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第285話 不審者

「それじゃあ、ミクリさん、ゲンジさん後はよろしくお願いします」

「うん、了解」

「まかせときな」


 畑の事を二人に任せて俺はデッカイとオッキイを連れて畑を出る。


 食虫植物の畑は面白そうなので、チッチャーネさんの種全種類を植えることにした。ミクリさんは気持ち悪がったのでゲンジさんにお願いすると、嬉しそうに快諾してくれた。ゲンジさんは男の子なようだ。


 で、新しい小規模畑をフルーツ畑として種を植えてもらうことにする。こっちは【栽培促進】のミクリさんに担当してもらう。


 で、俺たちはこれからどこに行くかと言うと、コイツをどうにかするために行くところがある。極凰にヒントを貰ったからな。



【従魔モンスターの卵】

 ※異常なまでの警戒心によって頑なに殻から出ようとしない状態。

 ※子供同士で遊んでいる中で孵化したという話を聞いた。



 デッカイとオッキイを連れて教会へと向かう。


 


「こんにちはー」

「あーい」


 出てきてくれたのは真っ赤なまん丸ほっぺのハイネちゃん。この見かけで油断させ実のところは教会の門番として相手の本性を見抜いてくるという油断ならない相手だ。


「あ、ハイネちゃん、シスターいる?」

「しすたーはもうすぐかえってきます。ですがそのあとはこどもたちとあそぶやくそくがありますのでしょうしょうおじかんいただくとおもいます」


「あ、そうなんだ。じゃあ丁度良かった。実はお兄ちゃんたちも一緒に遊べないかなって」

「しらないひととあそんじゃだめだとしすたーあからいわれておりますので」


 いやいや、ハイネちゃん、知らない人って。知ってる知ってる。よく知ってるピエロのお兄ちゃんだから。


「ハイネちゃん、俺だよ、ピエロのスプラお兄ちゃん。昨日も教会に来てたんだよ。ハイネちゃんとは会わなかったけど」

「かおみしりはしらないひととおなじですからもうしわけありません」


 ぺこりとお辞儀して戻って行こうとするハイネちゃん。あれ、こんな反応初めてなんだが?


「なあ、兄ちゃん、今の子なんか変だったぞ」

「うん、変だったよ」


 デッカイとオッキイが二人して変なことを言ってくる。ハイネちゃんが変って…まあ確かにいつもとは違ってたが…


『ゆらら~?』

「え、ほんと?」

『ゆらゆら!』


 頭上のネギ坊から『今の子【警戒】状態じゃなかった~?』と。【警戒】状態? なんだそれ。


『ゆらゆらゆら』

「あ、そうなの? 【落胆】とか【無気力】と同じ枠?」


『ゆらゆら!』

「ええっ、全対象に対して信頼度マイナス3段階? そんなのあるの?」

『ゆら!』


 いや、まじか。信頼度落ちるって。しかも3段階? そんなの“友達”から一気に"他人"になるようなもんじゃん。じゃあ、ハイネちゃんはマジで俺の事を他人くらいにしか見えてないって事か。そっか……だがしかーし、俺にはこれがあるのだ。


【極凰発砲水】


「すみませーん、ハイネちゃーん」

「あーい……しすたーはまだかえってきてませんのでまたのおこしをおねがいします」


「あ、じゃなくて、ほら、これ。美味しいジュースだよ。あげるから飲んでみて」

「しらないひとからものをもらってはいけないです」


「いや、本当に美味しいから。ね? 一口、一口だけでいいから。飲んでみて。ほら? ほら!? ほら!!」

「……えいへいさんにれんらくします」


「あああ、ちょっと待って、ハイネちゃん、違うから」


 猛ダッシュで奥へ消えていくハイネちゃん。いや、衛兵とかマジ無理だんだけど。



「今のは怪しかったなあ」

「うん、怪しかったあ」


 デッカイとオッキイまでがそんなことを言う。俺そんな怪しかったか? うそ?


『ゆらゆら…』

「ネギ坊、お前までそんなこと…」



 パッパカパッパカ ヒヒヒーン


 俺が教会の入り口であわあわしていると、今度は街道の方から馬の音。

 

「おい、貴様か。怪しい奴め。シスター不在を狙って押し入ろうとするとは許せん、連行する」

「はい? ち、違いますって。俺、シスターとも友達で」

「あのシスター・ステラがお前みたいな怪しい異人の友達な訳がないだろ!」


「え、あ、じゃあ……あ、そうだ。俺マジョリカさんの好敵手に認められてるんですよ」


 ごめん、マジョリカさん。テンパって肩書を利用しちゃいました。


「マジョリカ……今度はマジョリカ氏の名を。そんな偽造した肩書など通用すると思ってるのか。さては貴様、調合失敗を繰り返して資金繰りに困った挙句に、教会の子供から金銭を騙し取ろうとしたな。畜生め、来い、詰め所で全部白状させてやる」


 衛兵さんが俺の腕を掴む。その手からはネヒルザさんばりの力が伝わってくる。筋力1の俺ではもちろんその掴みを外すことなどできるはずもなく……ズルズルと引きずられて街道まで連れていかれる。


 デッカイとオッキイは衛兵を見て固まっている。もしかしたらあの記憶がフラッシュバックしているのかもしれない。なんとかフォローしてやりたいが…



「いや、違うんですって、衛兵さん、ちょっと話を聞いてください」

「うるさい、黙れ。お前みたいな異人がいるからこの街がおかしくなるんだ」


 力ずくの衛兵さんに対して俺のヘタレ筋力では何の抵抗もできず、そのまま街道まで連れ出され、両手首を縛られ馬に繋がれてしまう。



ブーン

『街の衛兵によって拘束されました。衛兵の詰め所に到着すると尋問が始まります。尋問では嘘をつくことができません。過去に罪科がない場合は一定時間の奉仕活動、罪科がある場合は罪科に応じた規定時間を牢獄で過ごします』



「いやいやいや、違う、違うって。ちょ、デッカイ、オッキイ、大丈夫か!?」


 …駄目だ、完全にフリーズしてる。くっそ、どうしたらいいんだ……



パッカ パッカ パッカ パッカ



「おい、アレ見ろよ」

「はは、久しぶりに見るな」

「連行とか第四陣がログインした時以来じゃね?」

「あの時は笑ったよな、ログインしてNPCに話しかけた奴から即連行されてったもんな」

「はっは、ログイン直後に連行されて尋問とか。思い出しただけで笑えてくる」



 くそ、俺を見て笑ってやがる。あのガラの悪さ、絶対にエア・ブランコだな。どう見ても俺よりもあいつらを連行だろ。くそ。


 手首を縄で縛って教会から西地区の詰め所まで見世物にするとか。こんなの療養中の奴にやっていいことじゃねえだろ。おい、SAI、いいのかこれ。俺、危ないかもだぞ!


 ゴボゴボゴボ ザッブーーン


 俺の心の叫びをかき消すかのように、広場の噴水が豪快に水飛沫を上げ始める。なんか、死に戻るとか、連行されるとか、情けない場面によくこの噴水を見る気がするな。


 広場を過ぎて西地区に入る。しばらく進んで北に入ったところが領主館、で、その隣が衛兵の詰め所だ。そこまで行ったら尋問が待っている。罪科はないから奉仕活動をさせられるんだろう。……罪科…ないよな? え、なんか心配になってきた。


 街中でパトカーとすれ違う時のような妙な不安感を抱きながら大通りを北に入る。


 ……デッカイたち大丈夫かな。二人だけで帰れるかな。くそ、やっぱ尋問なんてされてる場合じゃない。なんとか抜け出さないと。


 手首をぐりぐり動かしてみる。だが縄はがっちりと絞められていてまったく緩まない。だがグリグリしてたらそのうち【縄抜け】スキルとか覚えるかもしれんし……


グリグリグリグリ……




「おい、お前、怪しいな」


 馬が止まり、衛兵が声を上げる。


 しまった、縄抜けしようとしていることが衛兵にバレたか…


「おい、なんだその動きは。怪しい奴め」


「す、すみませ…ん……ん?」


 謝るために土下座の予備動作に入ったところで違和感を感じる。視線を上げると、衛兵がこっちを見ていないことが分かった。


「おい、変な恰好しやがって。怪しいにも程があるだろが! お前も連行する。来い!」


 衛兵が誰かに叫んでいる。怪しい奴って誰だ? さっきのエア・ブランコの連中より怪しい奴……どんな奴だ、それ。


 様子を見るために少し横にずれると、馬の影からそれは現れた。サンダルに似たローマサンダル、柔らか素材のフワッとズボンにふわっとシャツ。FGSの世界観に逆行する水玉模様。最後に片手に抱えた枕。



「おい、聞いてるのか、ずっとゆらゆらしやがって。今、拘束するからそこで……」



 なんだ、ゴマッキさん、こんなところにいたのかよ。連絡来ないし、今日はログインしてないのかと思ってた。


「ゴマッキさん!」


クルッ


 俺が叫んだと同時に、ゴマッキさんの首がぐるんと回る。そしてマリオネットのようなその傾いた顔、その大きな眼鏡の奥のグルグル模様の目が俺を見つめた。


 そしてその瞬間、俺の視界はぐにゃりとへしゃけ、暗転したのだった。




❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「巨大フルーツに食虫植物…スプラさん量産するみたいです」

「ライス、お前の予測どうなってる?」


「全域の料理系ショップと全域の生態系で大幅な影響が見られますね」

「だな。で、予測が終わった俺たちがすることはなんだ?」


「えっと、そりゃ見守るだけしか……え? スプラさん拘束されてますけど?」

「ダーハッハッハ、小僧、いつからそんな笑いを覚えたんだ。ダッハッハッハ」


「あ、先輩、真視の眼鏡っす。あ、衛兵が寝ました。これ、脱走のチャンスっす……へ?」

「はあああ? アッハッハッハッハ、小僧、このタイミングで熟睡って! ダーーーハッハッハッハ、ヒーーーアカン、もう無理!」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・食虫直物畑とフルーツ畑をゲンジとミクリに任せる

・教会でハイネにハラスメントをして衛兵を呼ばれる

・衛兵に拘束され見世物にされる

・ゴマッキに出会って熟睡



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約500万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵(警戒中)

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋

・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

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