表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

276/292

第276話 マジ真視

「スプラさん、なんすか、急に叫んだりして。見つけたって…」

「いや、すまん、セメントモリ、こいつは俺に任せてくれ。マークスさんの方を頼む」


「え、大丈夫…ですか?」

「ああ、大丈夫」


「…じゃあ、もし助けが要るときは呼んでくださいね」

「ああ、そうするよ」


 セメントモリがカウンターの奥へと姿を消す。


 さあて、まずはどうやって話すかだよな。目を見ないで話すとかって。リアルならむしろ得意なんだがな。コミュ障のデフォルトスキルだし。


「あの~、俺スプラって言います。もしよかった少しお話しません? もしかしたら共通の話題とかあるかもしれないですし」

「……」


 くそ、なんだこの三流ナンパ師みたいな……初めてやったけど恥ずかしすぎるぞ! ……いやいや、ここは我慢。セメントモリもいないし。誰も見てないし。恥ずかしくない。恥ずかしくない…


「あの~、もしかしたら、変な海賊のおっさんとか知ってます? キャラ作成の時に出てきませんでした? タンクトップが痛いおっさん…」

「……」


 反応なしか。うーん、参ったな。どうしよ。セメントモリは大丈夫なのかな。うーん、ここは一旦マークスさんを先に起こしたほうがいいかもな。


「あの、ちょっと失礼しますね。あ、でもまだここにいてくださいね」

「……」


 無言をいいことに勝手にOKだとしておく。そして俺は店の入り口に陣取って大地の調合セットを広げる。ここで広げてたら出られないだろう……たぶん。


 大地の調合セットで【中級キュアポーション(熟睡)】を作る。ゼン爺が卒業前に花壇の薬草を全部くれたのがこんなところで役立つとはな。ついでなので作れるだけ8本作っておく。状態異常回復なんてどれだけあってもいいてすからね。手間要らずのレシピでチョイチョイで終わることだし。


 パジャマ客の様子も横目で見ながらサクサクと作る。で、作った【中級キュアポーション(熟睡)】を持ってマークスさんのところへ向かう……はずが、俺の頭が一瞬バグる。


 俺の視界の隅に、白アイコンが点滅しているのだ。白アイコン…つまりアイテム使用対象を示すアイコンだ。


「えっと? なぜあなたに?」


 白アイコンが点滅している相手、それは枕を抱えたパジャマ客だった。


「どういうこと? え、もしかして寝てる?」

「……」


 うーん、アイコンが出てるってことは熟睡の状態異常だってことだよな。なんで立って歩いてるのか意味不明なんだが……ま、使ってみるか。いっぱい作ったしな。


「んじゃ、目覚めよ、パジャマ女子!」


【中級キュアポーション(熟睡)】を使用すると、セメントモリの時と同じ水色の癒しのエフェクトがパジャマ客を包み込む。


「ん…ん? え? わたし、え? え?」


 さっきまでのゆらゆらした動きがなくなり声を出したパジャマ客。どうやら起きたということらしい。


「あの、説明すると、今、俺がキュアポーション使ったんですよ」

「え、ええっ! キュアポーション? ほんと? やっば、ログインしててよかったー」


「はい?」


 普通に話し始めたパジャマ客。これは目を見てもいいのか? いや、いいと見せかけてヘソ天イビキは嫌だぞ。どうしよ…このまま視線合わせずにいこうか


「あ、起きてるうちは大丈夫よ。目見ても」

「え、あ、そ、そうなの?」


 普通に言葉をかけられて顔を上げる。見ると、さっきまでの人形っぽい顔ではなく普通にプレイヤーアバターだった。目が大きく鼻は控えめだがツンと鼻筋が通り、口は小さく口角が上がり微笑んでいるように見える。ま、一言で言えば童顔美女って感じだ。七海の米粒っ子時代を彷彿とさせる。背は俺よりだいぶ高いけど


「でも、よくわかったね、熟睡してるって。普通に歩いてたでしょ?」

「ええ、そうですね。ゆらゆらしてました。どんな固有スキルなんですか?」


「……え? ごめん、今なんて?」

「あ、俺も持ってるんですよ、固有スキル。押し付けられたっていうか」


「え、え、それって、もしかして黒マッチョとかの?」

「そうそう、黒海賊です」


「あの痛いタンクトップの?」

「そうそう、歳に見合ってない感じの」


「えええええ、うそ、じゃあ、ほんとにユニーク持ちなの?」

「ええ、なのでその話がしたいなと思ってキュアポーション使ってみたんです。でも本当に熟睡状態とは…」


「あ、ああ、だよね。あ、見る? 誰にも見せてないんだけど、お仲間なら見て欲しいし」



ピンポーン

『プレイヤー「ゴマッキ」からパーティー申請がありました。受けますか?』

『はい』



【マジ真視マジ

 三柱の一人レイスに認められ、この世界の真実だけを追い求める覚悟を持った者に与えられた固有スキル。初期種族は固有装備【真視の眼鏡】が組み込まれたホムンクルス。

 死に戻るたびに職業、装備、持ち物、所持金、スキル、レベルが初期状態に戻る。

 世界と関わったホムンクルスが死に戻ったとしても、その刻まれた足跡は世界の住人の心から消え去ることはないだろう。その小さな足跡が世界の今を支えているのだから。


真視の眼鏡(マジグラス)

 そのものの真実の姿を見極める眼鏡。この力の前には全ての情報が明らかにされる。力の解放には半日の熟睡が必要。また、その力を使いし者は直後から極限の睡魔に襲われ、ひとたび眠りに落ちると睡魔を撒き散らすマリオネットと化すであろう。

・12時間熟睡後、目覚める時に使い切りスキル【真視鑑定】を習得する

・目覚めると3時間以内に【真視鑑定】が自動使用され消失する

・【真視鑑定】使用後は熟睡状態へ移行する

・熟睡中は操作不能となり、【真視の眼鏡】で見た相手に状態異常【熟睡】を付与する



【真視鑑定】

 この真視の力から情報を隠すことはできない。(プレイヤーの情報は除く)



 真視鑑定か、一瞬焦ったけど、プレイヤー情報は見れない……つまり俺のスキルや称号情報はバレないってことだな。よし。



「つまり、12時間制御不能になってその後鑑定スキルが発動、そしてまた12時間制御不能って感じですか?」


「そう、最悪でしょ? あの黒マッチョ、今度会ったらどうしてくれようかしら」


「でも、この鑑定スキルはすごくないです?」


「ああ、それもダメ。だって、わたしの意思関係なく勝手に使用されるのよ。それが3時間の間でいつ使われるのかはわからないから対処できない。10分後だった事もあれば2時間半くらいだったこともあるの」


「え、それだと鑑定対象を選べないんじゃ…」


「そう! 別に知りたくもない情報を見せられて、その後すぐに熟睡状態。って言っても、視界は共有されてるからログインしてても12時間はひたすらゆらゆらした画面を見続けるだけ。少しだけプレイして、いいところで熟睡になる。で、12時間の待機時間。なにこれ、拷問よ、こんなの」


 拷問か。固有スキルってみんな拷問だよな。俺はとにかく何もできない拷問。ミーナは飢餓拷問、で妹は馬鹿にされる拷問。ほんとレイスって性格悪いよな。


「ちなみになんですけど、これまで何を鑑定してきたんですか?」


「鑑定? そうね、武器なら今の全性能に隠れた効果や伸びしろがどれくらいとか。建物ならどんな施設が作れそうかとか、最大施設値がいくつとかね」


「へえ、それはそれで面白そうですね」


 絆結とか見て見たいな。それに癒楽房とかってどんなんだろうな。


「今までに見た情報って俺も見れます?」


「あ、それは無理。ログに残んないのよ」


「え、そうなんですか? じゃ、覚えるしかないってこと?」


「うん、そう。しかも情報見てられる時間は表示されてから熟睡するまでの数秒だけよ。12時間も待つんだからもう少し欲しいわよね」


 鬼だな。プレイヤー情報以外なんだからログ残してくれてもいいのに。


「その不便の対価が12時間の待機時間ですか…」


「そう、まったく割に合ってないよね~。しかも熟睡中は普通にフィールドに出て行って普通に死に戻るしね。起きてる時に集中してやったことが全部が問答無用でリセットされるのよ。わかる? このやってられなさ」


 あ、そこは100%理解できる自信ある。そっか、そりゃ大変だな……じゃ、次の12時間に入ったらまたキュアポーションを…ん?


「あれ? ゴマッキさん、熟睡って【真視鑑定】《《使った時》》に熟睡になるんですよね?」


「うん、そうだね」


「じゃ、俺に起こされた今は【真視鑑定】ないんですよね? それって、もう熟睡することはないってことでは?」


「あっ!」



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「え、タンクトップ? え、これって痛いのか?」

「そ、そ、そんなことないっすよ、先輩」


「だよな。この良さがわからねえってヤバくねえか、この小僧……ちょっと待て、小僧の奴、いったい何を……は?」

「先輩、スプラさん調合始めましたよ」


「調合……まさか、小僧、お前っ」

「うわ、予想を外されるこの感覚……なんか久しぶりっす」


「は? 中級キュアポーション(熟睡)? は? 量産だと?!」

「あら、普通に使いましたね。あーあ、目覚めちゃいましたね」


「あああああっ、俺の固有スキルがあああ」

「先輩……自信満々で『他人の為に高級ポーション使う奴なんていねえ』って言ってましたよね?」


「だってえええーー、中級ポーション(熟睡)なんてまだ希少性高いし、それに税金もあるし、超高額じゃん。普通そんなもんをこんな訳の分からん他人に使わん……っつーか、そもそもなんで立って歩いてる奴に熟睡キュアポーション使うんだよ!」

「まあ、そこは、スプラさんだし?」


「くっそー、なんでこんな高品質の陽光草なんて持ってんだよ、この小僧は。今の解放エリアじゃ手に入らねえはずだろが!」

「ログだと住人AIのZNがスプラさんの畑で勝手に作ってたみたいですね。それに今のスプラさんならスキル効果で普通に採取出来ちゃいます」


「くそっ、小僧さえいなければ……小僧! お前、卒業したはずだよな!! ニッコニコの元気な顔して『体調よくなったんで卒業しまーす』とか言ってよ。なんでもう帰ってきてんだ!」

「まあ、そこもスプラさんだし?」


「あ、でも、小僧のやつ、勘違いしてんな。この先ずっと熟睡しないと思い込んでる…」

「そんなの、キュアポーションの効果時間が切れたらすぐに気付きますよ。それより、先輩どうします? これで【マジ真視】のデメリット完全に消滅しましたよ。中級ポーション使い続けたらただの平凡なホムンクルスに…」


「この俺が平凡なキャラを……嘘だ!そんなの俺は認めねえ」

「まあスプラさんですから仕方ないですよ、先輩。これ見てください、スプラさんの作った熟睡キュアポーションの品質」


「……はあ、小僧、なんで品質8なんだよ。2とか3でも希少なものを。これじゃあ効果時間も長く……あれ? おい、ライス、これ見ろ!」


「はい、効果の持続時間っすよね。状態異常を回復するだけのキュアポーションには不要なのでマスクデータになってるやつっす。万が一の場合にバグにならないように一応の設定だけされてるやつっすね」


「フフ、フフフ、ハッハッハ、そうだよな。俺の固有スキルがそんな簡単に攻略される訳ねえよな。くくく、アーッハッハッハ」


「え、なんすか、効果時間がどうしたって……あ、効果時間の設定が『品質関係なく1〜180分のランダム』……たぶん、使わないからって適当に設定したっすね。いつ効果が切れるかわからない……これはスプラさんにとっては鬼仕様っす(で、先輩にとってはただのラッキーっす)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・パジャマプレイヤーが熟睡中(状態異常)だと知る。

・パジャマプレイヤーを起こす。

・【マジ真視】の説明を見て効果を甘く見る。

・甘く見たことを後悔する。




◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約1500万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

・ダガン【???】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ