第300話 王家秘術と小鳥
まさか300話までこられるとは……感謝しかありません涙
コメントも楽しく読まさせていただいてます。
ありがとうございます。
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「(こら、雑草! 遊ぶんじゃない、早くそのポーションを俺に使え)」
吹っ飛ばされ、死に戻ったゴマッキさんの置き土産により【熟睡】に陥った俺。
現在、3m程の高さからアリオンに乗ったまま眠りこけている自分を見下ろしている。
「(ああ、危ない! よし、アリオン、ナイス! おい、雑草、違う! ポーションの中の液体を俺にかけるの!)」
必死に叫ぶが、熟睡状態の俺の声が雑草に聞こえる訳もなく。アリオンが躍動するたびに『あ~れ~』と勢いに身を任せる雑草に中級ポーションを使用する気配は全くない。
「(くそっ、雑草は所詮、雑草だったか)」
食虫植物あたりを持ってくるんだったと後悔しながらも、仕方がないのでアリオンが逃げ切ることに期待する。
ムガンさんはすでに岩魔を3体出して飛ばしている。2体は崖下に転げ落ちて行ったが、1体は崖の窪みに引っかかり、そこから這い出て今はアリオンの逃げ道を完全に塞いでいる状態だ。
「王家槌術【岩散撃】」
再びムガンさんが巨大槌を振りかぶると、周辺の岩がはぎ取られるようにして巨大槌の前に吸い寄せられる。そして岩魔の半分ほどにまで大きくなった岩をムガンさんがそのまま巨大槌でぶっ叩く。
ガーーン ダダダダダダダダ
巨大槌に破壊された岩が、無数の礫となってアリオンの周辺一帯に叩き込まれる。
『ヒヒヒヒーーン』
アリオンのHPが目に見えて減る。俺のHPが無傷なのを見るとアリオンが【守護Lv10】を発動したらしい。
ピンポーン
『星獣アリオンの【疾走Lv8】のレベルが上がりました』
【疾走】のレベルが上がり、アリオンの最大速度も上昇したようだ。【躍動】で一気に最大速度に達するアリオンの上で脱力ロデオ状態の俺。激しすぎてダメージが入らないかちょっと心配…
「(アリオン、逃げろ! 退却、退却!)」
だが、俺の指示が届くことはなく、アリオンは戦闘から離脱しようとしない。どうやら従魔の判断で勝手にプレイヤーを戦闘から離脱させられない仕様らしい。まあ、分からんでもない。相手がレアモンスターだった時じゃ、勝手に逃げたら大クレームになるだろうし。
ダダダダダダダダ
『ヒヒヒヒーーン』
俺があれこれ考えている間にも容赦なく岩礫が注がれる。そのたびに【守護Lv10】で俺を庇うアリオン。そのHPがゴリゴリ削られる。それだけムガンさんの攻撃力が高いのだろう。
ダダダダダダダダ
『ヒヒヒヒーーン』
…
…
ピンポーン
『星獣アリオンの【疾走Lv9】のレベルが上がりました』
『ヒヒヒヒーーン』
ダダダダダダダダ
熟睡解除まであと2分を切ったところでアリオンの【疾走】がカンストした。さらに上がった最大速度でアリオンが岩礫のすべてを避けられるようになった。アリオンの予測の速さと精度も上がってきてる今、残り2分くらいならおそらく大丈夫だろう。
「王家槌術【岩盤割撃】」
俺が少しだけ安心したところでムガンさんから新しい技が発せられる。その振りかぶる巨大槌に青白いオーラのような揺らぎが見える。これって、名前からすると……あかん、ヤバい。
「(リオン、跳躍と二段跳びだ! …くそ、伝わらん!)」
ゴッガーーーーーーン
ムガンさんの槌が足元の崖に打ち込まれる。地鳴りが断崖を駆け抜け、激しく揺れる地面にアリオンが足を取られる。
ドゴゴゴゴゴゴ
断崖にめり込むムガンさんの巨大槌から纏っていたオーラが地面に流れ込むと、亀裂が崖面を縦横無尽に走っていく。すると地面が命を吹き込まれたかのように動き出す。大きく盛り上がる地面。岩石が大波のように押し寄せてくる。それはまるで天地そのものを敵に回したかのようで。
『ヒヒヒーーーン』
岩石の波がアリオンを飲み込む直前、ギリギリで体勢を立て直したアリオンが【跳躍】で空中に逃げる。さらにそこから【二段跳び】で上空に駆けのぼる。
グオオオオー
アリオンが退路を断っている岩魔の上空に達する。その頭の上を超えるには十分な高さだ。よし、これなら避け切れる。
「王家槌術【岩起突衝】」
するとムガンさんが巨大槌を持ち上げ黄色いオーラとともに再度地面に叩き込む。オーラが地面で弾け飛ぶと、岩魔の真下の地面から大きな岩柱が飛び出し岩魔を押し上げる。
二段跳びで飛び越えようとするアリオンの前に一気にせり上がる岩魔。すでにその腕は振り上げられ【叩き潰し】の予備動作に入っている。【二段跳び】を使ってしまったアリオンにはもう空中でできることは何もない。
あかん、これは流石に終わった……
『ホーリング』
「(ん? なんだ?)」
俺が諦めかけた時、どこからか女性の声が聞こえてきた。
『ヒヒヒーーーン』
ピンポーン
『星獣アリオンの【跳躍Lv2】のレベルが上がりました』
「(え? 鳥?)」
ドーーーーン
女性の声が聞こえたと思ったら、せり上がっていたはずの岩魔が落下していく。その岩魔の頭になぜかとまっている白い小鳥。俺がその丸くて小さな姿を視認した途端、落ちていく岩魔の頭を足場にしてアリオンがさらに跳躍する。
ほどなく下から噴きあがる轟音。見下ろすと、そこには直径4m程の穴、深さも岩魔が完全に入りきるほどの大きな穴がぽっかりと空いていた。そしてそこにすっぽりハマって出られなくなっている岩魔。
アリオンがそのまま崖下への大跳躍を成功させると、戦闘終了のログが流れる。そして俺の視界もは再び暗くなり、俺は目を覚した。
「ん、アリオン、お疲れさま。ありがとな」
『ヒン♪』
アリオンの鼻先を撫でて労をねぎらう。
「アリオン、最後の岩魔が変だったのってアリオンが何かした?」
『ヒヒン』
「だよな、アリオン何もしてないよな。じゃあ、あの声か…」
パタパタパタ チョン
「あ、さっきの鳥?」
パタパタと飛んできてアリオンの頭の上にとまる小鳥。なぜか俺をじっと見てくる。俺はリアルでもよく鳩と目が合うんだよな。鳩の目って意外にと怖いし目なんか合わせたくないのに…
「なんで俺を見て……って、青色マーカー? え、じゃ、この鳥、もしかして?」
『えっと、もしかしてピエロ……スプラ君?』
は? 鳥が喋った? え、インコでもないし、オウムでもないし。ってかめちゃくちゃかわいいんだが、この鳥。白くて丸くてふわふわで。そんでもって円らな黒目が俺を見つめてくるとか、どんな天国だよ。
『あ、この鳥? かわいいでしょ?』
え、また喋った。え、ってかなんか会話になってる? は?
『あれ? 知らない? シマエナガって鳥。一番かわいい鳥って有名なんだよ。北海道で見られるの』
……完全に喋ってるよな。青マーカーってことはプレイヤーてことだよな。“鳥人”なんてあったか? あ、でも44種類あるっていってたし、その中にあったのかもな。
「えっと、プレイヤーさんですか? 鳥人なんてあったんですね。俺、キャラ作成の時、獣人族の種類見てなくて…」
『鳥人? アハハハハハハハ。スプラ君楽しい~。違うよ、この子は星獣。わたしはラスプにいるの。この子を通して話してるだけ』
へ? 星獣? ラスプにいる? はい?
『ナガちゃんと感覚共有してるんだよ』
……えっと、何が話されてるんだ? ナガちゃん? 感覚共有?
『そっか、スプラ君は鳥型星獣なんて知らないよね。えっとね、この子はわたしの星獣のナガちゃんで、今はこのナガちゃんを通してスプラ君と話してるの』
「……鳥型星獣?」
『うん、そのアリオンちゃんが騎乗できるみたいに鳥型星獣はこうやって感覚共有できるんだ。いろいろ制限付きだけどね』
マジか。鳥型星獣ってスマホ代わりになるのかよ。
『でもびっくしりたよ、まさかスプラ君が戻ってきてるなんて。しかもラスボス感半端ない敵と戦ってるのにアリオンちゃんの上でグダングダンになってて。助けてるべべきか悩んじゃったよ。そういうプレイが好きなのかなって』
「あの、すみません。俺の事知ってるってことです?」
『知ってるよ~、ってかフレンドだし。覚えてないか、そっか~。わたしなんて数ある女のひとりってことか~』
いやいや、自分、そんなセリフと一番距離のある人間ですから。
「……あの」
『うそうそ。ははは。じゃあ、今からログハウスに行くから会おうよ』
「今から?」
『あ、忙しかった? だよね、ボス戦だったもんね』
「あ、いや、大丈夫ですけど」
『あ、そう。じゃあ今から向かうね~』
パタパタパタパタ
あ、飛んでった。ってか……マジで誰?
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「先輩、なんでスプラさん熟睡のままあのドワーフ王の攻撃を避けられてるんすかね」
「そら、Z-2との信頼度が最大だからだろ。完全落馬防止だし」
「でも、星獣も従魔も契約者が戦闘不能になったら判断力がヤバくなるんじゃなかったっすか?」
「だから、なってるだろ、あの雑草」
「でもZ-2は普通に戦闘してますよね。ほら、契約者に【守護】まで使って」
「……小僧と長く一緒にいるからだろ? YR-1もだいぶ前からとち狂ってやがるし」
「それって、どういう仕組みでそうなっちゃうんすかね。もしかしたらバグって可能性もあるんじゃ…」
「ライス、世の中には考えないほうが幸せでいられることが山ほどあるんだぜ」
「(何言ってんすかね、この高性能AIは。あ、でも先輩もスプラさんとは長い付き合いだったすね)」
「(“独立AIが独自に小僧に興味持ってる”なんてこと言えるかよ)」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・熟睡時に雑草君が役に立たないことを知る
・リオンに乗って熟睡ロデオ
・鳥型星獣と話す
・鳥型星獣の能力にビビる
・勢いでプレイヤーと会うことになる
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【カッティングLv10】【融合鍛冶Lv6】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【高級料理Lv4】【魔力操作Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【空間描画Lv1】【コスパ料理Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約900万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]、ペン坊・ミケ坊・タツ坊[岩魔]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
名前:チク坊
種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]
属性:依存
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:20
MP:410
筋力:5
耐久:4
敏捷:14
器用:12
知力:14
装備:なし
固有スキル:【僕を守って】■■■■
スキル:【逃走】
名前:ペン坊、ミケ坊、タツ坊(岩っ子班)
種族:岩魔[★☆]
属性:岩
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:555
MP:33
筋力:255
耐久:255
敏捷:3
器用:3
知力:3
装備:なし
固有スキル:【岩食】
スキル:【叩き潰しLv1】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋
・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)
・癒楽房(格式Ⅲ)
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




