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第253話 商業ギルドでの再会

「おい、お前、止まれ」


「……??」


 畑の肥料をミクリさんに渡したあと、美容液の素材をもらいにマジョリカ薬房へ向かう。


 すると広場近くで後ろからプレイヤーに呼び止められた。あからさまな高圧的態度。こんなの嫌な予感しかしない。


 ──ここは【何も聞こえていません】で切り抜けるか…



「おい、そこの白馬に乗った変な格好のヤツ、お前だ」


 ぐ、白馬に変な格好……そんなの俺しかいないじゃん。これは逃げられそうもないか……うん、ここは平和に行こう、平和が一番。



「えっと……何かご用でしたでしょうか?」

「お前、その白馬、星獣だろ」


「はい、そうですけど……?」

「星獣なら、エア・ブランコ商会のロゴを貼ってないのはなぜだ」


 ……ロゴ? なんだそれ。


「ロゴって、ステッカーか何かですか?」

「ここラスプでは、星獣を街中に連れて入るにはエア・ブランコ商会に許可料を払う決まりになってる。ロゴがないってことは、無許可ってことだろ。商業ギルドで許可取ってこい」


 ――は? 許可料? そんな仕様変更あったの? 聞いてないんだけど。


「あ、すみません。久しぶりにログインしたんで知らなくて……」

「さっさと行け。次、ロゴなしで見かけたら拘束するからな」


「え、はい。行ってきます……」


 うーん……そういう決まりになったのか。とりあえずログで確認してみるか。



 ……ない。


 仕様変更のログなんて、どこにも見当たらない。ヘルプ機能で検索してもヒットしないんだが。



「ま、とりあえず商業ギルドに行ってみるか」


 パッパカパッパカ……



「ここは商業ギルドだ。用件は」


 入り口でまたプレイヤーに止められた。いや、感じ悪すぎるだろ。何なんだいったい。



「星獣のロゴをもらいに来たんですけど」

「入って右奥だ、行け」


 ぐぐ、こういうクソ上司を思い出す態度やめてほしいんだが。



「すみません、星獣のロゴをもらいたいんですが」

「はい、では星獣を計測します」


 NPCの受付嬢が、メジャーを手にアリオンの計測を始める。

 縦、横、奥行…なんか荷物の発送する時みたいだな。



「はい、大型Ⅱの部類ですので、400万Gとなります」

「……はい?」


「大型Ⅱに分類されるため、400万Gとなります」


 改めて丁寧に言い直されるが、いやそうじゃなくて。星獣を連れて街に入るだけで400万G? 「……はい(はあああ)?」 ってことです。


「400万Gって、高すぎません?」

「でしたら9万G/日の50回払いなども……」


「いや、払い方の問題とかじゃなくて、そもそも400万Gが高くないですか?ってことです」

「……」


「ってか、明らかに高すぎますよね。そんなの払えませんよ。リボも無理です。で、こんなの正式仕様じゃないですよね? ログ見ましたけど、情報載ってなかったです。どういうことですか?」

「……」


 俺の言葉に俯いて動かなくなる受付嬢。


 あ、しまった、こんなの思いっきりカスハラじゃん。……だめだな、ちょっとほんと病んでる。



「おいおい、兄ちゃんよ。エア・ブランコ商会に楯突くとは、やるじゃねえか……」


 自省していたら後ろから族風の荒々しい声がかかる。


 どうやらテンプレ展開に足を踏み入れてしまったらしい。しかもこのオラオラ感。なんかミーナのウェイブ時代の取り巻きを彷彿とさせ…る……ん? 取り巻き?



「……あれ、スプラ…さん?」

「え?」


 振り返ると、そこにいたのは……三獣士の一人、レオだった。


 おいおい、畑やめたってミクリさんが言ってたけど、またこんな族っぽいことやってんのかよ。


「レオ、お前……」

「(スプラさん、ちょっと場所変えましょう)」


 俺の耳元で小声にささやくレオ。


「変な格好しやがって、ちょっとこっち来い」


 レオは大声で叫ぶと俺をギルドの奥に連れていき、ドアの一つを開けて中に入る。続けて俺も入ると、レオがドアを閉めてカチャリと鍵をかけた。



「スプラさん! お久しぶりっす!」


 尻尾をバッサバッサと振りながら、直角にお辞儀するレオ。

 あー、これゼン爺対策に教えたやつだ。しっかり覚えてんのか。えらいえらい。でもな…



「変な格好のスプラさんですけど?」


 なんか事情があるのはわかる。が、変な格好呼ばわりとそれは別の話だ。


「あ、いや、そ、その……」


 しゅん、と尻尾を股の間に丸めるレオ。……まあ、面倒くさいし、もういいか。



「で、これどういうことなの?」

「はい……」


 レオは状況を語り始めた。


 …

 …


「ぷはー、やっぱ最高っすね、極凰発泡水……!」


 あまりに元気をなくしてたから一杯あげたら、超元気になった。

 ……素直というか、現金というか。


「そっか。農業ギルドが破産して、野菜を売れなくなったんだな。しかも店に売ろうとすると高額な税金がかかると」


「そうなんす。ジロもヤスも、あちこちの店回ったりプレイヤーに売ったりしてたんですけど、プレイヤーもどんどん減っていくし……で、野菜が大量に余って、困ってたところにエア・ブランコ商会から声がかかって」


「それで野菜と畑を商会に売って、その金をエア・ブランコに献上して今は用心棒か」


「構成員っすね。上から、商会長、商会メンバー、構成員、団員って階層があるんすよ。構成員はプレイヤー対応。団員は使いっ走りみたいなもんですね」


 うーん……なんか反社の香りがすごい。


「でも野菜作らないと街の食糧事情とかヤバいんじゃね? お店とかみんなやっていけてるのか?」


「スプラさんの定期購入契約がなかったら、たぶんどこの店も相当大変だったと思いますよ。野菜なんて今、価格3倍っすもん。他の食料も2倍以上。全部、南から来る行商から高額で仕入れるしかないんで」


「え、そんなに上がってんの? 税金、どんだけかかってんだよ」


「これ、構成員用のハンドブックっす。税率とか、エア・ブランコ商会の権利とかも書いてあるんで……」


 レオが懐から取り出した、小冊子を受け取る。ページをめくると、そこには驚愕の数字が並んでいた。


「食料品税率……85%!? その他……70%!? ……はぁああああ?」


 思考が一瞬フリーズしかけたわ。こんなもん、リアルでやったら暴動起きるレベルだぞ


「スプラさん、それだけじゃないですよ。露店出すのにも許可料100万Gが必要だったりするんですから。その上に税金も取られるんで……だーれも露店出さなくなっちゃって。おかげで満腹度の回復もままならないって感じっス。スプラさんの野菜が置いてある店だけは、コスパ的にぎり黒字でいけるみたいっすけど」


「……満腹度のコスパ、かあ……」


 満腹度を考えるとミーナの事がよぎる。あれこれ計算して…あれはあれで楽しくはあったけどな。


 ただ、飯食って赤字になると、一気にやる気が削がれるのも満腹度なんだよ。プレイヤーがいなくなるのも分かる気がする。


 ……そっか、赤字かあ、赤字…赤字…



~うちの部署の赤字要因はごく一部ですね。聞こえてますか、大森さん。もし耳が聞こえにくいようなら、またお休みして受診されても構いませんよ?~


 ……だあああ、誰が赤字要因じゃ! それに後から弁明が効く言い回しとかしてくんじゃねえ!



「……くそっ……よし、決めた…赤字なんかこの世界からなくしてやるわ……コスパ最高店だらけにしてやる」


 

 小冊子をレオに返して商業ギルドを出る。レオもついてきたそうだったがしばらくエア・ブランコにいるように伝えた。まあ、スパイ的な? ドジっぽいからちょっと心配だけど……





「ドリアさん、ゼン爺います?」

「はい、ただいまお呼びいたしますので、少々お待ちくださいませ」


 農業ギルド受付のドリアさんが、小気味良く奥へ入っていく。その数秒後にはゼン爺がシャキシャキと現れた。いや、変わったな農業ギルド。



「スプラさん、どうされましたかな?」

「ゼン爺、畑、買えるだけ買いたいんだけど」


「……買えるだけ、というと……残りすべて、ということで?」

「うん。全部まとめて、いくら?」


「ええと、ですな……」


 ゼン爺が懐から年季の入った帳簿を広げ、ゆっくりと指を滑らせる。いや、アナログかよ。


「5億4000万Gでございます」


「……はい?」


 ドリアさんが横から、あっさりと爆弾みたいな金額を口にしてきた。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・マジョリカ薬房へ行く途中にエア・ブランコ商会に絡まれる。

・商業ギルドでカスハラ

・三獣士のレオと再会

・税金の高さにビビる。

・満腹度の赤字から嫌な記憶がフラッシュバック

・世界から満腹度赤字をなくすために畑を買い占めようとする。

・とんでもない金額が提示される。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎奏術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】

成長──【秘薬Lv10】【採掘Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv9】【融合鍛冶Lv6】【特殊建築Lv4】【散弾狙撃Lv4】【ルーティンワークLv3】【極意の採取Lv2】【瘴薬Lv1】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【描画Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約800万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋&畑(中×1、小×1)

・癒楽房

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】

・デッカイ【虫遊び】&オッキイ【土遊び】

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