第284話 虫+獣=食虫植物
「兄ちゃーん、来てくれー!」
「来てーー!」
フワモコ畑にチッチャーネさんの種を植えて直ぐにデッカイとオッキイが大声を上げる。
「なんだ? 蛇でもいたか?」
ニョロニョロなら俺も無理だぞ。空飛ぶ蛇ならなんとかいけるが。
「これ、これ。手が抜けねえ」
「これなんか変なの~」
「え? なにこれ?」
今さっき植えた種からもう芽が出ている……どころか剣呑な雰囲気を放つ植物が生えている。デッカイはギザギザの葉っぱに手を挟まれているし、オッキイの前にはなんだこれ、蓋つきコップ? 蓋がカパッと空いたコップが生っている。
どちらもフルーツとは全く似ても似つかん姿。これ絶対フルーツ生らんやつだな。
「えっと、まずデッカイな。これは…なんだ?」
【挟牙虫草】
虫を挟んで溶かして養分として吸収する食虫植物。挟まれると身動きできなくなるが、外からの刺激にはめっぽう弱い。
食虫植物…そういや動画で見たことあるな。たしか数日間かけて虫の養分だけ吸い取るんだったっけか。
「……デッカイ、大丈夫か? 痛い?」
「痛くないけど、なんかヌルヌルしてきて気持ち悪い。早く助けてくれー」
えっと、外からの刺激に弱い…ってことは。
ツンツン
俺がそのギザギザ葉っぱを指でツンツンするとビクッと驚いたように跳ねるキンチュウ。そしてゆっくりとそのギザギザの葉っぱを開いていく。なんだこれ、ちょっと楽しい。
「うわあ、汚ねええ」
手についたネバネバを服でふき取るデッカイ。いや、デッカイ、それじゃあ服にネバネバが移動しただけだぞ、いいのかそれで。
「お兄ちゃん、こっちも見てー」
パカっと開いたコップの中を除き込むオッキイ。コップの中には透明な液体がはいいている。食虫植物って事なら、このコップ型の植物も見たことがあるな。
【明日寝草】
虫を誘い込み、蓋で閉じ込めた後、溶かして養分を吸収する食虫植物。内側からは蓋を開けられないが、外からの刺激にはめっぽう弱い。
ふむ、なるほど、こっちは閉じ込め型か。閉じ込められたら出られないが外からツンツンしたら蓋が開くんだろうな。
試しに足元の腐葉土を拾ってコップに投げ込んでみる。すると開いていた蓋がパコンと閉じる。それを見てすかさずツンツンする俺。
パッカアア
再び蓋が開いていく。中を覗くと液体に沈んだ腐葉土からシュワシュワと泡が出ている。
「なんか硫酸とかみたいだな」
確かリアルだと虫が溶けるのに7日程かかるらしいだけど、これほど激しく反応するとなるともっと短時間で溶けそうだ。
「お兄ちゃんのジュースみたいだね」
コップの中でシュワシュワしている様子を見て極凰発砲水を思い出したらしいオッキイが喉をゴクリと鳴らす。いや、流石にこれは飲まんよな……マジで、飲まんよな? あかん、このまま見させてたら飲みかねん。
「よ、よし、じゃあこれの事はこれくらいにして極凰発砲水飲みに行こうか」
「やったー」
ここはさっさと本物を飲ませておこう。
「ああ、スプラさん、これ美味いなあ」
農屋に入るとチッチャーネさんが両手にフルーツを持って幸せそうにしていた。
「さっき、元気な姉ちゃんがくれたんだあ。ごめんねって言われたあ」
はは、そっか。ミクリさん、始めはチッチャーネさんのこと“野菜食べちゃう困った人”って評価だったもんな。それがこんなに美味しいフルーツの種を生み出す人だったとは。
でもミクリさん、チッチャーネさんが種を生み出したから謝ったんじゃない気がする。自分が簡単に人を判断してしまってたこと自体を謝った。そんな気がする。
「チッチャーネさん、そのフルーツからは種でてきますか?」
「ん? あれ、そういやできないなあ。なんでだ?」
そっか、やっぱりな。
「それ、チッチャーネさんの種から穫れた作物なんですよ」
「え、えええっ、俺のあの種からこんな美味しいのができたのかい?」
繰り返し進化は出来ないってことだよな。つまりこの特殊な進化は一度だけってことだ。って、それにしても凄い能力だよな。
「そうなんですよ。チッチャーネさんのお陰なんです。だから契約料金を変更します。ここで働く人たちはみんな一日30000Gです」
「ええええっ、30000Gって、ええ?」
指を折って数え始めるチッチャーネさん。俺はストレージから100G金貨の100枚柱を3本取り出してテーブルに並べる。5人で一日に15万G……ま、大丈夫だろ。
「一日これだけです」
「こ、こんなに?」
「本当に? 野菜も食べてるのに?」
「はいコミコミです」
「ほ、本当に、俺がこんなお金を…」
そのまま俯いてしまったチッチャーネさん。小さく体を震わせている。そうだよな、今まで苦労ばかりしてきたんだもんな。
お金をそのまま置いて、極凰発砲水を持ち、デッカイとオッキイを連れて静かに外に出る。
「っぷはーー、美味い!」
「おいっしいー!」
食虫植物畑まで戻ってキンチュウとアースンを見ながら極凰発砲水で乾杯する。しっかし、なんでいきなりこんなもんが生えたのかな。デッカイとオッキイに任せてただけの畑なのに。
「フルーツが生るとばかり思ってたのになあ……って、あれ?」
畑を眺めていたら、畑の隅っこのほうに白いアイコンが見える。これは……採取物のアイコンだな。なんだろ……チョイっと。
アイコンを選択してみる。
【虫獣葉土】
栽培植物に少しだけ獣化のエッセンスを加える培養土。
「これかーーーー!!」
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「あああっ、先輩、なんか見たことない植物が!」
「ちょっと待て、そんな生物…予定にないぞ。もしかして新しく生まれたのか」
「先輩、こんなのフィールドに溢れたらやばくないです?」
「ヤバいどころか生態系を一から計算しねえとダメだな」
「スプラさん、この植物どうするつもりっすかね?」
「……ライス、この二つの植物を調べて生態系への影響を計算しとけ」
「ええー、生態系の計算なんてメチャクチャ大変なのに」
「しょーがねえだろ! やっとかねえと後から死ぬぞ」
「先輩もやってくださいよ。何のための高スペックなんすか」
「わかった、俺もやるから。…くそ、量子チップがあればこんな計算もあっという間にできるのに。実用化はいつなんだ」
「今朝のニュースでは半年後らしいっすね」
「……頑張れ、俺」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・デッカイ達の畑で食虫植物が生える。
・フルーツじゃなかったことに少しがっかりする
・食虫植物の動きになんか楽しくなる
・住人契約料を30,000G/日に上げる
・食虫植物が生えた原因(虫獣葉土)を知る
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約500万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・卵(警戒中)
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋&畑(中×1、小×2)
・癒楽房
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




