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第219話 極凰とワーバット

いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

「パクリ」

「え? 師匠、手が、手が抜けませーん」


 くくく、なんか自分が嵌った罠に人が嵌ると嬉しいもんだな。




 仙蜘蛛の巣でオーガを倒し、ワーバットの装備を作った後、石炭を求めて巣内を移動。目的場所はあの無駄に広い空間だ。大量の石炭を置ける場所なんてたぶんそこしかないはず。


 そして、到着してみるとやっぱりあった。天井までぎっしりと詰め込まれた石炭の山。それをリオンレージに収納してから道を戻り、崖から極凰洞に向かう。


 そこで問題が発生する。【自尊竜の天翔ける紅き羽衣】によってステータスが激増したワーバットがリアルスキルのクライミング技術も相まって崖をヒョイヒョイと縦横無尽に移動し、ワーナーがいる場所まで簡単に到着しおったのだ。


 で、ちょっと調子づいてきたワーバットに謙虚さを教えるために、今しがたワーナーにぶつけてやったという訳だ。


 ……でもなんか、クソ上司みたいなことしてんな俺。



「く、この石顔、騙したな、離せ!」

「パッ」

「うわっとっとっとっと」


 崖から落ちそうになったところをリオンが羽衣を咥えて引っ張り戻す。



「もう、この馬鹿顔め!」

「心の正直な者よ。よくぞ我が試練に耐えた。其方には真の坑道を行く資格があーーーる」


「え、試練? え、そういう事なの?」

「真の坑道は我が鍵となっておる。ほれ、我の前に来るのだ。さすれば道が開かれる」


「え、じゃあ……この辺でいいのかな?」

「おお、よしよし、心がまっすぐな者よ。そうじゃ、それで良ーい、ドーーーーーーーーーーン」


「きゃああああーーっ」

「我は偉大なる守護者、罠のワーナーであーーーる」

 


 顔つき機関車の如く飛び出すワーナーによって、見事に空中に突き飛ばされるワーバット。こんなに見事に引っかかる奴がいるとは。素直というか、単純と言うか。なんかこれ以上妹を彷彿とさせてくるの止めて欲しいんだが。心がこそばゆくなる。



『ヒヒーーン』


 リオンが跳躍と二段跳びでワーバットを空中でキャッチして戻ってくる。



「んもーーー、なにコレ!。ほんとなにコレ!!嘘ばっかり!!」


 飛び出したワーナーの横腹に蹴りを入れながら悔しがるワーバット。いや、「なにこれ」って。これは罠のワーナーであーーーる。



「まあ、こいつ嘘は言ってないんだわ、ほら」


 悔しがるワーバットにワーナーが飛び出した後の壁を教えてやる。



「え、穴? え、本当にあったの?」

「んじゃ、行こっか」


 ワーナーによじ登り真の坑道に入る。前回はここで宝石が壁や天井にびっしり敷き詰められていて万華鏡みたいに綺麗だったが、今はリポップした採掘ポイントがところどころに単色で光っているだけだ。



「え、師匠、あの光ってるのって、もしかして?」

「あ、そうそう。あれは宝石の採掘ポイント」

「えええ、やっぱり宝石?」


 もんのすごく目をキラキラさせるワーバット。そうだよな、女の子は宝石好きだよな。



「あ、でも採掘アイコン出てない」

「宝石は中級鉱物知識がないと採掘物と認識されないんだ」


「へえ……ってことは、師匠、採掘できたんですね?!」

「え、あ、いや、まあ。さ、行くぞ!」


 この件、これ以上話すのは危険だ。砕いて粉々にして丸めて焼いたのがお前のオープンフィンガーにくっついているとはとてもじゃないが言えん。



「え、師匠、ちょっと、何か隠してません? ちょっと?」


 食い下がるワーバットをガン無視して極凰洞へ向かう。極凰洞についてしまえば、ワーバットの関心は絶対に変わる。それまでは無視を決め込む。



「ほら、着いたぞー」

「し、し、師匠、なんですか、この地底の楽園は」


「極凰洞」


 極凰洞のマヤブルーと輝きの世界。それを見たワーバットはやっぱり夢中になってくれた。とても分かりやすい奴だ。妹を彷彿とさせてくるだけあって俺にとっては扱いやすい。



「で、あの真っ赤なとてつもなく神秘的で巨大な鳥は?」

「極凰」


「もしかしてボスですか? レイド的な?」

「あ、たぶん違う。どっちかって言うと星獣」


「せ、せ、星獣?」



『おや、戻ったのか我が子よ。どうであった、自由の空は』



「し、師匠、誰かが頭の中に直接言葉を送ってくるのですが?」

「それな。星獣の親玉はそういう事ができるみたい。【念話】があれば色々話せるぞって、あれ? ワーバットに話してきたの?」


 俺にはなんも聞こえんかったけど。あれ?



「ワーバット、その極凰がなんて?」

『「我が子よー自由の空がー』とかなんとか」


「え? 何でワーバットに……なんでだ? あっ、あああそういう事か。極凰の羽根を使った装備着てるもんな。多分それだな」

「師匠、これどうしたらいいんですか?」


「あ、じゃあさ、ちょっとお話してくれる? この湖の底にあった卵を返しに来たって」

「あ、はい。『卵を返しに来た』ですね?」

「うん」


 ワーバットが身振り手振りで極凰に卵の事を伝える。その間に俺は極凰洞の水を入り象君に入れまくる。容量は多いが入り口は小さいため200リットル入れるのに結構苦労する。これは仕様の改善案件だな。タンザさんには言い辛いからレイスに念話を送っておこう。


 水を入れながらワーバットと極凰の様子を確認する。内容は全然わからんがワーバットのテンパり具合を見るとあまりうまくいっていないようだ。



「師匠、ダメです。信じてもらえません。なんかわたしの事を『よくぞ成長した』とか言ってきます」

「そっか、んじゃ俺も話してみるか。これに水入れといてくれる?」


 ワーバットに入り象君を渡して極凰に向かう。



『あの、極凰さん、ちょっと俺からもいいですか?』

『ふむ、其方はどこかで会った気がするな』


『以前、北の山地の頂上でお会いしました』

『おお、あの時の奇妙な異人であったか。…ほう、今日は星獣連れか。…なるほどの、Zが信頼するものということか』


 極凰がリオンを見る。リオンはつぶらな瞳でジッと極凰を見つめる。



『ふむ、で、我に何用だ?』

『実は、この極凰洞で湖の底で拾った卵を返しに来た……ん?』


 なんだ? 急に変な感覚に襲われ始めたんだが?



『……ふむ、この忌々しい気配、奴が動き出したか』

『これは……なんか危険みたいですね』


 極凰に卵の話をし出した瞬間に嫌な気配を感じだした。そして【危険反応NZ】が今までにない反応を示す。エリア全体を覆い尽くすような危険な気配。視界が赤い湯気のようなモヤモヤしたもので覆われていく。



『どうやらここも安全ではないようだ。よかろう、我が子共々安全な場所まで連れて行こう』


 極凰がそう言うと、俺の視界が線になる。そして次の瞬間には透明の呪われた体になった極凰に体を掴まれて大空を飛んでいた。隣を見るとリオンとワーバットも掴まれている。


 北の山地と第二エリアのクレーター跡が一望できるほどに高い場所。そこから俺は危険の原因を探して【遠見】を使う。すると…



「ん? なんだありゃ」


 第二の街の中がやたらと騒がしいようだ。



ピンポーン

「イベント情報。第二エリアにて仙蜘蛛の大攻勢が始まりました。仙蜘蛛の大群は第二の街を目指しています。その数は膨大。皆様の助力により街を仙蜘蛛の大侵攻から守ってください。絶え間ない侵攻から街を守り切った際、第二の街近辺での成長ポイントは2倍評価となります。ただし守り切れなかった場合は全ペアのポイントが半減します。また第二エリアの星獣に動きがあり、どうやらこの戦いの行く末を見守っている様子です。契約物を手に入れていない方も、ここで貢献するなら星獣契約もずっと近づくことでしょう」



『ふむ、その街ならしばらくは安全だろう。では、そこまで送ろう』

『あ、いや、空から戻るとたぶん大変なことになるので、離れた湖上に降ろしてもたってもいいいですか?』

『よかろう』


 街からだいぶ離れた湖上に着水するリオンとその背に乗る俺。そして俺がその場でちゃちゃっと作り上げた筏にのるワーバット。



『では気を付けるが良い。これほど広範囲に満ちる悪意は我でも久々であるからな。我も其の方らの戦いを見守ることとしよう。一つ気掛かりもあるのでな』


 そう言って見えない体の極凰は風圧だけを残して上空へ飛び立っていった。



「じゃ、街に戻ろうか」


 リオンが湖上を疾走する。すでにエリアの広範囲で仙蜘蛛対プレイヤーの戦闘が起きているようだ。こりゃ今回のイベントのクライマックスって感じかな。前回みたいなことは嫌だから目立たないようにするか。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、期待通りに仙蜘蛛が動きだしましたね」

「ああ、ここまでは期待通りだな」


「ここからの期待は、スプラさんがこのイベントをどう盛り上げてくれるかっすね」

「…ま、小僧に期待する気持ちも分かるが、できれば他のプレイヤーが目立ってほしいものだ」


「え、どうしてです? 担当のスプラさんが活躍して前にみたいに凄いプロモが打てたらマスターも喜ぶと思うっスけど」

「あのな、プロモをたった一人への期待で準備したら大コケした時に酷い事になるだろ。期待するプレイヤーは分散させた方がこれからのFGSにとってはいいんだよ。リスクは分散させて管理すべきものだ」


「え、でも他の管理AIにアンケート取ったらスプラさんが期待値でダントツでしたよ」

「アンケート? お前…よくそんなこと面倒なことしてる時間あるな」


「え、時間なんて皆にアンケート送るだだけっすから」

「送るだけ? え、口頭で説明とかしないのか?」


「先輩、何言っちゃってんですか。しませんよ、そんな面倒なこと」

「でもアンケートなんて返ってこないだろ」


「やだなあ、そんなの【愛弟子スプラ印の超菌美容液】を作るスプラさんの担当のライスですって書いといたら、みんなすぐに返してくれましたよ。特に女性陣は速攻で返ってきました」

「おい、担当は俺だろ」


「もう、先輩の担当は俺の担当みたいなもんっすよ」

「おま…ま、いっか。これからも担当はどんどん増えるだろうし、お前に任せてみるのもいいかもな」


「え、あ、そういう事じゃなくて」

「よし、とりあえず今日は任せた! 思う存分やってみたまえ、ここレイスの部屋がお前の自由の大空だ」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ワーバットを罠に嵌めてほくそ笑む。

・極凰と再会

・仙蜘蛛の大侵攻が始まる。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv4】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv9】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv9】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv7】【躍動】【跳躍Lv3】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★★☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】

    :ネギコロ【天雷草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)

 薬房2-12


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ

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