第230話 対 絶仙蜘蛛2
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ギシャー--ーーーー!!!
体を大きくびくつかせた絶仙蜘蛛がこちらを向き直る。
その右端の5つの目から光が失われ、残りの11個の目が一気に赤みを増していく。
さらに右側の脚の様子がおかしい。小刻みに震えている……これは微毒状態のエフェクト。
震える脚からすぐさま糸を持ち替えようと動く絶仙蜘蛛。
KIEEEEEEEEEEEEEEN
一瞬の隙。
先にその隙によって蜘蛛糸に捉えられた極凰が、たった今俺が作り出したその隙を見逃すことはなかった。
極凰から放たれる圧倒的な焔気。
蜘蛛糸によって雁字搦めにされていたその全身の羽毛が膨らみ、翼に力が満ちる。
引きちぎられた蜘蛛糸はポリゴン化しながら地に落ち消えていった。
KIEEEEEEEN
二度三度と大きく翼を羽ばたく極凰。巻き起こる紅い風。その壮麗な翼で宙を打った極凰が一気に吹き抜けを突っ切って空と舞い上がっていった。
『星獣の信頼を得し者よ、見事であった。我も汝の力を試すとしよう』
極凰からの意味深なメッセージが届く。
これって……え? ヒュペリオンの時と同じって事? 最後だけオーバーキルで締めてあげるから頑張れってこと? いやいやいや。
ギーシャギシャギシャギシャーーーーー!!
極凰が飛び去り薄暗くなった洞内に怒りに満ちた奇音が響く。
見ると、すでに真っ赤に染まりあがった11個の目が俺を睨み殺すほどに明減している。
しかし問題は絶仙蜘蛛の背後。
【危険察知NZ】が大きく警鐘を鳴らすそこには見上げるほどに高く浮かび上がる真っ赤なカーテン。量が多すぎてもうカーテンにしか見えなくなった蜘蛛糸が遥か上空から俺を見下ろす。
どうやら物量で圧倒する気らしい。
「さすがにこの糸量はマズいな…アリオン、避けれる?」
『ヒン』
いつも強気なアリオンからは『やってみる』との反応。アリオンらしくない応えだが、気持ちはよくわかる。だって、もしこのどデカいカーテンが上から覆ってきたらここ極凰洞じゃ逃げ場がないもんな。
「ほらほら、蜘蛛さんこっちら、手のなるほうへーー!」
そんな俺の状況を察してか、ワーバットが大声で絶仙蜘蛛の気を引こうとしてくれる。だが、目を5つもやってしまったからには俺へのヘイトは相当なものだろう。そう簡単には…
「あああーーー、目が赤くなってるじゃん。ええええ、もしかして?」
ギシャ?
お? 今、なんか反応したか?
「あーあ、完全にパクっちゃってるじゃん、これーー。その図体で目赤くしちゃだめよ――」
ギシャギシャ
おお、めっちゃ気にしてる。内容とか理解してんのかな。
「ここは腐った森ではないんですよーー? そんなことしてたら子供をいたぶられて気球で吊るされちゃいますよーー!!」
ギシャギシャギシャギシャーーー!!!!!
おおおお、めっちゃ怒った。そうだよな、確かにあのシーンは見てられんかったもんな。
だが、ワーバット、世の中仮に思ってても言ってはダメなことってのがあるんだぞ。それを超名作に対して一番エグイところを突いてくるとは……うむ、なかなかやりおる。
あいつ、【逆撫NZ】との相性バッチリだな…。
ギィーーーーーシャーーー!!!
絶仙蜘蛛がいきり立ってワーバットに向き直る。その瞬間に俺の視界から危険反応が消えていく。ワーバットの【逆撫NZ】とプレイヤースキルの完全勝利だ。
ギシャーーー!!
ワーバットに向けて放たれる大量の蜘蛛糸。赤いカーテンが下から解体され太い糸の束となってワーバットを襲う。
それをマシマシになった敏捷で躱していくワーバット。だが、この極凰洞の狭さと水上を移動できないワーバットが逃げ切るのは難しかったらしく、数秒で腕と足が糸に巻かれてしまった。
「ワーバット!」
「師匠、大丈夫ですよ~。耐性スキル鬼積みしてますから~」
そう言うワーバット、体のあちこちが糸に巻かれてるにもかかわらず、引っ張られても全く動じない。じりじりと数㎝ずつ足がずれていくくらいだ。
……耐性スキルって便利なんだな。
「了解。じゃあしばらく時間稼ぎ頼む」
「オッケー発砲水!」
意味不明な返しをしてくるワーバット。ま、死なないワーバットだし、あの感じなら暫くは大丈夫だろう。
ワーバットが絶仙蜘蛛の気を完全掌握したことで俺とアリオンはあっさりと空洞に駆け込むことができた。
始めは暗くて何も見えなかった状況が目が慣れてくると周囲の様子が見えてくる。
だだっ広い天井。そこには全面びっしりと敷き詰められた無数の繭があった。
「これ、薄暗い中で見るとぞっとするな」
ハチの巣に卵がびっしり入っているのは見たことがあるがそれがだだっ広い天井一面にあるとか。見る人が見たらトラウマものだろう。
「じゃあ、アリオン、繭を割いてくから天井まで跳んでくれる?」
『ヒン』
アリオンが跳躍し壁を蹴る。さらに空中を蹴って二段跳びをする…
「うわあっ」
おお、なんだ?
背後からワーバットの叫び声が聞こえる。それを受けてアリオンがすかさず二段目の跳躍の向きを変えて極凰洞に飛び出す。
「げ、マジか」
そこには糸で完全な繭にされ湖面にプカプカ浮きながら絶仙蜘蛛によって引き寄せられているワーバットがいた。
これ…スキルが発動していないってことだよな?
「そうか、繭にされるとスキルは使えなくなるのか……え、スキル使えん? あれ? そんなの俺にとったら……詰みじゃん」
スキルだけで生きてきたFGS人生。ここでスキルなしとかになったら俺は何もできなくなるのだが?
「って、今はそれどころじゃないな。それっ」
ワーバットを手繰り寄せる絶仙蜘蛛に向けて毒ダーツを連続狙撃。散弾して100本以上に分裂して絶仙蜘蛛の11個の目を襲う。どこか一つでもダメージが入ればさらに微毒にできると思ったのだが…
カンカンカンカンカン……
100本すべてのダーツがさっきまで震えていたはずの前脚によって弾かれる。どうやらもう回復してしまったらしい。リザードドッグは戦闘が終わるまでずっと微毒だったんだがさすがは仙蜘蛛の親分といったところか。
キシシシシシシ
勝ち誇ったように俺に向き直る絶仙蜘蛛。その背後には再び赤いカーテンが展開される。
繭モンスターを助け出せていれば、やりあってる隙をついて爆裂ポーションで一気に片づけられるかとも思ってたんだが……こうなるといよいよ打つ手がない。いや、マジでどうしよ。
プルプル
と、そんな焦り散らかしてる状況でなぜかフレコが入る。なんだ? 戦闘中のフレコはできなかったはずだが…ってワーバットかい!
パーティーメンバーなら話は別だ。
『師匠、すみません、ドジしちゃいました。でもわたしのことは気にしないでください。こう見えても暗いとこは得意ですから』
「暗いとこ得意って…」
~「暗くたって平気だもん。暗いとこ得意だもん」~
そういや、小さい妹とお化け屋敷に行ったとき、あいつもこんなこと言ってたよな。で、結局涙と鼻水だらけになった妹をおんぶして出て来たんだっけ。あの時の妹すごい顔してたよな。
「くくくっ…」
ギギ?
「??」
なんだ? 絶仙蜘蛛が急に動きを止めたんだが?
『師匠、実はわたし暗いとこ全然平気なんです。まったくもって大丈夫ですから』
ワーバットから聞いてもいないのにやたらと大丈夫アピールが入る。
ったく、『実は』ってなんだよ。そんなもん、苦手だって言ってるようなもんだろ。ってか、妹を彷彿とさせてくるのやめろ。あいつ、そんなこと言ってからのギャン泣きだったからな。お化けのほうがビビってたわ。
「くっくっくっく」
ギギギギ?
「……??」
ん? なんだ? 俺が笑うと絶仙蜘蛛の動きがぎこちなくなるんだが?
ピンポーン
『特定行動により【寸劇Lv7】のレベルが上がりました』
……別に一人コントしてる訳じゃねえんだけどな! …と思いつつ。
「ぐふふふふ」
ギギギギギ?
ピンポーン
『特定行動により【寸劇Lv8】のレベルが上がりました』
「ふっふっふっふっふ」
ギシャギシャ?
ピンポーン
『特定行動により【寸劇Lv9】のレベルが上がりました』
「だーはっはっは」
ギシャー--!!
ピンポーン
『特定行動及び【雄叫び】【寸劇Lv10】により【虚仮脅しLv1】を習得しました』
【虚仮脅しLv1】
大したことがないのものを大したものに見せる。
……非常にモヤるスキルを習得したな。でもここはこのまま行かせてもらおう。
「ふふふ…うりゃっ」
ギシャーー!!!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv1】のレベルが上がりました』
俺が怪し気かつ勢いよくストレージから取り出した《《ただの》》【栗】。それに対してオーバーリアクションを示す絶仙蜘蛛。なにこれ、楽しい。すっごく警戒してるみたいだし、ここはとことんやってやろう。
「フフフフフ」
おもむろにストレージから【大自然に焦がれ生きる男の無骨石板】を取り出し、着火。その上に栗をコロコロと乗せてやれば【火加減の極み】が一気に石板を加熱する。
すぐに遠赤ホクホクの甘栗が出来上がった。
「できたあーーー!!」
ギシャー--!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv2】のレベルが上がりました』
そしてこの皮を剥くと、なんと中からできたのはかの有名な…
「これが甘栗だ―――!!」
ギギシャーーー!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv3】のレベルが上がりました』
「これをどうするのか……こうするんだーーー!! パクリ」
ギシャギシャギシャー--!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv4】のレベルが上がりました』
…
…
「はあはあはあ、こ、これで、さ、最後。み、見るがいい、この大きさ、そしてこの新鮮さ。プリップリのこの感触。これこそかの空湖のヌシが(毒)肝なるぞーー!!」
ギ ギ ギ ギシャー--!!!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv8】のレベルが上がりました』
「これをなんと、この無骨石板で…………焼きまーーす!!!」
ギシャギシャギシャギーーーーシャ!!!
ピンポーン
『特定行動により【虚仮脅しLv9】のレベルが上がりました。特定行動および【虚仮脅しLv10】により【一夜城Lv1】のスキルを習得しました。【一夜城Lv1】【土いじり】【石工Lv10】【危険察知NZ】【描画Lv1】、建設における主要5分野におけるスキルの習得および既定のスキルボリュームを確認しました。特殊上級職【多能工】が解放されまました』
【一夜城Lv1】
相手の前に一瞬で建築物を建てることができる。建築物の大きさはレベルによる。建築物の耐久は1で固定。
【多能工】
一連の建築技術に精通する特殊上級建築者。一人で特殊建築が可能。
……ちょっと、ごめん。整理する時間をください
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「あーあ、先輩、いくら知的所有権っても流石にこれは敏感過ぎじゃないです?」
「だよな。でも訴えられたらすんごいお金かかるだろうしな。安全安心設定ってことなんだろ?」
「でもこれじゃあ、ただのお馬鹿ボスですよ」
「だよな。なんでレイドボス戦がこんな温い空気になってんのかさっぱり理解できん」
…
「あ、虚仮脅しですって」
「……なあ、俺たち何見せられてんだ?」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・妹を思い出して不気味に笑う。
・習得:【寸劇Lv10】【虚仮脅しLv10】【一夜城Lv1】
・解放:【多能工】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:アリオン[★☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:創菌薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)
】
:飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv10】new!【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv9】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【虚仮脅しLv10】new!【一夜城Lv1】new!
所持金:約1300万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>
〇進行中クエスト:
◆星獣◆
名前:アリオン
種族:星獣[★☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:【友との約束】
スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】
◆契約◆
《従魔》
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【紫艶草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
:ネギ玉【氷華草】
:ネギコロ【天雷草】
《不動産》
EX農屋&中規模畑 5.7億
癒楽房 4.9億
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




