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第277話 金策 in 従魔ギルド

「え、スプラっち、ここって従魔ギルドでしょ?」

「ええ、そうです」


 俺の中級キュアポーション(熟睡)によって目覚めた固有スキルホルダーのゴマッキは、そのまま俺のパーティーとして行動することになった。もう熟睡にならないんだから一人でもいいのではと思ったが、ゴマッキが一緒に行動したいと聞かなかったから仕方なくOKする。


 で、なぜ従魔ギルドに来たかと言うと、もちろん金策だ。マークスさんに改めてオリハルコンの買い取りを聞いてみたら、「流石にオリハルコンを買い取る金はない」と断られてしまったのだ。


 なので、何でもいいので他にクリアできそうなのがないかと思い、ゴマッキも連れて従魔ギルドにやってきた。ガガンさん、ダガンさんのドワーフ兄弟のためにも今日はなんとか酒を手に入れて帰りたい。



「いやいや、"ええ、そうです”って…。従魔ギルドよ、あの従魔ギルド」

「はい、従魔ギルトに用があるんで」


「従魔ギルドになんの用? 掲示板だと『意味のないギルドランキング』と『ギルドマスター人気ランキング』と『モデル系美女NPCランキング』で不動の一位を守ってるところよ……あ、スプラっちってそういう趣味? そっち系だった?」

「……違いますけど。ってか掲示板詳しいですね!」


「そりゃ、地獄の12時間の暇つぶしに掲示板は欠かせない存在だから。それよりスプラっち、なんで従魔ギルド?」

「金策です」


 で、ゴマッキの俺へのこの"スプラっち”呼びはごく自然に始まっている。一度目に呼ばれた時に「ん?」と思ったのだが、コミュ障の俺にツッコむ余裕などなくスルーしてしまったのだ。そしたら二度目からツッコむのもなんか変な気がして……結局そのまま"スプラっち”が定着している。


 ということで、なんとなくゴマッキの手のひらでコロコロされてしまっている気がしてきて……今、俺の中では『ゴマッキ=コミュお化け』説が浮上してきている。



「従魔ギルドで金策? え、スプラっちって従魔持ちなの?」

「ええ、まあ…」


 いや、この頭上の存在が目に入ってないのかこの人……



「こんばんはー」


 外はまだ明るいが時間はもうすぐ夜の9時。ここは"こんばんは”で。


「あらあ、待ってたのよ~。嬉しいわ~今日も来てくれるなんて」


 ウソノさんが俺を見て抜群のスタイルで駆け寄ってくる。それを見て俺の一歩前に出るゴマッキ。スタイリッシュなスーツ姿のウソノさんと水玉パジャマ姿のゴマッキ……なんだ、この絵面は。


「こんばんは、従魔ギルドマスター」

「え、あ、こんばんは……あなた…従魔はいないようね。何か用かしら?」


 ゴマッキが営業スマイルで挨拶すると、さっきまでのテンションが何だったのかという程にそっけないウソノさん。


「あら、従魔がいなくちゃ来ちゃいけなかったかしら? そっか忙しいものね。他のギルドほど人はいないみたいだけど」

「なっ……ほ、ほほほ、そうですねー、従魔のいない方は来る意味がありませんので」


「ぐっ……なるほど、だから従魔がいるスプラっちにはさっきみたいにスナックのママみたいな対応になるのね」

「スプラっち…スナックのママ………」


 ウソノさんの顔が引きつっている。なんでだ? 前にクソ上司の運転役として連れてかれたスナックのママはコミュお化けどころかコミュ女帝って感じでめっちゃ憧れたんだが……って、今はそんなことより


「ウソノさん、今日はちょっと聞きたいことがあって来たんですよ」

「あらあ、そうなのスプラ君、いいわよ、何でも聞いて」

「スプラ"君"…」


 今度はゴマッキの表情が曇る。眉間に皺が……いやいや、そんなことよりもだ。


「実は今どうしてもお金が必要で。昨日みたいにお金が入るクエストがないかなと思って」

「え、昨日の大金は?」


「あ、あれはほとんどお酒代に消えました」

「ええええええーーーー!!」


 ウソノさんの美顔がヤバいことになってる。美人はこういうとこ損だよな。最初がデフォルトにされちゃうからな。


「…あら、わたしとしたことが。コホン。で、スプラ君、君はどんなお酒を買ったの? そして一日で全部飲んじゃったの?」

「あ、いえ、知り合いのドワーフが…」

「ドワーフ!!?」


 “ドワーフ”の言葉にウソノさんの顔が再びヤバいことに。なんだ? なんか背後に黒いオーラが見えるんだが?


「……はっ、やだ、わたしったらまた。コホン。で、その大酒飲みがスプラ君のお酒を飲んじゃったって訳か。となると、そうね。他にクエストとなると…」


 ウソノさんが目の前に画面を出してスクロールさせる。AIならサッと出してこれると思うが、敢えてのこういう所作は嫌いじゃない。


「うーん、今のところはないかな」

「そうですか…」


「あ、そんな残念そうな顔しないで。あ、じゃあ、見てみる? わたしがまだ聞いてないだけでスプラ君が達成してそうなクエストがあるかもだし?」


 俺が肩を落としたのを見て直ぐにフォローしてくれるウソノさん。なんかそこまで気を遣ってもらって申し訳ない。



「あ、じゃあ、見せてもらっても?」

「もちろん」


 ウソノさんが指先で操作すると俺の前に画面が移動してくる。その画面にはランクごとにクエストが一覧となって表示されている。


 ランク1…テイム可能モンスターの発見報告

 ランク2…☆1従魔情報

 ランク3…☆2従魔情報

 ランク4…☆3従魔情報

 ランク5…☆4従魔情報

 ランク6…☆5従魔情報


 どうやらネギ坊はランク6のクエストだったらしい。そりゃ報酬も高いはずだ。ランク6のクエストを確認するとほとんどが達成済みとなっている。4560万Gの正体…理解できたな。


 となると、ランク7は☆6か……あれ? リオンが確か☆6だったよな? もしかしてリオンの情報ってイケるんじゃね? アリオンと交代しちゃったけど、一応契約してた訳だし?


「あの、ウソノさん、前に☆6の星獣がいたことがあるんですけど、その情報ってクエスト達成になります?」

「ごめんなさい、星獣は従魔じゃないの。だから無理ね」


「そうですか…」


 そっか、そうなると現状ではないって事か。ってか、ランク7のクエストって報酬いくらなんだ? 気になるからチョイっと。


「……えっ?」


 ランク7の画面に意外な内容が表示されている。


「卵?」


「あ、ランク7クエストね。実は世界には卵の状態で存在する従魔モンスターがいるの。希少種であることがほとんどだけど、卵自体が発見されることがまずない上に、孵化してもテイムするのがとっても難しいの。卵のうちに信頼関係を築いてないと孵化した途端に襲ってきたり逃げちゃったりで。卵状態の従魔モンスターの情報なら☆に関係なくランク7なの」


 卵……えっと……卵? 


 俺はストレージの中を確認する。


【卵】


 うん、持ってるな。絶仙蜘蛛戦でイビリまくって脅しまくって最後まで戦闘の道具としてこき使ってきた黄緑と水色のマーブル卵を俺は確かに持っている。リオンも極凰も自分の卵じゃないと言い張る、所属不明の卵。まさかとは思うが…


「あの、ウソノさん。この卵って、まさか従魔の卵だったりしませんよね?」


 ストレージからマーブル卵を取り出して見せる。


「……??」


 ウソノさんがその切れ長な目を大きく見開いて……手でゴシゴシと拭いて……今度は目をパチパチ。一旦外の景色に目をやってからの二度見、そしてガン見。


カタカタ


 ウソノさんのガン見に反応するかのように卵が微動する。



ピコン


 その瞬間、俺の目の前の画面から聞こえるSE。


 ランク7の『卵』の文字がピコピコと点滅しだしたのだった。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、普通に一緒に行動してますね。いつ寝るんすかね」

「な、早く寝て欲しいよな。そんで小僧が気づかずに見ちまって……っくく。楽しみだ」


「でも、プレイヤーの熟睡は10分間。街の外で熟睡になっちゃったらスプラさんヤバくないです? いい絵撮らないとですよね?」

「……ぐぬぬ、小僧の間抜けな姿が見たい。見たいがここで死に戻りは……嬢ちゃん、頼む、街中で寝てくれ。あ、いや、でも小僧なら死に戻ってもすぐになんとかしそうな…」


「一刻を争う今のFGSの現状を知ってって言ってます? 量子チップ貰うんすよね?」

「小僧、寝るなよ。あ、そうだ、眠気冷ましのエナドリとか作っとけ」


「(そんなもの作られたらそれこそヤバいでしょうが、まったくこの人は…)」



「おお、先輩、従魔ギルドが、あの従魔ギルドが利用されてますよ!」

「一番リソース食ってるギルドがやっとか。コスパ最悪だってずっと嘆かれてきたからな」


「これで従魔システムが広がって行けばFGS人気も回復するかもしれないっすね」

「何言ってんだ。従魔はまだ3エリア先だろうが? 奇跡的な会敵でも2エリア先だぞ」


「え、でもYR1みたいなことだってあるわけだし」

「ライス、お前なあ、小僧みたいなことを他に求めるんじゃない。予想確率見てから言え」


「あ、確かに。0.0000025%です」

「そんな天文学的数字を踏み抜く確率よりもあと2エリア一気に解放させる確率の方が高いっての」


「おお、確かに。0.0000031%っすね」

「だろ? ……って、ああああああっ、卵!!! そうだった、小僧の奴、卵持ってたんだった。うわ、見せてる! あああ、いきなり反応しちゃってるじゃん!」


「(先輩が卵の事を忘れる確率は……3.8%っすね)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ゴマッキの“スプラっち”呼びを黙認する。

・ネギ坊へのツッコみがない風潮にモヤる。

・ウソノとゴマッキの変な空気に戸惑う。

・卵をウソノに見せる。

・卵が反応する。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約1500万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

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