第213話 クラン釣りキチ
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『ゆら?』
『ゆらゆら!』
『ゆら~♪』
『ゆら♪』
「んじゃ、ネギコロも留守番な」
「ネギちゃん達、またね。お姉ちゃんまた戻ってくるから」
4人のネギ坊主に囲まれて幸せそうなワーバット。
ネギコロはネギ坊に天雷草を装備してもらい、その天雷草が分蘖されてネギコロが生まれた。
因みに、鉢植えは万事屋さんで買った『滴る君』だ。この滴る君、非常に便利。なんと鉢に水を吸い込ませとけば、自然と土を湿らせてくれるのだ。つまり水やり要らず。
ネギ丸、ネギ玉の分も買ってきたので、3人とも聖水をたっぷり吸い込ませた滴る君に入って機嫌はアゲアゲだ。
みんな揃ったところでネギコロの天雷草だけには触らないで、他はもらえるだけ貰って畑を出る。
よし、これで後は最強タンクのワーバットと北の山地を抜けるぞ~。
「いやーーーーー、いったーーーい」
ワーバットの悲鳴が北の山地に響き渡る。トレントの頭突きを食らい、凪払いと共にリスの体当たりを食らいまくる。チックリと出会えば全身をくちばしで突かれ、犬型にはあちこちガブガブ。
そうしているうちにだんだんワーバットの顔から表情が消えていった。
そうだよな。『死なない=どんな攻撃も平気』じゃないもんな。
痛いものは痛いし、怖いものは怖い。ただ死に戻りしないと言うだけなのだ。そして死に戻りしないで最低ステータスそのままに避けることもできず攻撃を受け続けるということはある意味拷問…。
ミーナは全てを【回避】してたから大丈夫だった訳で…。
「ワーバット、もういいから、【逆撫NZ】切ろうよ」
「いいですだいじょうぶですすすみましょう」
なんか今度は視点も動かなくなってきた。人間ってこうやって壊れていくのかな。
「無理することないって」
「わたしのそんざいかちはこれだけなのでこれになれていかないととただのおにもつなトカゲなので」
お荷物…か。くそ、ミーナに続いてワーバットまで。ユニークスキルの大変さは一番知ってるはずなのに、なんで俺は……。
「ワーバット、お荷物なんかにさせないから。とりあえずこれ飲んで」
我を失いかけているワーバットが俺が渡した【至極のジュース】を飲み干す。これまでも進めてきたのだが、ワーバットがイベントポイントが減るからと言って頑なに譲渡を受け付けなかったのだ。
無我になりつつある今ならと思って勧めてみたら、今度は自然に飲んでくれた。
「おいっしーーーー!! はっ、なんか頭もスッキリしてきた。師匠、これはなんの回復ポーションです? めちゃ無茶美味しいんですけど」
「えっと、ポーションと言うか、エナドリ?」
「え、エナドリ?」
「まあ、おいしくて元気が出るならなんでもいいじゃん。で、この先なんだけど抜け道を越えたら綺麗な湖があるから。そこで休憩しよう」
自分の体をあちこち動かしながら不思議がるワーバット。
それからメンタルを回復させたワーバットが根性の全力疾走を見せる。
そしてなんとか俺達は抜け道を走り抜け、美しく長閑な…はずだった湖畔にたどり着いたのだった。
そう、釣り竿持ったプレイヤーでごった返している湖畔に。
パシャパシャ
「うっし、コイ釣れた」
「おお、コイか」
「くっそ、こっちはフナばっかりなのに」
いかにも釣り人っといった風貌のプレイヤーが20人ほど。そして鎧やローブ、オーバーオールやピエロ服に釣り竿といった違和感しかない格好のプレイヤーが…50人くらいか? まあとにかく大きな団体さんだ。
「おーい、マスが釣れたぞーー!!」
「「「おおおおおおっ」」」
なんかこう、部外者がすごく入りにくい感じの内輪の盛り上がり方をしている。周りからの視線が痛くないのかな…。俺なら気になって何も楽しめないと思うが。
「師匠、癒し…にはなりそうもないようです」
「だよな……。ここはスルーして第二の街で休憩するか?」
「ですね…」
フナだ、マスだと盛り上がっている横を少しだけ距離を取り通り過ぎていく。
「あ、おい、あの服って」
「お、ポニーだ。え、ってことは…」
ぐ、気づかれたか。
「ワーバット、逃げる…ぞ…あれ?」
「師匠~」
「あ、しまった」
振り返ったらワーバットは後方で釣り団体に囲まれてしまっていた。まずい、ワーバットのステータスを失念していた。どうしよ。流石に置いてく訳にもいかんしな。
「師匠~、釣りさせてくれるらしいですよ~」
ワーバットが釣り竿を持ってこっちにブンブン振っている。おい、リアルでそんな扱いしたら怒られるぞ。糸とか絡まったら大変らしいんだから。
「…まあ、ワーバットが楽しそうならそれでいいか」
俺がUターンして戻っていくと、さっきまで内輪で盛り上がっていたのが嘘のように静まり返る。いや、なぜだ? そういうの止めてくれ。
すると、一人のつばの大きな麦わら帽子をかぶったプレイヤーが進み出てくる。
「どうも、初めまして」
麦わら帽子の端をちょいっと掴んで挨拶してくるこのプレイヤー。ひざ下で破り取ったようなジーンズに赤いインナーに白い半袖シャツ。レトロな雰囲気が漂うこの感じ、おそらく只者ではない。
「ああ、わたし、このクラン『釣りキチ』のマスターをしています、サンペータといいます」
「どうも、スプラといいます」
「いやあ、まさかあのピエ…スプラさんにお目に掛かれるとは。南の湖を離れてこっちに来た甲斐があったってもんです」
「あ、いえ…」
「どうです? お弟子さんも釣りしてみたいようですし、スプラさんもご一緒に」
「あ、そ、そうですね」
「あ、釣り竿なら予備があるんでよかったら使ってください」
「あ、大丈夫です。持ってるんで…」
「え? スプラさん釣り竿お持ちで? ってことはすでにFGSでの釣り経験がおありってことで?」
「え、あ、まあ。ど素人が見よう見まねで作っただけなんで」
「えええ? 作った? 釣り竿をご自分で作ったんですか?」
「あ、え、は、はい。でも本当によくわからないままに作ったんで…」
「もしよろしければ拝見させていただくことは?」
「あ、いいですよ。本当にお恥ずかしいものですけど」
ぐぐ、なんか成り行きで釣り竿を出すことになってしまった。ま、でもここは仕方ない。コミュニケーションが楽になるように大漁竿に役立ってもらおう。
「えっと、コレなんですけど。あ、ちなみに説明書きとかは意味わかんないんで」
「ありがとうございまええええええええ?」
俺が渡した【傷心道化師の大漁竿】を大げさに驚くサンペータさん。こういう気の使い方ができるということはこの人、社会人なんだろうな。
ものすごい真剣な顔をして竿のしなりや糸の太さや丈夫さ、針もいろんな方向から眺めて唸っている。まあ、確かにしなりはいいんだよな。あ、でも竿の先の羽根はちょっと恥ずかしいな。勢いでつけちゃっただけだしな。
「あの、スプラさん…これって本当に自作です?」
「え、あ、はい。お恥ずかしながら」
「スプラさん!!」
「うおっ」
サンペータさんの顔がアバター接触限界距離に。近い、近すぎる。
「この竿の作り方を教えていただけませんか!?」
「え? この竿です?」
「はい、この竿の作り方、いくらでもお支払いします。大金だとすぐには無理かもしれませんが、先日実装された分割払いトレードで必ずお支払いしますので」
え、分割払い? なんだそれ?
「あ、えっとですね。その、素材が色々とありまして。今その素材がないんですよ」
そう、【飛蛇の指揮羽】は1つしかなかったのだ。そして入手する当てもない。
「そ、素材…そうですよね。これだけのものですし、素材が希少なものなんでしょうね…」
「そうなんです。その竿の先についてる羽根がなかなか手に入らなくて…」
「えっ……これ?」
「はい、その羽根です」
「ってことは、このロッドのほうは…」
「あ、ロッドでしたらたぶんいけると思いますよ。レシピで簡単に作れると思うんで、今お作りしましょうか?」
「え、あ、できるならぜひとも」
「じゃ、ちゃちゃっと作っちゃうんで待っててください。あ、向こうの皆さんも楽にしててもらって…」
「あ、そうですよね。こんなたくさんの前で作らせるなんて。これは失礼」
サンペータさんが向こうでじっとこちらの様子をうかがっている釣り団体へ走っていく。
じゃ、俺はチャチャッと作っちゃいますか。ロッドだけなら素材はあるしな。とりあえず人数分作っとくか? レシピで大量に作ると材料のコスパもいいんだよな。
「いやいや、すみません。気が利かなくて。では改めて……??」
「あ、ロッドだけ人数分作りましたんで。あと糸なんですけど、糸は仙蜘蛛の糸で……あれ? どうかされました?」
「も、もうできてるーーーー!!」
え、ちょ、そんな叫んだら…。
「本当にすみません、スプラさん」
「いえいえ、大丈夫です」
嘘。本当は大丈夫じゃない。だって今30人以上のプレイヤーに囲まれて釣り竿に仙蜘蛛の糸のつけ方レッスンまでさせられているのだ。コミュ障に何させてんだよ、サンペータさん。
「で、こんな感じで、タイミングよくMP流せばいいだけです」
「「「おおおおおおおおおお」」」
「師匠、流石です!」
「じゃ、蜘蛛糸は足りないですけど、仙蜘蛛のレアドロップなんで入手は可能です。釣り針は俺の作ったやつでよければ置いていきますね」
「じゃあ、後は俺が作りますよ、リーダー」
グイっと体を出してきたのはこんがり日焼けのマッチョアバターだ。白い短パンにピチピチの黒シャツ。とっても濃い系のプレイヤーだ。
「んじゃ、後は頼むね。俺はいっちょ釣りに行ってくるから」
俺がデモンストレーションしている間にささっと糸と針をつけ終わったサンペータさんがルンルンな足取りで湖にチャポチャポと入っていく。
「おおおお、早速きたーーー!!」
サンペータさんの周りで大騒ぎが起こる。なぜなら、今サンペータさんと引き合いをしている魚がデカいのだ。あの怪魚とは比べたらいけないが、長細くて2mくらいはある魚だ。
「おおお、チョウザメだ」
「おおーキタースッゲー」
「おお、キャビアゲットおおお!」
なんかすっごい盛り上がってるな。
❖❖❖レイスの部屋❖❖❖
「あ、先輩、気が付きました? 大丈夫っすか?」
「ん、あああ、すまんかったな」
「いえいえ、でも超高性能の先輩がループに入るなんてびっくりです」
「はっ、小僧、小僧はどうしてる?」
「今は釣りクランで釣り竿作ってあげてますよ。長閑なもんです」
「長閑? 小僧に長閑なんて言葉が当てはまる訳ないだろ!」
「ちょ、先輩、今はまだ試運転中ですから無理しちゃだめっすよ」
「あ、試運転? そっか」
「あと1時間は試運転で様子を見るそうですから」
「そうか、外からの指示じゃ仕方ねえね。じゃ、小僧の事は頼むな。ちっと低速モードに切り替えるわ」
「はい、そうして下さい。(やっと信頼してくれましたね、先輩)」
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・ネギ坊分蘖(ネギコロ【天雷草】)
・ワーバットにエナドリを飲ませる。
・釣りキチと出会う。
・釣り竿を作ってあげる。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:マジョリカの好敵手
職業:創菌薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+33)
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)
】
:飛蛇の真道化靴【敏捷+53】
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv10】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv6】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】【上級鉱物知識】【カッティングv1】【レザークラフトLv1】
所持金:約1300万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:20
HP:310
MP:445
筋力:48
耐久:46【+42】
敏捷:120
器用:47
知力:69
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv9】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv3】
◆契約◆
《従魔》
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★★★☆]new!
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:3
耐久:3
敏捷:0
器用:6
知力:10
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【紫艶草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
:ネギ玉【氷華草】
:ネギコロ【天雷草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




