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第286話 猜疑心は利用するべし

 …ん? あれ? 俺はいったいどうしたんだ?


 体がフワフワしている。視界は真っ暗。


「ん? これはタイマーか?」


 真っ暗の視界の隅で点滅する09:52の数字。秒数はどんどん減っていく。どうやらカウントダウンタイマーらしい。もしかしてこのタイマーが終わるまで真っ暗とか? 

いや、怖いから。暗いのダメな人どうするんだ……って、思ってたら明るくなったな。明るさ調節可能なのか…


「お、なんか視界が変わってきた」


 タイマーが9:30を過ぎた辺りから視界が変化していく。一色だった視界に色が付いていき、だんだんと風景が形作られていく。そして状況がはっきりとわかるようになってきた。


 で、分かった事。俺は……なんと宙に浮いていた。何mくらいだろうか。高いところが苦手な俺がギリ耐えられるくらいの高さ。落っこちても大怪我はしない、その高さ…3mくらいか。


 周りを見回すとそこにはよく見知った大きな建物。


「領主館か。で、衛兵はいないのかな……え? どういうこと?」


 領主館から視線を下げると、意外なものが視界に映る。なんと、自分のアバターが街道の真ん中でヘソ天で寝てるのだ。音は聞こえないが口が開いて腹が上下しているのを見ると盛大にイビキをかいているのだろう。


 そしてそのすぐそばには俺を連行していた衛兵、それに俺を引いていた馬までも横になって寝ている。



「情報を整理すると……つまり、回復したはずのゴマッキさんがまた熟睡状態になったって、俺が熟睡させられたということか」


 宙に浮きながらいろいろ考えた結果、ゴマッキさんの【マジ真視】は『熟睡の中級キュアポーションで回復しても、時間が経つとまた熟睡に戻ってしまう』という結論に至った。


「それで連絡がなかったのか…」


 これはややこしいことになった。熟睡の中級キュアポーション、熟睡キュアポーションの効果が限定的とは。後でゴマッキさんに情報を聞かないとな。っと、それより、この熟睡状態だな。


「つまり【熟睡】ってのは“このまま10分間待てよ”ってことだな。こんなの戦闘中になったら最悪なんだが。一人だとポーションも使ってもらえんし」


 …今度、眠らない薬でも作ってみるか。素材はなんだろな。爆炎草とかかな。パンパン音がして起こされるとか? それとも天雷草で寝そうになったら光るとか? うーん……ん?


 対眠気ポーションを考えてたら領主館から誰か出て来た。なんか凄い負のオーラが出てるんだが……え、あのシェイプって、もしかして? 


 こっちに向かってズンズン歩いてくる人はなんと……ステラさんだった。


 すごくイライラしてる様子のステラさん。こんなステラさんは初めて見る。だがヘソ天の俺に気づくと、放っていた負のオーラも弱まり、俺に駆け寄って来てくれた。俺の上体を起こして揺するステラさん。


 でもそれくらいで熟睡中の俺が起きる訳はない。するとステラさんの動きにも熱がこもる。


 あ、いや、そんなにブンブン揺らさなくても……あ、ステラさん、今、頭が地面に当たった……え、ちょ、HP減った。マジか。


 あ、今度はほっぺた叩いて……げ、HPまた減った。あかん、これはマズい。


 ステラさーん!! 俺死に戻っちゃいます!! もうその辺で!!!


 俺が猛烈に焦っていると、急に動きを止めるステラさん。今度はカバンから何か出そうとしてる。で、取り出したのは……え、その瓶、もしかして中級ポーションの瓶? あ、あれ? 視界が暗くなる。あれ?



「ん、んん……」

「スプラさん! スプラさん!」


「ん、あ、ステラさん」

「ああ、よかった。目が覚めて」


 ステラさんの優し気な目尻にホッとする。領主館を出て来た時のオーラはもうない。


「すみません、中級ポーション使わせちゃって」

「え、なぜそれを?」


「あ……俺、熟睡の状態異常だったんで。起きられたってことはそういう事かなって」

「なるほど、でもこれは気にしないでくださいね。マジョリカさんからの頂き物ですから」


「え、マジョリカさん?」

「はい、10日ほど前からこの街で道端で眠りこけてしまう病気が流行り出してまして。それでマジョリカさんが何本かわたしにくれたんです」


 眠りこける病気……いや、それって間違いなくゴマッキさんじゃん。10日前からって、あの人、どれだけ徘徊してんだよ。


「でも、なぜ、スプラさんがこんなとこに? それにこの馬と衛兵さんは…」

「あ、それには深い訳がありまして……」



「ええええっ、スプラさんが連行された?! ハイネが通報したんですか?」


 口に手を当てて驚くステラさん。青天の霹靂とでも言わんばかりの驚きようだ。


「はい、あ、でも俺がすごく怪しげにジュースを飲ませようとしたんで、ハイネちゃんが悪い訳じゃないんです」

「でも、あのハイネが……ここずっと様子が変だとは思ってたのですが」


 何やら思いを巡らせているステラさん。


「そういえば、警戒心が強くなる状態異常があるそうですけど」

「警戒…ですか。そういえば、前と比べて警戒心がとっても強くなった気がします」


 そうか、ってことはハイネちゃんが【警戒】状態ってのは間違いなさそうだな。



「あ、いけない、もうこんな時間。帰ったら子供たちと遊ぶ約束してたんでした。もう行かないと」


 ステラさんが慌てて立ち上がる。


「あ、ステラさん、じゃあ、コレをハイネちゃんに飲ませてあげてくれませんか? 俺たちも後から伺うんで」


 俺から極凰発砲水を受け取ったステラさんが速足で帰っていく。




「んじゃ、俺たちもゆっくりと教会に戻ろうか」


 ハイネちゃんが正気に戻った後に行かないとな。


『ゆらゆら~?』

「え、この衛兵さんも?」


 戻ろうとする俺に、ネギ坊から『衛兵さん起こしてあげたら~?』と提案される。いや、でも起こしたらまた連行されるんじゃないか?


『ゆらら~…ゆら!』

「ええ、【猜疑心】? また新しいやつ?」


 ネギ坊から衛兵さんが【猜疑心】の状態異常になっているという新情報が出て来る。


 ちなみに【猜疑心】は『疑いが起きた相手への信頼度が0になり、疑いを事実だと信じ込む』というこれまた鬼畜仕様の状態異常だ。



「ってかさ、なんか、みんな変な状態異常にかかってね?」

『ゆ~ら~』


 ネギ坊も『おかしいね~』って。でも、状態異常ならこのままにはしておけん。



「うーん、どうやって回復させようかな。いきなり起こしたらまた連行されるんだろうしな……猜疑心かあ……うーん」





「ん、ん? はっ、俺はなんでこんなところで眠って……ああ、貴様、なんで縄が解けてるんだ。もしや、これはお前の仕業か」


「い、いええ、そ、そんな滅相もありません」


「その慌てよう、やっぱりお前だろ! 来い、詰め所まで連行する」


 熟睡キュアポーションを使って衛兵さんを起こすと、予想通り早速俺に絡んでくる。ってことで、ここで例のブツを取り出す。



「いええ、そんな衛兵様~、こ、この飲み物だけはご容赦ください~」


「なんだ、それは。怪しいな、ちょっとそれを見せろ」


「ひゃああ、これだけはやめてください~」



ピンポーン

『【独り舞台】が発動しました』



「な、その必死さ、ますます怪しい。ほら、それ寄越せ。俺が確認してやる」


「あああれえええ、その飲み物だけは~。衛兵様~それを飲んだって元気なんかになりはしませんよ~。髪の毛フサフサなんかになりません~」


「な、なんだと、髪の毛がフサフサ……」


 衛兵さんが少し寂しくなった自分の頭に手をやる。何かを確かめているようだ。



「そ、それを寄越せ。怪しい飲み物を所持していた罪科でお前は連行する」


「ひゃあああ、衛兵様~、それには使用期限なんてありませんから~、あと10秒とかで効果なんて切れませんから~」


「な、10秒…く…」


 衛兵さんが俺から取り上げた極凰発砲水を見つめる。8,7,6…… どうやら悩んでいる様子。



「ああ、それを持って行かないと、あの武器屋のマークスさんが悲しむ……あっ、いっけね」


「ぶ、武器屋のマークス……あのスキンヘッドか。なに、そんなに効くのかこれは」


「あああ、効きません。なんにも効きませんから。あと3秒で効果が切れるなんてありませんからぁ~」


「さ、3秒…くそっ」


 ゴクゴクゴク……


 一気に極凰発砲水を呷る衛兵さん。



「ぷはあーーー、何という美味さ」

「あああ、衛兵さんが飲んでしまった~。マークスさんごめんなさい~(いろんな意味で)」


 独り舞台をこなしながら横目で衛兵さんを確認すると、しっかりと水色のエフェクトに包まれていた。よし、完了!



「ん? あれ、俺はどうして……あ、あなたはスプラさん? え、俺スプラさんを疑ってたのか? え? なんで?」


 どうやら完全に【猜疑心】が治ったらしい。あー、よかった。





「こんにちはー、ステラさーん」

「はーい」


 衛兵さんから散々謝罪を受けた後、デッカイ達のことが気になってすぐに教会へ戻ってきた。


「スプラさん、待ってたんですよ」


 奥から出て来たステラさん。なんか疲れた顔をしている。まさかここで【疲労】なんて言わないだろうな。


『ゆら~』

「あ、だよな」


 ネギ坊から『違うよ~』って。そうだよな、流石にな。


「どうかされたんですか?」

「スプラさんから頂いたジュースをハイネに飲ませたんです。そしたら…こちらへどうぞ」


 ステラさんに連れられて庭へと移動する。すると、そこには極凰発砲水が半分ほど入ったコップを持って木の上に登っているハイネちゃんと、それを見上げて叫んでいる教会の子供たちがいた。


 ってか、デッカイとオッキイ。なんでお前らも混じってんだよ。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「あれ、SRですね。あ、スプラさんダメージ入ってます」

「コラーー! SR、やめろ!! 今は小僧に死に戻ってもらったら困るんだ」


「あ、キュアポーション使いました」

「ふう助かった。やめてくれビビらすの」



「先輩、なんかスプラさんが演技してるっすよ」

「え、髪の毛? フサフサ?」


「(あ、先輩の稼働率が上がってるっす)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ステラにHPを削られる

・衛兵が【猜疑心】状態だと知る

・衛兵相手に【独り舞台】発動

・マークスのスキンヘッドを活用する

・教会でデッカイたちを発見



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約500万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵(警戒中)

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋

・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

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