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第209話 忘れかけのいろいろ

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も大変助かっています。

よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

「まあ、スプラ様、いらしゃいませ。あら? また風格を増されたご様子で。流石でございます」


 薬屋を後にした俺は万事屋さんに美容液の納品をしに来た。



 出迎えてくれたタンザさんがいつもよりも15㎝ほど近い距離での接客を始める。風格とか言ってるし、もしかして、この距離感も肩書効果…なのか? ……ならすごくいらん効果だな。



「あ、まあ、いろいろありまして……あ、今日は、美容液300本納品しにきたんです。ここにお出ししても?」

「んまあ、ありがとうございます! では早速」


 納品を終えると俺の所持金は300万G増えた。相変わらず金銭感覚が狂いそうな額だな。



「じゃあ、また7日後の納品で大丈夫ですか?」

「……あ、いえ、実はそのことでひとつ問題が…」


 次回の納品を確認したら、なぜかタンザさんが縮こまってしまった。なにかあったのかな。



「問題? 俺でよければお聞きしましょうか?」

「(……スプラさんならきっと大丈夫。行くのよ、タンザ)……散々お世話になった挙句に、再度スプラ様にご相談するのは大変申し訳ないのですが、実は…」


 何かつぶやいたと思ったら、そこからタンザさんのマシンガントークが始まった。縮こまりながら縮こまっている理由を身振り手振りも加えて流れるように話しまくるタンザさん。


 で、その内容なんだが、一言で言うと『住人NPCのお財布事情』ということだ。


 どうやら始まりの街の住人は収入面で結構な差があるらしいのだ。美容液を求める住人の中には一週間に1万Gという金額を支払えない人々が一定数いるとのこと。すると何が起きるか。美容液を買える人と買えない人で派閥ができ始めてしまっているというのだ。女性住民が二つに分かれ出している。なんか妙にリアルな話だった。



「つまり、超美容液が住民の分断の原因になりつつあると」


「はい、そうなんです。かと言ってこれ以上安くしてしまうと、需要が跳ね上がってしまします。そうなれば製品の取り合いになりますし、購入者から別の購入者への高額転売などの原因ともなってしまうんです。それに立場のあるお客様が離れていくことにも…」



 なるほどな。もともとの価値より安く売れば転売による利ザヤも大きくなるもんな。さらにブランド価値も下がると。なんか益々リアルな話だな。


 さて、どう解決したものか…。価格を安くしたいが、転売は防ぎたい…うーん。転売で購入するのはそれなりの金持ちだよな。なら…



「タンザさん、超美容液の価格は次回以降安くしてあげてください」

「え、それだとスプラ様の利益が…。それに需要が高まり過ぎてしまいますので」


「大丈夫ですよ。実は俺、マジョリカさんの弟子を卒業したんです。で、これから北の街で薬房開くんですよ。で、そこで新製品を出そうと思ってるんです。あのマジョリカさんも欲しがる新製品です」


 マジョリカさん、ごめんなさい。お名前をマーケティングに使わせてもらいましたが、これはさっきの超菌美容液の代金ってことで。



「……ちなみに、その新製品はかなり高額ということでは?」

「はい、高額設定です」


「なるほど、察しました。つまり、ランク別製品により、需要を落ち着かせると」

「はい」


 さすがはタンザさん、俺の考えをすぐに見抜いてくる。



「ブランドイメージを担うリッチな高額製品を立場のある方へ届け、普段使いのものは価格を下げて多くの人に使っていただく。という事ですね?」

「そうです。少数の高額製品ならタンザさんも販売管理しやすいでしょうし、仮に転売されても社交界じゃすぐに噂が広まるでしょう。せこい真似して名声を失うリスクを負うような人なんて社交界にはいないんじゃないですか?」



 それを聞いたタンザさんがニヤリと笑う。


「スプラ様と初めてお会いした時は、誠実な方だとは思いましたがこれほどまでとは…。あの時、スプラ様に《《秘密》》の相談をした自分を褒めてあげたいですわ」


 タンザさんの表情が生き生きとしてくる。こういう時のタンザさんは戦闘準備が着々と進んでいると見ていい。もうすぐマシンガン攻撃が始まるはずだ。なら、ここはさっさと本来の目的を達成しとくほうが良さそうだ。



「あの、話変わるんですが、植木鉢ってありませんか? 」

「あ、植木鉢でしたら、こういった便利な…」

「へえ、それは便利。じゃ、それとこの前の…」





 万事屋さんで植木鉢ほか必要品を仕入れた俺は畑に戻る。すると農屋から賑やかな声が聞こえてくる。なんだ? 



「おお、スプラさん、すみませんの。皆で少しばかり休憩しておりまして」


 農屋のドアを開けるとゼン爺が珍しくいい笑顔で話しかけてくる。



「スプラさん、コレ最高っす!」

「いや、マジで。なんすかコレ」

「メチャクチャテンション上がりますよ、こんなのあったら」


 三獣士のヤス、ジロ、レオの三人がドリンクサーバーから炭酸を飲んでテンションを上げている。その奥ではサクラ、モモカ、ミズキ、モクレンの四人娘もどこから持って来たのかテーブルとソファーを置いて炭酸片手にキャイキャイしている。



「スプラさん、こんな美味しい飲み物をいただいてしまってよかったのですか?」

「そうそう、こんなのどこにも売ってないよ。大盤振る舞いしていいの?」


 遠慮がちなエリゼさんと本気で心配してくるミクリさん。いや、いいもなにもそのために作ったんだから。因みにエリゼさんとミクリさん、それにゼン爺がメインね。



「で、なんでみんないるの?」


「あー、ごめん、スプラさん。実はアイザックさんから言伝があって、肥料代金がたまってるから取りに来てくれって。それ言いに来たら、ゼンさんがうまいもんがあるからって」


「ふぉっふぉ、すまんの、スプラさん、勝手なことをして。ですが、このようなうまい飲み物をかわいい弟子たちにも飲ませてあげたくてつい誘ってしもうたのです。これからわしの本気をこの畑でぶつけていきますから、それでご容赦くだされ」


「いや、いいんですよ。たくさん作っておいてよかったです」


 ま、原料は全部無料だからな。大盤振る舞いとか言われると恥ずかしい限りだけど、みんながこんなに喜んでくれるんなら作った甲斐があるってものだ。



「あの、スプラさん、このジュース、うちに卸してくれませんか?」


 急な声かけに振り向くと、さっきまで奥でキャイキャイしてたサクラがいつの間にか俺の横に来ていた。



「卸す? いいけど。『うちに』って?」


「わたしたちのカフェに卸してほしいんです。実は、ゼンさんのシゴ…特訓のお陰で、わたし【栽培カフェマスタリー】に転職できたんです。これ、カフェ用の栽培に特化した職業なんですよ。で、さっき中央広場の露店許可を取れたんでいよいよ明日オープンするんです。けど実はまだ目玉になるメニューがなくて集客に自信がなくて…。でも、スプラさんのこのジュースがあれば絶対にお客さんが付くと思うんで。もちろん、すっととはいいません。自分たちで目玉商品を開発できるようになるまででいいので」


 なるほど、サクラたちも頑張ってるんだな。よし、じゃあ材料もあるし……うん、作っちゃうか。


「少しだけ待ってくれる?」

「え、あ、はい」


 いそいそと屋根裏に移動する。



 ささっと、レシピから【不器用道化師の思いやりドリンクサーバー】を制作。【癒楽の極凰発砲水】も作って、ドリンクサーバーに満たし、補充用にさっき万事屋さんで追加購入した入り象君を使う。


 これで何日かはもつはずだ。



「サクラ、これ。ドリンクサーバーと補充用の発砲水ね。150リットルは入ってるから数日はいけるかと思う」

「え? 嘘? もしかして今作ってくれたんですか? わたしたちの為に?」


「あ、うん。レシピはあるからね。材料があればすぐにできるから」

「……わかりました。この借り……必ず返しますからっ」


「あ、はい」


 なんかサクラが唇をかみしめて戻って行ったんだが…なんか気に食わなかったか?



「そういやスプラさんってイベント参加組っすよね。今日はみんな早くから相手探し始めてましたけど、スプラさんはいいんすか、相手」


 レオの奴がさも賢そうなことを言ってくる。そうだった、すっかり失念していた。っていうか、評価点のこともあって考えないようにしていた。


 でもそうか、最後の弟子探しか……うん、すごく面倒くさいな。ってか、イベントポイントが欲しいわけじゃないし、弟子取らない方向性で行くとするか。



「でもスプラさん、気を付けてくださいね。なんか掲示板でスプラさんの話出てましたよ。スプラさんの弟子になるとSRクエストがもらえるって」

「え、なにそれ。SRクエスト?」


「みんなスプラさんの弟子狙ってるみたいな感じありましたから」

「…マジで?」


「でも、まあ、スプラさんに迷惑かけたらNPCから総スカンですから、そこまで無茶する奴はいないと思いますけど。あ、でも万が一なにかあったらフレコください。俺たちすぐ飛んでいきますから」

 

 レオの言葉に何度も頷くヤスとジロ。三獣士がさも頼もしいそうな雰囲気を作ってくる。うん、じゃあちょっと心配ではあるがなにかあればお願いするとしよう。



「うん、じゃあその時はお願いね。それじゃあ、俺、用事あるんで、これで去りますね。ゆっくりしてってください」


 皆がワイワイ続ける農屋を後にする。



 さて、次はマークスさんだな。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、スプラさん、TZの信頼度MAX達成しましたよ。こんな序盤で」


「TZだけじゃねえ。高いのはMJもMKもMSもMRもだ。TZは秘密作成者シークレットメーカーではあるが主要住人じゃねえからそもそものMAX値が低い。だが主要住人の他4人のMAX値はTZの3倍の設定。だからMAXにはなってないが、すでにTZの値の2倍近くいっちゃってる…」


「でもあれですよね。信頼度って一段上げるのに一週間はかかるはずでしたよね。なのにまだ二週間でスプラさんの信頼度って1,2,3,4,5……」

「だー、数えるんじゃねえ! バグるぞ。そこは俺たちが踏み込んじゃいけねえ領域だ」


「いや、管理AIが踏み込めない領域ってなんすか……あっ、みんなで極凰発砲水飲んでる!」

「ああ。ちょ、ZNまでそんなゴクゴクと」


「先輩、今作ったんですけど、これ。FGS仕様変更案」

「どれ……おっ、いいじゃねえか。『FGS内で製作されたものは管理AIも対価を払って取り寄せることができる』よし!すぐに提出しろ!」


「(先輩には冗談も通じなくなったんすね。ここはツッコむところなのに)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・超美容液の納品(300万G取得)。

・万事屋タンザがかかる悩みを聞く。

・解決策を考える。

・新製品を打ち出すことを伝える。

・農屋でのパーティーに参加する。

・サクラにドリンクサーバーと極凰発砲水を渡す。

・三獣士を温かい目で見る。




 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:マジョリカの好敵手

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv5】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】【上級鉱物知識】

 所持金:約1300万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv9】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv3】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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