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第199話 怪魚とコミュ障

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も大変助かっています。

よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

「リオン、やばい、逃げるぞ」

『ヒヒヒーーン』



 リオンが嘶き、躍動する。だが崖に囲まれたこの場から逃げるには目の前の巨大な魚影の真上を行くしかない。躍動しながらもタイミングを掴めずにいるリオン。それだけ相手からのプレッシャーが強いんだろう。しかし…



「…あれ?」


 気づいてしまった。


「赤くない…よな?」


 そう、俺の【危険察知NZ】が目の前の巨大魚影にまったく反応していないのだ。つまり、目の前の魚影は俺たちにはヘイトがないということ。ここは静かにやり過ごせそうだ。




「……行ったか」


 魚影は俺たちの前を悠然と通り過ぎると、そのまま静かに沖合へと消えていった。



「いや〜、びっくりしたな。まさかあんなデカい魚がいるなんて。もし襲われてたら俺たちくらいなら一口でごっくんされて終わりだったな」


『フンス』

『ゆら〜』


 たてがみに隠れていたネギ坊も、いつの間に出て来てホッとしているようだ。



「はあ、長閑なひと時だったはずが…なんか疲れたな。リオン、一度第二の街に戻ろうか。ムガンさんたちのことも気になるし」

『フンス』


「パッツンニカブに作戦のことがバレてないといいけどな…」


 用心しながら崖沿いを進む。また巨大魚と出くわしたら困るので、さっさと陸に上がってしまいたい。なので湖畔を目指して進んだのだが…。



「げ、なんで?」


 湖畔はカラフルな色でいっぱいだった。【遠見】で確認すると、楽しそうな格好をしたプレイヤーたちが釣り竿を持ってワイワイと盛り上がっているのが見える。



「釣り大会でもやってんのか?」


 さっきまで楽しんでいた釣りということもあっで少しだけ気にはなったが……さすがにアレは無理だ。だって、ものすごく盛り上がってそうなんだもん。


 楽しそうな人の輪の中に途中から入っていく? そんなことをするくらいなら、さっきの巨大魚にまた遭遇するリスクを取るさ。コミュ障とはそういうものなのだ。



『フンス?』

「ん? いや、大回りしていこう」


 釣り団体に見つからないようにそっとその場を離れ、湖上を大きく迂回していく。すると、水面の一部が不自然に波立っているのを発見する。


 危険反応はなかったため、そっと近づいてみるとなんとそれは魚の群れだった。密集しすぎて水面に打ちあがる奴もいる。……何やってんだ? こいつら。



「もしかしてボーナスステージ的なやつか? 船で来ないと見つけられない感じの」

『フンス?』


「なら、スルーするのはもったいないよな」

『ゆら?』


「折角だし釣ってくか?!」

『フンス♪』

『ゆら!』


 リオンとネギ坊も大量の魚を前にして即賛成してくれた。それじゃあということで、【傷心道化師の大漁竿】を群れの中に向けて振る。



「おお、一瞬でかかったぞ」

『ゆら!』


 釣り針が着水した瞬間に竿を通して伝わってくる当たりの感覚。そのまま一気に水面に釣り上げる。


 ネギ坊も魚を指して嬉しそう。釣ったのはさっきと同じフナだった。釣り上げたら針を外すまでもなく、そのままストレージに送れる親切仕様。気を良くして再度竿を振ると、またもや間を置かずに釣れるフナ。



「おお、これが『入れ食い』ってやつか?」


 小さい頃に釣り好きの叔父さんがクルージングに連れていってくれたことがあった。あの時は小さかったから見てるだけだったけど、父親と叔父さんが「入れ食いだな〜」って言いながらこんな感じでバンバン釣ってた記憶がある。



「そっか、こうなりゃもう、じゃんじゃん釣るか」




「…うん、飽きた」


 3分で8匹のフナを釣った。で、そこで飽きてきてしまった。だって、釣れるのフナばっかだし。釣りってこんなんなのか? もっといろんな魚が釣れるんじゃないのか? 先の尖ったやつとか、赤いギザギザしたやつとか。


 しかし、飽きたと言っても目の前のボーナスステージはいまだ健在。8匹いなくなったところで魚が減った気配などまったくない。



「こんなん釣らないともったいないんだけどな。かといって1匹ずつ釣るのは面倒だし……うーん、あ、そうだ」


 閃いたら即実行がスプラ流。


 ストレージから仙蜘蛛の糸を取り出すと、MPを使って長く伸ばす。それを2本用意してジグザグに引っかけたり結んだりして網目を作っていく。畳二畳分の大きさの網ができたところで、周りにぐるっと糸を通す。糸の両端にはおもりとして鉄鉱石をくっつけて、それを魚の群れに向かって広がるように投げる。


 すると、うまい具合に網が魚の群れを包み込んでいく。網の中で跳ねる魚。ほとんどすべての魚を網に入れることに成功した。



「なんか、あっさり成功したな」


 魚で溢れ返る網の中。ピチピチ動くから太陽の光が反射して眩しすぎる。



「で……ここからどうすんだ?」


 試しにそのままストレージに収納しようとしたができない。どうやら網でくるんだだけではまだ釣ったことにはならないらしい。そこでまた1つ、閃きが俺の頭を駆け抜ける。


 俺はさっきの大漁竿を取り出すと、その針を魚を包んでいる網に向けて投げる。



「よし、引っかかった」


 釣り針がうまいこと網の一部に絡み付く。釣り針が掛かってるんだからこれで釣ったことになるはず……。



「…え、ダメなの?」


 なんとストレージに入らなかった。これではダメらしい。



「遠いからってことか? もっと引き寄せてみるか…」


 釣り竿にMPを使うと、竿の糸が縮み、フナが入った網が水飛沫を上げながら引き寄せられる。と、そこでフナに取得可能のアイコンが表示される。



「よっしゃ、釣れた! 大漁じゃーー」


ザッブーーーーーン



「……へ?」


 俺が叫んだ途端、目の前を大型観光バスかってくらい巨大な魚が横切った。


 一瞬だったが、頭が異常にデカかった。体の1/3は顔だった。もちろん口もデカい。余裕で俺とリオンをまとめてパックンチョできる大きさだ。



「リオンさん、そろそろ帰りましょうかね」

『フンス…』


 めちゃくちゃビビってる最中だが、危険察知が反応していないのが救いだ。ここはしれっとこの場を去るに限る。



「それじゃ、しゅっぱおおおおおおおおお、なんだあああ」

『ブルヒヒーーン』


 俺が持つ大漁竿が物凄い勢いで水中に引っ張られる。俺は瞬時にMPを流し、糸を伸ばしに伸ばす。



「え、これってあの巨大魚かかってるってことだよな……マジか~」


 その後もMPを流し糸を伸ばし続ける。糸の方はどこまでも伸びそうだが、いかんせんMOの方は定期的に減っていく。体感で2秒ごとに1MP消費ってところだ。



 ……これ飲んどんか。



【特殊MPポーション】品質7

 使用素材の付着常在菌の効果により、特殊効果が付加されたMPポーション。

 MP500回復の後、10分間MPが毎秒2回復する。



 10分間、時間が稼げたところでどうするか考える。



「どうする……この大漁竿を手放すか…。いやだめだ。【飛蛇の指揮羽】がないからもう作れないんだし。んじゃあ、糸を切るか…、いや、切った後で修復できるとは限らんしな」


 うーーーーーん。



『ゆら!』

「え、あ、もうこんなに経っちゃったか」


 あれこれと考えてたらネギ坊から『時間だぞ!』とフォローアップが入る。確かにMP自動回復効果はあと30秒を切っている。



「いや、これどうしよ…あ」

『……ゆら?』


 ネギ坊を見てたらいいこと思いついてしまった。



「ネギちゃん、ちょーだい」

『ゆらゆら…』


 ネギ坊が『この人まじかよ…』ってな感じで1本のお手てを差し出してくれる。毒々しさ全開のお手々を。



「おお、相変わらずの毒々しさ」


 ネギ坊から貰った【毒毒毒草】。その次はストレージからさっき釣った【空湖のフナ】を取り出す。


 そしてその口の中に【毒毒毒草】をギュギュっと詰め込み【古樹液】で蓋をする。で、最後は、リオンと俺に【スプラ印の身体強化ポーション】を使って筋力強化。釣り竿を絶対に離さない覚悟だ。



「よし、じゃあリオン、巨大魚を引っ張るよ、いい?」

『ヒヒーーン』


 リオンが湖面に足を踏ん張って準備オッケー。俺は大漁竿に流し続けているMPをストップ。するとガツンと大きな衝撃が竿から伝わってくる。そこで今度は糸を縮めるためにMPを流す。すると釣り竿が一気に持っていかれる。


 蜘蛛糸の特性なのか、伸ばすときはゆるゆると伸びるが、縮むときには一気に縮む。そして一気に引き戻されてくる巨大魚。俺もリオンも全力で竿を支える。すると、ようやく巨大魚の魚影が見えてきた。



「リオン、もう少しがんばって。これでダメだったら竿を放棄して退却するから」

『フンス!!』


 リオンからも気合が感じられ、巨大魚はぐんぐん引き寄せられてくる。そしてその時。



「うお、危険反応!」


 視界が真っ赤に染まると同時にそれまで逃げようとしていた巨大魚が方向を変えて俺たちの方に突っ込んできた。ここにきてついに敵認定されたらしい。



「よし来い、ここだ、ほれほれ」


 毒毒毒草が詰まったフナを取り出して巨大魚に向けてフリフリ。すると、それを見た巨大魚は一旦動きを止め水面からそのデカい顔を覗かせる。その目は「そんなもんお前ごと食ってやるぜ」とでも言わんばかりの獰猛さだ。



ザザザザザザザ


 水面から顔を出した巨大魚がバイ○ンマンかってくらいのギザギザの歯をむき出しにして俺に迫る。


 その大きく開けられた口に俺は1匹のフナを【投擲】すると、相対的にメダカみたいに見えるフナが巨大魚の口の中に吸い込まれていく。


 それをゴクリと飲み込む巨大魚。その3秒後、俺の目の前には体を痙攣させながらプカプカと浮く巨大な巨大魚の姿があった。



「……ネギ坊のお手てってやっぱエグイな」

『ゆら……』



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、なんかヌシが浮いてません?」

「ああ、浮いてるな」


「ヌシってこんな序盤に遭うモンスターでしたっけ?」

「早くても第三エリア終わりだな」


「これ、釣られちゃってよかったんすか?」

「釣られたってことが真実。それが因果律さ」


「いやいや、そんなさわやかな顔してもダメっすよ」

「じゃあ、どうすんだよ! 星獣Xの大好物だって教えてやればいいのかよ。んで小僧がXと仲良くなって、しまいにはXまでがZ化してかわいらしいインコとかになったらどうすんだ!」


「あ、そういやピエロ君、山頂でXに逢ってましたよね」

「あ……。そ、そう、そうやって様々な因果の糸が紡がれてFGSは唯一無二のタペストリーに仕上がるのだよ」


「先輩、もしかして向き合うの止めてます?」

「……」


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・巨大魚から逃げる。

・釣り団体にコミュ障の特権、拒否権を行使する。

・フナのボーナスステージを攻略する。

・ステージボスを毒殺する。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv9】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv3】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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