第233話 対 堕仙蜘蛛2
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字報告も大変助かっています。
よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!
【大地の調合セット】
大地の祝福の力が満ちる至高の調合セット。多種多様な力が完全なバランスで調和する。
生産物品質+3
稀に大地の祝福が付与される。
……大地の祝福ってなんだろな?
『ヒム』
「あ、ごめんごめん。じゃあ、早速調合な」
アリオンから『早くしないと』催促され、そそくさと調合に入る。
【特殊HPポーション(大地の祝福)】品質10
HPを100回復し、その後2分間、毎秒2ずつHPを回復する。
クールタイム:効果終了後から30秒
大地の祝福:HPと共にMPも同量回復する。
【特殊HPポーション】品質10 ×10
HPを100回復し、その後2分間、毎秒2ずつHPを回復する。
クールタイム:30秒
【特殊中級キュアポーション】品質10 ×5
あらゆる中級までの状態異常を回復する。
クールタイム:15秒
なんか【菌創薬】も使って作ったら思った以上のものができた。HPポーションにはHPリジェネ効果付き。キュアポーションは本来それぞれの状態に対応したキュアポーションが必要のはずが、中状態異常なら何でも効くものに。そして大地の祝福というものが付いたHPポーション。MPリジェネは嬉しい効果だ。
「よし、準備は整った。じゃあ、次はあの増えちゃった目をなんとかしないとな」
俺は視線を天井に上げる。そこにあるのは無数の繭たち。おそらくは堕仙蜘蛛に敵対してくれるであろうモンスターたち。もしくはあの極凰の子供たち、星獣極凰の眷属たちだ。
「リオン、やるぞ」
『ヒヒン』
皆まで言わずとも理解してくれるアリオン。その場から壁に向かって跳躍すると壁を蹴り、二段跳びで更に跳び、そして天井まで俺を運ぶ。
繭に手が届くその1秒ほどの間に数個の繭を割くと、繭から出て来たのは熊型が3匹だった。
「こんなところにいたのかよ、熊型~」
あれからずっと探してたんだからな。堕仙蜘蛛に攻撃したらさっさと珍味寄越すんだぞ。
俺の下心を理解してかしないでか、俺にはなんのリアクションもなく、地面に落ちると速攻で堕仙蜘蛛へと向かっていく。
が、しかし、3匹の熊型は堕仙蜘蛛の場所まで行く前にポリゴンになって消えてしまった。しかもドロップを残さずに。
「ちょ、どういう事? 猛毒でポリゴンになるのは理解できるがドロップなしとは?」
……もしかして堕仙蜘蛛か俺からのダメージじゃないと戦闘参加とは認められないとか?
結局、堕仙蜘蛛にはダメージなし、ドロップもなし。これでは繭は全くの無意味だ。どうする…
『ブルヒヒン』
「ぐ、ここまできたか」
アリオンが首を大きく振って嫌がっている。もうすでに毒ガスが横穴にも充満してきたらしい。
「アリオン、ここにいてもジリ貧になるだけだ。一か八か打って出るぞ」
『ヒヒーーン』
アリオンが極凰洞に向かって走り出す。俺は特殊HPポーションを1本飲み干す。すぐに猛毒状態になるのならリジェネ効果は事前に持っておきたい。アリオンにも同じように特殊HPポーションをかけておく。
「あ、師匠!」
俺を見つけたワーバットが変な踊りをしながら俺に手を振ってくる。
この最悪の状況でもマイペースを崩さんとは。どんなメンタルしてんだよ…。
「ワーバット、あの紫の目が弱点だ。何か狙える方法あるか?」
「ああ、あの紫の。なんか領域が展開されるやつみたいですね」
……まあ、言いたいことはわかるがこれはあんな高度なものではないぞ。
「違う、ただ蜘蛛糸で目をガードしてるだけだ。酸で何とかできないか?」
「ああ、了解です。やってみます!」
そう言ってその場でうずくまるワーバット。なんだ?
「師匠、成功です! 湖の水に【酸付与】できました!」
「……は?」
湖に酸付与? なんそれ。ちょっと何言ってるのかわからん。
GUOOOOOOOO
だが、湖の中を徘徊していた堕仙蜘蛛が急に苦しみだす。その付近の水面からは猛烈な煙が立ち上っている。
「はっは、これぞ赤き竜人の奥義、【酸の海】」
…マジか、この人。どんな頭ならそんな発想が出てくんだよ。
ワーバットが勝ち誇ったかのように胸を張る。目の前の苦しむ堕仙蜘蛛とふんぞり返る竜人の姿はどう見ても地獄の番人にしか見えんのだが…。あと海じゃなくて湖な。
「ははは、それそれそれ」
ワーバットが酸の湖の水を堕仙蜘蛛にかけまくる。堕仙蜘蛛の蜘蛛糸の包帯からシュワシュワと音を立てながら溶けていく。てっか、ワーバットよ、なぜ酸の中に入って平気…あ、【酸耐性】か。
「あはははは、それそれそれー」
GUOOOOOOOO
……目を瞑ってセリフだけ聞いていると海辺で遊ぶ女子とペットのようにも聞こえるのだが、目を開けると地獄の惨状。ほんとになんなんだ。
しかし、ワーバット、言っておくが、お前が着ているその羽衣にも蜘蛛糸は使われているんだぞ。
俺がそんなことを思っているそばからワーバットの羽衣からも白い煙が立ち上り始める。
「うわああああ、装備がーー!!」
慌てて酸の湖から出るワーバット。ちょっとだけぼろくなった羽衣を見て慌てている様子。
……ま、あれのことは置いといて、この状況だよな。
堕仙蜘蛛は今も白い煙を上らせながら湖の中の徘徊を続けている。どうやら逃げるとか攻撃するとかのアクションはないらしい。毒をまき散らしながらの無敵徘徊がこの堕仙蜘蛛の唯一の攻撃ということか。
GUOOOOOOOOOOO
ひと際大きな堕仙蜘蛛の叫び。見ると、湖の一番深い場所に入った様子。体の
2/3が酸に沈んでいる。そして立ち上る大量の黒い煙。……え? 黒?
「ワーバット、様子がおかしい。一旦距離を取れ」
「大丈夫ですよ、師匠。酸でも毒でもどんとこいで……す…がはっ」
「ワーバット!!」
その場で膝をつくワーバット。すぐにステータス画面で状況を確認する。
状態異常:【劇毒】
「劇毒? こりゃだめだ、アリオン、助けに行くぞ」
『ブルヒヒン』
アリオンが首を振り『無理言うな』と拒否。そうだよな、劇毒状態になったらワーバット助ける前に死に戻るもんな。
『ゆらゆら!』
「あ、そうか。【全治ポーション】か」
頭の上のネギ坊から『【全治ポーション】を作れ!』との指示が出る。すぐに大地の調合セットを取り出し【全治ポーション】を作成する。
完成した【全治ポーション】をすぐにワーバットにトレード申請で送る。
「だめだ、反応しない。たぶん視界が曲がるとかそんなレベルじゃないんだろう。意識に影響があるのかもしれんな」
セキュリティ上、流石に激痛とかはないと思うが、以前の恐慌状態の事もあるし、気分の悪さとか睡眠的な意識障害も在りうる。
ここはこの全治ポーションに賭けるしかないんだが……ダメか。
~「大丈夫だから。うつっちゃうからお兄ちゃんは来なくていいから」~
熱で真っ赤な顔して部屋に閉じこもる妹。
くそ、なんで妹のことが思い浮かぶんだよ。いつもいつも頼りない兄貴でしかなかったな、くっそ。
「アリオン、ここで待っててくれ」
『ブルヒヒン』
「必ず戻ってくるから」
『…ヒン』
心配して止めるアリオンをなだめて準備に入る。ここは薬師のゴリ押しで行かせてもらう。
キュアポーションで猛毒を回復。さらにHPポーションを呷りリジェネを追加。最後に全治ポーションを両手に持つ。
「そろそろ頼りない兄貴も卒業したいんでね」
スプラ印をストレージから直接使用して筋力・耐久・器用を上げる。そして黒々とした煙が満ちる極凰洞へ力強く飛び出す。
黒い煙の中を息を止めて走る。しばらくすると視界の隅に現れる呼吸バー。点滅しながら減っていく。全力で走っているからか減りが速い。
呼吸バーの色が水色から黄色に変わる。
ワーバットは……まだあんなところか。
思ったより走るスピードが出ない。ステータスを見ると微毒状態。どうやら息を止めてても少しは入ってくるらしい。知らない間に体の動きが阻害されていたようだ。
徐々に動きがぎこちなくなる体。足がもつれる。手足の動きもバラバラだ。こんな時になぜか初ログインの時を思いだす。あの時はいいフォームだった。でも遅かったな。
呼吸バーが黄色からオレンジに。ここでさらに息苦しさが出て来た。ワーバットは……あと10mってとこか。
いよいよ体が動かなくなってくる。8m、7m、6m……だめだ、苦しい、息を吸いたい。
しかし、呼吸バーが赤くなる。ここで終わりか…
~息は吸おうとするな。苦しくなったら吐け。それであと少しはもつ~
父親の迷言が頭に過る。
「ふうー」
アバターの肺に空気があるのか知らんが、息を吐いてみる。すると呼吸バーがオレンジ色に戻った。
3m、2m、1m、ゼロ
「飲め!」
手に持つ【全治ポーション】ワーバットの口に押し込む。喉がゴクリと鳴る効果音と共に目を見開くワーバット。
「ししょ…フガフガ」
「(バカ、しゃべんな)」
ワーバットの口を押さえて首を振る。ストレージから剛力ポーションを使用する。101に上昇した筋力でワーバットの羽衣を掴む。狙いはアリオンの待つ黒煙のないエリア。
「(投擲)」
「どひぇ――っ」
筋力さえあれば大きなものでも投擲できる。飛んでいった先のアリオンがうまくワーバットを受け止めてくれた。
「さ、俺も戻らない…と……がはっ」
急に胸が苦しくなる。手足が震えて全治ポーションを落っことす。拾おうとしても拾えない。なんだこれは。
すぐにステータス画面を確認する。
【劇毒状態】
呼吸困難状態となり、四肢の自由が効かなくなる。生産、戦闘、採取採掘不可。
呼吸バーが尽きた時に死に戻る。
これが劇毒状態……ダメだ。もう呼吸が…
視界が歪む
「視界が歪むなんて書いてないだろ」とどうでもいいツッコみが頭を過る俺の視界は90度回転し、渦巻きのように徐々に捩じれていく。
……最後の最後で今まで散々使ってきた毒毒毒草の効果を自分で体感することになるとはな。
二日酔いに似た何とも言えない気持ち悪さ。
外側から糸を引くように捩じれていく視界。
その渦巻き状の視界の中心に見えるのは旨そうな肉。
……肉? は?
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「先輩、とうとう来ちゃいました劇毒。これまだまだまき散らしますよ」
「ぐぬぬ。まだ小僧の全治ポーションがある」
「あ、なんか助けに行っちゃいました」
「おおおい、小僧、違うだろ。お前が行ってどうする。お前はせっせと全治ポーション作りまくって…」
「あーあ、スプラさんまで劇毒状態」
「だああ、もう、なんでもっと効率よく動かねえんだ、人間てやつはよお」
「やっぱりこれは無理ですって。せめて一旦レイドボス戦止めて調整したほうが」
「……ぐぬぬぬ」
「はい、先輩。緊急呼び出しボタン。マスター呼びましょ」
「ぐぬぬぬぬ……小僧でも今回ばかりは流石に無理か…」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・転職:【多能工】
・習得:【菌創薬Lv10】【特殊建築Lv4】
・制作:【大地の調合セット】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工 new!
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)
】
:飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv10】new!【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv10】【特殊建築Lv4】new!
所持金:約1300万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>
〇進行中クエスト:
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:【友との約束】
スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】
◆契約◆
《従魔》
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【紫艶草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
:ネギ玉【氷華草】
:ネギコロ【天雷草】
《不動産》
EX農屋&中規模畑 5.7億
癒楽房 4.9億
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




