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第226話 鑑定団

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も大変助かっています。

よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

「お待たせしました~」

「お、おう、早かったな……湖の上を…えっと、ネギ?」


 アリオンが筏を曳きながら湖から回ってケンクロウが手を振る湖畔に到着した。


 償いをしたいというタラコとできれば他にも何人かを湖経由で街まで運ぶつもりだ。


 なのでケンクロウのネギ坊への視線は全力スルーさせてもらう。



「じゃ、行く方は乗ってください」

「あ、あの、スプラさん!」


 タラコがずいっと前に出る。



「本当にごめんなさい。スプラさんがSSRクエストを紹介してくれたのに自分勝手なことした挙句に評価1なんてつけちゃって。本当にすみませんでした」


 深々と直角どころか膝に脚が付くんじゃないかってくらいのお辞儀で謝罪してくるタラコ。初日のプンプン怒って薬屋を出て行った姿とのギャップにこっちもたじろぐ。



「あ、いやいや、あれは俺も説明不足だったんで。マジョリカさんの性格わかってたのに説明しなかった俺が悪いから。もう少し一緒にいてマジョリカさんにも説明したらよかったかなって」


「今日は師匠にも許可貰ってるんでガンガン手伝わせてください。何でもしますんで」


 タラコがすっごいやる気の満ちた顔で見てくる。そっか、何でもするのか。



「こらこら、女の子が何でもしますなんて言ったらだめよ」


 俺の心を読み透かしたように口を挟んできたのは、女性プレイヤー。あれ? でもこの人どこかで見たことあるような……誰だっけ? 銀の斧の鍛冶工房にはいなかったはずだけど。



「こんにちは、スプラ君。一応、はじめましてって言う方がいいのかな?」


 なんとなく年上感のある女性プレイヤー。そうなんだよな、はじめましてのはずだけど、たぶんどこかで会ってるんだよな。



「スプラ君の畑の隣で農園をやってるセリカです。改めてよろしくね」

「あ、ああ、そうですよね! そうそう、お隣さん」


 俺の反応にケラケラと軽う笑うセリカさん。なんか大人の余裕が感じられる。



「で、今日はタラコのこと、本当によかったの? 怒ってないの? 嫌だったら嫌って言ってくれていいのよ」

「んぐ」


 そう言われてタラコが唇をかむ。うん、このからかい方、確実に年上だな。



「あ、いえ、大丈夫…というか、実は手伝ってほしいことがあって、丁度人手があったらいいなって思ってたところだったんで」


「あら、そうなの? 何する予定?」

「仙蜘蛛の糸でちょっと作りたいものがあって」


「へえ、ってことはこっちにも作業場はあるのね。ギルドかしら?」

「いえ、俺の工房というか、薬房兼工房なんですけど」


「え? “俺の”ってことはもしかして?」

「ええ、こっちでも薬房が手に入りまして。無茶苦茶ボロボロだったんですけど、さっき住人の鍛冶師さん達がリフォームしてくれて。なんか鍛冶工房も一緒に作ってくれて、薬房兼鍛冶工房って感じですかね」


「へえ……そっか、じゃ、わたしも行こうかしら。ケンクロウ、わたしスプラ君と一緒に行くわ。あとお願い」

「な、ちょ、俺だって」


 ケンクロウが慌てるが、セリカさんは何食わぬ顔。



「弟子をわたしに放り投げて山地で散々遊んでた人がいたっけなあ。何の成果もなく鉄だけ消耗して戻ってきた人もいたっけ。それなのに獣人の隠しパラメータ情報はしっかり聞いていった人もいたなあ」

「だー、わ、わかった。わかったから」


 ケンクロウがあっさりと折れた。こりゃセリカさんが何枚も上手なようだ。



「んじゃ、決まりね。行くのはタラコちゃんとゴリラ君とわたしでいいかな。筏に乗れるのそれくらだろうし」


 ちゃっちゃと仕切り出すセリカさん。二人を筏に乗せて自分も乗り込む。



「じゃ、後はお願いね~」


 セリカさんの軽やかなあいさつでアリオンが走り出す。湖上を跳ねるように筏が進んでいく。ケンクロウのやれやれ感を背に受けながらアリオンが癒楽房に向けて湖上を疾走していった。




「到着でーす」

「あー、楽しかった~。こんなところでトーイングができるなんて、ラッキーだったわ」


 セリカさんがもっと速くって急かすからアリオンが飛ばしまくり、筏は湖面で跳ねまくり、そのたびに後ろから歓声が上がっていた。


 なんか、この人FGS楽しんでるよな=。


 とりあえず、まだフレンド登録していないセリカさんの登録を済ませる。じゃないと入れないからな。



「へえ、こんな広い場所にポツンと一軒家かあ」

「あ、この一帯も全部セットだったんです」

「へ?」


 なんか、一瞬で静かになったな。やっぱりお得だよな、こんな敷地。



「スプラ君、この一帯って……この一帯?」

「…? ええ、この建物が建っていない一帯ですけど」


「ええええええっ!」

「いやいやいや、スプラさん。『一帯ですけど』じゃないですよ」

「すっご」


 セリカさんが驚き、なぜかセメントモリがツッコんでくる。タラコは遠慮気味に驚いてるな。



「はああ、なんか掲示板の空気感に今なら納得できるわ。そりゃ、ああなるわよね」


 掲示板の空気感? 納得? 何のことだ?



「スプラさん、畑やってますよね。この広さの畑が一体いくらすると思ってます?」


 なぜかセメントモリが説教くさい態度で攻めてくる。なんかキャラが変わってるんだが?



「いや、いくらと言われても買ったことないしな……あ、でもケンクロウの工房が何千万かだったっけ?」


「そう、うちの仮クランハウスの購入代金は4000万よ。で、畑は中規模で100~2000万ほど。場所と品質によるわね。因みにスプラ君のログハウスは今のところ畑とセットで9000万Gって試算されてるわ。しかも高度スキル持ちのNPCが専属でついて自主的に納品までしているとなれば1.2億。さらにあの肥料、噂じゃスプラ君がギルド経由で販売してるっていうアレを好きなだけ使えるとなれば……」


「え、えっと? それなんの話でしょうか…?」


 1.2億とか、え? 宝くじ的な世界かなにかですか?



「で、この場所よね。ここだと…あそこ、噴水広場よね。綺麗な湖畔が敷地内。さらに確かそっちの西地区が商店街だったわよね。そのすぐ裏手側の立地、しかも土地形態が農地じゃないとなると……土地だけで8000万は固いわよ。あとはそこのポツンと一軒家次第ね」


 なんかセリカさんの目が$マークになってるんだが? って、セメントモリまで指折って数えようとするんじゃない。


「ま、とりあえず、行きましょう」




「ここが薬房兼鍛冶工房、『癒楽房』って言います」


「おおおお、スプラさん、何ですか、リフォームどころかこれ新築じゃないですか。しかもなんかいい匂いしますし」

「この香り…ちょっと、スプラ君、もしかしてトレント香木使ってない」


「あ、よくわかりますね。ちょっと資材が邪魔だったんで、トレント香木も使ってもらいました」


「トレント香木を建築材……」


「ちょ、スプラさん、この作業台なんですか? 全然滑らないんですけど。なにか滑り止め的なの使ってます?」


「お、さすがセメントモリ、やるな。それには【ブルー溶液】が薄子コーティングしてあって滑り止めが効くようになってるんだ」


「ぶ、ぶるー溶液? なんですかそれ」

「え? スライムのブルーゼラチンを下処理したやつ?」


「あ、下処理ってあの薬屋のおばさんがなんか言ってた」

「そうそう、タラコが最後までやり切ってたら覚えたスキルの内の一つ」


「え? えええ?」

「スプラさん、今、『スキルの内の一つ』って言いました?」


 タラコが驚き、セメントモリが冷静に聞いてくる。



「説明すると…」


 セリカさんとセメントモリが興味津々に、タラコが絶望感に浸りながら三種の補助スキルについて、ついでに上位補助スキルについて耳を傾ける。



「【熟練の下処理】に【火加減の極み】に【匠の匙加減】かあ、【火加減の極み】あたりはケンクロウが飛びつきそうね。スプラ君、この情報はケンクロウに吹っ掛けてもいいわよ最低でも500万は固いわ」


 セリカさんがとんでもないことを言ってくる。スキル情報で金もらうとかダメだろ。



「あら、スプラ君知らないの? こういう情報とお金のやりとりもトレードでできるのよ」

「え? マジで?」


「トレード画面の取引項目に情報ってのがあるでしょ? その中にスキルとかクエストとか選ぶことができるのよ。情報の深度も「スキル・クエスト内容」から「その取得に至った経緯のログ」まで選べるようになってるの。もちろんズルは出来ないわよ。AIさんに見られてるから」



 マジか。え? じゃあ、俺スキル情報売ったら大金持ちになれる……いやいや、無理。そういえばそんなコミュ力なかったわ。


「ス、スプラさん、こ、この炉って、何かついてますけど……」


 珍しくセメントモリが話に割り込んでくる。その視線の先を追うと、鍛冶工房の炉にくっついた赤い宝石がキランと輝いていた。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「……」

「(まだ見に入ってますね。先輩ってやっぱり真面目なんすね。じゃ、今回は俺が先輩の代わりをしときますね)」



ゴホン


「だーー、小僧、お前、頭にネギ乗っけて湖の上を白馬で走ってんじゃねえ―――!!」


「情報のトレードくらい知っとけっつーーの!」


「こ、小僧、売るなよ。お前の情報なんてどんなことになるかわかんねーんだからな! だーー、予測ができねええええーー」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・癒楽坊の資産価値に驚愕する。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv4】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv9】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:



 ◆星獣◆

 名前:アリオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:【友との約束】

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】

    :ネギコロ【天雷草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)

 癒楽房


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ



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