第273話 もう一人のガガンさん
「酒の匂いじゃあああああーー!!」
ガガンさんとよく似た声が瓦礫の街に響き渡る。
俺に火酒を返してきたガガンさん、俺がそれをストレージに仕舞うのを確認するとスッと立ち上がる。
「おう、ダガン、どうした?」
「ああっ、ガガン、やっぱりお前か。何日も帰ってこぬと思ったら一人で地上に上りおって。時代の階段が現れたなら報告すんのが義務じゃろうが」
「そんなことはわかっとるわい。じゃが、階段が本物かどうかも確かめにゃならんかったし、なにより、この人族…異人?」
いや、ここでこっちを見られても。面倒くさいから止めてください。
「(人族で)」
「人族のスプラが地底にいたんじゃから、そりゃ一緒に上るに決まっておるじゃろ。人族から地上の情報を得るチャンスじゃったんじゃぞ」
「なら、そのことも含めて報告しに来んかい、このアホ」
「ア、アホじゃと。おまえは兄に向かってなんちゅうことを」
「アホじゃからアホと言ったまでじゃ、このアホ」
「アホっていうほうがアホじゃ」
「ああ、言うなアホがうつる」
「なんじゃとお」
「なんじゃあ」
えっと、これいつまで続くんだ? 止めないと終わらないやつか? 兄弟喧嘩はなあ、俺もよくやったよな。ってか、妹に一方的に怒られて俺が拗ねるだけだったけど。
『ゆらゆら…』
「(そうだよな。ネギ坊もそう思うよな。このままでいいわけないか。じゃあ、これで何とかなるかな…)」
ストレージから酒ではないほうのコップを二つ取り出す。
「ガガンさん、折角弟さんと会えたんですから、これで乾杯し直しませんか?」
「ああ、出してはいかん……そうじゃな、ひとまず乾杯するか。ほれダガン、美味いジュースじゃ。ひとまず飲め」
ガガンさんが極凰発砲水をダガンさんに差し出す。それを見てダガンさんの表情も少しだけ和らぐ。俺と妹が喧嘩してる時もよく親がおやつを持ってきてくれたもんだ。人はやっぱり美味そうなもんには勝てんよ、うん。
「おぬしは誰じゃ」
「あ、俺はスプラといいます。ガガンさんにはこの街の建設を手伝ってもらってるんですよ。もしよかったらそれどうぞ、俺が作ったんです」
「その頭の上のはなんじゃ」
おおお、復帰してからネギ坊に絡んできたのはウソノさんだけだったけど、これで二人目だ。普通に体の一部とか思われてるかと思った。よかった。
「こいつはネギ坊と言って俺の従魔なんです。このジュースの素材をくれるんですよ」
「……ほう、従魔か。ふむ、では、お言葉に甘えて頂くとしようかの」
ダガンさんがガガンさんからコップを受け取って口を付ける。そして見開く目。そのまま一気に飲み干した。
「なんじゃ、この喉で弾ける爽快さは。地底には絶対にない爽やかな香りにかすかに残る涼やかな後味……スプラと言ったか。すまんがもう一杯もらえんか」
「ええ、いいですよ」
「かああ、美味い。こりゃガガンが帰って来んのもわかるわい。天井もない、空気も澄んでて、明るい、広い、そして美味いときたら地底界に戻る理由などありはせんもんな」
「ま、そういうことじゃ。じゃが報告には戻るつもりじゃった。この建物を建設し終わったらな」
そう言って懐から丸めた紙を取り出すガガンさん、それを開いてダガンさんに見せる。
「ほう、なかなかではないか。ふむ、よし、ではわしも手伝おうかの」
「おお、そうか。ダガンが加わるならできることが増えるの。もう少し詰めてみるかの」
「はっは、わし等兄弟が揃えばたいていのもんはできる。わし等《《兄弟》》が揃えばな」
「……」
ガガンさんの前に出されるダガンさんの手。それを見て固まるガガンさん。
「ほれ、兄弟に隠し事は出来んぞ。あるんじゃろ、出して飲もうじゃないか、なあ兄弟」
「……」
いや、ガガンさん、そんな悲しそうな目で俺に頷かれても。
…
…
「だっはっは、地上の酒がこんなに美味いとはのう」
「がっはっは、まあわしが手伝ったからスプラが用意してくれたんじゃ」
ダガンさんとガガンさんが酒を酌み交わす。4000万Gの火酒がどんどん減っていく。あ、今の一口で50万Gくらいかな。金貨の柱が消えていく……。
「ああ? もう空になってしもうた」
「なんじゃあ、もう空か。ここからが本番じゃのに」
……4000万Gが10分も経たずに消滅したぞ。俺は今いったい何を見せられてるんだ?
「……」
「……」
そして俺に注がれるもの欲しそうな視線が二つ。いやいや、俺にどうしろと?
「あのお二人とも、実はそのお酒すごく高かったんですよ。俺の全財産が吹っ飛んだんで。なので…」
「なんじゃ、金か。金ならこれでどうじゃ」
そう言って腰にぶら下げた小袋を探るダガンさん、取り出したものを俺に差し出してくる。えっと、なんだこれ?
「これは地底界のさらに下、境界線ギリギリの場所で採れる希少金属でな。地上にはまず存在せぬはずじゃ。これを売ったら今の酒を何本か買えんかの?」
鈍く光る金属。金色とも銀色ともとれるその表面にはうっすらと虹色の光も見える。周辺の空気が揺れているように見えるのは目の錯覚ではなさそうだ。ともかくすごいものだと言う事だけは嫌でもわかる。
だが、表記が【???】でこれが何かはわからない。
「ん? これが何かわからんのか?」
「あ、はい。すごく希少な金属ってことはわかるんですけど」
「なんじゃ、これは【オリハルコン】という魔法金属じゃぞ」
ピンポーン
『特定行動により、【特級鉱物知識】【魔法金属知識】を習得しました。【器用貧乏】の称号効果により、【特級鉱物知識】【魔法金属知識】が統合され【鉱物学】を習得しました。【鉱物学】【中級採掘Lv3】により【上級採掘Lv1】を習得しました。【中級採掘Lv3】は【上級採掘Lv1】に統合されます』
【鉱物学】
歴代鉱物家たちの知識を体系化した鉱物知識。それはただの机上の知識にとどまらず、潤沢な経験に基づいた経験則としての側面を併せ持つ。
・他の鉱物関連スキルの強化
・すべての採掘ポイントが可視化
【上級採掘Lv1】
採掘の上級技術。
・必要ステータスの軽減
・採掘時間短縮
・採掘物品質+1~2
……お、オリハルコンって……え? あのオリハルコン?
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・ダガンがガガンの弟だと知る。
・兄弟喧嘩を極凰発砲水で仲裁する。
・ダガンに武具会館建築への協力を得る
・火酒を10分で飲み干される。
・酒代にオリハルコンを渡される
・習得【特級鉱物知識】【魔法金属知識】【鉱物学】【上級採掘Lv1】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約1500万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 3/2
・薬房 1/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・卵
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋&畑(中×1、小×1)
・癒楽房
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】
・ダガン【???】




