとね、重要そうだったから忘れないようにメモしといたんだ。はい、こんな感じ」



【覇王槌】

 ドワーフ王家に代々伝わる伝説の大槌。これを手にする者は【王家槌術】を習得する。しかし、純粋なドワーフ王家の血筋以外の者が持つと特殊状態異常【狂化】をもたらす呪いの槌と化す。



【狂化】

 HPを消費しながら筋力を100%上昇させるが、すべてに対する信頼度が逆転する。NPC専用の特殊状態異常。



「【狂化】ですか……なるほど、信頼度が逆転って、つまり仲がいい程憎まれるって感じか…」


……俺にとっては最悪だな。


「でもあのドワーフは王家だったんじゃなかった? なんで【狂化】なんかになるの?」


「あ、それは俺に心当たりがあるんで」


 ムガンさんはたった一人で地上に残ったドワーフ王の孫。つまり、婆ちゃんと母ちゃんはドワーフ族じゃない。ってことで、『純粋な王家の血筋』に引っかかってる可能性が高い。


 さらに言えばデッカイ達とは従兄弟。おそらく地上に残ったムガン王の次男がエルフと一緒になって生まれたのがデッカイ達だ。80歳越えのドワーフとデッカイ達が従兄弟……頭が混乱するな。



「そっか、ま、じゃあその辺はスプラっちに任せるかな」


「ん? んん…」


 ここでクレオが熟睡から目覚める。どうやら10分経ったらしい。



「クレオ、おはよう」

「あ、おは。ねえねえ、今ずっと二人で話してたみたいだけど何だった?」


「ああ、ちょっと情報交換をね」

「そう……で、なんで、わたし熟睡になっちゃった? ゴマッキさんが一瞬操り人形に見えたんだけど…って、え? すごい似合ってるんだけど?」


 クレオが【眠れる森の微笑】をガン見している。ぐぐ、これはクレオの物欲を刺激したか…


「ま、まあ、今は材料がないから。もし、この先、万が一材料が手に入ったらクレオのも考えて…」

「ははは、大丈夫だってスプラ君。ちょっと見惚れただけだから。強請ったりしないから安心して」



~これお兄ちゃんのだもん。蕾は欲しくないもん~


 ああ、小さい頃、俺が誕生日におもちゃ買ってもらった時に妹がこうやって強がってたな。本当は欲しかったくせに……しゃーない、クレオの装備も考えとくか。いつになるかはわからんけど。



「それよりも、確かにゴマッキさんが人形に見えたのよね……」


 まだクレオが首を捻っているが、流石にゴマッキさんの情報は言えない。固有スキルの情報は重いのだ。下手に扱うと引退せざるを得なくなるくらいに。



「んじゃ、今日はもう空も暗くなってきたし、そろそろアウトするかな」

「あ、ねえ、スプラ君、明日も一緒に活動したいな」


「…え?」


 クレオの言葉になんか一瞬ドキッとしたな。なんだ?


「えっとね、スプラっちは今忙しいからちょっと難しいと思うよ」


 ゴマッキさんがやんわりと断ってくれる。こういう大人の対応は助かるよな。クレオたぶんだいぶ年下だし、こういう気の使い方難しい……



 ドサッ ドサッ ぐうううう ぐがーーー


 ゴマッキさんにお礼を言おうと向き直ったら……視界がグワンと回転して暗転する。一瞬なにが起きたのかわからなかったが、視界端のタイマーを見て直ぐに悟った。いや、早すぎんだろ! まだ15分も経ってないぞ!


 30秒の暗闇タイムが過ぎると、眼下には寝てしまった俺を背負うアリオンと地面に横たわるクレオがいた。そして当然の如くゴマッキさんの姿はなく。


「ミスったな……」

 

 それから残りの時間、モンスターが出ないことを祈りながらとても長い9分間を待って復帰5日目をログアウトしたのだった。


 ごまかしの効かない状況になってしまったので、クレオには明日話すと伝えておいた。




❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「あ、先輩、またスプラさんが制作に入るかも…」

「よし、じゃあ、今度は俺が全部やる……なんだよ、小僧、やめんのかよ」


「なんかもうなにも起きそうにないっすね」

「だな。おっ、嬢ちゃんと合流か。しっかしこの嬢ちゃんちょっとだけ休憩挟んで12時間ずっとログインしてんだよな。この根性は何なんだ一体」


「そのゴマッキさんなですけど、掲示板で時間過ごしてるみたいですよ。なんかUMA研とか作らせて熟睡中の自分を他のプレイヤーに守らせてましたね」

「……あの嬢ちゃん、そういうとこあるよな。まあ小僧なんてチョロいだろうな」


「ゴマッキさんって外じゃ何してるんすかね。ずっとログインしてますけど」

「前みたいな侵入因子の偽装ではないことは確認済みだもんな。確かに人間だ」


「あ、今度は中級ポーションの効果切れ早かったっすね」

「だはははは、いつ見ても笑えるな、これ」




―――――――――――――

◇達成したこと◇

・クレオの装備欲しいオーラに困る

・ナガちゃんの助けでゴマッキと合流

・ムガンさんの武器情報を知る

・クレオと一緒に熟睡する



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【カッティングLv10】【融合鍛冶Lv6】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【高級料理Lv4】【魔力操作Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【空間描画Lv1】【コスパ料理Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約4240万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]、ペン坊・ミケ坊・タツ坊[岩魔]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】


名前:チク坊

種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]

属性:依存

契約:スプラ(小人族)

LV:1

HP:20

MP:410

筋力:5

耐久:4

敏捷:14

器用:12

知力:14

装備:なし

固有スキル:【僕を守って】■■■■

スキル:【逃走】


名前:ペン坊、ミケ坊、タツ坊(岩っ子班)

種族:岩魔[★☆]

属性:岩

契約:スプラ(小人族)

LV:1

HP:555

MP:33

筋力:255

耐久:255

敏捷:3

器用:3

知力:3

装備:なし

固有スキル:【岩食】

スキル:【叩き潰しLv1】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋

・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)

・癒楽房(格式Ⅲ)

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【原種進化】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ