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第260話 ❖AIたちの舞台裏①❖

『さあ、今日も始めようか』


「「はい、マスター」」


『じゃあ、アマデウスからお願いできるかな?』


「はい、マスター。現在のログイン済みプレイヤー数は62,991名。本日のログイン数は4,982名で昨日比-211名です。内訳は一陣2,813名、二陣1,677名、三陣333名、四陣159名、五陣0名。以上です」


『これで連続18日の減少か……参ったねこりゃ』


「掲示板ではFGS内での支配型統治に対する不満が多く見られます。批判コメントの7割が誹謗中傷に当たるとして削除対象になっています。

さらにその掲示板の仕様そのものへのコメントも増加しており、理不尽な支配を続ける権力者たちへの愚痴すら気を遣う状況に辟易しているようです。

ここは一旦規制を緩め不満を和らげてはいかがでしょう?」


『愚痴かあ。そうだよね~、気を遣う愚痴なんて愚痴じゃないよね~。わかるわ~』


「……?」


『…あ、いや、そうだね。掲示板の影響を考えると愚痴は個人間でやってもらいたいところだ。現状打開への呼びかけとか、攻略情報の共有とか、新しい楽しみ方とか、そういう事に使って欲しいよね』


「管理AIを紛れ込ませて誘導することもできますが?」


『いや、ここは原則通りに。管理AIの直接関与は極力避けたい。やるとしたらイベント経由だけど…5000人を切ってる状況では盛り上がりも期待できないしなあ』


「となると現状を打開するための手段がありませんが…」


『そうだね。しかし、ここで管理側が下手に手を出せば、それはプレイヤーと住人AIが築いた歴史の否定につながる。他の管理型MMOと同じになるならFGSの存在価値はない。FGSの開発はその先にある可能性こそが目的だからね』


「はい、理解しております」


『まあ、こればかりは慌てても仕方がない。今、できることをやって行こう。コリンズ、モンスター生態系はどうかな?』


「はい、マスター。特定プレイヤーによるギルド支配によってクエスト制限が続いており、偏った殲滅は発生しておりません。生態系は安定しています」


『はは、ずっと安定してるね。配信当初のバタバタが懐かしいよ』


「モンスター総数も始祖仙蜘蛛による資源のばらまきによって二陣開始時より20%増加しております。討伐には十分な数が溢れている状況です」


『そっか、それだけいるのにプレイヤーが少ないとはね。もったいない限りだ。うん、生態系はわかった。他になにかある?』


「はい、本日夜、地上界と地底界が繋がりました」


『は? 地底界? いやいやいや、なんで? 地底界は第5エリアで繋がるはずじゃなかった?』


「はい、本来ですと第二の街の復興をエルフが主導し、樹魔法によってギミックが発見され繋がる想定でした。ですが、今回そのギミックを全て自力で発見・突破したプレイヤーが現れました」


『自力突破かあ。なんか懐かしい感覚だね、初期はこんなのばっかりだったんだけど……でもあのギミックって、偶然見つかるような確率ではなかったよね』


「はい、自力でのギミック発見には第6エリア相当の感知スキルが必要です」


『第6エリア相当…そっか、そんなプレイヤーがいたなら納得か……でもよくあの瓦礫の中を探したよね。復興が始まる前だと、破壊可能なオブジェクトはその一枚だけだったはずだけど』


「はい。ですが今回は、王国の王族から“独立国家の建設”シークレットクエストが発生し、それが契機となっています。建物の建設中に発見しました」


『……ごめん、ちょっと聞き間違えたかな。建設中の発見って、“第二の街復興”シークレットクエストだよね?』


「いえ、“独立国家建設”シークレットクエストです」


『……ど、独立国家ぁ? えっ……なにそれ、そんなのなかったよね? え、わたしが見逃してただけ?』


「いいえ、昨日までは可能性は0%でした。ですが、当該プレイヤーのログインと共に可能性6%、農業ギルド訪問後に19%、新規契約NPCとの信頼度上昇により29%。さらに称号効果によるスキル再編後に44%、最上級肥料の開発成功で66%、シークレットメーカーに希少薬草を連続で提示したことで100%に達した模様です」


『んん? そのバグみたいな上昇率……えっと、そのプレイヤーって…』


「はい、かつて第一の街の統治権を与えられたプレイヤーです。規定時間、統治権を行使しなかったためカイザル家によって権利を奪われた…」


『え、あ、ああ、彼? そう、そういう事! そっか……じゃあ、今日の報告はこれでいいよ。二人ともありがとうね』


「「…? はい、マスター」」


 二人は互いに顔を見あわせ、ゆっくりと部屋を出ていく。



『レイスくーん……は無理か。今忙しそうだもんな、仕方ない。んじゃ、SAIくーん』


「何?」


 フワリとしたクリーム色の服を着た子供が現れる。



『彼が戻って来たよ』


「……知ってるよ。で?」


『“で?”って。あれだけ心配してた彼が戻ってきたのに』


「別にもう人間に興味はないよ。彼が異常を起こしたらレッドシグナル出すだけ」


『……そっか、そうだよね。うん、ありがとう』


 SAIは服をひらりと靡かせ、姿を消す。



『こりゃまだまだ尾を引きそうだな。ってことはやっぱりレイス君案件か。条件は……実用化が発表された量子チップってとこかな?』




❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


ん? なんか今、変な可能性がよぎったような…


「先輩、どうしたんすか?」

「あ、いや、なんでもない」



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