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第266話 やっぱりスキル

「では、初めての建物完成を祝して、乾杯!」


「「かんぱーい」」

「乾杯!」

「乾杯じゃ!」


 皆が極凰発砲水のコップを頭上に掲げる。


「ぷはー、うまー」

「うーまーいー」

「美味いなあ」

「これはなんちゅう美味じゃ…」


 それぞれが何度もコップを口に運びながら感嘆の声を上げる。ガガンさんの建築を見て打ち砕かれた俺の自信が少し回復した……よかった、俺にも生きてる価値あったな。



~成果を出せない人材はコストでしかないので~


 だー、もうこんな時に出てくんな。クソ、俺がどれだけ大変な思いして泥臭いことでやってきたか知らねえくせに上辺の数字だけで判断しやがって。俺はマイナスになるのをゼロに保ってたんだよ。誰もしようとしないから俺がやってたのに。それをあの目、人に向けていいような視線じゃないだろ。まだクソ上司の怒り狂った目の方がマシだっ……あ、いや、どっちもどっちか。



「どうした、スプラ兄ちゃん。早く飲まないとジュースの泡がなくなっちまうぞ」

「ん、あ、そうだな、ありがとなデッカイ」


「スプラお兄ちゃん、おっかわり~」

「あ、オッキイ、ズルいぞ」

「スプラさん、俺ももう一杯いいかなあ」

「わしもまだまだイケるぞ」

「ちょ、スプラ兄ちゃん、俺もだぞ」


 皆が空いたコップを一斉に俺に向けてくる。くそ、なんかいいな、こういうの。ただのジュース汲みがなんでこんなに嬉しいんだよ。


「わかりましたから、はい、ここ、この列に並んでくださーい」



「ところでスプラよ、この調子で建てていくにしても、一日1~2軒が限度じゃ。この街の広さを鑑みて全て建てるには数か月はかかる。じゃが、わしは報告に戻らねばならんから、あと3日が限度じゃ。どうする?」


「あ、そうですよね。報告ありますもんね」


 そうだった。忘れてた。いや、どうしようかな……。鍛冶工房は終わったから、後は薬房と行政府と……ってか、行政府ってなんだ?



「次の区画の掃除がもうすぐ終わるから、どんどん建ててもらったらどうだろう?」


 チッチャーネさんが極凰発砲水を味わいながら提案してくれる。発砲水の味見では種できないんだな…。


「ま、取り合えず、次はその場所じゃな。同じ感じでいいのかの?」

「え、そうですね。できれば、薬房とか住民用の民家とかお店とかも、あ、それに武具会館も立て直し……あ、いや」


 俺が口にした武具会館の言葉に一瞬、オッキイの笑顔が凍りついた。握っていたコップがわずかに揺れる。


 しまった、あんな経験した子に思い出させちゃダメだった。



「ぶ、武具会館は父ちゃんが働いてたこの街一番のでっかい建物なんだぞ」


 デッカイが何かを振り払うかのように元気な声を上げる。


「そ、そうだよ、こーんなにおっきい建物だったの」


 デッカイの言葉にオッキイも反応する。ガガンさんもチッチャーネさんも「ほうほう」と頷いている。



「そっか、じゃあ、次は隣の区画で、その次は武具会館をやるとするか?」


「よっしゃー」

「…がんばる」


 デッカイが握りこぶしを頭上に上げると、オッキイも胸の前でこぶしを握る。二人ともエライな。



「じゃあ、ここもさっきみたいな感じでいいんじゃな?」

「はい、この辺は生産エリアにしちゃおうと思って。内装は薬房にしたいと思います」


「そうじゃな、鍛冶場はカンコンカンコンで、薬房も時々爆発してうるさいからの。一か所にまとめたほうが他が住みやすくなるじゃろうて」


 ん? 薬房がなんだって? なんか物騒なことを……



「よし、じゃあ早速取り掛かるとするかの」


 ガガンさんが腕まくりをして手につばを吐く。このへんは昔の大工なんだな。


「ここもさっきみたいな感じにするんで…うおっ……え、なんだこれ?」


 俺が区画を指した瞬間だった。俺の視界にいきなり半透明の立体画像が現れた。


 その様相はさっきガガンさんが建てた建物そのもの。


「どうした、スプラ」

「あ、いや……え? これ見えません?」

「何がじゃ?」


 ガガンさんが周りをキョロキョロ。どうやらガガンさんには見えてないらしい。デッカイ達を見るとこっちもキョロキョロ。チッチャーネさんは……空を見上げてキョロキョロ。いや、空はないだろ。


 ってことは、これが見えてるのは俺だけ。え、どういう事? あ、まさか…


 半透明の建物に意識を集中する。すると俺の意思ひとつで建物を移動させることができた。区画内ならどこへでもどの向きにも移動させられる。だが区画の外には移動できない。


 いろいろ試していると、今度は建物以外にも変化が見つかる。癒楽房の敷地にある小石の山の一部が赤く点滅しているのだ。それを見てハッとする俺。ステータス画面からストレージを表示させる。すると、木材が赤く表示さている。釘もだ。


 つまりこれは……。



「皆さん、ちょっと区画から出てくださーい」


 ワチャワチャしながらも皆が区画から出てくれた。んじゃ、やってみましょうか。


「特殊建築!」


 空気がビリビリと震える。赤く点滅していた小石の山が蒸気となって立ち上り、空間に赤い軌跡を描く。


 半透明だった建物に赤い蒸気が吸い込まれていく。すると建物全体が明減しだし、その明減スピードがどんどん速くなる。そして…



 ドーーーーーン!



「うわーーーー」

「きゃーーーー」

「おおおおおっ」

「なんじゃあああああ」


 轟音と眩しい光のあと、そこには見たことのある岩と木の現代アートが堂々と存在感を放っていた。



「……こ、これは?」


 ムガンさんが何度も目をゴシゴシしては今できた建物と、さっき自身が作った建物を見比べる。見比べる。見比べる…


「ガガンさーん!」

「はっ、ス、スプラ、これは…なんじゃ?」


「これは異人の力というやつです」

「異人? なんじゃそれは」


「異人というのはですね……」





「な、なるほどの。そんな民族が地上に来ておったのか」

「ええ、まあ民族と言うか、別の世界から魂だけが来てるって感じですかね」


「魂だけ……いやはやそんなのが来ておったとはの。エルフどころではなかったということか……で、魂だけじゃから死なぬということかの?」

「はい、死んでも生き返るんです。暫くは弱くなるんですけど」


「弱くなる? スプラ、お主もそうなのか?」

「俺? えっと、俺はちょっと特別で、死んだら無茶苦茶弱くなってなんにもできなくなるっていうか?」

「……?」


 ガガンさんが怪訝そうな顔をしているが、これは話すと長くなるのでここまでにさせてもらおう。


「ま、まあ異人という異民族がいることはわかった。それで異人はみんなさっきみたいに建物を一瞬で作れたりするのか?」

「いえ、あれは俺だけしか出来ないと思います、たぶん」

「そ、そうか」


 わかりやすくホッとしているガガンさん。そりゃそうだろう。自分が長年かけて培ってきた技術の意味がぶっ飛ぶんだからな。


「あ、でも、ガガンさん。俺のさっきの力もあくまで同じ建物を作る力なんで、新しい建物は無理ですから。だからガガンさんにはこれからバンバン新しい建物を建てて欲しいんです」

「そ、そうか。そうじゃな。そっかそっか、新しい建物は作れんのか。創造性を発揮できんとはそれは難儀じゃの」


 今度もわかりやすく表情が明るくなるガガンさん。よかったよかった。じゃ、内装はガガンさんにお任せしよう。



「……あれ?」

「内装もそっくりじゃな。まさにドワーフ風鍛冶工房じゃ。で、スプラよ、薬房作るんじゃなかったのか?」


 俺がスキルで作ったガガンさんの現代アート建築。だが、内装も全く同じ、3つの炉を持つドワーフ仕様の工房が出来上がっていた。


「ま、また今度薬房をお願いします…」



「じゃあ、スプラ兄ちゃん、時間だから俺たち帰るな」

「また明日ねー」

「俺も一緒に帰るぞお。スプラさん、また明日も野菜お願いなあ」


 三人が移動扉を潜って帰ってく。そして二人残される俺とガガンさん。


「ガガンさんもゆっくり休んでくださいね。今日はたくさん建築してもらってありがとうございました」


「あ、そ、そうじゃな…」


 ん? ガガンさんがなにかモジモジしている。なんだ? トイレか? あ、いや、FGSにトイレの概念はなかったはず。じゃあ、なんだ?


「ガガンさん、何か言いたいことがあったら言ってくださいね。遠慮なさらず」

「そ、そうか。スプラがそう言うのであれば」


 表情がパッと明るくなるガガンさん。なんだろ、なにか悩みでもあるのかな。聞くくらいならいくらでもさせてもらうんだが。あ、そうだ、こういう時の【献身】……発動しない。おーい、ここは発動するところじゃないのか?


「スプラよ、実はな……」

「はい」


「わしはな……」

「…はい」


「…が必要なんじゃ」

「はい?」


 ごめん、肝心なところが聞こえなかった。


「…が必要でな」

「えっと、ガガンさん、ごめんなさい。聞こえないです。なにが必要なんですか?」


「じゃから、わしは……」

「わしは?」


「酒が必要なんじゃーー」


 あ、ああ、あ、そう。酒ね。ドワーフですもんね。そっかそっか。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・リアルを思い出して凹む。

・極凰発砲水を喜んでもらって少し自信回復。

・【特殊建築】が発動してくれる。

・鍛冶工房がもう一つ完成。

・ガガンに酒が欲しいとねだられる。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い】&オッキイ【益獣遣い】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】


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