第295話 復帰5日目 南国にジャングルに指名手配に
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今日はログイン後すぐにステータス画面を開く。そしてフレンドリストからゴマッキさんを探してフレンドコール。慣れないため操作にまごつく。
プルプル プルプル
『スプラっち、昨日ごめん! 自力で向かったんだけど、まさかのドアの前で鑑定発動しちゃってさ。今からすぐに向かうから!』
ハイテンションのゴマッキさんのおかげでお薬由来の眠気が覚めたな。朝の眠気覚ましとかあったらいいのに……今度作ってみるか。
癒楽房から農屋に移動しロフトのネギ丸たちに挨拶。今日の分の薬草を貰って畑に出る。
「ミクリさーん、ゲンジさーん、おはようございまーす」
「あ、スプラさーん、おはよー。ちょっといくつか報告あるんだ~」
そう言ってミクリさんが走ってやって来る。
どうやら今日も恒例の報告会が始まるらしい。
「こっち、こっち」
いつものようにミクリさんに手を引かれて小規模畑に移動する。すると、そこには対照的な二つの畑が並んでいた。
「南国パラダイスと熱帯ジャングルですね…」
「パラダ…? ジャングル?」
聞きなれない言葉に首を捻るミクリさんをそのままにして、南国パラダイスの方へ足を進める。
「昨日のよりでかいですよね、これ」
昨日の30cmババナを二回り大きくした50㎝近い超巨大ババナがなっている。木も一まわり太くなっているようだ。他にも実の部分だけで50㎝はあるパインナプル。
「ぐおっ、こりゃ重いな」
先に来ていたらしいゲンジさんがマンガーを両腕で抱えてフラフラと歩いてくる。
ドスン
俺たちの目の前に巨大マンガーを置くゲンジさん。
「ふう、リヤカーじゃないと運べねえぜ、コレ。持ってくるわ」
ゲンジさんがリヤカーを取りに去って行く。
「なんでまた大きくなったんですかね…」
「それなんだけど。この畑に植えたチッチャーネさんの種って、肥料で進化した野菜の【味見】でできた種なんだ。昨日のは進化前の野菜を食べた時のやつ」
ああ、なるほど、確かに進化した野菜を食べた時に出て来た種は大きかったもんな。
「ってことは、これからはこれがずっと取れ続けるって事ですかね?」
「うん、そういう事になるね」
「「……」」
気づいたら二人して腕組みをしていた。たぶんミクリさんも俺と同じく、これをどう処理したらいいのかを考えているんだろう。
「これは流石に食べきれないですかね」
「さすがにね…」
うーん、これはまいったな。南国フルーツかあ……トロピカルジュース…とかにしちゃう?
「とりあえず、隣のジャングルにも行ってみましょうか?」
次のジャングル畑に向かうとミクリさんの足が重くなる。そっか、昨日チク坊のスキルのせいで大変な目に遭ったもんな。
『チュ?』
「あ、いや、何でもないよ」
リュックの中からチク坊が『なに?』って。ネギ坊だけじゃなくチク坊までも俺の心の声に反応してくるとは……従魔には俺の気持ちが筒抜けらしい。
ジャングル化した食虫植物畑に到着する。昨日は丈1mくらいだったのが今日は2m。熱帯雨林を彷彿とさせる濃い緑に赤や紫や黄色のケバい模様の花や葉っぱが見える。
「あっ!?」
「ひっ…」
俺がちょっと思いついたことがあって声を上げたら、隣のミクリさんの肩がビクッと上がる。昨日吊られた時の恐怖が蘇ったのか、頬は青ざめ、握った手が小刻みに震えている。
……しまったな、脅かすつもりはなかったんだが。
「ミクリさん、チク坊はこのリュックの中で安心しきってるので、昨日みたいなことは起こりませんから大丈夫ですよ」
「は、はは……じゃ、じゃあわたしは作業に戻るね」
ミクリさんはじりじり後ずさるようにしてジャングル畑から距離を取ると、ダッシュで戻って行った。相当堪えてしまっているようだ。
ミクリさんを見送って振り返ると、高さ2mの熱帯雨林が存在感がすごい。
「この大きさ…これだったらモンスターも食すかもな。あのアースンなんかゴブリンでも入りそうだし。いっそ、モンスターでも捕まえてきて放り込んでみるか……」
ブツブツ言いながらとりあえず畑の周りをグルっと回って観察をする。すると、【明日寝草】と【挟牙虫草】以外にも種類が増えているのがわかった。
【巻葉絞草】
葉に止まった虫を巻き取って溶かし養分を吸収する食虫植物。巻き取られるとグイグイ絞めてくるが、外からの刺激にはめっぽう弱い
【甘滑酸草】
独特の甘い香りで虫を引き寄せ、溶解液の溜まった逆円錐状の葉に滑り落として養分を吸収する食虫植物。葉は滑って出ることはできないが、外からの刺激にはめっぽう弱い。
……昨日のモンスター化した中にこの二つも入ってたかもしれんな。どれがどれになったんだろう。
「気になるから、もう一回チク坊に…」
プルプル プルプル
画面端に受話器マークが点滅する。ゴマッキさんからフレコだ。
『はい、ゴマッキさーん』
『あ、スプラっち? ログハウスの前に着いたんだけど、大きな人と小さな子どもたちに通せんぼされちゃたのよ~。これ、どうしたらいい?』
大きな人と小さな……チッチャーネさんたちだな。通せんぼってなんでだ?
『あ、今行きますね』
…
…
「あ、スプラっち! こっち、こっち」
農屋の前まで行くと、農屋の入り口の前に立ちはだかるチッチャーネさんとデッカイ&オッキイ。両腕を上げて確かに通せんぼしている。
「チッチャーネさん、デッカイ、オッキイ、おはよう。どうしたの?」
三人ともすごく険しい顔でゴマッキさんを睨んでいる。
「スプラさん、このパジャマの異人は危険です。近寄らないでえ」
「兄ちゃん、こいつはヤバいんだ」
「ヤバいの」
いやいや、危険とかヤバいとか何事?
「チッチャーネさん、デッカイ、オッキイ、その人は俺のフレンドなんだよ。友達なんだ」
「え、友達?」
「なんで?」
「どうして?」
俺の言葉に三人が目を見開く。
「スプラさん、騙されちゃだめですう。このパジャマの異人には街の衛兵さんから気を付けるようにってお達しが来ています。ほら、コレ」
チッチャーネさんがゴマッキさんを睨みながら俺の方に紙切れを見せて来る。
「え? 指名手配?」
チッチャーネさんがこっちに見せている紙には本当に指名手配と書かれてある。そこには傾いた眼鏡に寝癖がひどいパジャマ姿のゴマッキさんの絵が描かれ、その口からは涎が垂れている。さらに懸賞金はなんと100万Gらしい。
そういや、俺も前にプレイヤー間で指名手配されたことがあったな……。
「ゴマッキさん、これ……涎たれてるじゃないっすか」
「ね? 酷いでしょ、あの似顔絵! わたしもっとかわいいし。ってそんなことじゃなくて、この指名手配の理由を話したかったのよ」
「……」
うーん、これ、正式の指名手配だよな。もしかして匿ったら俺も指名手配されるんじゃ……。今、いろいろやる事あるしすごく困るんだが。
「ちょ、スプラっち、なんで考え込んでんの。違うでしょ! ここは助ける一択でしょ?!」
「あ、いや、まあ……」
「ちょっとおおお、スプラっち!!」
「冗談ですよ。……チッチャーネさん、ゴマッキさんは大丈夫です。本当に大丈夫なんで農屋に入れてあげてください」
「え、そ、そうなのかい? スプラさんがそう言うんなら……はい、どうぞ」
「……どうぞ」
「どうぞ?」
三人とも首を傾げながらも道を開けてくれたので、みんなで農屋に入る。
「じゃあ、極楽発砲水で乾杯しましょう。かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
俺とゴマッキさん、復興担当の三人でコップを呷る。
「おいしいーーっ!」
「美味いなあ」
「「ぷはー」」
うん、こうやった美味いものを一緒に飲み食いしたら距離も縮まるよな。だが、デッカイとオッキイよ。その「ぷはー」は仕事帰りの父ちゃんが居酒屋で一口目のビールを呷った時の「ぷはー」だぞ。
「で、ゴマッキさん、なんで指名手配に?」
「それがさあ、もう大変だったのよ……」
ゴマッキさんが極楽発砲水を飲みまくりながら今回の経緯を話してくれた。
内容はまあ、予想通りと言うか、それしかないと言うか。つまり熟睡状態になってマリオネット化したゴマッキさんが住人に対して手当たり次第に【熟睡】状態を撒き散らしてきたことが原因だった。
ただ、【熟睡】に関しては面白い仕様も知ることができた。住人NPCが【熟睡】にかかると、その少し前から記憶がなくなるそうなのだ。つまり、マリオネット化したゴマッキさんの眼鏡を見たことを忘れてしまっているという事らしい。
だが、今朝がた熟睡して街中を歩いていた際に運悪く二人連れの衛兵に出くわしてしまった。一人は【熟睡】になったのだが、もう一人はそれを見て逃げてしまった。逃げる衛兵もどうかと思うが、その後しばらくしてゴマッキさんが指名手配となったらしい。
「もう、折角時間合わせしてたのにこんなことになるなんて……」
ゴマッキさんがやけ酒を飲むようにして極楽発砲水を呷る。ますます居酒屋感が増してくな…。
「うん、じゃあ、今日はもうみんなで癒楽房に移動しましょうか」
癒楽房なら指名手配も届かないだろうしな。
「あ、もしかして癒楽房って昨日の夜の?」
「はい、ゴマッキさんが俺たち3人熟睡にしたあの建物です」
「それなんだけどさ、昨日、わたし丁度あの建物《《視》》ちゃったんだ。すごいよね。なにランダム素材って。それに庭が資源庫なんて反則じゃない?」
……ランダム素材? 資源庫? はい?
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「だあああー、なんじゃこりゃー、果物がデカすぎんだろが!」
「先輩、これ本当にヤバいっすよ。スプラさんのことですからトロピカルジュースにするとか考えられますよ」
「ト、トロピカルジュース……どんな感じなりそう?」
「はい、確実に全ステータスにバフが掛かりますね。それと住人NPCと一緒に飲むことで一時的に信頼度を1段階上げる効果、それに……」
「ちょ、ちょっと待て、信頼度? 一時的に上げる?」
「はい、まあ予想なんでスプラさんがどう作るかで変わってきますけど」
「そ、そうか、信頼度か……じゃあ、アマデウスの嬢ちゃんが言ってた信頼ネットワーク…」
「あ、先輩、スプラさんのあの顔見てください。絶対にあの食虫植物をまたモンスター化してみたいとか考えてますよ、アレ」
「いやいや、流石の小僧でもまさかそんな無謀なことを考えてるとは思えんぞ。自分が死に戻るかもしれんことを…」
「でもスプラさん、劣滅除草剤っていうチート毒薬持ってますし。絶対に安易なこと考えてると思いますよ」
「ぐぐぐ、まったく反論できん。小僧、やめろよ、安易にモンスター化してみようかなとか、絶対にやめろよ! 昨日みたいに予測値に激震走らすんじゃねえぞ!!」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・さらに巨大化した南国フルーツの使用法を考える
・新しい食虫植物を知り、チク坊にチックンしてもらって確認したいと考える
・ゴマッキから指名手配について聞かされる
・ゴマッキから癒楽房について新情報がもたらされる
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【融合鍛冶Lv6】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【高級料理Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】【コスパ料理Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約900万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
名前:チク坊
種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]
属性:依存
契約:スプラ(小人族)
LV:1
HP:20
MP:410
筋力:5
耐久:4
敏捷:14
器用:12
知力:14
装備:なし
固有スキル:【僕を守って】■■■■
スキル:【逃走】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋
・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)
・癒楽房
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




