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第249話 復帰1日目 ただいまFGS

お待たせしました。投稿を再開させていただきます。

第三部完まで一日三話投稿となります。


P.S. レイスさんは今、主人公ログインに気づいていないためしばらく❖❖レイスの部屋❖❖のコーナーはありません。復帰3日目くらいから始まります。



 目を開けると良く見知った景色だった。癒楽房の懐かしいトレント香木の香りに心が落ち着く。


『ゆら♪』

『ヒン♪』


「ああ、ネギ坊、アリオン。ただいま。久しぶりだな」


 頭の上から聞こえるゆるい声。アリオンは鼻先をすり寄せてくる。変わってないんだな……二人とも。



 俺のカスハラから始まったFGS生活。2週間のプレイ後、セキュリティーAIであるSAIからFGS卒業を勧められた俺はリアル社会に戻って1か月頑張ってみた。で、その結果……再びお薬飲んでFGSに舞い戻ることになった。SAI、戻ってきたぞ!


 リアル社会でFGSの噂は聞いていた。あれだけ盛り上がってたのが、人気急降下。Z-stream社の存続すら危ぶまれていると。



『ゆら~♪』

「そうか、寝てたんだな」

『ゆらゆら?』

「うん、まあ色々あってな。また来ることになった」

『ゆら?』

「療養中。今回はちょっと長くなるかもしれない」


 今回も、前回同様にリハビリとしてのログインとなってしまった。そんな情けない話でも、ネギ坊は「ふんふん」とうなずきながら受け入れてくれる。


『ゆらゆら?』

「え、まあ、クソ上司は解決したんだけどな。別の上司が異動してきて、大変で」


『ゆら~?』

「あ、そうだなあ。なんて言うか、クソ上司の極寒バージョンって感じ? 美人なんだけどずっと冷たい視線で無視される感じかな? 俺が一番苦手なタイプ」


『ゆらゆら♪』

「はは、そうだな。もしかして氷魔法使ってたのかもな」


 天然系のネギ坊と話すと辛い経験もなんか和らぐな。



『ゆら~?』

「あ、ミーナはワーバットと一緒に留学中。オランダで教育システムを学んでる。しばらくは帰ってこないよ」


 ネギ坊からしょんぼり感が伝わってくる。まあ、気持ちは分かる。俺も正直寂しかったからな。




「……で、何するんだっけ?」


 ログインしたはいいけど、何をしていいのか思い出せん。なんだっけ?



『ゆらゆら!』

「あ、そっか、タンザさんの美容液か」


 ネギ坊のフォローアップが入り、ストレージから【大地の調合セット(グランドブレンダー)】を取り出す。



ピコン

『【大地の調合セット】を癒楽房にセットしますか? いつでも取り外しは可能です』


「おお、そんなことできんのか。知らんかったな。んじゃチョイっと」



ピコン

『セット完了しました。【大地の調合セット+】が使用可能です』



 …プラス? ま、いっか。とりあえずやって行こう。


 ネギ坊から癒楽草をもらって調合を始める。……だが、作り方が思い出せない。確か【乾燥】させて煎じて治癒草を入れるんだっけ?


 混ぜ混ぜして…


 ゴリゴリして…


 煮沸するんだっけ?


 えっと次は……




全治美容液オールセラム】品質8

 溢れる癒しの力は若き日のあの肌を取り戻す。

 効果:肌の遡及効果。最盛期に遡りその状態を維持する。



 ……なんか違うものができた。違う違う、これじゃない。



 タンザさんからの依頼のログを確認する。依頼されてるのは…



【愛弟子スプラ印の超菌美容液】×300

【マジョリカ印の超美容液】×1000


「おお、そうそう、愛弟子印にマジョリカ印。懐かしいな〜」


 懐かしんでると、調合台にアイコンが出る。


 これ、なんだっけ? チョン


「あ、そうじゃん、レシピから作れるんじゃん」


 現れたのはこれまでの作ったことのあるものリスト。その中に愛弟子印もマジョリカ印も見つかった。たが…



「グレー表示か。ってことは素材が足りてないって事だよな」


 足りない素材は…【活性炭】【毒出し草】【ブルーゼリー】【聖水】


「…多すぎだな」


 一気には無理なので、とりあえず材料の【毒出し草】を調達することに決める。毒出し草はその辺のフィールドに生えている手軽な薬草たからな。


 癒楽房のドアに手をかける。



「いや、待てよ。そういや…」


 確か、ゼン爺が農屋の花壇で薬草を世話してくれてたはずだ。そっちの方が早いな。


 ドアノブから手を離し、移動扉へ移動。扉を開けて農屋に入る。


 足を踏み入れたのはロフトになった農屋の屋根裏スペース。天窓からは暖かな陽射しが降り注いでいた。床ではネギ丸、ネギ玉、ネギコロが、気持ちよさそうに日光浴をしている。


『ゆらゆら~♪』

「みんな元気そうだな」

『ゆら♪』

「変わったことなかった?」

『ゆら~』

「……え、まじで?」


 ネギ玉が教えてくれたこと。──それはゼン爺とエリゼさんの契約解除だった。


 急いで屋根裏からハシゴを降りる。


 農屋の中は整理整頓されていたが、隅に追いやられたドリンクサーバーと、ぽっかり空いた空間がなんだか寂しい。


 ミクリさんを探して農屋を出る。すると、すぐに目につく雑草花壇。それほゼン爺が世話していた薬草花壇の変わり果てた姿だった。


 それを見て花壇での採取は諦める。「他だとどこか一番近そうか」と、記憶を辿りながら畑に向かう。


 畑を見渡すと、遠くにポツンと人の影が見える。



「あ、ミクリさーん!」


 畑にいたミクリさんに手を振ると、俺を見たミクリさんが手に持った農具を放り出して駆けてくる。


「スプラさーん! 良かったー、帰ってきたんだー!」


 そう言うミクリさんの瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。FGS…評判とは裏腹に表現力は感動するほど繊細になったようだ。



「ミクリさん、ごめんなさい、苦労掛けて。いろいろあったみたいですね」


「そうなの、ゼンさんもエリゼちゃんもいなくなっちゃうし、他の異人のみんなも来なくなってさ」


「そっか……え? 他のみんなも来てない? ってことは今、ミクリさん一人?」


 大きく頷くミクリさん。


 うわあ…まさかそんなことになってるなんて。三獣士もいないとは。そりゃ、涙も溢れる訳だ。


「じゃあ俺、今からギルドに行って雇える人探してきますね」


「うん、助かる〜お願い…」



 涙ウルウルのミクリさんに見送られながら、アリオンに乗って農業ギルドへ向かう。


 道中、周辺の畑の様子も確認していくが、ほとんどの畑が草だらけだった。プレイヤーの気配も全くない。お隣さんだった銀の斧のセリカさんの畑も草だらけ。


 その先もどこもかしこも畑らしい畑は一つとして見つからなかった。サクラたちが頑張って広めた畑プレイヤーも1人残らずいなくなっていた。


 荒れた畑の間を寂しい思いを抱きながらギルドへ向かう。たが、向かった先で思わぬことが起きる。



「あれ? ギルドがない」


 ギルドがあるはずの場所にない。記憶違いかと思い、経路を思い返してみるが間違いなくこの場所だ。だが、あの無駄にオフィスっぽかった建物は見当たらない。



「ってか、こんなところに倉庫なんてあったか?」


 アリオンから降りて倉庫に近づく。すると倉庫に小さな看板が掲げてあるのを見つける。そこに書かれてある文字…



「農業ギルド……え? 農業ギルド!?」


 看板に書かれてある文字に頭が混乱する。


 いやいや、意味が分からん。子供のイタズラか?


 周りを見渡すが人っ子一人いない。


「なにがどうなってるんだ…」


 整理されない頭のまま、とりあえず倉庫のドアを開けてみる。イタズラだったらドアなんて開かないはず…


カチャ


「……開くんかい」


 開いたドアからそっと中を覗き込む。すると真ん中に長机が一つ置いてあり、受付っぽい女性NPCが椅子に座っている。


 農業ギルドについても聞きたいし、とにかく入ってみることにする。



「あの、すみません、農業ギルドって…」

「ああ、はい。農業ギルドですけど」


 え? 農業ギルド? いやいやいや……


 ……え、マジで?


「ここが農業ギルド?」

「はい、そうですけど。何かご用でしょうか?」


 受付っぽい女性が面倒くさそうな顔をむけてくる。


 いやいや、おかしいおかしい。こんなんアイザックさんが絶対に許さないだろ。商業ギルドさながらなギルドだったんだから。


「あのう、用がないなら出口はあちらです」


 俺をさっさと追い出そうしてくる受付嬢もどき。なんか、夢を見てるような感じたけど、一応確認だけはセねば。



「ここが農業ギルドって事なら、住人を雇えますよね?」


「ああ、契約住人ですか……はい、こちらでーす」


 どうやら本物らしい受付嬢がダルそうに指で払うようにして画面を飛ばしてくる。


 スーっと俺の目の前に移動してくるウィンドウ画面。だがその画面を見て俺の頭は混乱する。


「……これだけ?」


 画面に表示されているのはたったの3行だけだった。


「今はそうなってまーす」


 ぐぐぐ、語尾の伸ばし方が地味に腹立つ。お薬飲んでなかったら帰ってたな、これ。



「あの、前はもっとこうズラッと──」

「今はそれだけです。いちゃもんつけるなら、人呼びますよ?」


 あ、久々にカチンときた。俺はこれでもFGSカスハラ第一号だぞ。いいのか怒らせて。



「じゃあ呼んでください」


 売り言葉に買い言葉。それを聞いて眉間にしわを寄せる受付嬢は、立ち上がって奥へ入っていく。すると、しばらくして声が聞こえる。……聞き覚えのある声が。


「まったく、こんな時に面倒くさい異人じゃと……え?」

「あっ」


「癒楽草! ……で、ではない草を生やしたスプラさん!」

「ゼン爺!? なんでここに!?」


 出て来たのは、ボロボロの服を着て疲れた顔のゼン爺だった。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・一か月ぶりのFGSログイン

・作成:【全治美容液オールセラム】品質8

・ゼン爺、エリゼ契約解除を知る。

・寂れた農業ギルドで寂れたゼン爺発見。



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

装備:

・決断の短刃─絆結─

・仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

・飛蛇の真道化靴【敏捷+53】


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv10】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv10】【特殊建築Lv4】


◆所持金:約1300万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]


◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

・赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

・赤猛牛革の鞍【耐久+12】

・赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

・【毒毒毒草】

・【爆炎草】

・【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:

・ネギ丸【月影霊草】

・ネギ玉【氷華草】

・ネギコロ【天雷草】



◆生産設備◆

・大地の調合セット


◆特殊所持品◆

・卵

・魔剣の未完成図面


◆所有物件◆

・農屋&畑(中規模)

・癒楽房

・極凰洞


◆契約住民◆

・ミクリ

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