第232話 対 堕仙蜘蛛1
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ピンポーン
『称号【自然保護の魁】の効果が発動しました。絶仙蜘蛛の復活の狂暴化が復活の希少種化に変化します。現絶仙蜘蛛の特殊な状態を検知しました。絶仙蜘蛛の希少種化が特殊希少種化に変化しました』
「へ?」
平常運転のピンポンさんの登場に我に返るワーバット。紫のカーテンに覆われた絶仙蜘蛛の前でキョトンとしている。
「ワーバット、危ない、離れろ!!」
「え? え? うわーーーー!」
数秒の沈黙の後、ワーバットの目の前の絶仙蜘蛛に変化が現れる。
巨体に掛けられていた濁紫のカーテンがふわりと持ち上がる。するとカーテンの端からシュルシュルと伸びていく幅を持った蜘蛛糸。帯状になった蜘蛛糸が毒々しい色に染まった包帯の如く螺旋状に空中に伸び上がっていく。
見方を変えれば新体操のリボンのようだが、その色と質感はまさに呪われた包帯。カーテンのすべてが包帯となった後、今度は地面でひっくり返っている絶仙蜘蛛に向かっていく。
包帯が絶仙蜘蛛の下に入ると、その巨体がフワリと持ち上がる。すると今度は絶仙蜘蛛の体にぐるぐると巻き付いていく包帯。そのすべてを巻き付くしたところで包帯の動きは止まった。
全身を紫の包帯で巻かれた絶仙蜘蛛。その動かなくなっていた脚がピクリと動く。
2本、3本と動き出す脚。永い眠りから覚めたミイラが自らの体の動きを確かめるかのように順番に脚が動き出す。そして最後の8本目の脚が動き出したところでそれまでばらばらだった動きの脚が連動した動きを見せ始める。
濁色の包帯に巻かれた巨体がその場でゴロンと起き上がった。
目は包帯に隠れてしまっているが、それでも8つ紫の光が包帯越しに確認できる。どうやら目も完全に回復したようだ。
そしてその存在が示される。
【堕仙蜘蛛】
天から堕とされた仙なる蜘蛛はその恨みによって世界を呪った。
堕仙蜘蛛は前身で受けた最も脅威的な攻撃を糧にして進化する。
堕仙蜘蛛属性:劇毒
え、つまり、ワーバットの毒肝攻撃が最も脅威的だったということか。で、劇毒属性の特殊希少種に進化したと……どうやらここに来て最悪の事態を招いていしまったらしい。
「ななな、なんですか、この気色悪いミイラ蜘蛛は」
ワーバットよ。説明書き見てわからんか? その物体はお前の行動が呼んだ因果だ。いや、そもそも調子に乗って毒肝なんて焼いていた俺が招いた因果でもある。
GUUOOOOOOO
堕仙蜘蛛のこもった叫びが響く。その振動で細かく波打つ湖面の中を進んでくる堕仙蜘蛛。
「し、師匠、水が」
ワーバットが示す先、そこは堕仙蜘蛛が足を踏み入れた水。その水がまるで絵の具でも混ぜたように紫色に変色している。透明感しかなかったあの極凰洞の水がドブ川さながらに濁っていく。しかもその水からゴボゴボと沸き起こる紫の気体。
……あれは特にヤバそうだ。
「アリオン、あの紫の気体から距離を取って」
『ヒヒーーン』
アリオンが湖から遠ざかる。
GUOOOOOOO
ボロボロの包帯を引きずるように移動する堕仙蜘蛛。そこにさっきまでような敏捷さは欠片もない。
しかし堕仙蜘蛛が進んだ跡がとにかくヤバい。体が引きずられて移動した後にはべっとりと紫の液体が付着している。そして地面を溶かしているのかそこから紫とも茶色とも言えない腐紫色の煙が立ち上がっている。
「くそ、このままじゃ、避ける場所すらなくなっちまう。アリオン、こうなりゃ、こっちから先制攻撃だ」
『ヒヒーン』
堕仙蜘蛛から距離を取っていたアリオンがその場で堕仙蜘蛛に向き直る。
「狙いはあいつの真横。いつもの脚でガードしにくい場所から狙う」
『ヒヒーーーン』
アリオンが汚染されて狭くなった地面を縫うように走る。幸い堕仙蜘蛛の動きは鈍い。アリオンの動きにはついてこれていない。
「よし、見えた。紫毒ダーツ!」
俺が放ったピエロダーツが散弾して真横から堕仙蜘蛛の目を襲う。
ダダダダダダ…
「よし、命中した! ……ん?」
俺が放ったダーツが包帯越しに堕仙蜘蛛の目に当たっていく。しかし、堕仙蜘蛛にはその反応がない。こっちを見る気配もない。これは……もしかして効いてない?
正面に回って見ると、堕仙蜘蛛の包帯越しに見える紫の目は全て揃っていた。俺が放ったダーツは全て目を覆っている包帯にに引っかかってブランブランしている。
「そういや、あの包帯、蜘蛛糸でできてんだったな。刺突耐性あんじゃん。ってことは……あいつ蜘蛛糸の鎧を着たって事か?」
俺が来ているピエロ服と同じ耐性付き。これじゃあ、刺突属性のダーツどころか、爆裂ポーションも凍結ポーションも効かない。
「ってことは、唯一対抗できる武器って……これだけか」
ストレージから黒曜ダーツを取り出す。
しかし、このダーツは最終兵器になるんだよな。使用回数は残り5回。全部命中させても8つの目には全く足りん。むむむ、詰んだか。
「ぐ、なんだ?」
急に視界がゆがむ俺。
この感じは……状態異常か! ステータス画面で確認するとそこには【猛毒】の文字。HPが1秒ごとに1減っていく。
急ぎ周囲を確認すると、すでに湖は完全に毒湖と化し、ボコボコとあちこちで毒ガスを放っていて、この極凰洞全体が紫の靄で覆われてきている。
堕仙蜘蛛はただただ極凰洞内を徘徊している。一見医師がないようにも見えるが、よく見ると、汚染されていない場所を狙って移動しているのがわかる。
……動きが遅いと思って油断していた。あいつの攻撃は直接攻撃ではなく、俺を仕留める環境を仕上げることだったらしい。
そうこうしているうちにも視界がグニャリとつぶれて回転する。
「これはだめだ…」
『ヒヒーン』
俺がアリオンの首にもたれかかると、状況を察したアリオンがすぐさま場所を移動する。唯一汚染が及んでいない場所、横穴へと逃げ込む。
「アリオン、ありがとな。とりあえずHPポーションで回復して…解毒しないと」
HPポーションを呷り、すぐに調合を始める。
美容液作りで余っていた【毒出し草】品質8と【聖水】で【中級キュアポーション(猛毒)】を作成して飲み干す。すると見る見るうちに視界が戻り、体の動きもよくなる。
「ふう、ヤバかったな」
HPが10しかない俺にとっては【毒】攻撃は鬼門と言っていい。しかも今回は上位毒の【猛毒】。
普通のプレイヤーなら品質の高いキュアポーションを持っていれば、HPポーションで回復しながクールタイムを待つことができる、
だがHP10の俺にはクールタイムをやり過ごすための時間がない。クールタイム中に再度猛毒異常にかかればい1分もかからずそこで終わるのだ。
「あ、そういやワーバットもHP10だったよな…」
ステータス画面でワーバットの様子を確認する。すると未だに毒状態になっていない。HPも10のまま。「なんで?」と不思議に思ったが、スキルを確認したら納得した。
【毒耐性lv10】
毒状態に対抗する力。Lv8以上で猛毒状態にも抵抗しLv10で無効化する。
北の山地でありとあらゆる攻撃を受け続けてきたワーバット、いつの間にか毒攻撃なんて食らっていたらしい。
それならここはワーバットに時間を稼いでもらうか。
念のため【遠見】で確認すると、堕仙蜘蛛の前で変な踊りをかましている様子。うん、ここは任せよう。
じゃ、俺はどうするか。今できるのはこれしかない。
ピンポーン
『特定行動により【菌創薬Lv9】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特殊上級職業【多能工】に転職しました。スキル【特殊建築Lv1】を習得しました』
【多能工】に転職するために【菌創薬】をカンストさせておく。【創菌薬師】じゃなくなったらレベルが上がりにくくなる可能性があるからな。
そして【多能工】になり覚えたスキルが【特殊建築Lv1】だ。
【特殊建築Lv1】
生産施設を建設することを可能とする特殊技術。
実は癒楽房をリフォームしてくれた鍛冶師たちがこんな話をしていたのだ。
「俺たち6人集まれば特殊建築も可能だ。どんな生産施設も作って見せる」
そして【多能工】の説明文。
【多能工】
多数の建築技術を持つ建築作業員。一人で特殊建築が可能。
つまり、多能工とは《《一人で生産施設を作り上げることができる》》特殊上級職ということになる。
今、俺がストレージに所持している調合設備は簡易調合セット。流石に品質勝負に簡易セットでは厳しい。クールタイムが短ければ短い程死に戻り率を下げるのだから、ここはより上位の設備が欲しいところ。
ということで、さっさと作っていく。目指すは中級以上の調合セットだ。
【特殊建築Lv1】を使うと、生産施設作成のテンプレートが現れる。
リストの中の『調合施設』を選択。
すると、調合器具ごとの添加素材の選択画面が現れる。
液体の容器として三種類。加えて加熱器にすり鉢にもそれぞれ素材を選んでいく。
容器Ⅰ…【聖銀インゴット】【紫水晶】
容器Ⅱ…【聖魔インゴット】【瑠璃】
容器Ⅲ…【清玉鋼】【真珠】
加熱器…【紅玉】
すり鉢…【鬼人の角】
作業台など…【トレント木材】【トレント香木】【黄水晶】
以上を選択。
「じゃあ、これでオッケーっと。中級調合セット来い!」
ピンポーン
『特定行動により【特殊建築Lv1】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【特殊建築Lv2】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【特殊建築Lv3】のレベルが上がりました』
【大地の調合セット】
大地の祝福の力が満ちる高級調合セット。多種多様な力が大地の力で結び付き、完全なバランスで調和する。
・生産物品質+3
・稀に大地の祝福が付与される。
……大地の祝福? なんか急にファンタジー感が増したな。
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「先輩、これ、プレイヤーの大量死に戻りだけじゃ終わりませんね。あんなの空湖に流れ出たら瞬時に生態系が終わっちゃいますね」
「大丈夫、小僧の全治ポーションがあるさ」
「あるさって……でも、毒の大本がいる限りダメじゃないですか」
「大丈夫、なんとかなるさ」
「なるさって……ちなみに空湖の水って第三エリアにも流れていってますよね」
「大丈夫、王都があるさ」
「王都…あるさって……あ、スプラさんなんか作ってます。はっ? 品質+3? 大地の祝福? ランダム効果付与?」
「だーーー、もうーーー、小僧、お前ランダム付与とかやめろーー! 予測ができねえじゃねえかあーー!!」
「(うっわー、めっちゃ嬉しそう…。この人、いったい何がしたんすかね)」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・転職:【多能工】
・習得:【菌創薬Lv10】【特殊建築Lv4】
・制作:【大地の調合セット】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:多能工 new!
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)
】
:飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv10】new!【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv10】【特殊建築Lv4】
所持金:約1300万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>
〇進行中クエスト:
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:【友との約束】
スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】
◆契約◆
《従魔》
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【紫艶草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
:ネギ玉【氷華草】
:ネギコロ【天雷草】
《不動産》
EX農屋&中規模畑 5.7億
癒楽房 4.9億
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




