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第258話 時代の階段

「おおお、なんと、これがかの『時代の階段』じゃというのか…」



 ガガンさんが俺が降りてきた階段を見上げてめをまん丸にしている。なんかちょっと血走ってて怖い。


「おぬしはここを降りてきたのじゃな」

「ええ、そうです。あ、俺、スプラっていいます」


「そうか、これが地底界と地上界を結ぶ道『時代の階段』……。おぬし、わしと一緒にこれを上れるかの?」

「え、いいですけど。すっごく長いですよ、この階段。大丈夫ですか? で、俺スプラっていいます」


「よし、ありがたい。さすがにわし一人では荷が重いのでの。おぬしのようなひ弱そうな者でもいてくれると助かるわい。では行くぞ」

「あ、はい。で、俺スプラってあっ…」



 ドタドタと階段を上り始めるガガンさん、俺はその後をアリオンに乗ってついていく。



「おお、わしは今、かの時代の階段を上っておるのか。すごいのう。こりゃ、わしが伝説になってしまうのう。モテてしまうかの、どうするかのう」

「あの、ガガンさん、さっきから言ってるその『時代の階段』ってなんですか?」


「ん? 時代の階段とは、我がドワーフ公国の伝承に出て来る階段じゃ。われらドワーフを地上へと再び連れ出すために大地の精が備えた通路、それが『時代の階段』じゃ。その時代がいつ来るのか、それは誰も知らんかった。じゃがそれは必ず来ると言われ続けてきた階段のことじゃ」


 大地の精が備えた通路? ……これが? どう見ても石のタイルで組まれた普通の階段なんだが? それにその階段がなんで武具会館の真下にあるんだ。


「あの、ガガンさん、この階段の先って隕石が落ちてきた地域にある街に出るんですけど、なんでその真下にドワーフの世界があるんです?」


「そんなもの、ドワーフの民はこの階段を通って地底界に移動したからに決まっておうじゃろうが」


 え、ドワーフが王国からいなくなったって、真下の地底に降りてったってことだったのか。え、じゃあ、国王一人残して地底に戻ったってこと?


「でもなんでムガンさんのお祖父さんだけ残して地下に潜っちゃたんです? 国王だけ置いてくなんてヤバくないですか?」


「……ムガン国王はの、わし等ドワーフの民全員の命と引き換えに地上に残ってくださったんじゃ。わしの祖父ちゃんが何度も何度も涙ながらに話してくれた話じゃ」


「ドワーフの民の命? え、ってことはドワーフと王国って仲悪かったんです?」


「いや、仲が悪いのではない。我らは好意的じゃった。だが、人の王が我らの力と鍛冶技術を恐れたんじゃ。ムガン王は人の王国の中にドワーフの民が暮らす街が存続できるようにと長い時間をかけて交渉をしたんじゃ。じゃがの、人の王はどうしても我らの鍛冶技術を滅ぼしたかったらしくての、交渉中にもかかわらず陰で戦争の準備を始めたんじゃ。それを知ったムガン王は我らを地底界に逃がした。大地の精との契約により王家が代々受け継いできたこの『時代の階段』を使っての」


「へえ、その時に使ったのがこの階段だったと」


「ああ、そうじゃ。役割を一旦終えた『時代の階段』は、王家の封印秘術によって姿を消した。決して人の王国が地底界へ攻め下らぬようにと。で、なぜムガン王が地上に残ったのか。それはその秘術が地上でしか使えぬものであったからじゃ。じゃからムガン王は自ら地上に残ってその役割を担った」


 なるほど、そっか。それでムガンさんも一人で……。


 にしても、王家の封印秘術って……どう考えてもあの金庫とか絵の裏に書かれた番号と石のギミックのことだよな? 秘術ぅ? いや、ムガン王、流石にあれは雑じゃね? ……まあな、ムガンさんの祖父ちゃんだしなあ。



「しかし、ムガン王に子孫がいらっしゃったとは。ってことは、人の血をお入れになったということかの。人のようなひ弱なお体になっておらぬとよいが…」


「あ、それは大丈夫だと思いますよ。ガガンさんそっくりなんで」


「わしとそっくりなどと、そのような無礼なことを言うんじゃない。ムガン王はドワーフ族でも伝説的な色男と有名だったのじゃぞ」


 伝説的な色男? え、ムガンさんが?



「ま、まあ、似てはおらぬが、わしも色男の部類ではあるがの…」


 ふむ。まあ、外国人の顔がみんな同じに見えるのと一緒かな。ドワーフはみんなドワーフにしか見えん。


「しかし、まだ上が見えんとは……時代の階段とはこのようなものであったか」



 それから20分ほど、ガガンさんとドワーフの色男談義を続けながら階段を駆けあがる。それにしても、20分全力疾走とかドワーフの持久力凄いな。



「おおおお、見えたぞ。あれか? あれが地上か?」


 ガガンさんが走る足をわずかに速める。そしてやっと武具会館の地下室に到着した。



「着いたー。わしが伝説じゃーーー!」


 肩で息をしながらガガンさんが叫ぶ。そっか、一応疲れてはいたらしい。



「その階段を上ったら本当の地上です。行きましょう」


 ガガンさんが息を整えながらゆっくりと暗い階段を上る。



「……こ、これが地上。おお、アレが太陽か。ものすごく明るい火の玉じゃ。……じゃが地上の風景は言い伝えとは全然違うの…」


 瓦礫の山を見渡しながらガガンさんが言葉を漏らす。



「言い伝えでは、“木”と言う緑の植物がたくさん生えていたり、毛がフサフサした動物が走り回っている美しい場所だと言われてたのじゃがの」


 少し寂しそうなガガンさん。


「あ、ガガンさん、違うんです。ここは街の跡なんですよ。建物がいっぱい建てられてたんですけど、全部壊されちゃってこんなふうになってるだけで。ちょっと行けば湖とかありますし、その“木”ってのがいっぱい生えてる山もありますよ」


「な、そうなのか。ではやはり地上とは言い伝え通りの美しい場所だと」


「そうなんです。本来はこの街は鍛冶の街だったんです。鍛冶工房がいっぱいあって活気のある街だったんですよ。それが王国の貴族に滅ぼされちゃったんです」


「な、なんと、鍛冶の街が人の王国の貴族に…」


「それでこれは内緒なんですけど、俺、この場所を綺麗に整備し直して国を作ろうとしてるんです」


「……国を作る? おぬし一人でか?」


「ええ、まあ今は一人ですけど」


「がはははは、そんなひ弱な体で国を作る? がーっはっはっは、これはなんじゃ、地上のジョークというやつか。ひゃーっはっは、なかなか面白いではないか」


 ジョークか。そうだよな、普通ジョークにしか聞こえんよな。圧に負けて受けちゃったクエストだし。実際、何年かかるんだって感じだし。でもさ、やり始めてみたら思っちゃったんだよな。


 ──楽しいな。って


 やるって決めたらチッチャーネさんやデッカイ達も協力してくれて、こうやってドワーフの地底界とも繋がっちゃって。ガガンさんとの色男談義だって、俺がクエスト受けてなけりゃできなかった訳だし? 


「ガガンさん、ジョークに聞こえるかもしれないですけど、俺は本気でやってるんですよ」


「本気? がーっはっは、もうやめてくれ。もう分かったから、地上のジョークは地底よりぶっ飛んでて最高じゃ。がーはっはっは」


「今、地上はちょっと悪い奴らに荒らされちゃってて。この街がこんなふうになったのもそいつらがやったんです。それに他の街でも困ってる人がたくさんいて。でも俺がここに国を作ればなんとかなるかもって教えてくれた人がいるんです。俺はその人のことを信じてるんです」


 いつの間にか笑うのをやめてたガガンさんの目をまっすぐに見る。どこかすっとぼけたその目がわずかに細まる。



「そうか、本気じゃったか。わしとしたことが男の本気を笑ってしまうとは、ちと腑抜けておったのやもしれんの」


 ガガンさんの丸太のような腕が胸の前でがっしりと組まれると、その筋肉がさらに盛り上がる。



「ふむ……では、わしも手を貸そうかの。報告するにももう少し情報が欲しいのでな。おぬしから地上の、特に人の王国についての情報を聞きながらこの瓦礫の山を作り変えてやろう」


「え、マジで?」


 ドワーフにお願いできるなんて。鍛冶師って建築の腕もすごいんだよな。あの裏切り鍛冶師6人が癒楽房作っちゃうんだからな。



「ああ、マジじゃ。マジな男にはマジで返す。これがドワーフ流じゃ」

「すごく助かります!」


「して、おぬしの名は?」

「あ、スプラです(4回目)」


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ムガンと時代の階段を上る。

・ドワーフの色男について聞かされる。

・ムガンがドワーフ王家だと知る。

・王家秘術の封印を疑問に思う。

・ドワーフが地底に逃れた経緯を聞く。

・ガガンに建築を手伝ってもらえることになる。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 1/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】

・デッカイ【虫遊び】&オッキイ【土遊び】



◆協力者◆

・ガガン(ドワーフ)

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