第301話 鳥の星獣
「あ、スプラくーん!」
農屋に戻ってみるとあの超絶プリチーな小鳥を肩に乗せた女性プレイヤーが既に入ってきていた。そしてなぜかチッチャーネさんが極楽発砲水をトレーに乗せて運んでいる。
……チ、チッチャーネさんが給仕しとる。
その超絶珍しい様子に驚愕しながらも、親し気な笑顔を向けてくる目の前の女性プレイヤーを見る。
黒リボンの麦わらハットに白のトップスとベージュのワイドパンツ。そこに控えめなトーンのチェックのパーカー。防具感がまるでない。リアルのかわいさをそのまま持ち込んできたって感じだ。
そしてストレートの黒髪ボブを揺らしながらにこやかに話すその笑顔には知性と健康美を感じさせる。チッチャーネさんに会釈して極楽発砲水を受け取る姿も好感度しかない。
……うん、この感じ見たことはある。だが、どこで見たのか、それが思い出せん。フレンドになっているってことは銀の斧か釣りキチ関係だとは思うのだが……あかん、無理。
「んん!! なにこれ、すっごいおいしい!!」
口を押えて目をぱちくり。女性らしい驚き方に益々首を捻る俺。こんな女性っぽい仕草のプレイヤーは話したら絶対に忘れないと思うんだが。
「スプラ君、これ自分で作ったの? 釣り竿や日本刀だけじゃなくて料理までできるんだね~。すごいすごい」
釣り竿…ってことは釣りキチ関係か。うーん。
「あ、お兄さん、もう一杯もらってもいい? とっても美味しくって」
「あ、は、はい、もちろんですう」
チッチャーネさんがアタフタしながら極楽発砲水を汲みに行く。あのチッチャーネさんに圧を感じさせずに動かすとは。なんだこの女子力は。
「はああ、おいっしいー。ね、スプラ君、今度、またこれ飲みに来ていい?」
「あ、ええ、いいですけど」
「ほんと? ありがとう!」
いや、ほんと女子力マックスのこの人だれなんだ? 二杯目飲んだし、そろそろ聞いてもいいかな…
「えっと、さっきの戦闘でもしかして助けてくれました?」
「ん? うん、穴掘って岩のモンス落っことしてあげたよ」
「あ、そうだったんです……あれ? ラスプにいたんですよね?」
「あ、わたし“クレオパンドラ”。そういえばわたし、どさくさでフレンド申請して、しっかり名前も伝えてなかったよね、ごめん!」
クレオパンドラ……全く初耳だな。フレンドリストには…うん、たしかに載ってる。ってか、俺、なんで114人もフレンドいるんだ?
「スプラ君、あの蜘蛛イベントの後でみんなから一斉にフレンド申請きてたから挨拶するのも悪いかなと思って」
ああ、そう言えば「どうせ卒業するから」って送られてきたフレンド申請は全部承認してたっけ。そっか、あの時は戻って来るつもりなかったからな……
「あ、わたしのことは、名前長いから“クレオ”ってみんな呼んでるわ」
「了解です。で、クレオさんって、ラスプにいたんですよね? 穴掘るってその子穴掘れるんですか?」
うちのオッキイのモグラ部隊ならわかるけど、鳥が穴掘るとか意味わからんのだが。
「この子が穴掘り? あはははは、スプラ君って楽しいね。違うよ、この子を通してわたしが土魔法を使ったの」
「え、“この子を通して”って…」
「あ、スプラ君は知らないか。鳥型星獣が活躍する前に卒業しちゃったもんね。実はこの子たち遠隔戦闘ができるのよ」
「遠隔戦闘?」
「うん、例えばわたしは安全なところにいてこの子だけフィールドに送るの。で、わたしは離れた安全なところから魔法使って攻撃するって感じ」
マジか……それって、チートでは? いや、チート以外なにものでもないだろ。
「その顔はチートだとか思ってるでしょ?」
「あ、いや…」
「あはは、当たった~。ね、スプラ君ってわかりやすいって言われない?」
まあ、結構な精度で心を読まれることはあるな。…やっぱ俺ってそんなにわかりやすいのか?
「たぶん普通の女子ならスプラ君の考えてること筒抜けだと思うよ」
「え…」
「あははは、その顔、スプラ君って楽しい~。あ、でね、鳥の星獣はチートかどうかってことだけど、全然チートじゃないから。まず、星獣だけじゃモンスターとエンカウントしない。だからさっきみたいに人の戦闘に飛び入りするしかないの」
良く笑う子だな。でも、そっか。敵とエンカウントしないとなると、遠隔魔法使えてもあんまり意味ないな。
「そう、意味ないのよ。ドロップの権利はないし、経験値も微々たるもの。それに一番痛いのは、遠隔操作中に星獣が死に戻るとしばらく無反応になるくらい信頼度が下がっちゃうのよ」
無反応って……それヤバくね?
「そうなの、その信頼度の回復の為に食費が馬鹿にならないよの」
食費? え、アリオンは何か食べたりしてないけど。
「獣型は大地と繋がってるから常に大地のエネルギーを食べてるようなものなんだって。でも鳥型は飛ばしてるとどんどんステータスが落ちるのよ。で、餌を上げないといけないの。で、その餌が信頼度にもつながるって話かな」
飛行時間に厳しい制限と信頼度低下リスクか。さすがにチートではなさそうだな。
「そう、すっごく使いづらいのよ。だから結構なプレイヤーが鳥型から獣型に変えたがってたの」
そっか……ってか、さっきから俺何も言ってないのに会話続いてるんだが?
「だから、わかりやすいの、スプラ君は。あははは」
……よし、考える前に話す。
「で、さっきの餌の話だけど、餌って何食べるの?」
「穀物と種ね」
「種? 種食べるの?」
「うん、種は好きみたい。でもなかなか手に入らなくて。だから穀物をあげるんだけどこっちはかなりの量食べないといけなくて。食べる時間もかかれば費用も嵩むって感じ」
「そっか、種が好きなのか……」
俺は立ち上がって農屋の隅に移動する。そこにはチッチャーネさんが【味見】で出した種を入れる箱が置いてある。
箱の蓋を開ける。
『ピピ?』
「この星模様のやつにしとくか」
種を一つ取り出す。
『ピピピ』
「あ、ナガちゃん!」
『ピピピ♪』
「……」
クレオのふわもこ星獣が俺の肩に飛んできた。ふわふわの羽毛が俺の頬をくすぐる。なんだ、ここは天国か?
「……食うか?」
『ピピピ パク』
パタパタパタ
「あっ」
ふわもこは俺が差し出した種を咥えるとすぐにクレオの元に帰って行っってしまった。……くそ、かわいい容姿に騙された。もっとありがとう的なリアクションがあると思ったのに。
「え、ナガちゃんどうしたの?」
『……ピピピ ピピ ピ ピピーーン!!』
「おおおっ!!」
「えええっ?!」
俺とクレオから同時に声が出る。いや、そりゃ声くらいは出る。だって、いきなりふわもこが光り出したのだ。これはもしや、特殊生産物……な訳ないか。いったいなんだ?
光が徐々に収まっていく。最後に光が弾け、姿を現したナガちゃんは……手のひらサイズだったのが両手サイズに。その羽毛はさらに白く輝きを増し、うっすらと高貴さすら感じさせてくる。変わってないのは円らな黒目だけだ。
「え? え? ええ?」
「クレオ、これってもしかして…」
バンッ!
「進化してるーーーー!!!」
農屋にクレオのテーブルを叩く音と共に叫び声が響くと、チッチャーネさんの巨体がちょっとだけ床から跳ねあがったのだった。
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「鳥型かあ。便利は便利だが、信頼構築が難しからな。どっちかって言うと中級者向けなんだよな~」
「スプラさんのせいで早まっちゃいましたもんね」
「本当はもう2回は獣型を挟みたかったよな」
「ですね。本来は獣型を使いこなせるようになってから解放されるはずだったのに」
「餌代もかかるしな。こんな序盤じゃコスパ悪くてやってられんのも分かる」
「効果的な餌が数エリア先からですもんね」
「そう、数エリア先の種とかな……あれ? どっかで聞いたことあるような」
「あああ、先輩、スプラさんが向かってる先って、あの箱っすよ」
「ああああっ、あんじゃねえかよ、数エリア先どころか意味すら分かんねえ種がよ」
「あ、あ、ああ、スプラさん、蓋開けました」
「ちょ、小僧、Xのシークレットクエストの件はわかる。わかるけど、それはなにが起きるかわからねえ、パンドラの箱だ、やめろ、やめろーーーー!!!」
「……あ、X-13が…スプラさんの肩に」
「小僧、お前、責任取れよ、絶対に取れよ、俺は知らんからな…」
「……食べました」
「「ええええええっ、進化ーーーーーーー!!!!」」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・クレオの事を思い出せずに焦る
・クレオの女子力に無力化される
・クレオに心を読まれる
・鳥型星獣について知る
・ナガちゃんが種だけを目的に近づいてきたと悟る
・ナガちゃんを進化させる
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【カッティングLv10】【融合鍛冶Lv6】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【高級料理Lv4】【魔力操作Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【空間描画Lv1】【コスパ料理Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約900万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]、ペン坊・ミケ坊・タツ坊[岩魔]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
名前:チク坊
種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]
属性:依存
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:20
MP:410
筋力:5
耐久:4
敏捷:14
器用:12
知力:14
装備:なし
固有スキル:【僕を守って】■■■■
スキル:【逃走】
名前:ペン坊、ミケ坊、タツ坊(岩っ子班)
種族:岩魔[★☆]
属性:岩
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:555
MP:33
筋力:255
耐久:255
敏捷:3
器用:3
知力:3
装備:なし
固有スキル:【岩食】
スキル:【叩き潰しLv1】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋
・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)
・癒楽房(格式Ⅲ)
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




