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第228話 呼ぶ声

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も大変助かっています。

よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

「じゃあ、そっち伸ばしてください」

「はい」


 資産話の時には全く気配を消していたタラコが作業に入るとすぐに手伝ってくれた。



「師匠、蜘蛛糸再入荷でーす」

「あ、糸の収集はもういいから、ワーバットもしばらく手伝ってくれる?」



 大量の仙蜘蛛の糸を集めてくれていたワーバットも戻ってきて、これから対仙蜘蛛戦の特攻武器を作ることになった。


 今から作るのは『底引き網』だ。


 釣りキチメンバーが100人以上いるみたいだからみんなで一斉に網漁をしようという訳だ。みんな空湖のバーベキューの時に網漁したそうにしてたし。仙蜘蛛の糸が有り余るほどある今しかできないだろうからな。



「じゃあ、まず、糸撚りから始めるから見てて」


 仙蜘蛛の糸を3本を撚っていく。糸を手のひらで擦るようにしてやると糸がクルクル縮れたようになる。それを3本作って搦めて1本にまとめていくのだ。



「わかりました。じゃあわたしやりますね」


 真っ先に始めるタラコ。


 ワーバットよ、先輩弟子の模範をみてしっかりやりなさい。ふむ。


 タラコとワーバットが糸撚りをしている間に、セリカさんとセメントモリにはすでに撚ってある糸を網目状に結んでいってもらう。ログアウトした時に編み針なる便利な道具も調べて作ってある。これがあると、糸を通しては伸ばしてという面倒くさい工程を無くすことができるのだ。



「じゃあ、お二人ともお願いします」


 網作りを任せたら、俺は身体強化ポーションの調合に入る。ネットAIに聞いたら底引き網はすっごく肉体的に大変なんだそうだ。大量であればあるほどに重くなる。だとしたら、今回の仙蜘蛛の超大群の重さは凄まじいものになるだろう。身体強化は絶対に必要になると思うのだ。



「では、始めます」

『ゆら』

『ヒン』


 おお、アリオンがこのノリに乗ってくるとは。絶対にこういうのしないと思ってたのに。意外だ。


『ヒヒン』


 あ、はいはい。『早くやれ』と。うん、慣れるまでは頑張ろう。


「では草全部」

『ゆら』


「仙湖の水全部」

『ヒン』


「骨粉の三種のほう」

『ゆらら』


「完成!」

『ゆら!』

『ヒン!』



【身体強化ポーション】×100




「では、時間もあるので、ついでに…清玉インゴット」

『ゆら』


「羽」

『ヒン』


「完成!」

『ゆら!』

「ヒン」



【悩める道化師のトルピード】10/10 ×100



ピンポーン

『癒楽房における生産経験値が規定値を超えました。施設値、生産経験値が規定を超えましたので癒楽房の格式が上がります』



≪癒楽房Ⅱ≫

施設値:303 (格式Ⅲ必要施設値1000)

生産経験値:4078 (格式Ⅲ生産経験値98000)

・建物内でのHPMP回復量3倍

・1回/日のランダム素材

・生産物品質+1




ピンポーン

『ワールドアナウンス。FGS内で初めて生産施設の格式レベルを上昇させたプレイヤーが現れました。当該プレイヤーには【文質彬彬ぶんしつひんぴん】の称号が送られます』



【文質彬彬】

・1回/日のランダム素材→2回

・生産物品質が稀に+2



……はい? 格式? そんなシステムあんの?


「スプラ君? もしかしてだけど、今のワールドアナウンス…」

「え、あ、いや。癒楽房の格式が上がったらしくて。生産施設には格式とかあるんですね」


「……ちょーーーっと、その話詳しく教えていただけるかしら?」


 あ、やべ、セリカさんまた尋問官の顔してる。



「うんうん、ってことは生産施設には生産活動によって得られる生産経験値と施設の充実ぶりを表す施設値があって、そのどちらも規定値を超えると格式システムが解放されるってことかしらね。そりゃ、4.9億もなっとくだわ」


 セリカさんが顎に手を添えて何やら考えている。ってか、この人今、4.9億とか言わんかったか?



「ごめん、ちょっとフレコするわね」


 そう言ってセリカさんはステータス画面をチョイチョイ。


『………』


 相変わらずフレコの内容は聞こえないんだな。と思ってたらフレコが終わったようだ。



「スプラ君、800万Gでどう?」

「……?」


 えっと、何の話だ? は、まさか癒楽房を800万Gで売れと?



「今の施設の格式の情報、ケンクロウが800万Gで買うって言ってるの」

「えっと? 情報を…ですか?」


「うん、そう。あ、ちなみにトレードで購入した情報に関しては再販や口外は出来ないから安心して。システム上できない仕様になってるのと、無理にしようとすれば即管理AI案件だから」

「あ、はあ。……え? 800万?」


「あとは今回の一連の爆弾情報は全てトレード申請するから。タラコちゃんもゴリラ君もね。それぞれのお財布事情と情報の価値に従って算出しとくから」

「え、金はいらないですよ」


「だめ。いくら親しくてもその辺を蔑ろにしたらそこから関係は崩れるの。それに見えない貸し借りを増やすほど後で心を悩ますわよ。ケンクロウみたいに。今回はわたしがやっとくからスプラ君は了承するだけ。いい?」

「あ、はい…」


 なんかタラコとセメントモリに申し訳ないな。「勝手に情報教えといて金取られんのかよ、詐欺じゃん」とか思われてないかな……チラッと。



「スプラさん、大丈夫ですよ。こんな爆弾情報をただで貰っちゃうほうが後々怖いですから。トレードで縛ってくれた方がありがたいです」


「わたしもです。実はスプラさんのクエストで薬屋の薬房にいるって掲示板に書き込んじゃって大騒ぎになったこともあったんで。あ、でもスプラさんの名前は出してませんから。なので、わたしもトレードで縛ってくれる方がいいです」


「あ、そ、そうなの? でも嫌だったら大丈夫だから…」

「だーめ。はい、トレード作っといたからスプラ君はさっさとこれを承諾する」


「あ、はい……ん?」


『ゆら?』

『ヒン?』


「なんだ?」


 ネギ坊とアリオンが何かに反応している。で、俺にもなにかが聞こえる気がする。



「なに? 金額に不満があったら遠慮なく言ってね」


 セリカさんが気を遣ってくれているがちょっとそれどころではなさそうだ。さっさとトレード画面を全て承諾する。



「セリカさん、ここ後を頼めませんか? 網ができたら外壁の上で仙蜘蛛釣りしてる釣りキチっていうクランのサンペータさんに渡して欲しいんです。あとこの身体強化ポーションも」

「釣りキチもサンペータも知ってるから大丈夫だけど、なにかあったの?」


 うん、なにか……あったようだ。



「ワーバット、極凰洞行くぞ。すぐに出発するから準備して」

「え、あ、はい」


 癒楽房と底引き網作りをセリカさん達3人に任せて、ワーバットを連れて薬房を出る。すると、南東方向、湖の先の崖の上から吹き上がる赤い光。宝石のように輝くあの赤い光は……極凰だ。



「急ごう」


 アリオンに乗ってすぐに向かう。



「えええ、なんですか、アレ」

「極凰洞で何かあったらしい」


 筏の上からワーバットが叫ぶが、視線の先の情景を見る限り何かあったというレベルではなさそうだ。



「なにかって…」

「危険かもしれないからこれ渡しとく」


 身体強化ポーションにスプラ印、HPポーションを譲渡する。こりゃ、イベントポイント、相当マイナスになってそうだな。


 でもそんなことはどうでもいい。


 なぜなら、さっきから伝わってくるこの感覚だ。怒り、恐怖、心配、そんなネガティブな酷い感情が波のように何度も押し寄せてきているのだ。


「リオンが『極凰の元に行け』って言ってたのは、これのことだったか…」



 隠し通路を通って崖の向こう側に出ると、アリオンは勢いそのままに空中へジャンプ。空中の足場と崖を交互に蹴りながら崖を降りていく。ワーバットは爆上がりしたステータスとリアルスキルによって崖をヒョイヒョイと降りてくる。


 崖を下る事2分ほどでワーナーが真っ赤になって待ち構える足場に到着する。



「我は……パクリ」


 ワーナーには悪いが今はゆっくり相手をしている暇はない。手を引き抜こうとすると手がするッと抜ける。



「よくぞドーーーーーーーーーン」


 すぐにワーナーの前に移動して吹っ飛ばされる。もちろんアリオンが【跳躍】と【二段跳び】で助けてくれる。



「我は偉大なる守護者、罠のワーナーであーーーる」


 最後の決めゼリフをドヤ感マシマシで言い放つワーナーの声。それを背後に聞きながら坑道をアリオンが疾走する。俺がワーナーの相手をしているうちにどうやらワーバットも追いついて来たようだ。



 そして坑道を抜けた先の極凰洞。



 そこには湖の中心の小山で全身の羽根を逆立てて怒り狂う極凰の姿があった。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「視点カメラ、湖畔よーし、小島よーし、空中よーし」

「(先輩、もしかしてゴブリンジェネラル戦の時もこんな感じだったんすかね…)」


「ムービングカメラ、作動よーし……?? はああああああああああー、格式システムだとーーーー!!! なんでコイツはいつもこう大切な時に限ってワールドアナウンスを。ちっとはそれに振り回される他のプレイヤーの事も考えろやーーー!」

「(一番振り回されている人が目の前に…)」


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・癒楽房の格式システム解放

・称号【文質彬彬】

・極凰の声を感じて極凰洞へ向かう。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv4】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv9】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】new!

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:



 ◆星獣◆

 名前:アリオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:【友との約束】

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】

    :ネギコロ【天雷草】


《不動産》

 EX農屋&中規模畑 5.7億

 癒楽房 4.9億


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ

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