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第256話 地下室

「おーい、誰かいませんかー」


 武具会館の地下階段。マークスさんのシークレットクエストで武具会館のモルスさんに手紙を渡しに来て以来だ。


 あの時はまさかこんな瓦礫の街になるなんて思ってもみなかったんだが。



 アリオンから降りて灯りのない階段を足元に注意して一歩一歩降りていく。


「なんか、俺っていつも灯りがなくて不自由してるよな。今度ランタンがなんか作ってみるか」



 階段を降りきったら部屋があったはずだ。


 記憶を辿りながら階段を降り、段差がなくなったところで部屋の空間を壁沿いに進む。確かこの先のソファーでモルスさんが寝てたんだよな。


ゴン


「おっとっと」


 何かに足をぶつける。手探りするとモルスさんが寝ていたソファーだった。



「ってことはここが壁の中心だから、部屋の真ん中に行くには……こっちだな」


 ソファーの向きから方向を確認して部屋の中央に向かう。足と手で前方を探りながら一歩一歩進んでいく。真っ暗って本当に不便だな。


コン


 足が棒に当たる。手探りするとそれは俺が探していた燭台立てだった。と言っても蝋燭が立っているわけではない。燭台型のランプなのだ。さらに手探りしてスイッチを探す。



「よし……あった。ここを…こうかな?」


カチン



「おお、ついた。よかった」


 スイッチを入れると、地下室に明かりが灯る。記憶では薄暗かったはずだが、光に目が慣れてないせいかやたらと明るく見える。そして明るくなった部屋には誰もいない。



「ま、そうだよな、人なんかいる訳ないよな。いたら逆にホラーだもんな。そんな展開は御免だし……ん? また?」


 部屋を明るくしたら再び来た。視界の奥に、微かなノイズ。


 ……思い出した。この感覚は【観察眼】だ。今は【眼通力】に変わったみたいだけど。でも感覚的には同じ。



「どこだ……ん、そこか」


 ノイズに目を凝らすと、フワリと浮かび上がってくる小さな絵。それまで全く意識に上ってこなかった小さな風景画、それが集中して見ることで壁から浮かび上がるようにして姿を現した。


 「こんな絵、前はなかったよな…」


 記憶を辿るが、見た覚えがない。20㎝もない小さな絵。小綺麗な額に入れられ飾られている。一見するとごく普通の部屋の一風景。だが…


 【眼通力】が「何かある」と訴えてくる。



「何かあるってもな」


 絵に近づいてマジマジ見てみるが本当にただの絵のようだ。ここから推理小説みたいに手がかり探せというのか? 推理探偵ごっこなんてのは勘弁してほしいのだが。



「チープな映画やドラマだとこの絵の裏に隠し金庫とかあるん……あるな」


 絵をずらしたら壁に埋め込まれた隠し金庫が見つかった。なんだろ、もっとこう緻密なトリックで糸を手繰るようにして見つけるもんだとばかり思ってたんだが。こんなんでいいのか? ……あ、もしかして罠とか?



「でも危険察知は反応してないんだよな」


 宝石の坑道を守ってた罠のワーナーなんかは、真っ赤っかに光ってたもんな。てことはこれは罠ではないと。じゃあ、絵を外してみるか。


パカ


 絵を外すと何も起きずに金庫が丸々姿を現しただけ。


「ふむ。で、金庫は……三段階のダイヤル式か。アナログだな」


 アナログタイプのこういう金庫を見ると、婆ちゃんの家を思い出す。うちの婆ちゃんったら金庫の番号忘れないようにって金庫の横の壁に番号書いてたもんな。みんなからツッコまれてたけど、結局盗まれたって話は聞かなかったな。



「なんか懐かしいな。婆ちゃん家だったら例えばこの絵の裏とかに番号とか……いや、あるんかい!」


 外した絵の裏を見ると、結構デカい字で3桁の番号が書いてあった。



「婆ちゃんと同じ思考タイプか……いるもんなんだな」


 カチカチカチ カチカチカチカチ カチカチ カチャッ


 3桁番号に従ってダイヤルを回すとすんなりと開く金庫。いや、金庫の意味よ。金庫職人の泣き顔が見えるようだ。


 いろいろ疑問に思いながらも中を覗く。と、そこにあったのは…



「石?」


 金庫の中には拳ほどの石が一つ。取り出してみるが、普通の石のようだ。調べようにもアイコンすら出てこない。



「石ねえ……」


 手に持ってみても、何も起こらない。ビリッとかピカーンとかそんなのもない。しして説明文すらでてこない。て、ことは……



「こりゃ普通じゃねえな」


 普通なら「【石】普通の石」という感じでオブジェクトじゃない限り必ず説明文が出て来る。で、オブジェクトならこんな風に手に持つことはできない。つまり、これはオブジェクトの一部が切り離されたギミックと言うことになる。



「ギミック…となると、どこかに嵌めるとか……あるな」


 5歩の距離の壁にぽっかりと開く穴。「ここに嵌めてくれ」と言わんばかりの穴が存在感を放っている。



「……やっぱり罠か?」


 ギミックにしてはあまりに雑。まあ、罠だと思わせて諦めさせる作戦と思えば悪くはないのかもしれない。だが、俺には【危険察知NZ】という特級察知スキルがあるからな。罠でないことは確実にわかってしまう。



「こんなの当然嵌めるよな」


 石を嵌めると、穴の奥で「カツッ」と音がする。



 ゴゴゴゴゴ……


 とすぐに、階段の方から激しい音が聞こえだした。この音だけはいかにもギミックという豪快な音、しかも部屋自体が微妙に揺れているという凝り方。ちょっと楽しくなりながら、音の方へと移動する。



 ゴゴゴゴ……


 俺の目の前で床が震え、隙間から砂埃が舞う。そして横にスライドしていく床。そのまま見守っていると、完全に床がなくなりその先に階段が現れた。



「へえ、このさらに下があったのか。武具会館すげえな」


 下への階段には明かりが灯って足場を照らしている。なのに先の終わりがが見えないことから随分長い階段だと思われる。



「どうしよっかな……」


 この部屋までは以前に来たことがあったから来やすかった。でもここから先は完全に未知の領域。一連のギミックのこともあり、流石にちょっと慎重になる。



『ゆらゆら』

「うん、まーねえ」


 ネギ坊から『迷ってもどうせ行くんでしょ』って。まあ、そうなんだけども。でも、こういうのは気分を盛り上げるのも大切。ちょっと逡巡するくらいが楽しむコツなのだ。



 とはいえ、"終わりが見えないほど長い階段”ということでアリオンに乗って駆け降りることにする。ここは雰囲気より時間優先で。


 結構な速さで駆け下りるアリオン。だが全然先が見えてこない。もうかれこれ5分以上降りてるんだがな。なんだこれ、まさか地獄にでも通じてんのか? それなら俺帰りたいんだが?



「マジで地獄の一番地とかじゃないだろな。火の池地獄とかやめてくれよ」


『ゆら?』

「え、地獄ってのは……悪いことした人が行くとこって婆ちゃん言ってた」


『ゆらゆら?』

「うん、なんかすごく苦しいとこらしい。悪いことした人が罰を受けるんだって」


『ゆらゆら…』

「え、ネギ坊は大丈夫だと思うよ」


『ゆら?』

「うん、だって、悪い事してなさそうだし(それにネギだし)」


『ゆら~♪ …ゆらゆら!』

「え? 気配?」


 ネギ坊が『…なんだか不思議な気配がする!』と。なんだろ…って、あっ。


「着いたみたいだな。なんか明るいし」

『ゆらゆら』


 やっと見えてきた床。ずっと階段ばっかりだったから途中から目が錯覚起こして気持ち悪かったんだ。床が見えて安心する。



「おおおおっ、広いな」

『ゆら~』


 階段を降りきると、そこにはだだっ広い洞窟が広がっていた。広さはラスプの噴水広場以上、サッカー場数面分で高さは体育館くらい。その天井には等間隔で白っぽい光源が設置してあるため、全体が満遍なく明るい。リアルの地下駐車場よりもだいぶ明るいくらいだ。



「おっ、おいおい、採掘ポイントがあるじゃん」


 見ると、壁や地面、はては天井にまで採掘アイコンが表示されている。



「……マジか。武具会館の地下に採掘場なんてあったのかよ」


 第二陣がログインしてから鉄不足で街が大変だったのに。ここにこんな採掘場があるならあの苦労は何だったんだ。まさか、モルスさん達が隠してたとか? ……いや、あの時の様子はそんなじゃなかった。



『ゆらゆら』

「あ、そうだよな。なにはともあれ今はありがたいよな」


 ネギ坊から『丁度いいね』と。そうだった。これからたくさん建築しないといけない今、鉱石なんてどれだけあってもいい。



「んじゃあ…ちょっと、掘ってくか?」

『ゆら♪』


 ストレージから【土竜金剛爪】を取り出し採掘を開始。身体強化ポーションで筋力強化は忘れない。


カン


「お、鉄鉱石。品質も高いな」


カン


「おお、黒鉄? 黒鉄ってなんだっけ?」


カン


ピンポーン

『特定行動により【中級採掘Lv1】を習得しました。【器用貧乏】の称号効果により【採掘Lv10】が【中級採掘Lv1】が統合され【中級採掘Lv3】を習得しました』



「おおお、赤銅? ……なんか高級素材っぽいぞ」


カン


「お、また鉄鉱石、品質も……」

「コラーーー!!」

「うおっ、びっくりした」


 洞窟内に響く大声。だがその声は聞き覚えのある馴染みの声だ。いや、無事だったんだな。よかった。



「無事だったんですね、ムガ…ン……??」

「なに勝手に掘っておるんじゃ―」


 小柄で筋肉質。ぶっとい腕に短めの足。肩には巨大なツルハシを担いだムガンさん……ではなさそうなドワーフがドタバタと走って向かって来ていた。


「……えっと……誰?」




―――――――――――――

◇達成したこと◇

・瓦礫の下に地下室への階段を発見する

・地下室のギミックをクリアする

・クソ長い階段をアリオンに乗って駆け降りる

・大きな地下空間を発見する

・習得【中級採掘Lv1】→統合により【中級採掘Lv3】

・採掘していたらムガン似の誰かに怒られる



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【中級採掘Lv3】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 1/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】

・デッカイ【虫遊び】&オッキイ【土遊び】


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