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第205話 宝石の使い道

いつもお読みいただきありがとうございます。

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『愛しき我が子よ。勇敢で聡明な我が子よ』



 緋色の巨鳥、極凰が俺を優し気に俺を見つめる。


 そしてその目尻が下がったと思った瞬間、俺の視界は線になる。気づいたら凄い高い空を飛んでいた。極凰の脚に掴まれて。


 そのまま北の山地を一周したところでその山頂に着陸する極凰。俺をそっと山頂に立たせる。しかしその体は前に見た姿。黒い炎に包まれた後に変化した見えない体だ。



『さあ、飛べ我が子よ。自由の空はお前のものだ。悪しき卑怯者は地から出てこぬ』


 極凰がそっと俺の背中を押す。いやいや、転落するから。



『我はこの呪われし体を癒すために巣へと戻る。しばしの休息をとるゆえ、必要があれば戻ってくるがよい』


 そう言って極凰は見えない翼を羽ばたかせると、それによりかすかに揺らぐ空間が傾いた夕日を陽炎のように揺らめかせた。そのまま顔に当たる風だけを残して極凰は去って行った。



「なるほど。なんか複雑な背景だったな……【引馬】」


 【引馬】によって俺の隣に現れるリオン。俺はそのリオンの円らな目をじっと見る。ふと視線を泳がすリオン。ま、星獣同士いろいろとあるんだろう。



「じゃ、時間も遅いし、帰ろうか、リオン」

『フンス♪』


 いつも以上に気を利かせて俺が乗りやすいように身を屈めるリオンに乗って山頂を下る。リオンは【二段跳び】で巧みに空中に足場を作り、駆け下りていく。飛蛇の危険反応もトレントの危険反応も無視して一気に駆け下り、始まりの街に到着した。



 時間はもうすぐ24時。FGSの街の夕方の気配が漂う。


 今日は早朝の夜明け前からプレイしていたから、かなり疲れた。早くログアウトして寝たいが、その前にやる事だけやってしまおう。


 リオンに乗って武器屋に寄る。



「マークスさーん」

「おう、スプラか」


 腕に土竜爪素材の武器を抱えて工房から出て来たマークスさん、いや、刀匠カンギス。



「実はこんなものが手に入って」


カランカラン


 俺が見せた宝石に二度見し、一瞬止まって素知らぬ顔。で、見なかったことにするつもりが耐えられずに三度見した挙句に抱えていた武器を落っことすというわかりやすいリアクションのマークスさん。落とした武器もそのままに俺を奥の工房へと連行する。



「あのなあ、こういうものを唐突に出すんじゃねえ」

 

 宝石の一つを摘まみ上げて光にかざすマークスさん。その言葉とは裏腹に視線は真剣そのもの。


「【黄水晶】に【灰簾石】、【鉄礬柘榴石】に【紫水晶】、おまけに【紅玉】【瑠璃】……はあ、聞きたくねね。聞きたくねえが聞かないとな。これどこで採ってきた?」


「山地向こうの東の崖の中です」


「東か…確かにあっちは湖もあって詳細な調査はされてなかったはずだが…、まさかこんなもんが取れるとはな。鉄鉱石の次は宝石かよ…」


 マークスさんが腕を組んで頭を垂れる。その姿になぜか罪悪感を感じる俺。



「あの、マークスさん、実はこの宝石がステラさんに似合うんじゃないかと思うんですけ…」

「どれだ?」


 俺がいい終える前に食いつくマークスさん。入れ食いだったな。



「えっと、この【翡翠ヒスイ】と【灰礬柘榴石ツァボライト】の組み合わせとかどうですかね」


 ツァボライトは明るく透明感のある薄緑の軽やかな宝石。それに透明感のないシックなヒスイを組み合わせることで派手さを抑える。緑はステラさんに似合う色だし、これならシスターとして身に着けるとしても抵抗感はないだろう。



「言い値で買おう。いくらだ?」


 マークスさんの顔が目と鼻の先に。そしてこの鼻息よ。リアルならちょっと遠慮したい。



「差し上げますって。その代わり…」


 俺は用意してあった宝石を取り出す。


「これで武器を作ってほしいんです」


「ほう、これか。意図するところはわかる。よし、明日の朝には作っとこう。それでいいか?」


「はい、ありがとうございます」


 宝石を見せた時の面倒くさそうな空気はいつの間にか霧散してルンルンなマークスさんに見送られながら武器屋を後にする。


 その後は久しぶりに畑で少し過ごす。いろいろあって疲れた時は、元気に成長している野菜を見るだけで疲れが飛ぶのだ。思わず声かけなんかしたりして。


 で、元気が出て来ると創作意欲も湧いてくるわけで。


 【癒楽草】【氷華草】と【極凰洞の水】でジュースを作ってみる。



ピンポーン

『特定行動により【ブレンディング】を習得しました。【ドリンカー】の職業が解放されました』



【至極のジュース】品質10

 あらゆる肉体的な疲れを取るジュース。飲むものにやる気と根気をもたらす。



【ブレンディング】

 複数の植物の葉を変幻自在に組みあわせてその効果を最大化する技術。


 

「へえ、ブレンディングかあ」


 新たに覚えたスキル【ブレンディング】。これは楽しそうだ。少し試してみたい。


 ストレージにある薬草類をスキルを通して確認していく。すると効果が出る組み合わせが白く表示されていた。



「【治癒草】と【青草】もいけんのか、へえ」


「え? 【癒楽草】と【氷華草】と【爆炎草】? それに【極凰洞の水】か。今んとこ最大レア素材のオンパレードだな。何ができんのか…ま、やるしかないな」



【熟練の下処理】【匠の匙加減】の指示に従ってジュースを作っていく。



【癒楽の極凰発砲水】

 弾けるのど越しに溢れる生命の力。これぞ究極の自然派飲料水。



「ぷっはーーー!!」


 ログアウト前なのに目が覚めてしまった。


「なるほど、炭酸ジュースかよ。めっちゃうまいじゃん。自然派ジュースの最高峰だな、こりゃ」


 口に含んだ時に一気に広がる柑橘系のさわやかさ。それが軽やかなのど越しと共に体内に流れ込む。自然な甘さが口に広がり、鼻に通る若干の苦味とさっと掠める後味の爽やかさ。すべてが絶妙なバランスを保ちつつギリギリで成り立っている。そんなジュースだ。



「これは明日三人に飲んでもらおう。あ、ていうかキンキンに冷やしたほうが絶対においしいよな。どうする…【氷華草】でなんとか…いや、ネギ玉は一日一回しか再生できないから無駄には使いたくない。となると……」


 ストレージをあれこれと探って材料を調達。それらを用いてカンコンカンコン。



「はい、冷蔵庫完成」



ピッカーーン


「ははは、今度ばかりは読んでたぜ。いつもいつも引っかかると思うなよ」



【不器用道化師の思いやりドリンクサーバー】

 己の力だけでサーカス公演は成功させられない。そのことにやっと気が付いた不器用な道化師は自分なりの不器用な一歩を踏み出した。たかがドリンク、されどドリンク。その一杯に込められた不器用な思いやりは疲れた団員の心に届くことだろう。


 ……言いたいことはわかる。わかるが、不器用って何回も言うな。



 この冷蔵庫作り、【氷華草】ではなく宝石でなんとか冷やせないかと涼し気な色の宝石を選んでから、トレント香木とトレント木材を中心に箱を作った。その内側にブルー溶液を塗って乾燥をかけ、外側は断熱素材の蜘蛛糸でぐるぐると巻く。そして用意した宝石を箱の内側に取り付けて完成。ピッカーーンという訳だ。


 で、光の中から出て来たのは現代風のドリンクサーバー。試しに先の炭酸ジュースを目いっぱい作って入れてみたら、ボタン一つでキンキンに冷えたジュースがコップに注がれた。


 ちょっと世界観的にどうかとは思うが、ま、うちの農屋だけで使ってる分には誰も文句は言わんだろう。


 ゼン爺、エリゼさん、ミクリさんの三人の喜ぶ顔を想像しながらログアウト。


 13日目を終える。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「ごくり」

「ごきゅり」


「先輩、なんなんすかあのジュース」

「お、俺は知らん、知らんぞ、何も知らん」


「な、何っすか、急に挙動がおかしく…あ、はい、ライスっす。え、極凰発砲水? ああ、それはピエロ君が…え、購入っすか? いや、それは無理…あ、そうじゃなくって…あ、切られた」

「俺は知らん、知らん知らん、俺はなーんにも知らん……」


「先輩、この電話、自動応答に切り換えますね。『管理AIはFGS世界に関与できません』って応答にしときます」

「……最後に『バーカ』って加えといてくれてもいいぞ」


「なんすか、それ。先輩、不器用っすか?」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・リオンの対応にモヤる。

・マークスさんに宝石を見せて呆れられる。

・ステラさんへのプレゼントアイデアでマークスさんを一本釣りする。

・宝石武具作成依頼

・作成:【至極のジュース】【癒楽の極凰発砲水】【不器用道化師の思いやりドリンクサーバ】

・13日目ログアウト



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv5】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】【上級鉱物知識】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv9】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv3】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:6

 知力:10

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ



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