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第186話 憧れの種族

「ん…ん? あれ? わしは…生きてるのか?」


 髭マッチョのおじさんが目を覚ました。よかった、死んでなかった。



 工房で血まみれになって倒れているおじさんを見つけた俺は、その傷の色の具合がマークスさんの事故のときと似ていることに気づいた。そこで、そのときネギ坊から教えてもらった【全治ポーション】をもう一度作って、その体に振りかけたのだ。


 数秒間、神秘的な光がムキムキの肉体を包み込む。すると3600倍速かってくらいにみるみるうちに傷が癒えていき、30秒後には何事もなかったかのように起き上がってくれた。



「大丈夫でしたか? 融合事故だったみたいですけど」

「ゆうごう事故? なんじゃ、それは?」

「えっと、モンスター素材同士を打ち付けると、たまに事故が起きるっていう、あれです」

「えっ、あっ、ど、どうしてそのことを知っておる?」


 髭マッチョが目を丸くして驚く。そしてじりじりと後ずさる。なんだこの反応。



「前に同じ事故に遭ったことがあるんですよ」

「なんじゃ? 兄ちゃんも禁忌を犯したのか?」

「へ?」


 なに禁忌って。いろいろ心当たりがありすぎて、どれのことかわからん。



「禁忌というと…毒関係?」

「毒?」

「あ、じゃあ…爆発?」

「爆発?」

「もしかして凍結とか?」

「凍結?」

「あ、じゃあ天然希少種的な? じゃなきゃ絶滅的な?」

「…兄ちゃん、何言っとるんじゃ。わしが言っておるのはモンスター素材の使い方のことじゃぞ」


 ああ、そっか、そっちだよな。「禁忌」ってワードが俺には強すぎてテンパってしまった。



「えっとですね、俺のときはモンスター素材をモンスター素材の槌で打ってたら事故が起きたんです」

「ほう、っていうことは、たまたま禁忌に触れちまったってことじゃな。しかしよく無事じゃったな。で、わしはなんで無事なんじゃ? 禁忌の呪いすら消えておるようなんじゃが…」


 なんか、マークスさんとは反応が違うな。素材融合の事を事故じゃなくて禁忌扱いとか。てか、禁忌の呪いってなんだ? もしかしてあの紫の傷の事か? もしそれだったら全治ポーション使ったら消えてしまったんだが。



「あの紫の傷のことでしてら治りましたよ。特別なポーション使ったんで」

「治った? いやいや、呪いが治るポーションなんて聞いたことないんじゃが?」


 そんなこと言われても、治ってしまったもんはしょうがない。



「まあ、こう見えて特殊上級職なので」

「なに? 特殊上級職? 本当かそれは?」


 特殊上級職という言葉に全力で反応してくるおじさん。マッチョなだけに圧が凄い。



「は、はい、創菌薬師です」

「そうきん薬師?」


 キョトンとした顔で不思議そうに首を傾げるおじさん。どうやら創菌薬師は知らないらしい。もしかして珍しいのか? ふむ、だったら明日にでもマジョリカさんに聞いてみるか。


「聞いたことないかもしれませんが、一応そうなんですよ」

「お、おう、すまんの。しかし特殊上級職ってのはそんなもんじゃ。わしたちドワーフにも過去特殊上級職が何人かいたらしいが、その職を兄ちゃんに言っても知らんじゃろうしな」


 え? え? 今、このおじさん、ドワーフって言った? 言ったよな?



「ドワーフ?」

「なんじゃ、ドワーフも知らんのか。あ、そういえば兄ちゃんこの住人ではないの。アレか、王都から達しがあった異人ってやつかの?」


「え、そうです。異人です」

「ほう、これが異人とな。あんまりわしらと変わらんのじゃな。足が8本あったり腕が6本あったりするのかと思っとった」


 えっと、火星人か鬼とかでしょうか? それか希少種のネギ? って、そんなことより。



「ドワーフってあのドワーフですよね? 鍛冶が得意で地底に住んでるっていう」

「ほう、よう知っておるな。ドワーフといったらそのドワーフしかないの。他にあるかの?」


 いや、俺もそのドワーフしか知らん。



「しっかし、兄ちゃんを見てるとエルフを彷彿とさせるのう。あ、もしかしてエルフの血が混じっとるのか? じゃから禁忌の呪いまで直してしまうようなポーションを作れるんじゃろ?」

「…エ、エルフ?」


 エルフもいるのか? え、俺エルフになりたい。エルフ好きだもん。種族進化とかしたい。



「エルフもいるんですか?」

「いるに決まっておろう。古代森林に行けばウジャウジャおるわい」

「古代森林?」

「ああ、そういえば唯一の入り口に厄介なモンスターが住み着いたって言っておったの。南の街の東側に森があったじゃろ。あの森の先に、首が痛くなるほど見上げるような高い木が生えとる森があるんじゃ。でな、一か所だけ入れる場所があるんじゃが、そこに厄介なモンスターが住み着きおってな。それ以来、行き来ができんようになっておるのじゃ。もう数十年も前の話になるかの…」


 あの森の先にそんなところがあったのか……数十年って、そんな昔の設定まであるんだな。厄介な魔物って…あの極仙蜘蛛みたいなのはもうしばらくは遠慮したいし……じゃ、ま、エルフはそのうちって事で。



「そんなことより、さっきから兄ちゃんから鉄の匂いがして仕方ないのじゃが。見たところ持ってなさそうなのに、どういうことかの?」

「え、匂います? っていうか、鉄鉱石って匂うんですか?」

「鉄鉱石?!」


 あ、やば。鉄鉱石の事は内緒だったわ。ドワーフの妙な愛嬌につられてつい話しちゃった。



「はは、持ってたらいいですよね~」

「……兄ちゃん、ドワーフ舐めとんのか?」


 うおお、今度はドスの効いた声。正統派な漢の迫力なんだが…。うーん、でも負ける気がしないんだよな。クソ上司ほどではないし、海坊主さんの異質な恐さでもない。そっか、俺鍛えられてるのかもな。FGSでも色々と鍛えられてきたし。マジョリカさんとかマジョリカさんとかマジョリカさんとか。



「いやいや、人には他人に言えないことの1つや2つあるものじゃないですか。そんな、凄まれても無理ですって、おじさん」

「お、おじさん……兄ちゃん、わしはまだピッチピチの86歳じゃぞ。その辺の300歳越えのドワーフと一緒にしてもらっては困るぞい」


 なぜか「おじさん」というワードに食いつくドワーフ。さっきまでの漢の威圧感が霧散していく。



 …しかし、長寿ドワーフ設定か。うん、いい。実にいい。これこそ王道ファンタジー。ヤバい、テンション上がる。


「あの、俺、スプラっていいます。実は山向こうの始まりの街のマークスさんの用事でこの街に来てるんです。知ってます? 刀匠カンギス。今、ちょっと内密の依頼で来てるんですよ」


 マークスさん、ごめん。ここはお名前お借りします。



「刀匠カンギス? はて、どこかで聞いたことあるようなないような…」

「マークサス・カンギスさんです」


「おおお、マークサス、マークサスか! なんじゃ兄ちゃん、あやつの知り合いじゃったのか」

「あ、え、ええ、そうですけど…」


 …なんか、期待以上の反応が返ってきたな。ここまで食いつかれるとそれはそれで心配になるぞ。大丈夫かな。



「そうかそうか、マークサスは元気にしておるか?」

「え、あ、はい。一流の鍛冶師ですごい武具を作ってます。この俺の装備も、このリオンの装備も作ってくれたんです」


「ほう、これがあやつの作った…ほうほう、これは作品級じゃの。なるほど、ちゃんと頑張ってるようじゃな」


 すごく満足そうに頷いてるんだが? どういう関係なんだ?



『フンスフンス』

「あ、そっか、もうそんな時間か」


 リオンから時間だぞってフォローが入った。そろそろ行かないと。モルスさんたちを待たせてしまう。



「すみません、俺、ちょっとこれから人と会う約束があって行かないと」

「お、そうか。それじゃあ仕方ないの。ちなみにわしはドワーフのムガンじゃ。また訪ねて来るといい。マークサスが作品級を渡す相手なら歓迎するぞい」

「あ、はい。それじゃあ」


 意外にあっさりと解放してくれたな。それだけマークスさんの名前に信頼があったってことか。



「じゃ、リオン、広場に行きますか」


 パッパカ パッパカ



「おう、スプラ。ここだ」

「すみません、モスルさん、お待たせして」


「いや、待ってねえから気にすんな」

「そうそう、待たせても大丈夫だから。改めまして、わたしはマカラって言うの、よろしくね」

「あ、マカラさん、よろしくお願いします」


 モルスさんとマカラさんか。で、さっきのドワーフがムガンさんと。


 名前間違えたら失礼だからな。一応ログ機能オンにすれば文字起こし画面に名前も出てくるんだが、さすがに文字を見て話すのは味気ないし使いたくない。



「んじゃ、ここじゃなんだから、場所を変えよう」

「そうね、どこに耳があるかわかんないからね」


 二人に連れられて歩くこと10分ほど。俺は見たことのある鍛冶工房の前に立っていた。



「おや、久しぶりじゃのう」

「ははは……お久しぶりです。ムガンさん」


 いや、どんな偶然だよ!




❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


ありゃりゃ? この3人がもう揃っちゃうの?

3人の信頼度がかなり上がらないといけなかったんじゃなかったっけ?

どうなってんだ?


…あ、小僧の信頼度がすごいことになってるな。【開拓者】称号で第二エリアNPC、【勤勉】が職人系NPCにはまり、【高潔】は全NPC対象。これにMKのシークレットクエスト絡みで2段上がって、しかもMGに関しては自身の命まで守られてる。さらに、小僧の持ってる【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】の素材を活かす系のスキルが、何気に鍛冶の街の住人AIにとって興味を引く材料なんだよな。


あー、もう、面倒事しか起きる気がせん…。



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・ドワーフとエルフの存在に興奮する。

・マークスさんの名前を勝手に借りる。

・ドワーフ鍛冶師ムガンと20分後に再会。



 ◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 】

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】【菌創薬Lv8】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


 ◎進行中常設クエスト:

 <薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

 <蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

 ●特殊クエスト

 <シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

 〇進行中クエスト:

 <眷属??の絆>



 ◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv2】



 ◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


 ≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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