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第196話 土竜鮫の本領

いつもお読みいただきありがとうございます。

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「ではこれより『魔好香を土の中にぶっ放せ』作戦を開始する」

『ゆら!』

『フンス!』


 ネギ坊が敬礼、リオンがお辞儀で賛同の意を表してくれる。



 俺はリオンに騎乗して、今、完成したばかりの【魔好土香】手に持つ。



【魔好土香】

 魔好香を地下用に作り変えたもの。性質は魔好香と変わりない。

 添加素材により、非常に高い土壌改良効果を有する。



 小型ダイナマイト型の【魔好香】地下バージョン。ネギ坊から原料の【紫艶草】を大量入手した俺は、魔好香制作に着手した。【熟練の下処理】【匠の匙加減】により紫艶草を聖水でゴリゴリと擦っていく。


 だが一定時間ゴリゴリし続けながらストレージを見ていると、急に白表示に変わったものあった。

 

 そえれが【超絶癒楽液肥】だ。今、農業ギルドで委託販売している高価な肥料である。


 そこでこれをいったいどう使うのかと考えていると、【熟練の下処理】が静かに流れを示してくれる。示された流れはこんな感じだ。


 まず、用意するものが【超絶癒楽液肥】、【爆裂ポーション】、【骨粉(3種混合)】、これに加え新たに作るように指示された【木の実粉】やトレントの香木を細かく削った【香木粉末】も加えることになった。


 骨粉と土を練り固めて焼いた筒に爆裂ポーションをしみこませ木の実粉をそっと入れ、ゴリゴリした紫艶草をしみこませた香木粉末を詰め込む。


 で、最終的にできたのがこの【魔好土香】だ。



 性能は魔好香の地下バージョン。加えて土壌改良効果という、まったく意味のない効果までが付いてきた。土壌改良って…自分の畑で使ってモンスター呼び込む奴はいないだろ。【熟練の下処理】さんにしては意味が分からないものができたと思う。


 ま、とにかく本命の効果はモンスター誘因効果。それだけあれば他はなんだっていい。


 地面のあちこちに満遍なく穴を掘り、魔好土香の上半分を埋め込む形で配置していく。そして10本程度を埋め込み終えた俺は距離を取る。安全を確保したところですべての魔好土香にどんぐり狙撃。どんぐりが当たった魔好土香が含ませた爆裂ボーションの力で爆発する。


 だが、爆発と言ってもこれまでのような派手なものではない。『ボフッ』というこもった音を出して地面の中に爆風が送られる感じ。


 辺り一帯の地面が下から持ち上げられ、紫の煙がほんのりと地上にあふれ出てくる。すると、俺の視界が真っ赤に染まりだす。どうやら作戦が成功したらしい。


 段々と大きくなる地響きが土竜鮫のテンションの高さを感じさせる。



 ドドドドドドドドドーーーーン



 魔好土香があった地面が次々と隆起し地表に飛び出す土竜鮫。



「よし、じゃあ、仲間呼んでくれるかな~。挑発狙撃っと」


 現れた10数匹の土竜鮫にどんぐりを狙撃する。このどんぐりが体のどこかに当たれば、野太い声で仲間を呼ぶはず。



 …だったのだが、どうも土竜鮫の様子がおかしい。


 どんぐりが当たってビクッとはするものの、周りをキョロキョロするだけで一向に仲間を呼ぶ気配がない。


 そして一匹が俺のいる方向をドンピシャで振り返る。



ブモーーーーーー


 野太い声が平原に響く。


「やっと仲間を呼んだか」と安心したのもつかの間、その10匹ほどが俺とリオンの方に向き直ったのだ。そして二度目の叫び。


 その叫びを聞いた土竜鮫の群れはその目を真っ赤にして俺たちの方へ怒りの形相を向ける。



「あれ? もっとこう混乱しながら仲間を呼ぶんじゃないの? なんか冷静過ぎんか?」


 そう言いながらもとりあえずリオンに乗って逃げ始める。すると鮫頭たちは鶴の翼を広げたような見事な隊列を組み、左右から包囲するようにジグザグに迫ってくる。地面を泳ぐかのように滑らかで、一匹一匹が正確に位置を取りながら進むその姿は、まるで軍隊訓練でも見ているようで…って。



「おい、こらーー! レイス! どれだけモンスターに学習させてんだ。流石にこれはやりすぎだろ!!」


 どこかで見ているであろう黒海賊に文句を叫びながら鮫頭軍隊から必死で逃げる。背後の軍隊の見事な進軍、だがしかし、リオンの【疾走】もLv8だ。しかも平坦な平原では【躍動】も【跳躍】も必要としない。そんなリオンがきっちりした隊列行動を取りながら侵攻する鮫頭部隊に後れを取るはずはなく、その距離は徐々に広がっていく。



「よし、一応逃げ切れたみたい……げっ!」


 俺が一息つこうとしていると鮫頭が再び距離を縮めてきた。よく見ると今度は陣形が変わり山型の突撃隊列になっていた。



「マジかよ。いつから陣形ゲーになったんだ……あ、やべ」


 そしてその後も次々と予想外が襲って来る。



 鮫頭が距離を縮めてきたと思ったら、今度は俺たちが進もうとする先にプレイヤーの一団が見えてしまった。薬草の群生地で採取活動をしているらしい6、7名の団体だ。しかもその中にはオーバーオール姿の二陣プレイヤーの姿も見られる。


 今はイベント真っ最中。おそらく師弟で来ているのだろう。そんな中に俺が鮫頭の突撃軍隊を呼び込んでしまったら……。あかん、大惨事&大炎上が確定する。

 


「リオン、方向変えるぞ」

『ヒヒヒーン』


 一度頭を下げて重心を下げるリオン。瞬時に方向を斜めに切って疾走する。しかし、俺たちが向かうその先にはまたもや採取組。すでにこちらに気づいて慌てている様子。



「くそ、こっちもか。リオン、あっちだ」

『ヒヒヒーン』


 リオンに方向転換を指示するとリオンは一度大きく首を振って【躍動】。強引に走る向きを変えて速度を上げる。



「うへ、むち打ちになりそう」


 首を痛めたかと思う程の強烈な方向転換を実行したリオン。だが、背後からは依然として土竜鮫の危険反応がビンビンと伝わってくる。



「こりゃ駄目だ。リオン、このままじゃいつかプレイヤーの団体と事故る。なんとかしてうまく魔好土香の爆発地点まで戻るぞ」

『ヒヒヒーン』


 リオンからも『それがいい』と返ってくる。すぐに大きく旋回しながらUターンを始めるリオン。それを察し土竜鮫の軍隊は突撃陣形から最初の包み込み陣形へと陣形を変える。左右正面から囲んで殲滅しようということらしい。


 だが、その変更は俺たちにとっては好都合。包囲網の壁の一点突破が可能となったからだ。右斜め前の一体に狙いを絞りストレージから大どんぐりを取り出す。すると俺の攻撃を察知した土竜鮫も行動を起こす。


 なんと、それまで地上に出していた鮫頭を一斉に地中に引っ込めて潜ってしまったのだ。しかし次の瞬間には地面が盛り上がり、それが多方向から一直線に俺たちに向かってくる。



「くっそ、地中に潜られたら狙撃できないだろうが」


 それこそ地中ごと大爆発でもさせないと突破するのは不可能だろう。で、俺たちが真上に来た瞬間にガブリンチョ……まさに無敵の侵攻軍だ。



「くそ、どうする…」

『ブルヒヒン』


 リオンが首を横に向け目じりで俺を見る。『身体強化ポーションならワンチャンどうかな?』と教えてくれる。そっか、それを忘れていた。



 急いでリオンに身体強化ポーションを使用するとリオンの動きに力がこもる。


『ヒヒヒーーーン』


 土の盛り上がりが迫ってきたその時、リオンの嘶きが平原に響き渡る。と同時にリオンが跳躍。盛り上がる土の上空を飛び越える。



ピンポーン

『特定行動により星獣リオンの【疾走Lv8】【跳躍Lv2】のレベルが上がりました。』



 しかし、リオンが跳躍したことを地中にいながら察知した土竜鮫が突如として地中から飛び出してくる。その下から迫ってくる鮫頭を見下ろす俺とリオン。それでもなんとか越えられるかと思ったその時、俺の視界が更に赤くなる。


 真っ赤に染まる両脇の視界から出て来たのは俺たちの進路を塞ぐようにして飛び掛かる2匹の土竜鮫。それを確認した俺はすぐさまそのうち右の一体に向けて大どんぐりを連速狙撃。それを見たリオンが【二段跳び】で進路を俺の狙撃方向の右に向ける。


 俺の連続狙撃でポリゴンになる土竜鮫とそのきらめく光の中を一気に抜ける俺とリオン。なぜか空中でドロップの【土竜爪】をゲットした俺たちはそのまま2分間のステータス効果時間が終わるまで平原をひた走り、プレイヤーで賑わう始まりの待ちに戻ったのだった。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


——部屋には数十枚のモニターが並び、いくつものエリアが映し出されている。その中の一枚、黒海賊が見つめる先にはプレイヤー『スプラ』が星獣Zに乗って必死で逃げ回る様子が映し出されていた。



あらららーー? 小僧君、今回はえらい苦労しているみたいじゃねえか。

ま、それが《《本来の》》土竜鮫の姿ってことだ。

わかったかー!!


…ま、どこぞのピエロがたった一人で周辺の群れを片っ端から呼び集めて大規模殲滅しやがったから泣く泣く調整入れたんだがな。


今回は全ての個体にお前のやらかし戦の記録をぜーんぶ記憶学習させてあるからな。同じ作戦が通じると思うなよ、がっはっはっはっは。



「先輩、なんか浮かない顔してますね」

「あ? 浮かない? 何言ってんだ?」


「いや、なんかいつもより怖い顔って言うか?」

「眼帯の黒海賊なんだからそんなもんだろ」


「でも今までもっと楽しそうだったのに」

「俺はこういう設定なの! 海賊ロール!!」


「ま、いいんですけどね。あ、そうそう、さっきマスターに映像送っときました。マスターの好みに関するデータがなかったんで、先輩の好みに合わせときましたよ」

「え? 俺の好み? ちょ、ちょっと見せてくれる?」


「……こ、こんなのただの小僧のプロモ映像じゃねえか! こんなもん送ったのかよ! あーあ、これで俺の最新SPU体験がなくなっちまったーー!」

「(ほら、スッゲー嬉しそうじゃん)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・制作:【魔好土香】

・魔好土香により一帯を爆破

・土竜鮫の陣形攻撃により退却

・取得:土竜爪

・リオン:【疾走Lv9】【跳躍Lv3】


 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv9】new!【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv3】new!



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


 

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