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第239話 因果の糸

ドドドドドドカーーーーン



 隆起する地面から現れたのは3匹の極仙蜘蛛だった。



「はあああ? いやいやいや、仲間呼ぶっても流石にエリアボスはだめだろ。しかも3体って」

『ヒヒン』


 流石に今回は強気のアリオンからも強い同意の意志が伝わってくる。そうだよな、流石にこれはナシだよな。



「これは始祖仙蜘蛛どころじゃなくなったな…」

「おいおいおい、スプラ、なんだ、この蜘蛛祭は」



 ん? この声は。


「あ、ケンクロウさん。なんかいきなりエリアボス3体も出てきちゃって」

「こいつらがエリアボス? って、やっぱりお前だったのかよ、討伐したの。…そっか、こいつがエリアボスか」


 ドワーフ顔負けのぶっとい腕を組んで極仙蜘蛛を睨むケンクロウ。



「っし、1体受け持つわ」

「え、受け持つ?」


「おう、エリアボス級ならポイント馬鹿デカいだろ。お前ら、このデカいの1体貰ったぞー」

「「えええええっ」」


 ケンクロウの独断で極仙蜘蛛と戦う羽目になった銀の斧部隊から悲鳴に似た歓声が漏れる。



「こら、弟子ども、お前らこいつ倒したらいきなり星獣契約も十分狙えんぞ。しかも高レア星獣だ。欲しくねえのか」

「や、やります! やらせてください!」


 おお、なんか一人威勢のいい奴がいるな。



「お、俺もやります!」

「わたしも!」

「俺も!」


 なんか知らんが一人を皮切りにみんなやる気勢になりおった。ん? ケンクロウが見えないところでグッジョブサインしとるな。あ、先陣切った奴が返してる。さては仕込んでたな、ケンクロウ。



「(うまく乗せてやるのも一陣の役割だからな)」


 俺がいぶかし気に見てたらケンクロウがメッセージを送ってきた。



「目が弱点ですけど、糸とか見えないんで気を付けて…」

「目か。よっしゃ、見えない糸なら見えるようにするまで」


 ケンクロウが極仙蜘蛛の前に出る。



「よおおし、じゃあ、あそこのデカブツをいただくぞ。サラマンダー頼む!」

「いいけど、毎度毎度、自分の星獣みたいに使わないでくれる?」


 銀の斧のメンバーが火蜥蜴の星獣に指示を出すとノソノソと前に出て行く。



 ドオオオオオーーー

 ブオオオオオオオーーー


「おおお、スッゲー。巨大火炎放射器」


 ケンクロウが前に延べた手のひらから広範囲に炎が噴き出す。そしてその隣では俺の半分くらいの大きさの火蜥蜴がパカっと口を開けケンクロウと同じくらいの炎を吹き出した。


 蜘蛛糸によって防がれてはいるが、炎の動きで糸の様子がありありと見て取れる。これなら蜘蛛糸の不意打ちとかも防げそうだ。


 うん、いいな。他の契約星獣の攻撃とか初めて見たかもしれん。



「おら、お前ら、あの8個の目が弱点だ。1個でも潰した奴には特製武器作ってやる。気張っていけー!!」

「「おおおおおっ」」


 ケンクロウの檄に全員が乗せられ、極仙蜘蛛に突っ込んでいく。この感じなら大丈夫そうだな。




「スプラさーん」


 ん? この声は… サクラか? 



「おお、サクラ……って、どうした?」


 サクラ、モモカ、ミズキ、モクレンがなんか衣装を着ているんだが?  赤、ピンク、黄色、白のヒラヒラって……地下アイドルか何かですか?



「あ、この衣装ですか? これは気にしないでください」

「いや、気にしないというか…大丈夫なの、それ?」


「こう見えて耐久マシマシなんで」


「あ、ピエロ先輩っすか?」


 サクラたちの後ろから狐獣人のプレイヤーが覗き込んでくる。


 えっと……誰? これまでの人生、俺には慕われるような後輩がいた時など一度もないぞ。



「あ、彼はその、ファンクラブというか…」

「俺、モモシロサンダーZのファンクラブ1号のサトリっす。二陣なんすけど、イベントとかだるくてしてなかったんすけど、サクラたんに頼まれて参上したっす」


「えっと、ごめん。全然わかんないだけど…」


「わたしが説明します!」


 元気印のモモカが手を上げる。はい、じゃあ、モモカさん。



「広場で明日の露店の準備してたらスプラさんの緊急招集のワールドアナウンスがあって、それで応援に来たくて。でもわたしたちだけじゃたぶん力になれないと思ったから、広場でスプラさんのあのジュースを配って人を集めてたんです」


「え、ジュースって癒楽極凰発砲水?」


「はい、すみません! 露店オープン用にいただいたのに勝手に使っちゃって。でもそれで彼らと仲良くなれて。で、なんか装備とかも作ってくれて、ファンにまでなってくれたんです」


 ……ファンにまでなってくれた? ってかこの衣装作ったのこの人? マジ?



「あ、俺、アキヤスって言うっす。某テレビ局で衣装担当してんすよ。チャチャッと作るの得意なんす。広場で駄弁ってたらサクラたんたちがジュース配ってて。で、それ貰って飲んだら限界突破した味とのど越しにびっくりで。それでこんなジュースをタダで配っちゃってるこの子らがちょっと心配になっちゃって。それでまあ、世話人の真似事してるっす」


「世話人…」


「ま、世話人がてらにプロデューサーの真似事もって感じっす。ちょっとやってみたかったんで。ってな訳で、サクラたんに頼まれたんでやりますよ。あの、デカいのやればいいっすか?」


 アキヤスという狐獣人がすっごくダルそうに聞いてくる。ああ、そういや職場にこういうのがいたな。すっごくダルそうに仕事してるのに、きっちり仕事してくるやつ。せかせか仕事してるこっちが馬鹿らしく思えたっけな。



「あれ、エリアボスだった奴ですけど大丈夫ですか? 糸とか見えないですよ」

「ああ、大丈夫っす。酸袋持参してますから何とでもなります。ってか弱点とかってあの目とかっすかね?」


 そうそう、こうやって「なんでいろいろわかってんだよ」って突っ込みたくなる感じだったな。



「そうですね。あの青い目が弱点で全部潰せば勝ちです」

「了解っす。じゃあ、あそこの1体貰っときまーす。サクラたんたち行くっすよー」


 アキヤスが他の獣人何人かと一緒にサクラたちを引率していった。


 ……プロデューサーっていうより、ありゃマネージャーだな。ああいうタイプがついてるならあの四人娘も安心だろ。あの4人は俺としてもちょっと心配だっただけに、こりゃお任せだな。



「ってことは、残りは1体……あ、だめだ、ミーナがもうすぐ飢餓状態だ。くそ、どうする…」


「あの…スプラさん、絶対俺たちのこと忘れてますよね」


 ミーナの状況と極仙蜘蛛への対処を考えていたら背後から声がかかる。


  ん? 俺たち? あ、この声は。



「おお、レオたち、来てたの?」


 三獣士が揃って立っていた。


 別に忘れていたわけではない。ないが、エリアボス相手に三獣士に助けを求めようという考えはこれっぽっちもなかった。すまん。



「……えっと、その後ろは農家さん?」


 全員が鍬やらレーキやらを担いでいる。これから一揆でも起こすんかって感じだ。



「ええ、こいつら生意気に広い畑持ってるくせにいつも農業ギルドで駄弁ってばっかりいるんで連れてきたんですよ」


 農業ギルドで駄弁ってる? 駄弁るならもっといい場所があるだろうに。ま、確かに無駄にきれいではあるが…。ってか、農業ギルドって楽しいか?



「えっと、大丈夫ですか? 無理やりとかだったら別にいいんで…ってあれ? どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「え、あ、い、一度だけ」


「なんだよ、お前らスプラさんに会ったことあんの? 早く言えよ、そういうこと」


 なんか三獣士が感じ悪くなってる気がする。前のごろつきに戻ってないか?



「え、あ、その、前に畑を見させてもらってた時にチラっと…」


 畑を見させて……あ、思い出した。



「あの時のエリゼさんのストーカ……追い散らされた方たちですね!」

「ああ? お前らエリゼ姐さんにストーカーしてたのかよ」


 ジロが農家さんたちにメチャクチャ凄んでるだが…


 言っとくが、お前らも俺を【逃走NZ】に追い込んだことあるからな。ネギ坊に手出そうとしやがって。


 会うたびに絡んできやがったお前らより、ストーカーして追っ払われてるほうがまだマシまであるぞ。あと、エリゼさんを姐さん呼びすんな。



「あの、この子らに連れてこられただけなら、戻ってもらっても大丈夫ですよ。あれはエリアボス級なので危ないですし」

「あ、いえ、その……」


 農家さんたちが何やら頭を突き合わせてなにやら相談事を始めだした。



「あの、実は俺たち今借金地獄なんです。農業ギルドででっかい畑買って農具や肥料も買って、栽培始めたんですけど、野菜が思うように育たなくて。ギルドへの納品ももうすぐ始まるのにとても出荷できるような品質にならないんですよ。あのピエロ君にこんな図々しいこと言っていいものかどうかわからないんですけど、畑のこと教えていただけないでしょうか?」


「借金地獄?」


「ちょ、お前らこの状況でなにスプラさんに頼んでんだよ」

「ジロ、ちょっと、いいから」


 そっか、まさかJ○ローンで被害者が出ていたとは。これじゃあ、俺がヤバいビジネス紹介して借金負わせたみたいでなんか罪悪感を感じるな。



「じゃあ、こうしませんか。皆さん弟子いないようですし、イベント参加されてないんですよね? だとすると、この戦闘に加わってもあんまり意味ないと思うんですよ。なので、別の報酬として、NPCの農業のプロからの農業レッスンを受けられるってのを報酬にどうですか? 絶対に倒さないといけないとかじゃないんで。あそこで共食いしてる細い蜘蛛を倒すまで相手をするってことで」


「「おおおおおおおっ」」


 おおお、すごい。さっきまでどこか死んだ魚の目をしていた農家さんたちから腹の底からの歓声が上がった。



「ぜひやらせてください!お願いします!」

「うん、わかりました。じゃあ、気を付けることと弱点だけ伝えときますね…」



 三獣士に連れられて農家さんたちが極仙蜘蛛に向かっていく。農家さんの蜘蛛退治…ふむ。



「よし、これで厄介なのは片付いた。あとは、始祖仙蜘蛛からミーナを助けるだけだな」



 ずっと静かに子仙蜘蛛を共食いしている始祖仙蜘蛛。こっちに対してミーナを盾にするように位置させその場から動かない。いや、動く必要がないのか。……子仙蜘蛛の方から始祖仙蜘蛛に寄っていってる。



 くそ、こんなんじゃすぐに完全回復しちまう。こうなりゃ、強引に行くしかない。



「黒曜ダーツ」


 スパンスパンスパン



 ミーナの前に展開される糸の壁。三重の壁に阻まれ地に落ちる黒曜ダーツ。



「やっべ、危なかった。」


 すぐさまアリオンが黒曜ダーツ回収に向かう。拾い上げた黒曜ダーツを確認する。



【狂気な元道化師のベリーショート】1/10



「ギリギリ1回残ったか」


 仙蜘蛛との闘いでずっと大活躍だった黒曜ダーツ。未練だとか狂気だとか馬鹿にしてんのかって説明だったが、このギリギリ残った最後の1回がその未練の形なのかもしれない。



「最後の1回だ。絶対に決める」


 俺が黒曜ダーツに気持ちを込めた丁度その時、それまで身動き一つなかった始祖仙蜘蛛の頭が起きる。そしてその顔がこちらに向けられた。



 ──完全な五芒星。10個、いや、真ん中に増えた分も合わせて12個の赤紫の目が俺を捉えた。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、第二エリアでモンスターリソースが大量に使われているせいで他の地域のリソースまでもこのエリアに寄ってきてます。このままだとイベント後にまたしばらく揺れ戻しが続くことになるかもです」


「……そうか、なるほど、そういう事だったのか。くっくっく。こりゃおもしれえな」


「はい?」


「……マスターの言ってたことがこういう事だったとは」


「えっと、先輩……どうかされました?」


「ライス、見ろ、この見たこともないデータの動き。全く予想すらしてなかった現象が、エリア全体を支配しつつある」


「見ろって。ずっと見てますよ」


「見たことも予測したこともないデータが一斉に流れていく。一見、何の秩序も法則性もなさそうなのに、全体としてはなぜか最適化に向かう……これが因果律のダイナミズム。マスターの求めたFGS…」


「(あれ? 先輩の稼働率が一気に下がった? どういうこと?)」


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・銀の斧、四人娘、三獣士に助けられる。

・黒曜ダーツ残り1回。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:多能工

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv10】new!【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv10】【特殊建築Lv4】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:



 ◆星獣◆

 名前:アリオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:【友との約束】

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】【守護Lv10】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】

    :ネギコロ【天雷草】


《不動産》

 EX農屋&中規模畑 5.7億

 癒楽房 4.9億


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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