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第240話 諦め

 俺を見つめる12の紫眼。


 完全復活して目の色も変わった始祖仙蜘蛛が俺を見る。



「奇遇だな。俺もイメージカラー紫なんだわ」


 【紫水晶のオープンフィンガー】に嵌まっている宝石を見せる。


 そんなものに全く興味がないとでもいうように、何の動きも見せない12の紫眼。



「んじゃ、相棒を返してもらうぞ」

『ヒヒーーン』


 アリオンの【躍動】からの【跳躍】で一気に距離を詰める。すでに強化ポーションの重ね掛けで強化済みのその動きはおそらくこれまでで一番だろう。ものすごい速さだ。



『……』


 しかし、そのアリオンの動きにも対しても全く動じない始祖仙蜘蛛。蜘蛛糸で持ち上げているミーナを今度は後ろへ隠すように移動させる。至極冷静だ。


 あちこち動かされながらもミーナはジッとして動かない。満腹度の減りを最小限にしているのだろう。



「腹いっぱいになったら余裕ですってか。しかも省エネモード。ふん、そっちがその気ならこっちにも考えがある。アリオン……」


『ブルヒヒン』


 だが、俺が伝えた作戦にアリオンが速攻で反対してくる。


 ま、そうだよな。普通ならありえないもんな、そんなこと。でもさ、だからこそ、学習される前に一度だけなら使えると思うんだよな。



「アリオン、やるぞ。いいな」

『ヒン』


 アリオンが渋々と了承してくれる。それじゃあやりますか。



「【一夜城】【一夜城】【一夜城】」


 アリオンが再び【躍動】。その動きに連動して【一夜城】を連続投下を始める。そして…



ドドカーーーーン


 始祖仙蜘蛛の両脇、一夜城で視界が遮られたその先で【爆裂ポーション】の大爆発が起きる。そして、爆発の前からすでに動き始めていたアリオンが爆発と同時に目の前の一夜城を突き破りポリゴンに変える。



 コンマゼロ何秒の世界。


 それが始祖仙蜘蛛が状況判断に要した時間。


 しかし、その時間があればいい。



 始祖仙蜘蛛に飛び込むアリオン。だがその背中に…俺はいない。



 三枚の一夜城で作った紫眼五芒星の死角。


 爆裂ポーションを両側に投げた俺は爆発前に移動を開始。


 片方の爆風の中をピエロ服の熱耐性で炎をしのぎ走る。


 そして爆風を抜けるとそこには…。




「黒曜ダーツ」


 スパン


 最後の黒曜ダーツが使用回数を全て使い切りポリゴンに変わる。



「ありがと…」


 ミーナが捕縛から解かれすぐに姿を消す。俺が手に持っていた焼きおにぎりはしっかりと持って行ったようだ。【グルメ】対応の特別製おにぎりだ。作っておいてよかった。


 ミーナが速攻で逃げたことは狙い通りだ。朝のすね方を見たら、こんな時でも戦うとか言い出すんじゃないかと少し心配だったが、冷静に対処できたな。


 覚醒を使い終わったミーナはただの敏捷特化。


 そのミーナには見えない蜘蛛糸相手は相性が悪すぎる。むやみに動き回ったら蜘蛛の巣に掛かりに行くようなものだからな。敵も既に学習してるだろうし、ここは退避が正解だ



DADADADAN!

『ヒヒヒーーン』


 始祖仙蜘蛛の四段攻撃を受けて吹っ飛ばされるアリオン。


 どうやら俺がミーナを助けている間に、アリオンが危険を負って気を引いてくれていたようだ。始祖仙蜘蛛の意識がこっちにこなかったのはアリオンのお陰だったか。



「紫毒ダーツ」


 カンカンカン…


 アリオンを逃がすために放ったダーツを全て避けずに脚で叩き落とす始祖仙蜘蛛。だが、俺には見向きもしてこない。


 

 ……マジか。もしかして、アリオンを先に倒せば俺も逃げられんと学習したのか。マズいな。これだけ離れてたらHP回復も出来ん。



『ヒヒーン』

DADADADAN!



 おおっ。危なかった。


 今度はアリオンが【守護Lv10】を発動し、ギリギリで四段攻撃を攻撃を避けることができた。アリオンの予測精度も上がっているのかもしれない。


 でも、このままじゃジリ貧、アリオンがやばい。どうする…どうする…



 DAN! DAN! DAN!


 焦りと緊張で思考が鈍くなってくる。と、そんな時に限って今度は始祖仙蜘蛛が見たことのない動きをしだす。アリオンの周りを回っているようだ。


 これはつまり…アリオンの予測に負荷を掛けるつもりか。


 今の状況でアリオンの予測が少しでも遅れれば、まず避けることは不可能だ。


 これは…次の一撃でアリオンが死に戻る。




『いいよ、来なくて。死に戻ったってまた会えるんだから』


 HPがレッドゾーンのアリオンから念話が届く。



 アリオン、お前、こんな時に念話とかやめろ。で、カッコつけてくんな。


 

 それにな。後で会えるからって、今を諦めて自分の星獣すら守らないでなにが契約者だ。



 ──そこで見てろ。



「あああああああ、こんなところに大きな卵がああああーーっ」



KIEEE


「蜘蛛なんかよりおいしいんだろなーー。俺は魚よりも卵派だなーーー」



KIEEEEEEE


「ああ、そうだ、焼こうかな。遠赤で中までホックホクに焼いちゃおうかなーー」



KIIIREEEEEE


「よっし、無骨石板セットぉー!! 点火ぁ!」



KIIIIIREEEEEEE


「んじゃ、スプラ割っりまーっす!! うおおおおーー、これが『ピエロ流大目玉焼きじゃーーーーい!』」



ピンポーン

『【雄叫び】が発動しました』



GUUUREEEEEEEEEEEAAAAA


 俺が卵を割るモーションに入ると【雄叫び】が発動。すると、それまで横目で見ていただけの始祖仙蜘蛛が一気に俺に向き直る。



『(アリオン、今だ、退避!)』

『ヒヒーーン』



 アリオンが始祖仙蜘蛛の間合いから一気に離れる。そして俺は今しがた散々いびり散らかした卵をストレージに仕舞う。流石にやり過ぎたかもな。悪かったな、怖い思いさせて。


 で、状況は揃った。


「ミーナもアリオンも逃げた後で、もうお前の相手なんてする訳ねえだろ」



ピンポーン

『格上のモンスターからの接触がありました。【逃走NZ】が発動可能です。発動しますか?』



 そう、これだ。俺がリオンに騎乗しだしてから一切出て来なくなったピンポンさん。リオンが捕縛されるとすぐにやってきたピンポンさん。


 現状、パーティーメンバーのミーナもワーバットも戦闘から離脱。そして最後のパーティーメンバーのアリオンも離脱した今、必ずやってくると信じていた。



「じゃ、【逃…」

DAN!



「え?」



 俺の胸に突き刺さる始祖仙蜘蛛の脚。


 細く、そして長い。関節の先だけで4mはあろうか。


 槍のようなその脚先。


 それが一瞬で目の前に現れた。



 弾け飛ぶHPバー。




 あちゃあ、この感じ…一週間ぶりか。


 あの時は空飛ぶ昆布にやられたんだっけな。


 ってことは、こうやってモンスターの攻撃で死に戻るのは二週間ぶり。


 リスの体当たりの次はこの化け物の脚とか。


 流石に間を飛ばし過ぎだろ。



 あーあ、体がポリゴン化していく。


 この光が消えた時、俺は癒楽房にいるんだろうな。


 装備もスキルもなくなって。


 癒楽房は称号のきっかけになった施設だしな。


 うん、たぶん残るだろ。  


 なんか疲れたな。


 こりゃ、今日はログアウトか。


 ああ、今日は朝からいろいろあったな。


 でもミーナも助けられたし。


 いい一日だった。










「もう、会うたびにこうやって庇護欲を掻き立ててくるんだから、スプラちゃんたら」





❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「因果律のダイナミズム…先輩よくわかんないっす」


「つまり、俺たちはこれまで大木の葉っぱを見ていたってことだ。一枚一枚の葉っぱから小枝の動きを予測していただけ。小枝は風が吹きゃ揺れるし、時には折れる。そのたびにバタバタ動き回っていた。だがな、そいつは存在するんだ。何にも動じない巨大な幹。そしてそれを地面で支える広大な根がな」


「先輩、どうしちゃったんすか。全然言ってることが分かんないっすよ」


「葉っぱから予測するから混乱する。俺たちは間違っていた。幹を、根を見るべきだったんだ」


「幹? 根?」


「小僧がおかしかったんじゃない。因果律のダイナミズムが小僧を活かし続けた。そうか、そういう事か。信頼ってのはそういう事だったのか」


「(だれか助けくださーい)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ミーナ救出成功

・アリオン救出成功

・スプラ逃走失敗。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:多能工

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv10】new!【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv10】【特殊建築Lv4】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:



 ◆星獣◆

 名前:アリオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:【友との約束】

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】

    :ネギコロ【天雷草】


《不動産》

 EX農屋&中規模畑 5.7億

 癒楽房 4.9億


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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