第267話 忘れ去られたギルド
「じゃあ、お酒探してきますね」
「悪いの。よろしく頼む」
ガガンさんに頼まれて酒をを探しにラスプへ行く。
「酒、見たことないんだよな…」
配信開始から卒業まで2週間、復帰後も2日目ももう終わるまでやってるが、酒などは見たことがない。
ガッカリさせないために、「ないかもしれない」ということは伝えてある。が、ガガンさんのさっきの様子を見てしまうと何が何でも見つけてあげたいという気持ちが湧いてくる。
「ま、もしなかったらマジョリカさんに聞いてみるか。作り方知ってるかもしれんしな。それでもだめならマーサさんって感じで」
始まりの街ラスプは丸型の街で中心に巨大な噴水広場がある。その広場をぐるりと囲むように道路があり、そこから東西に大通りが走っている。街並みも東西南北で別れ、北は商業ギルドを中心に新興商店街が並ぶ。前はプレイヤー露店なんかで賑わった場所だ。
西は旧商店街といった感じで、マークス工房や万事屋さんがある地域。東は住人の居住区で教会があったり、住人が地面にコザを敷いて野菜なんかを売ってたりする。ネギ坊の爆炎草はそのゴザ販売で見つけたものだ。
南は農業ギルドを中心とした畑地域。夜になると真っ暗で月明かりを頼りに移動する。俺の農屋は農業ギルドの東側。東地区にある教会との中間地点にある。
で、これからそのラスプの中を巡ってお酒を探すのだが、どこを探せばいいのか。商店があるのは北地区か西地区。もしかした東の住人地区にも酒場があるかもしれない。
頭を捻るが、ニカブが領主になってからは露店料も馬鹿高くなってプレイヤー露店を全く見なくなった。ってことで、行くなら西地区か東地区ってことになる。
「まずは西かな」
東は畑もあるから結構行き来しているが酒場は見たことがない。ってことで、東は素通りして広場に向かう。エア・ブランコに絡まれるのも嫌なのでアリオンは農屋で留守番だ。
「酒場か酒蔵だよな。道具屋には流石にないだろうし……あ、やべ」
広場の方から明らかにガラの悪そうなプレイヤーたちがやってくる。歩き方からしてヤバそうだ。
とりあえず、ああいった族には近づかないことが最優先。進行先すら被らせないに限る。ということで、大通りを離れて西側へと歩みを進める。南西地区に入るのは久しぶりだ。
「そういえば南西地区なんて本屋に来た時以来だな」
太皇太后マジョリカさんの知り合いのハンゾウさんの本屋。何度か足を運んだがそれ以外はまったく南西地区を歩いたことがない。
「折角だし、いろいろ回ってみるか。旧商店街の端っこならもしかしたら酒蔵とかあるかもしれんしな」
人通りがほとんどない南西地区を歩く。街並みは大通りの半分ほどの道、リアルで片側一車線程の道が基盤の目のように規則正しく走っている。そしてその両側に商店らしい看板がかかった店が並ぶ。
「ん? なんだあれ」
昔ながらの商店街に急に現れる大きな建物。三階建ての箱型のそれは、地方都市に理由もなく建てられた市民ホールといった感じの建物が見えてきた。よく税金の無駄遣いと揶揄されるアレだ。
「あのクソニカブ、高い税金とってこういう意味のないもん建ててるんじゃないだろうな……これで建築業者とズブズブとかだったらもう……」
ブツブツ言いながら近寄って見ると、どうやら看板が掛けられているようだ。興味本位で何の建物なのかを確認してみると、どこかで聞いたことのある文字が見えた。
「……え? 従魔ギルド……従魔ギルド!!?」
そこにはなんと『従魔ギルド』の文字。
「マジか。従魔ギルドって言ったらネギ坊にとったら超重要ファクターじゃんか……ずっと忘れてたな。確かネギ坊と契約した時に解放されたとか…」
過去のログに『従魔ギルド』で検索をかけるとすぐに出て来た。やっぱりネギ坊との契約の時に従魔ギルドが解放されたと書かれてあった。
「しまったな。完全に抜けてた……どうしよ、折角だし、入ってみるか」
市民ホール然とした入り口の階段を上り大きな両開きのドアを開ける。するとフワッと鼻先をかすめる軽やかな植物の香り。マジョリカさんの薬屋とは違った甘くさわやかな花の香とでも言おうか。
「はあ、いらっしゃ…い……??」
入り口を入るとそこはホテルのロビーのような空間。左右横長に広がったスペースにはソファーや椅子がゆったりを置かれ、高い天井と相まって実にエレガント。
そして入り口から10mほどにある突き当りの受付。鼻筋がきりっと通った凄い美形の女性が俺を見て動きを止めている。
「あの、ちょっと見学だけさせてもらって……」
「来たーーーーーーっ!!」
「うおっ」
超絶美形の受付女性、俺を見ていたと思ったら今度は俺を指さして叫んで来る。なんだ、俺何かしたのか? 入ってすぐやらかすとか、やっぱ俺病んでる…
「もう、ずーーーーーーーーーっと待ってたのよ!!!」
「えっ?」
受付台に身を乗り出して叫ぶ受付嬢。えっと、「待ってた」ってなんだ? え、デート? いやいや、リアルでもしたことない経験をFGSで知らないうちにしているとかあり得ん。
俺が脳内で様々な考えを巡らしている間に、受付台から離れてこっちに向かってくる超絶美女。スタイルまで超絶にいいとか本当になんなんだ。俺のコミュ障をこれ以上刺激しないでほしい。
そんな俺の想いなど知った事かとズンズンと近づいてくる受付嬢。俺の目と鼻の先まで歩みを進めて立ち止まる。俺の目の前には受付嬢のスリムな胸。
いやいや、距離感! コミュ障と恥ずかしさで心拍ヤバいから。SAI、緊急ログアウトはやめてくれよ…。
俺の荒ぶるバイタルとは関係なく、音が止んだ静寂のホテルロビー。
数秒の時間が流れ…
「ヨッシャーーーーーー超絶希少種ーーーーーー!!!」
両拳を握り込んだ受付嬢の甲高い叫び声が俺の頭上でさく裂した。
『ゆらゆら?』
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・酒を探してラスプを移動する。
・南西地区で従魔ギルドを発見する。
・超絶美形の受付嬢の奇行によってバイタル危機に陥る。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足
≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】
≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
◆固有スキル:【マジ本気】
◆スキル:
特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】
保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】
成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】
耐性──【苦痛耐性Lv3】
◆所持金:約800万G
◆従魔:ネギ坊[癒楽草]
◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】
■【常設クエスト】
<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>
■【シークレットクエスト】
<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設
・行政府 0/1
・鍛冶工房 2/2
・薬房 2/2
・住居 0/10
・城壁 北側に10メートル
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:
≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】
≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
◆固有スキル:【白馬誓魂】
◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】
◆従魔◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:
≪葉≫【毒毒毒草】
≪葉≫【爆炎草】
≪葉≫【紫艶草】
◆固有スキル:【超再生】【分蘖】
◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】
◆生産セット◆
・大地の調合セット
◆特殊所持品◆
・卵
・魔剣の未完成図面
◆所有物件◆
・農屋&畑(中×1、小×1)
・癒楽房
・極凰洞
◆契約住民◆
・ミクリ【栽培促進】
・ゲンジ【高速播種】
・チッチャーネ【味見】【???】
・デッカイ【益虫使い】&オッキイ【益獣遣い】
◆お手伝い◆
・ガガン【???】




