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第189話 北の街の裏事情

いつもお読みいただきありがとうございます。

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「なんということじゃ、こんなことがあっていいのか…」


 ムガンさんが、銀色に輝く炉を呆然と見つめている。


 でも、これが本当に清玉炉なら、次に必要なのは「聖銀の手鎚」のはず。けど、聖銀なんて持ってないし…となると、次は聖銀探しか。



「はっ、いかん! 聖銀製の物を持ってこねば!」


 ムガンさんは突然工房へ走って戻り、小ぶりな金槌を持って戻ってきた。そして、それを銀色の炉の中に入れて、ぐるぐると回し始める。


 なんか…子供の頃に楽しんだ綿菓子機みたいだな。



「って、え、マジで綿菓子じゃん」


 ムガンさんの回している金槌には、銀の糸のようなものが絡みつき、見る見るうちに膨らんでいく。もう綿菓子作ってるようにしか見えんくなってきた。で、なぜか銀色の綿菓子が大きくなるほど、炉の銀色が薄れていく。


 しばらくして、金槌の頭にバレーボール大の銀色の綿菓子ができた頃には、炉の銀色は完全に消えていた。



「ほれ、これがさっき言っておった、清気をまとった聖銀の手鎚じゃ」


 そう言って、ムガンさんが綿菓子状の手鎚を手渡してくる。



「これが聖銀の手鎚か……じゃあ」


 俺はステータス画面を操作して【皇子鬼の黒呪大斧】を取り出してみる。



 ブーン

 『破壊のために必要な設備規模が足りないため、取り出せません』



「……規模? ってことは、やり方自体は合ってるってことか?」

「どうじゃ、破壊できそうかの?」


 ムガンさんが目を輝かせて聞いてくる。が、残念…というか、惜しい。



「すみません、なんか『規模が足りない』って」

「はて、規模が足りんじゃと? ちなみにその落とし物の大斧、どれくらいの大きさなんじゃ?」


「えっと、鎌倉の大仏……じゃなくて、武具会館くらいですかね」

「ぶ、武具会館じゃと!? そんなに大きかったのか。スプラよ、そりゃ、規模が違い過ぎるぞい」


 まあ、確かにあんな観光名所級の大斧が、小さな手鎚一つで壊せたらおかしいよな。



「そんな巨大な呪具を破壊するのは並大抵のことではないぞ。恐らく、炉だけでも体積でこの100倍は必要。石炭は200倍、鉄鉱石は100倍、そして聖銀はその槌の200倍じゃ」


「……マジっすか?」

「マジじゃな」


 鉄鉱石はまた採りに行けばなんとかなるかもしれないけど……石炭はパッツンに管理されてるし、聖銀に至っては産地すらわからない。どうするよ…。



「師匠、そろそろアレを実行する時期じゃないですか?」

「アレか……そうじゃな。ちょうどさっき、あの方からも連絡が来たし、動く時が来たのかもしれんの」


 モルスさんとムガンさんが見合って、真剣に頷き合う。なんだよ、アレって…。



「ちょっと二人とも、スプラ君を放って話を勝手に進めないの!」


 マカラさんが割って入ってくれる。そうそう、これ一応俺のクエストだからな。



「あ、ああ、スマン…でもスプラさんを巻き込んでいいものか。下手すれば、反逆罪で死刑だからな」


 し、死刑!? え、アレっていうのはそういう感じのやつなの? …ごめん、じゃあ俺はやっぱり遠慮して…。



「男には、時に命を懸けて成さねばならんこともあるのじゃ」


 なぜかムガンさんがやたら渋い顔で語ってきたんだが? いや、俺そういうハードボイルド路線じゃないから。それにほら、今はジェンダーフリーの時代で……。



「それに師匠、異人は死なないと聞いてます。それなのに異人のスプラさんを勝手に除外するのは失礼に当たります。ここは、スプラさんの力も借りたほうがいいかと」


「なに? 死なないじゃと? 異人とはそんな存在であったのか。むむむ、いや、もしそれが本当なら、今のこのタイミングで異人スプラと出会ったのも大地の精の思し召しなのかもしれんの…」


「そうですよ…」


 いやいや、モルスさんまで。二人して俺をそんな目で見ないでくれ。俺、そんな大層な存在じゃないから。死に戻ったら、スキルも金も装備も全部失うんだぞ。それに【皇子鬼の黒呪大斧】がなくなったら、このクエストそのものが消える可能性も…。



「もう、二人とも。そんな目で見なくても、スプラ君は最初からそのつもりよ。だって、刀匠マークサス・カンギスが信頼する人なんですから。ね? スプラ君?」


「あ、え、あ、そう…ですね?」


 ぐぐぐ…マークスさんの名前をここで使ってくるとは…。刀匠カンギスの名に泥は塗れない…ぐぬぬ。



「じゃあ、そうと決まればここ座って。スプラ君にも、この街がどれほど危機的状況なのかを知ってほしいの」


 そう言って、マルカさんが語り始める。俺の目が泳いでるのにも気づかず、彼女の説明は止まらない。そして、結局最後まで全部聞くことになった――。



ピンポーン

『シークレットクエスト<マークスの秘密依頼>が更新され <刀匠カンギスの使い>となりました』



 マカラさんの話によれば、この街では王都の四公の一角・バンディー家が秘密裏に軍備を増強しており、そのために鍛冶機能をこの街から、バンディー家が所有する新しい鍛冶村へと移そうとしているらしい。


 事の発端は、武具会館の館長人事にバンディー家が口を出してきたこと。無理やりパッツンスーツのニカブを館長にねじ込んできた結果、街として抵抗することができなくなった。なぜなら、この街における権力の中枢は、武具会館の館長が握っていたからだ。


 この街は鍛冶によって成り立っている。作られた武具を一手に引き受けて流通させるのが武具会館であり、それは街の発展に不可欠な存在だった。一応、領主と呼ばれる貴族もいるが、ほとんどの鍛冶工房が武具会館に従っているため、領主といえども館長を無視しては何もできない。


 その館長に就任したニカブは、街の規則を次々と変えていった。まず、各工房が個別に仕入れていた石炭を、武具会館が一手に管理・配給する体制にした。石炭は鍛冶にとって生命線だ。親方たちは猛反対したが、ニカブは反抗する工房からの武具仕入れ量を半分に減らして圧力をかけた。売上が落ちれば、工房の存続は難しい。結局、ほとんどの親方たちはニカブのやり方に屈するしかなかった。


 そうして間もなく、「石炭の採掘量が減った」として、仕入れ量の削減が通達される。それ以降も定期的に仕入れ量は減り続け、街の工房は次々と石炭不足に陥り、やがては廃業に追い込まれる。さらに、廃業した工房の親方や弟子たちは、一夜のうちに忽然と姿を消してしまっていた。


 そんな状況が続いていたある日、鍛冶組合が管理する鉄鉱石の採掘場で、盗掘の痕跡が見つかった。発見したのは、とある工房の弟子。信用できないニカブには報告せず、鍛冶組合だけで情報を留め、3日間見張りを続けた。


 すると再び盗掘者が現れた。組合が取り押さえると――その男は、かつて廃業して姿を消した親方のひとりだった。


 鍛冶組合は彼を牢に入れ、事情を聞き出そうとした。二日間の拘留の末、ようやく口を開きかけたそのとき、ニカブが衛兵を連れて現れ、彼を強引に連れて行ってしまった。けれど、彼がわずかに漏らした情報によれば――バンディー家が“秘密の鍛冶村”を建設しているという。


 その後も、石炭の仕入れはますます削られ、遂には鉄鉱石の採掘場まで「モンスターの凶暴化と崩落の危険がある」として封鎖される。そしてしばらくして、北の山地が分厚い雲に覆われ始め、採掘場のある山頂付近は“危険区域”として立ち入り禁止となった。


 街では工房から人が次々と消え、今や稼働している工房は半数にも満たない状態だという。



「でね、今、鍛冶組合では数こそ減ったけど、秘密裏に街の探索計画を立ててるの。北の断崖はずっと手つかずだったけど、もし本当にバンディー家が鍛冶村を作ってるとしたら、行ける場所はそこしか考えられないから」


 なるほど。始まりの街に続いて、ここでも四公が裏で動いていたか。バンディー家って、軍備関係に力を持ってる一族だったはず。……これは確かに命がけだ。



「ちなみにその、北の断崖って、なぜ手つかずだったんですか?」


 山地から見下ろした限りじゃ、この地域はぐるりと同じような断崖に囲まれていたはず。北側だけ特別に高いようには見えなかった。



「それは、わしから話そうかの。この手の話はドワーフの方が詳しいからの」


 ムガンさんが髭を撫でながら語り出した。



「この地域は、特別な場所なんじゃ。遥か昔、空から巨大な燃える岩が落ちてきて、この地に衝突した。それがすべての始まりじゃ」


 ムガンさんは、静かに語り出す。



「ドワーフの古い伝承によると――何十代も前の先祖たちが、その“空から降ってくる火の岩”を目撃したという。とてつもない大きさの岩が、空を裂くようにして燃えながら降ってきた。先祖たちは驚き、地底へと逃げ込んだ。エルフたちは、全力で地上に結界を張った。


 やがて岩はこの地に落ち、周囲はすべて焼き尽くされ、空は黒い雲に覆われた。それから先祖たちは何代もの間、地底で暮らすことを余儀なくされたんじゃ」


 ムガンさんの言葉に、空気が少しだけ重くなる。



「だがその中で、ドワーフは地底に住まう精霊たちと出会い、交流を深めた。そして、大地の加護を受ける民となった。エルフたちも同じく、結界内で森の精霊と通じ合い、大樹の加護を得る民となった。


 そうしているうちに、地上を覆っていた黒雲も次第に消え、再び太陽が顔を見せるようになった。そこで、我らの先祖は地上に戻り、この地がどれほど変わったのかを調査しに来た。


 すると…周囲には、これまでに見たことのない鉱石が大量に眠っていた。大地の加護を受けたドワーフと希少な鉱石との運命とも言える出会いの場所。それがこの場所なのじゃよ」


「つまり、この場所は……」


「そう、巨大な隕石の衝突で生まれた“クレーター”じゃ。そして三代前、王国が成立したとき、この地もその一部として併合された。争いを嫌った我らの先祖たちは、鍛冶村を後にして別の地へ移った。ただ一人――わしの祖父だけをこの地に残しての」


 ムガンさんは、少しだけ寂しそうに微笑んだ。


 …つまりこの街は、隕石の衝突によって生まれた特殊な地形と資源に恵まれた場所だったのか。もしかすると、隕石自体にも珍しい鉱石が含まれていたのかもしれない。



「で、問題の北の断崖なんじゃがな……登るのはまだええんじゃ。だが、“降りる”のが、無理なんじゃ」


「……無理? どういうことですか?」



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


だあ、シークレットクエストが内容変化しやがった。

これ、権限が作成住人AI個人にあるからなあ。

MKがいろんな可能性を考慮して何パターンも組み込んでたんだろうが…。

果たして吉と出るか、凶と出るか。

俺の予想では……ふむ。吉と見せかけて大凶、そこからの奇跡的な大吉からの最後はやっぱり大凶。でも気が付いたらなぜか全体の結果としては大吉。


って、なんだ、この予想。…俺おかしくなったのかな。


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・北の街の裏事情を聞く。

・更新:<マークスの秘密依頼>→ <刀匠カンギスの使い>


 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:刀匠カンギスの使い>new!

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv2】



 ◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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