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第265話 最初の建物

「じゃあ、今日も頑張りましょう!」


「「おおーーっ!」」

「がんばるぞお」


 俺の掛け声に元気に応えてくれるデッカイとオッキイ。味見を終えたチッチャーネさんも大きな体を揺らしてやる気満々だ。



「人族はいろいろなのがおるんじゃな……」


 チッチャーネさんとデッカイ達の間で視線を行ったり来たりさせてるガガンさん。まあな、人族の中でも両極端な3人だから。俺も含めてここには普通がいないという…。



 今日はとりあえず、昨日やりかけていた区画を掃除して建設を進める予定だ。昨日のうちに半分ほどは片付けてあったのだが、来てみたらガガンさんが残りをハンマーで砕いてくれていたため、あとは畑のバギーに載せて運ぶだけになっている。


「スプラさん、俺はここの瓦礫をそっちに投げててもいいかあ」


 そう言ってチッチャーネさんが隣の区画の瓦礫を指さす。うん、チッチャーネさんならそのほうが早そうだ。


「はい、それでお願いします」


「なあ、スプラ兄ちゃん、このリヤカーってどうしてこんなに軽いんだ?」

「あ、それは“そういうやつ”なんだ」


「お兄ちゃん、このスコップ軽いね」

「それはさっき作ったんだ。使いやすいだろ?」


 さっき「子供でも使えるスコップを」と思って作ったら、あっさりヤバいのができちゃったのだ。つけたのは【飛蛇の軽羽】と【瑪瑙めのう】。【瑪瑙】は縞模様が綺麗だからオッキイが喜ぶかなと……そしたらついた効果がなんと≪筋力+15≫。


 「こんなもん俺が欲しいわ」とも思ったが、オッキイの喜ぶ顔がよぎって思いとどまる。いつか【瑪瑙】で武器を作ることを決意した。



 みんなでワチャワチャ掃除を続けておよそ1時間後、区画が十分に綺麗になった。 除いた瓦礫は癒楽房の敷地に小石の山となっている。


 これは……デッカイとオッキイの遊び場ができたようだ。



「スプラ兄ちゃん、ほんとにいいのか俺たち遊んでて」

「うん、これからはちょっと難しい作業になるからね。しばらく遊んでて大丈夫」


「そっか、じゃあ遠慮なく遊んでるから、手伝えることできらた呼んでくれよな」

「うん、その時は呼ぶから」


 二人が鍬とバギーを置いて小石の山に走って行く。その後ろ姿からは嬉しいオーラが出まくってる。たぶん遊びたいのを我慢してたんだろう。



「スプラよ、わしはまだ地上の建物というものをそこの以外は見たことがない。どんな感じで建てるんじゃ?」


 ガガンさんが腕を組んで難しい顔をしている。


 そうだよな。ガガンさんが見たのはこの瓦礫の山と癒楽房だけだもんな。でも今回は様式を変えないといけないから……よし、じゃあ。



「ガガンさん、地底界の建物ってここに作れます?」


「地底界のか? できんこともないが、材料の石が足りんの。あとは、この気候も問題じゃ。太陽が空にある時とない時で気温が変わる。それにそこの湖を通ってくる湿った風も問題じゃな。地底のをそのままを作ったらおそらくカビで大変なことになるじゃろうて」


「じゃあ、どうしたら?」


「とりあえず地上の“木”という資材を見せてくれ。癒楽房にも使ってあったのを見たが、どうやらあれがポイントになりそうじゃ」


「あ、木材ならさっき大量に採ってきたんでどうぞいくらでも使ってください」


 空いている場所に木材を積み上げていく。


 建築に木材は必須と思ったから、事前にアリオンと北の山地でトレント狩りをしておいたのだ。そこで活躍したのが【劣滅除草剤】。ダーツの先にチョイっとつけて狙撃してみたらトレントを一撃でポリゴンに変えたのだ。


 で、調子に乗って乱獲しまくったことで、今俺のストレージには大量のトレント木材が入っている。トレントの学習能力に補正が入らんことを祈る。



「なんじゃ、スプラ、おぬしなかなか手際が良いではないか。おぬしとならいいものが作れそうじゃ」


 そう言って早速木材を調べ始めるガガンさん。うん、褒められたな。こういう歯に衣を着せない人に褒められると素直に嬉しい。


 そっか、手際がいいのか俺は。この1か月ほとんど褒められなかったからな。感謝されることもなかった。どれだけ頑張ってもやって当たり前の世界。正直あそこには戻れる気が全くせん。





「よし、こんなもんかの」


 3時間後、ガガンさんがハンマーを片手に肩をトントン。見事に出来上がった地底建築を見上げながら満足そうに言う。



「どうじゃ、これくらいで大丈夫か?」

「はい、パーフェクトです」


 目の前に建っているのはまさに木材と岩が奏でる二重奏――温もりと冷たさ、柔らかさと硬さが一つの曲を紡ぐように組み上げられている。

 冷えたマグマの塊のような奇抜な造形が陽光によってはっきりとした陰影を生んでいる。

 かと思えば、その奥には美しい木目調が存在をアピールする。

 それはもう、地底と地上を一枚のキャンバスに押し込め融合させた現代アートのようで……。



「ん? どうしたボケッとして。なんなら今からでも直すぞ」

「あ、いや、見惚れてただけです」

「そうか、ならいい」


 しかし、まさかこれが3時間で建つとは。


 ドワーフの建築技術を見たくてずっと3時間張り付いていたのだが…。ガガンさん、スキルでチョイチョイじゃなくて、本当に木を削って柱に加工して、モルタルみたいなのを作って岩をくみ上げて……完全にリアル建築じゃんかよ。


 流れるのような無駄のない動き。大きな資材もひょいっと持ち上げる怪力。建築動画を6倍速くらいで見ているような気がした。



「しかしこんな建物を3時間で…ガガンさんってすごい建築士だったんですか?」


「ん? はっは、わしは建築ドワーフじゃからの。鍛冶と建築で240年やってきたからにはこれくらいできて当たり前じゃ」


「240年?!」


「じゃな。いくつ建てたかのう。5000軒から先は数えんくなったからの。まあ、慣れじゃ慣れ。はっはっは。しっかし、この“木”は良いの。強度が多少気にはなるが加工し易すさはこの上ない。そしてこの柔軟性ときた。まさかこの歳で新しい資材と出会うとは。がっはっは」


 ガガンさんの豪快な笑い声が周囲に響く。



「では、次は中を作るとするかの」


 ガガンさんが中に入っていく。


 そっか慣れか。5000軒……俺もスキルばかりに頼ってちゃだめだな。



「スプラよ、内装は癒楽房みたいに鍛冶場と薬房でいいかの?」

「ええっと、そうですね……たぶん、鍛冶と調合の両方をする人は少ないでしょうから鍛冶場だけでいいかもしれないですね」


「ふむ、鍛冶場だけか。ならドワーフ風にしてもよいか?」

「え、ドワーフ風?……」


 ドワーフ風鍛冶工房……なんだ、その興味しか湧かないパワーワードは。


「あ、是非、それでお願いします」

「よし、ではわしの好きにさせてもらうぞ」



 そして30分後、大中小3つの炉に大中小3つの金床、壁にはずらりと並ぶ様々な手槌と工具。ファンタジー好きにとって垂涎の的な鍛冶工房が出来上がった。



「すっげーー」

「すごーい」


 遊びに飽きて見学してたデッカイとオッキイが歓声を上げる。そうだよな、子供にとってもこんなのたまらんよな。


「おおい、二人とも、あんなところに小石の山作ったらだめ……おお、すごいっ」


 二人を追いかけてきたらしいチッチャーネさんも目を見開いて驚いている。



 そんな中、3つの炉に火を入れていくガガンさん。その様子をみんなでじっと眺める。


「ふむ、こんなものか。じゃがやはり、地上じゃと熱が上がらんの。スプラよ、申し訳ないんじゃが、癒楽房にあったような紅玉は持っておらんか。わしには持ち合わせがなくての」

「あ、はい、紅玉ですね」


 ストレージの宝石から紅玉を探す。


「ガガンさん、すみません、残り2個しかないです」

「2個か。そうなると、もう一つの炉をどうするかじゃな…」


 だよな。紅玉がないとあの火力は出せないしな。今から採掘してくるか……ってか、他に何かないかな。


 火力…火……あ、これ使えるかな? 


「ガガンさん、これなんか使えませんかね?」



【極凰の羽根】


 これなら極凰洞に極凰が来るたびに貰えるみたいだし。


「……」


 極凰の羽根を見たガガンさんの動きが止まる。そして瞬きを数回、次に目をゴシゴシ、最後に目を見開いて赤く光る羽根を見る。


 沈黙が流れるなか、極凰の羽根から放たれる揺らめく輝きがガガンさんの顔を照らす。



「……なんじゃこりゃ、なんじゃこりゃ……」

「え、ガガンさん?」


「なんじゃごりゃああああああああーー!!」


 ガガンさんの叫びに3つの炉の炎が揺れた。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ガガンに岩と木の現代アート風鍛冶工房を作ってもらう。

・【劣極除草剤】の使い方を編み出しトレント乱獲。

・ガガンに刺激されて建築意欲が高まる。

・【極凰の羽根】をガガンに見せて驚き叫ばれる。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【独り舞台Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 2/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い】&オッキイ【益獣遣い】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

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