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第272話 復帰3日目 再興、武具会館

「じゃあ、今日から武具会館の再建築をしていきましょう」


「「りょうかーい」」

「了解だあ」


 デッカイ、オッキイとチッチャーネさんが元気に手を上げる。


 午前中はいつも通りにデッカイ達は畑でスキルの練習、チッチャーネさんは味見をしてもらって、今は北の街に移動してきた。


「兄ちゃん、さっき俺のレベル上がった【益虫使い】見てくれよ。2回上がったら新しい虫が来たぞ」


 そういうデッカイの体には赤い粒粒のほかに黄色い粒々も交じっている。調べるとミツバチだった。ミツバチって体に花粉をつけまくって移動するから受粉が進んでたくさん実が付くようになるって聞いたことがある。


「お兄ちゃん、わたしも見て~2回上がったの~」


 デッカイの後はオッキイだ。その足元にはモコモコのモグラの中に黄緑色が混じっている。近づいてみるとピョンっと跳ねた。


ケロケロ


「オッキイはカエルかあ」

「うん! カエルさん!」


 カエルは害虫を食べるらしいし益獣なんだろう。二人ともレベル3になって新しい益虫と益獣か。この先が楽しみだ。



「スプラさん、今日は元気な姉ちゃんが優しかったんだあ」


 チッチャーネさんがちょっとニヤけている。元気な姉ちゃん…ミクリさんだな。チッチャーネさんが味見中に吐き出す種が畑ですごい勢いで育っているらしいから、印象が変わってきたんだろう。始めは明らかに邪魔者扱いだったし、これはいい傾向だ。



「スプラよ、昨日の件はどうなったかの?」


 チッチャーネさんの次はガガンさんだ。昨日の件と言うと…アレだな。


「(見つけましたよ)」

「(なに、本当か?)」

「(はい)」


「よっし! では今日もバリバリ建てるとしようかの、がっはっは」

「ガガンさん、今日は新しい武具会館の設計をいいですか? 行政府になるような建物をお願いしたいです。瓦礫の片付けは俺たちでやっときますから」


「お、そうか。それじゃあ、このハンマーはスプラに渡しておこうかの」


 でかいハンマーをホイッと渡そうとしてくるので、急いで身体強化ポーションを呷る。筋力+30されてるというのに、それでも両手でないと持ち上げることもできない。よくこんなものを片手でヒョイヒョイと振ってたもんだ。ドワーフの怪力ぶりを改めて理解する。


 ガガンさんが自身で建てた現代アート建築の中に入っていく。因みにこの冷えたマグマ風の岩建築はマグマ建築と呼ぶことにした。そしてそのマグマ工房の一つはガガンさん用として使ってもらっている。



「スプラさん、この辺に瓦礫積んでいけばいいかなあ」

「あ、そうですね。大通りに小石の山を置いていきたいのでこっちに投げてもらえますか?」

「わかったあ」


 武具会館跡のどデカい瓦礫を豪快に放り投げるチッチャーネさん。その力はガガンさんと比べても全く遜色ない。むしろ大きい体でリバレッジを効かせて遠くまで瓦礫を投げ飛ばす。燃費は悪いがその仕事量は桁外れだ。



「なあなあ、スプラ兄ちゃん、オッキイがなにか話したいみたいだぞ」

「え、オッキイが? オッキイどうした?」


 チッチャーネさんが投げて来る瓦礫をハンマーで叩いていると背中をツンツンしてくるデッカイ。その後ろにはオッキイがモジモジしている。


「えっとね、この街道がデコボコになってるでしょ? ところどころ抉れちゃっててバギーが通りにくいからモグラさんに平らにしてもらおうかなって。やってもいい?」


 ん? モグラが道を平らに? モグラってそんなこともできるのか。土の中に穴開けて畑を無茶苦茶にするイメージしかなかったけど……でも、まあ、オッキイができるって言うならできるんだろう。


「そっか、よく考えたなオッキイ。じゃあ、モグラさんにお願いしてもらってもいいかな?」

「うん!」


 オッキイが地面に手を当てるとあちこちからモコモコとした土の盛り上がりができ始める。そしてオッキイの周りに集まったところで一斉に地上に顔を出すモグラたち。


 そこでオッキイが、身振り手振りでモグラに指示を出す。再び一斉に頭を引っ込めるモグラ。すると数秒後には深く抉れていた一帯が土のモコモコで埋め尽くされる。モコモコが繰り返されながら徐々に抉れが収まっていく。そして5分もしないうちに平らな街道が復活した。


「おお、オッキイ凄いな!」

「えへへ。じゃあ、あっちもやってくる!」


 オッキイがさらに向こうの抉れに向かってタタタと走って行く。うん、これはいいな。通りも平らになるしスキルの訓練にもなる。一石二鳥だ。



「オッキイはまだまだだな」


 オッキイの後姿を見ながらデッカイが腕を組む。デッカイはオッキイの兄ちゃんのつもりなんだろう。


「デッカイ、なにがまだまだなの?」

「だって、ほら」


 デッカイがさっきオッキイがならした地面まで走って行く。そして地面の土を手で掬いあげる。


「ほら、こんなに柔らかいんだぜ。これじゃあ道にならないよ」

「ああ、なるほど」


 デッカイが賢い事言ってくる。まあ、確かにデッカイの言う通りだ。このままではバギーを走らせることはできない。


「なあ、スプラ兄ちゃん」

「ん? どうした?」

「ちょっとお願いがあるんだけど。できたらでいいんだけどさ……」

「……ほほう、なるほど。よし、じゃあ作ってみるから待っててくれる?」


 そう言ってデッカイを待たせて俺一人でバギーを引いて癒楽房に戻る。


「んじゃ、やりますか」



「おーい、デッカイ、作ったぞー」

「おお、本当かスプラ兄ちゃん」


 デッカイが走ってくる。そして俺の横にあるバギーを見て立ち止まる。


「おー、すっげえ、思ってた通りの感じじゃん。やるじゃんスプラ兄ちゃん」

「そっか、それならよかった」


 デッカイに頼まれたのは、リヤカー型のバギーの後ろにローラーを付けるという案だった。まあ、よく道路工事の時に見かけるロードローラーみたいなものだ。あのデカい鉄のローラーの細い版をバギーの後ろに取り付けた感じ。


 バギーは電動自転車みたいなもので引くのに重さを感じない。そのバギーの後ろにローラーをつける。そしたらバギーがローラーも引いてくれる。つまり重さを感じることなく重いローラーを引くことができるという道路舗装車に進化したという事だ。



「じゃあ、行ってくる」


 デッカイがローラーバギーを楽々と引いていく。そしてさっきオッキイがならしたフワフワの土の上をゴロゴロとローラーをかけて進む。行ったり来たりを何度か繰り返していくうちに、俺が踏んでもジャンプしても、ちょっと大きな瓦礫を空中から落としてみても、ほとんど凹むこともない通りが出来上がった。



 ……この子たち、もしかして天才型?


 発想がぶっ飛んでてその効果は絶大とか。



「おおい、スプラさーん、瓦礫が溜まって山になってるぞお」

「あ、すみませーん」


 クールタイムが終わった身体強化ポーションを呷ってハンマーを両手に瓦礫の山へと急ぐ俺だった。




「おおお、なんじゃああ、通路が完璧に整っとるんじゃが。これはいったいどういうことじゃ?」


 夕方になってそろそろデッカイ達契約住人組が帰ろうかとしていた時に、設計が終わったガガンさんが戻ってきた。


 で、デッカイとオッキイが整備した通りを見て目を丸くしたのだった。


「俺たちがやったんだぜ」

「そうだよー」


 デッカイ達が偉そうに胸を張る。


「そうか、おぬしたちがやったのか。これはまた将来が楽しみじゃのう、がっはっは」


 とても嬉しそうに笑うガガンさん。その手には紙が丸めて持たれている。


「じゃあ、俺たちはこれで帰るなあ。明日も野菜よろしくお願いなあ、スプラさん」

「俺たちも帰るとするよ。このバギーは癒楽房に返しとくから、兄ちゃん、このローラー外して畑に返しとくんだぞ。ミクリ姉ちゃん困らすなよ」


 チッチャーネさんにお願いされ、デッカイには念を押され…


 戻っていく三人の後ろ姿を見送ったところで俺とガガンさんの二人だけになる。


 と、手に持った紙のをそそくさと懐に仕舞うガガンさん。視線が泳いでいる。あれ? それ見せてくれるんじゃないのか? しかもなんか口元が緩んでいるんだが?


「ところで、スプラよ。例のものをそろそろ…」

「例のもの?」

「なっ、これじゃ、これ」


 そういってコップを煽るジェスチャーを繰り返すガガンさん。いや、わかってるんだけどね。ただ面白そうだからもう少し。手に入れるのに金も労力もかかったからな。


「ええっと、あ、極凰発砲水ですか?」

「違う違う、これじゃ。ほれ、こっちの方の」


 そう言って今度は瓶からコップに注ぐジェスチャー。すごい必死さが伝わってくる。なにこれ、楽しい。


「あ、わかった、瓶に入った魚が出てこないやつ」

「は? んなもん瓶ごと叩き割ればいいわい。そうじゃなくて、ほれ、ほれ、ほれ!」


 あ、ダメだ、これ以上やると爆笑してしまう。この辺にしておこう。


「わかってますよ、これでしょ?」


 そう言ってストレージから4000万Gの火酒を取り出す。


「おおおおおおっ、それじゃそれ。じゃさっそく、ほれ、ここに座って、ささ」


 ガガンさんが大きな瓦礫の上を綺麗にはたくとそこに座れと勧めてくる。


 ガガンさんと並びで瓦礫に座り、ガガンさんのコップに4000万Gの火酒を注ぐ。トクトクトクという音にガガンさんの喉を鳴らす音が混じる。


「で、ではいただくとするかの。ほおう、これが地上の酒か。なんとも良い香りがするではないか。では……」



ガコン バッターン



 ガガンさんが火酒に口を付けようとしたその瞬間、武具会館の方で大きな音がする。確かそっちは一枚だけ残した大きな瓦礫。その下には地下階段が…


 ガガンさんと俺が同時に音の方へ視線を向ける。するとそこにはもう一人のガガンさんが立っていた。



「さ、酒の匂いじゃあああああ!」



 その声と同時にそっと火酒を俺に返してきたガガンさん。俺はそれを受け取ってそそくさとストレージに仕舞うのだった。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・デッカイ【益虫使い】Lv1テントウムシ・Lv3ミツバチ

・オッキイ【益獣使い】Lv1モグラ・Lv3ガエル

・武具会館跡地の掃除

・デッカイ&オッキイが通路補修

・ガガンと火酒を酌み交わ…せず

・もう一人のガガン現る



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約1500万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

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