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第264話 デッカイ&オッキイ

「うわっ、なんだこれ」


 ミクリさんに手を引かれて連れていかれたのはデッカイ達の小規模畑だった。


 そこにいたのは全身に真っ赤な粒に覆われた人型とその横には足元をモコモコしたものに覆われたオッキイ。



「あ、スプラお兄ちゃーん」


 足元をモコモコさせたオッキイが俺を見て手を振る。


「え、兄ちゃん? おおーい、兄ちゃーん」


 赤い粒々人間からも声がする。そうか、この声はデッカイか。



「オッキイもデッカイも何やってんだ」


「スプラ兄ちゃんのせいでこうなったんだぞー」


 ブワッ

「うわっ」


 デッカイが手を動かした瞬間にデッカイを覆っていた赤い粒が空中に広がる。そしてまたデッカイを覆い尽くして粒人間に戻る。なんかホラー映画でも見てんのかってくらいおぞましい情景だ。



「お兄ちゃんがくれた鎌と鍬のせいなんだよーー」


 オッキイがいい笑顔でそんなことを言う。俺のせいでこうなった? どういうこと?


「いやいや、意味が分からん。ちゃんと説明してくれ」

「わかったよ」


 ブワッ

「どわっ」


 デッカイがそう言うと紅い粒がまた大きく膨らむようにして空中に広がった。でも今回はそのまま空中に留まり、デッカイが畑にチョロっと残っている草を指さすと一斉に移動して今度はその草が赤粒に覆われる。



「へへ、驚いた?」


 デッカイがしてやったり顔で鼻の下を指で擦る。すると鼻の下に土がべっとり。


「驚いたも何も…驚くに決まってるだろ。なんなんだよ、これは」


「お兄ちゃん、こっちもこっちも」


 そういうオッキイを見ると、今度はオッキイの足元のモコモコが動き出す。もごもごと動いたかと思うと一気に土の中に消えて行った。


「なにそれ…何が起きてんの?」





「ぷはー、うっま」

「うまーー」


 デッカイとオッキイが3杯目の極凰発砲水を飲み干す。


 畑でテンションが上がりまくってた二人がどうにもならなかったので、とりあえず極凰発砲水を見せて気を引いて落ち着かせ、三人で飲みながら事のいきさつを聞いた。



「しっかし、まさかスキルが進化するなんて思わなかったぜ」

「うん、ぜんぜん思わなかったー」


 二人が勝ち誇った顔でそんなことを言う。



 二人から聞いた今回の経緯はこんな感じだ。


 まず、デッカイが持っていたスキル【虫遊び】、オッキイが持っていた【土遊び】を使いながら二人で畑で遊んでいた。


 いつもならデッカイが草を抜いたり刈ったりすると、そこにいる虫が逃げずにその場にとどまり元気に飛び回る。オッキイが土をいじるとなぜか遊んだ跡地に生えた草が元気になる。


 元気な虫と元気な草。だれも喜ばない畑が誕生してきた。


 でもそれがどうやら俺が渡した【孔雀石の鎌】と【尖晶石の鍬】がデッカイ達のスキル経験値を爆上げしたらしい。


 デッカイの【虫遊び】が【益虫使い】に、オッキイの【土遊び】が【益獣使い】に進化した。ってな訳で、デッカイの体に無数のテントウムシがとまってホラー状態に。オッキイの足元にはモグラの群れだったらしい。


 テントウムシはリアルでも害虫のアブラムシを食べてくれる益虫。アメリカではそれ用にテントウムシが売られているくらいだ。モグラは本来は益獣のミミズを食べたり畑を荒らす害獣なんだが、FGSでは益獣扱いになってる。卒業前に農家さんメンバーからそんな話を聞いた。



「これで俺たちもう邪魔者扱いされなくて済むかな?」

「されなくて済む?」


 デッカイとオッキイが期待に満ちた目で見て来る。うう、こういう期待のを眼差しを向けられると期待を裏切りたくなるんだよな……俺、性格悪いよな。


「されなくて済み……ません!」


「えええー、なんでだよ」

「なんでなんでー」


 二人が物凄い食ってかかってくる。でもさ…



「たぶん、ミクリさん、虫嫌いだと思う。それにモグラも無理じゃないかなあ」


「「ええええーっ」」


 そうじゃなきゃ、あんなこの世の終わりみたいな顔して俺を呼びに来ないって。



「じゃあ、俺たちずっと役立たずの邪魔者ってことか?」

「邪魔者は嫌ー」


 そうだよな。俺も職場で散々邪魔者扱いされてきたから、痛すぎるほどわかる。あ、思い出したらちょっと吐き気が……。


「とりあえず、二人には今まで通りにさっきの畑で頑張ってもらうから。まだスキル覚えたばかりでレベル低いでしょ? もっと精進してください! そしたらたっくさん役に立ってもらうから」


「本当か? もっと“しょうじん”したらたくさん役に立つのか?」

「本当に?」


「うん、必ず役に立つよ。だから頑張って。それに二人には他にも使命があるだろ?」


「「使命?」」


「お母さんの街のお掃除」


「ああ、そうだった。母ちゃんの街の掃除しないとな」

「しないとね」


 母親か。俺も子供の頃は母親にべったりだったもんな。よく実家にも遊びに行ったっけな。母方の婆ちゃんは駄菓子屋やってたからよくお菓子貰って食ったよな。あの頃はほんと楽しかった。


 この子らのお母さんってどんな人なのかな……。



ピンポーン

『スキル【献身】が発動します』



「え? また?」


 さっきのチッチャーネさんに続き、再びスクリーンが回る。今度は2枚らしい。



§



 ここは……へえ、武具会館か。


 見たことのある建物。ヨド○シカメラのマルチメディア館のようなデカい建物が目の前にある。だが俺が知ってるよりも建物が若干新しい気もする。


 お、いたいた、たぶんアレだな。


 小さな赤ん坊を両腕に一人ずつ抱えた女性が武具会館に入っていく。それを見た店員が駆け寄っていき、赤ん坊の片方を預かると一緒に仲良く入っていく。


 それに伴い、俺の視界も武具会館の中に移動する。


 店員が奥のドアをノックして何かを話すと、しばらくしてドアが開く。中から出て来たのは背の高い男性。住人が着ている普通の服装にグレーのデニム生地のエプロンをキュッと絞るように付けている。


 男は店員から赤ん坊を受け取ると、高い高いをしては赤ん坊の弾ける笑顔を見て喜んでいる。それをもう一人の赤ん坊を抱えた女性が微笑ましく見つめている。


 ここで俺の視界が暗転する。




 次のスクリーンに包まれた俺は再び武具会館の前にいた。今度の武具会館は俺が見たことのある武具会館。真新しさが抜け、落ち着いた顔をしている。


 と、俺の前を慌ただしく通り過ぎてとまる一台の馬車。そのキャビンには2本の剣が交差した紋章が彫られ金色に装飾されている。只者ではない感がすごい。


 その中から出て来たのは……白スーツだった。丸い腹の前で留めたジャケットボタンがはち切れそうになっている……うん、まんまニカブだな。


 ニカブが屈強な二人の兵士と共に武具会館へ入っていく。


 店員の制止も振り払い奥のドアまで進むニカブと兵士。兵士の一人がドアを荒々しく蹴り開けると、もう一人の兵士がニカブを先導して部屋に入っていく。


 部屋の中には先の男と女性。それに二人の子供。デッカイとオッキイだ。そっか、デッカイ達は武具会館の管長の子供だったのか。


 ニカブを先導した兵士が前管長に派手な装飾の紙を突きつける。それを見た管長は天井を仰ぎ目を閉じる。そのまま兵士に連行されていく。


 残された母親がデッカイとオッキイを守るようにして立つ。


 ニカブの視線がそんな母親へと注がれる。その貪るような視線を受けて一瞬動揺した母親だが、口を真一文字に結ぶと子供から距離を取るようにして部屋の隅へと移動する。兵士とニカブがその母親に近づいていく。


 だが、そこで店員の一人が部屋に突っ込んでくる。


 …って、え、この店員、マカラさんじゃん。


 それを見た母親が視線でマカラさんに何かの指示を出す。それに目を見開くマカラさん、数瞬固まった後に俯くと部屋の隅で泣いているデッカイとオッキイを抱きかかえて部屋を飛び出していった。


 追いかけようとする兵士を止めるニカブ。その視線は母親から離れなかった。


 そこで俺の視界が暗転する。



§



 目の前には鍬を持って掃除する気満々のオッキイと、ワクワクを隠し切れないデッカイの綺麗な瞳が俺を見つめていた。


 ……そっか。……うん、じゃあ、必ず街を元通りにしような。兄ちゃんは白パッツンの腹に百〇拳打ち込んでやるから。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・デッカイ【虫遊び】→【益虫使い】

・オッキイ【土遊び】→【益獣使い】

・【献身】によりデッカイとオッキイの過去を知る。

・街を復興させることを決意する。

・ニカブの腹に〇裂拳を打ち込むことを決意する。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 1/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【???】

・デッカイ【益虫使い】&オッキイ【益獣遣い】


◆お手伝い◆

・ガガン【???】

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