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第195話 再び土竜鮫

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も大変助かっています。

よろしければブックマークや★評価をいただけると嬉しいです!

 北の断崖降下作戦失敗を受け、俺たちは第二の街に戻る。


 ニカブに見られないようにバラバラになって北門に戻る。俺もそこで皆と別れることにした。


 断崖作戦で忘れそうになっていたが、今日はイベント3日目。3人目の弟子と会わなければいけない。ちょっと気が重いがイベント参加してしまった限りは仕方がない。


 朝の8時前の街はテンション高めのプレイヤーでごった返していた。それを見て、ふと今日が金曜日だっことを思い出す。金曜日と言う日は心を軽くする。翌日から始まる週末に心を馳せて頑張れる日なのだ。とはいっても、今の俺は休養中。曜日の感覚は薄れてきているのではあるが。


 時間に余裕を持つために今日の待ち合わせは10時にしてあった。まだかなり時間があるのでとりあえず武器屋に向かう。



「マークスさん、おはようございます」

「おう、スプラか。どうだ、北の街は」


 武器屋に顔を出すとマークスさんが土竜鮫の爪で作ったらしいショートソードを工房から運びだしている最中だった。



「実は北の街でも色々とありまして…」


 品出し作業を一緒に手伝いながら北の街でのことを報告していく。マークスさんの書いた手紙の文字に対してのモルスさんのコメント以外を全て伝えていく。



「そうか、まさかあの街がそんなことになってるとはあ」


 報告を聞いたマークスさん、カウンター前の椅子に腰かけて腕を組む。



「俺が居た頃はそりゃもう、鍛冶師の親方たちが元気でな。街のあちこちで鉄を叩く気持ちのいい音や弟子をどやしつける声が聞こえてきてたもんだ」


 懐かしそうに思いにふけるマークスさん。



「しっかしあの街までもが鉄不足となると、こりゃ、ゴブリンの時みたいに…はならねえか。できる第一夫人がいるからな。何かしらの対策はしてくるだろう。すでに王都にも援助を求めているかもしれんしな」


 そうだよな。メアリーさんならとっくに動いているはずだ。



「にしても、異人の冒険者に鉄製武具が行き渡ることは期待できねえ。こりゃ、この街では本格的にモンスター素材を使っていくか……でもそれだと事故の可能性も各段にあがる。あれは不思議と慣れてくるほうが起こしやすい事故だからな」


 うん、素材融合に関してははその通り。慣れてくるほど事故率は上がる。極めてしまえば事故は起きないんだけどな。


 あ、そうだ、俺も【土竜爪】と【土竜硬爪】を仕入れないとな。黒曜ダーツはあと一本しかないし。


 一通りの報告を終えて店を出る。


 そして南の平原に向かう。目指すは大渓谷方面。土竜鮫の群れを殲滅した場所だ。



「さて、じゃあ、やりますか」


 ストレージから5個ほどのどんぐりを摘まみだす。それを前回同様に人の足音が続くかのように時間差で投擲していく。



「あれ?」


 前回は速攻で【危険察知NZ】が反応したのだが、今回はうんともすんとも言わない。もしかして土竜鮫AIが学んでしまったか?


 学ぶAIと言えば、俺の行動を読み、揶揄しまくってきた巨大スライムのことが頭を過る。あのふざけた感じ、思い出すたびにカチンとくるな。


 しかし土竜鮫AIが学んでしまったとなるとこれは困るぞ。土竜爪と土竜更爪がなければ黒曜ダーツは作れんし。仙蜘蛛に対抗するためには何としてでも手に入れたいのだが。


 しばらく腕を組み少し考える。そして頭に浮かぶ一句。



「来ないなら 来させてみせよう 土竜鮫」 by 豊臣ピエロ氏


 困った時は成功者《天下人》に習うべし。




「ではこれより例のアレの制作に取り掛かる」

『ゆら』

『フンス』


「土」

『フンス』


「聖水」

『ゆら』


「【乾燥】」

『ゆらゆら』

『フンスフンス』


「窯」

『フンス』


「焼けました。俺、失敗しないので」

『ゆら♪』

『フンスフンス♪』


 助手二人にヨイショされちょっと気分がいい。



 俺が作ったのは鉢だ。何のためか? 俺にとって鉢と言ったら使い道はこれしかない。鉢に黒くなってて良さそうな土を探して入れる。するとなぜか発動する【匠の匙加減】。いやいや、これ生産じゃないから。


「では、ネギ助手、ずいぶん待たせたな。だが、今こそがその時。これをそなたに渡す時がついに来たのだ」



ピンポーン

『特定行動により【寸劇Lv3】のレベルがあがりました』



 俺はストレージに眠らせてあった【紫艶草】を取り出してその説明書きを改めて確認する。



紫艶草しえんそう】品質7

 艶やかな葉が特徴的な一年草。大陸中の山岳地帯に極まれに単体で自生している姿が確認されるが、その生態は明らかになっていない。

 採取されるとモンスターを誘因する匂いを一帯にまき散らすため、自生場所をよく吟味して採取することが奨励されている。

 葉のみ魔好香の原料として使用される。



……うん、危ないのは《《採取された時だけ》》だな。



 この【紫艶草】は採取した時に仙蜘蛛の大群を呼び寄せてしまい、リオンとネギ坊の連れ去られ事件の原因にもなった嫌な思い出での品なのだ。だがそのイメージをここで払拭することにする。


 ネギ坊に【紫艶草】を差し出すと、恭しくそれを受け取るネギ坊。そして古代原住民の伝統儀式然とした大げさなジェスチャーが始まる。散々変な踊りをした後で、これ見よがしに【紫艶草】をお手々に装備するネギ坊。



『ゆゆゆゆゆゆ……ゆらららららーーー!』

 


パンパカパーン

『癒楽草ネギ坊は装備可能な4箇所全てに希少種植物を装備しました。条件を満たした為、固有スキル【分蘖ぶんけつ】が発動します。分蘖する希少種植物を選んでください』



 聞き覚えのあるアナウンスと共に、ネギ坊が俺の前に装備している4本のお手々を見せてくる。


【毒毒毒草】

【爆炎草】

【氷華草】

【紫艶草】


 さあ、究極の選択だ。

 どれだ? どれが正解だ? どれを分蘖させるべきなんだ?


 と、迷いつつも俺はスッと一つのお手々を指し示す。実はあれからずっと考えていたのだ。そしてついさっき答えが見えた。その答え、それは…



『ゆゆゆゆ、…ゆららーー!』



 ネギ坊が前回に続き、二度目の史上最大級リアクションを取ってくる。そしてピタリと動きが止まる。



ポンッ



『ゆら♪』

『ゆらら?』


『ゆらゆら♪』

『ゆら〜!』



 間抜けなSEと共に目の前の鉢植えにネギ坊の分蘖体が現れる。その2本だけの葉っぱ【癒楽草】と俺が指し示した【氷華草】になってる。


「じゃあ、お前の名前は『ネギ玉』だ」


『ゆら♪』




《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]new!

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】new!

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】new!



 名前:ネギ玉(分蘖体)

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 レベル:1(固定)

 HP:5

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:5

 装備:【氷華草】(固定)

 スキル:【再生】



 ネギ玉に【氷華草】を選んだのは、単なる消去法だ。【毒毒毒草】は誰かがネギ玉から葉っぱを千切ろうとしたらそのNPC人生を終えさせてしまうから除外。


 【爆炎巣】は火起こしに使えるから除外。


 【紫艶草】は今まさにいくつも使いたいから除外。連続して手に入れるためにはネギ坊の装備にしておいて【超再生】で回復しつつ貰うしかないのだ。


 ということで、ネギ玉の装備は【氷華草】となった。ま、なんとなく一番無難な気がするし。これでいい。



『ゆらゆら♪』


 ネギ丸が朝の陽光を浴びて気持ち良さそうにしている。だが、日向ぼっこを楽しむ前にまずは貰うもんを貰っとこうじゃないか。



「ネギ玉、早速だけど【癒楽草】と【氷華草】くれる?」

『ゆら♪』


 ネギ玉が嬉しそうにお手々を差し出してくれる。


 …この素直さよ。まだ世界の闇を知らない子供の純粋さが眩しいぜ。どこぞのネギは思春期になっちゃったからな。



『ゆらゆら!!』


 俺の心を勝手に汲み取ったらしいネギ坊がプンスカ怒ってくる。やっぱりお年頃なようだ。



 っと、こんなことをしている場合じゃなかった。ここに来た目的は土竜鮫と土竜硬鮫のドロップ。さっさと作るものを作ってしまおう。



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖



「先輩、戻りました~」

「おお、ライス。で、あの異常行動の調査結果は?」


「えーーとですねえ、結果は出ましたけど…」

「早く言え!」


「……って言っても、システム異常はゼロっすよ。いたって正常運転。いつも通りのFGSっス」

「は? じゃあ、なんで飛蛇と仙蜘蛛が仲良く小僧を襲ってんだよ?」


「それが謎なんすよねー。でもシステム異常じゃないってことは、何かが“世界の中”で起きてるってことで」

「何か?」


「先輩心当たりないっすか? どんなことでもいいんで」

「心当たり……んなもん、無数あるに決まってるだろ。俺が誰の担当やってると思ってんだ」


「そうっすよね。ピエロ君、管理AIにまで影響及ぼしてますもんね。今、女性陣の間じゃ『菌』の話で持ち切りっすよ。常在菌システムと肌機能をリンクさせられないかとか話してましたし」

「菌? いや、あれは小僧と言うよりMJがなぜか勝手に…あ、MJ⁈ ああ、そういう事か。それなら魔好香の件も納得だな」


「なんすか、先輩、一人で納得して。教えてくださいよ」

「ああ、まあ、大丈夫だろ。たぶん」


「(……あーあ、超性能AIが『たぶん』とか言っちゃった。先輩、大丈夫かな…)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・マークスさんに第二の街の報告。

・黒曜ダーツ素材の土竜鮫を狩りに行く。

・モンスターAI学習済み説が浮上。

・何かを思いついてネギ坊を分蘖、ネギ玉誕生。




 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv2】【二段跳び】



 ◆契約◆

 《従魔》

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★★☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【紫艶草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】

    :ネギ玉【氷華草】


《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ




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