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第280話 夜更けの極凰洞

「うわあ、ほんっとうに綺麗ね」


 さっきまで足をガクブルさせてたゴマッキさん、極凰に離れてもらったらなんとか平常心を取り戻してくれた。


 そして今はマヤブルーの極凰洞の幻想的な世界に目を輝かせている。遠く吹き抜けの先に見える丸い空は色を変え、今では半分ほどが紫色に染まった。時間はすでに24時少し前。もうすぐFSGは夜を迎える。


 マヤブルーの湖の先では極凰が緋色に輝く翼をゆったりと上下させる。その優雅でありながらも繊細な羽が上下するたびに、火の粉のように舞う光がどこまでも透明な水中に暖色をもたらしている。



「スプラっち、スクショ撮ってもいいかしら?」

「はい、どうぞ。あ、でも掲示板とかはなしでいいですか? 俺、プレイヤー相手そんなに得意じゃないんで」


「もちろんよ。ただこの感動を絵に残したいだけだから」


 そう言って極凰を中心に角度を変えながらカシャカシャと撮影を始めるゴマッキさん。その撮影する姿がやたらと様になっている。カメラが趣味なのか?



『戦友よ、この世界の事はどこまで聞いたのだ』


 極凰が遠くから【念話】で話してくる。


『ああ、カイザル家とエア・ブランコ商会とニカブのことは聞いたよ。農業ギルドが破産したことも。で、第二の街が壊滅したこともな。極凰が癒楽房を守ってくれたんだって? ありがとうな』


『ふっ、戦友の危機なら当たり前のことだ。それより見ておったぞ。街の再建を始めておるのを。驚いたぞ、ドワーフが手伝っておるとは』


『ああ、武具会館の地下に地底界に繋がる道を見つけちゃって。降りてったらドワーフに会って、なんだかんだで手伝ってもらってる』


『そうか、戦友らしいというかなんというか。戦友は変わらぬのだな。では再建にあたって我から忠告だ。北の断崖の飛蛇が異常な活性を示しておる。我に見えぬところでなにかが起きておるやもしれん。用心するがいい。と言っても、あの狂暴化した山頂エリアで好き勝手やっておった戦友には不要な忠告かもしれんがな』


『いや、それは助かる情報だよ。今、あの飛蛇に対処できるのは【危険察知NZ】を持ってる俺だけだから。他の住人は対応できないし、気を付けるよ。で、それより、極凰、俺を待ってたんだろ?』


『そう、我は戦友を待っていた。理由は我の眷属のこと』


『眷属? 確か始祖仙蜘蛛戦の後にたくさん契約してたよな。それがどうかしたか?』


『契約した眷属は、その契約により異人の存在自体と結びつきを持つ。異人と共に生き、異人と共に成長を果たす。だが、異人がこの世界に来なくてはただ眠りにつくだけ』


『ああ、なるほど。そうだよな、ネギ坊もアリオンも眠ってたらしいしな』


『その二体は戦友への信頼が厚いゆえ、長い時間眠りについても影響はない。が、我が眷属たちは違う。異人への信頼がほとんど築かれぬままに眠りについてしまった』


『それが何か問題があるのか?』


『ああ、あるのだ。契約の強さは契約者への信頼に依存する。信頼なき契約は弱い。今のままではいずれ契約が切れてしまうのだ。そして眠ったまま契約が切れた眷属は……その存在を世界に返す』


『世界に返す…え、それってつまり…』


『我が子らが我が子ではなくなるということよ』


『うそ、マジで?』


『残念ながらな。それがこの世界の星獣の定め……だが、我はその定めに抗うつもりだ。そのために思考を巡らせておった。だがどうしても我だけでは可能性が出現しなかったのだ』


『しなかった……つまり、今は…』


『戦友の帰還と共に可能性が出現した。今はまだわずかだがな』


『そうか、ってことは俺に何かできることがあるってことか』


『再び戦友に頼ることになるのは不甲斐のない事ではあるが…』


『なあにが、不甲斐ないだよ。そんなもん、一人で何でもできるって方が傲慢ってやつだ』



~あなたには期待してません。休むのは構いませんが、わたしの邪魔をしない事だけお願いします~


 わずかな熱もないあの視線。自分が全て、他はただのおまけ。そして俺だけには「足手まといだ」って言いたいんだよな。休職した俺は社会の落後者…そんな断定した敵意が透けて見えやがる。いや、あえて見せてきやがったよな、くそ。



『どうした、戦友よ』

『あ、いや、極凰はあったかいよな。異人よりあったかいわ』


 AIの方が人間味があるってのも皮肉だな。


『我が温かい。そうだな、この炎は岩をも焼き切るが子らを温めもする』

『あははは、なるほど、確かにな。うん、わかった、極凰、お前の子供たちの事は考えとくよ。できることがあればすぐにやっておく。それでいいか?』


『ああ、それでよい』



ピンポーン

『シークレットクエスト<極凰の抗い>を受注しました』




『ああ、そうそう。卒業前に極凰に聞いた卵あっただろ? あれ、なんの卵か分かったぞ』

『ほう、はやりZの卵であったか』


『いや、リオンの卵じゃなかった。あれは従魔モンスターの卵だった』

『従魔……そうか、我らとは似て異なる契約をするモンスターか。なるほどの。で、孵ったのか?』


『いや、それが大変でさ。好物の餌は奇跡的に見つかったんだけど、卵から出てこないんだわ。ほら、俺、絶仙蜘蛛戦で怖がらせちゃったらしくてさ。怖がって出てこない』

『怖がって出てこぬか。我が子にもおったの、そういうのが。それはそれでかわいいものだがな』


『そっか、極凰にもそういう感情があるのか』

『当たり前であろう。子を大切に思うのは当前の感情…いや、これは我のこの存在の奥底に刻まれた記憶か。まあよい。でだ、その我が子が出てきた状況なのだがな』


『出てきた状況? え? 出てきたの?』

『ああ、出てきた。我も諦めかけておった時の事だ。他の子たちのおもちゃにされておった時に出てきたの』


『おもちゃ?』

『他の子らが楽しそうにコロコロと転がしておったのだ、その卵を。われも諦めてそのままにさせておいたら殻にヒビが入っての。子らが責任を押し付け合っておった時に自分から出てきたのだ。それから皆の中で楽し気にしておったわ』


『子供……なるほど、そうか、そういう事か! 極凰ありがとうな』

『ふむ、少しでも戦友の役に立てばそれでよい』


 子供か……よし、そうと分かれば明日の予定が決まったな。でも、その前に。



 極凰洞の水を空間拡張水筒200リットル入りの【入り象君】に入れまくる。そして、さっき購入した【火酒】【ワイスキー】【ワッカ】と【癒楽草】【爆炎草】【氷華草】【月影霊草】【天雷草】をスリスリしたものを全部【入り象君】に投入。シャカシャカと数回振ってかき混ぜる。



ピンポーン

『特定行動により【料理Lv9】のレベルが上がりました。【熟達の妙技】【料理Lv10】により【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】を習得しました』



【高級料理Lv1】

 2倍の素材を使用することで価値を3倍に引き上げる。


【コスパ料理Lv1】

 使用素材量を半分にするが価値は2割下がる。



「ゴマッキさん、そろそろ行きましょう」

「え、もうそんな時間? じゃあ、また連れてきてもらってもいい?」


「ええ、いいですよ。あと、これちょっと飲んでみてくれませんか?」

「え、なにこれ。すごくいい香り……ゴクリ」



【五祥霊砲酒】

 のど越し最高の薬膳酒。味、のど越し、酔い感が飲むものの心を癒す。

 謎多き霊酒のひとつ。

 


「うっっっめえええええええーーーーーーー!!!!」


 夜更けの極凰洞。

 幻想と静寂の中に響き渡るゴマッキさんの喜声にビクッと体を震わす極凰がいた。



 ❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「あああっ、Xがシークレットクエスト出ましたよ、先輩! 一文字AIがシークレットクエストなんてありなんすか?」


「本来はナシ! でも状況が状況だから今回はアリ!! プレイヤーが戻ってきた時に星獣契約なくなってたら大クレームだからな。 それよりも、Xよおお、勝手に孵化のヒント出してんじゃねえって…」


「あああっ、スプラさん、また美味しそうなの作ってますよ。これ……うわっ、五感への訴求効果がレべチっす。これは管理AI(マザーズ)たちが黙ってないですね」


「……えっと、内線の自動応答ボタンはどれだっけ」

「あ、これっす」


「んじゃ、ポチっと」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・極凰から悩み相談を受ける。

・受注<極凰の抗い>

・作成【五祥霊砲酒】

・習得【料理Lv10】【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】

・ゴマッキに五祥霊砲酒の味見をしてもらう。

・復帰3日目ログアウト。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】【高級料理Lv1】【コスパ料理Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約1100万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵(警戒中)

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

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