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第182話 鉄鉱石と菌創薬

 目の前に平がる大量のアイコン。なんか大渓谷の向こう側にあった毒出し草の群生地を思い出す。


「これ何個あるんだ…?」


 実のところ、これまで採掘はした事がなかった。というか、採掘ポイントのアイコンを見たことがなかった。洞窟とか入ったことなかったし。


「採掘かあ。多分、ピッケルとかが要るんだよな」


 で、ストレージを探るがそんなものがあるはずもなく。


「黒曜ダーツで削れたりするか?」


 黒曜ダーツを狙撃しようとするが、照準が出ない。ってことは狙撃対象ではないということ。「じゃあ」ということで、黒曜ダーツ狙撃するのではなく、ピッケル代わりに手に持って採掘してみる。小さい頃になぜかどハマリした、岩を小石で削り取る遊びを思い出す。


「おお、できるのかよ」


 黒曜ダーツの先を採取ポイントに当てた瞬間から採掘エフェクトが始まる。採取の時は土を掘ったり抜いてみたりといった繊細なエフェクトだったが、採掘の場合はひたすら岩をガンガン叩くエフェクト。本来ならハンマー的なもので力強く叩くエフェクトなのだろうが、今回はダーツをひたすら岩に打ち付けるといった間抜けなエフェクトになっている。


 で、そのダーツ採掘を始めて30秒ほど、やっとのことで採掘が終わる。そしてまだ使用回数が残ってたはずの黒曜ダーツが一度の採掘で姿を消す。マジか…。


 その黒曜ダーツが自らの存在を賭して採掘したもの…それがこれ。



【鉄鉱石】×1

 高温で熱すると鉄となる。熱する方法によって鉄の品質が左右される。



「おおお、来たーー。マジで鉄鉱石じゃん。これでマークスさん喜ぶな」


 第二の街に着く前にシークレットクエストの目的物でもある鉄が手に入ってしまった。一気にテンションが上がる。が、しかし、すぐに問題にぶち当たる。


「黒曜ダーツ1個で鉄鉱石1個…」


 あまりにもひどすぎる採掘コスパにうなだれる。そして重い頭を持ち上げて周りを見ると「俺たち鉄ですけど何か?」と煽り散らしてくる無数のアイコン。


 ぐぐぐ、くそ、黒曜ダーツの残りは1個だけ。…これはまいった。爆裂ポーションで吹っ飛ばす訳にもいかんだろうし…な…ん? うーん、この際、アリっちゃアリか。あ、でも爆裂ポーションさっき使っちゃったわ。


「ネギ坊に爆炎草もらって作るか…でもリオンが居ないと俺も爆発に巻き込まれるからな。新しい服を傷ませるのも嫌だし。うーん、どうしよ…ん?」


 頭を悩ませながらなんとなくストレージを探っていたらあるものが目に留まる。ストレージの隅っこで縮こまっているちっこい存在。もしかして、コレ使えたりする?



【土竜金剛爪】

 太古の土竜鮫の爪が地中深くで圧縮されてその姿を変えた。その硬さは如何なる刃も砕き、如何なる加工をも拒絶する。



「ま、思いついたってことは、それはやれってことだよな」


 実行されないアイデアほど無駄な物はない。ここはやるのみ。金剛爪を手に持って採掘アイコンに向かう。すると無事に採掘エフェクトが発生する。で、待つこと30秒ほどで採掘完了。


【鉄鉱石】×1


 で、金剛爪はというと…無事だった。黒曜爪みたいになくなったら残念だったが、どうやらこの金剛爪、黒曜爪とは一線を画す実力の持ち主だったようだ。


「これでコスパ問題は解決。あとは時間との闘いか」


 ざっと見だけでもアイコンの数は6、70は下らない。30秒×70…うん、35分は流石に無理だ。


「採掘もたぶん採取みたいにステータスが関係してるんだろうな。採取が敏捷と器用あたりだとすると、採掘は筋力と耐久ってところか…あ、そうじゃん、アレがあるじゃん」



【スプラ印の身体強化ポーション】

 特殊上級薬師スプラの作品ポーションNo.1。

 厳選された素材を…。

 30秒間、筋力・耐久・器用+30


 さあ、この30秒間でどれだけ採掘できるかな。



ピンポーン

『特定行動により【採掘Lv2】のレベルが上がりました』


【鉄鉱石】×35



 いや、なんか思ってた以上の結果になってしまった。全部一撃で採掘終わるとかそんなことある? 途中で【採掘】スキル習得したのに、その前から全部一撃だったことで全く意味を感じなかった。


「しかし、そっかあ。ステータスでこんなに違うもんなのか。俺ってステータスでスッゲー損してるんだな。 改めて【マジ本気】の鬼畜っぷりを理解できた。くそレイスめ」


 しかし、レイスに悪態をついている場合ではない。計36個の鉄鉱石は採掘完了したが、まだ採掘アイコンは2/3も残っている。そうなるとアレもここで使っちゃうってのもアリかな。よし。



ピンポーン

『特定行動により【採掘Lv4】のレベルが上がりました』



【鉄鉱石】×37


 マジョリカさんの作品級ポーションの2本目を使ってすべてのアイコンを採掘し終えることができた。これで【鉄鉱石】は73個。これだけあればマークスさんも喜んでくれるだろう。



ザバン


「ただいま~」

『ゆらゆら』

『フンス』


 俺が戻るとリオンとネギ坊から安堵が伝わってくる。そうだよな、ちょっと様子見てくるって言ってぜんぜん戻ってこなかったらそりゃ心配にもなるよな。


「ごめんな、心配かけて」

『ゆらゆら~♪』

『フンスフンス♪』


 リオンが頬ずりしてくれるのがなんか癒されるな。リアルでもホースセラピーとかあるみたいだけどこんな感じなのかな。


『ゆらゆら?』

「ん? 何してたかって? 鉄鉱石がいっぱいあったんだよ。それを採掘してたら遅くなっちゃって。あんな場所は他にはないだろうから…あ、いや、待てよ」


 他にないなんて誰が決めた? もしかしたら他にもあったりするんじゃね? そもそもボス戦の先のエリアが綺麗な水が取れる湖だけしかないとか、そっちの方が不自然だ。


「よし、リオン、帰りはゆっくりと移動してくれ。今みたいな隠し通路があるかもしれないし、探しながら行こう。それと、ネギ坊にお願いがあるんだけど。癒楽草あるだけ全部もらっていい?」


『ゆら? ゆらゆら~』


 ネギ坊から『また?よく使うな~』と面倒くさそうな気持ちも伝わってくるが、ここは我慢してもらおう。たとえ隠し通路が見つかってもスプラ印を使わないと採掘に何時間もかかっちゃうからな。



【スプラ印の身体強化ポーション】

 特殊上級薬師スプラの作品ポーションNo.1。

 厳選された素材を…。

 60秒間、筋力・耐久・器用+30


【スプラ印の身体強化ポーション】

 特殊上級薬師スプラの作品ポーションNo.1。

 厳選された素材を…。

 90秒間、筋力・耐久・器用+30


【スプラ印の身体強化ポーション】

 特殊上級薬師スプラの作品ポーションNo.1。

 厳選された素材を…。

 120秒間、筋力・耐久・器用+30


【スプラ印の身体強化ポーション】

 特殊上級薬師スプラの作品ポーションNo.1。

 厳選された素材を…。

 150秒間、筋力・耐久・器用+30


 ネギ坊から残りの癒楽草4つを貰ってスプラ印を作っていったんだがこれがなんかか楽しかった。「菌を使う」とか書いてあったから、「リオンとか良い菌もってんじゃね?」ってことで、【骨粉(3種混合)】をリオンに振りかけてから回収。それを使ったら効果時間が60秒に伸びた。それじゃあということで、今度はネギ坊の頭から振りかけてみたら90秒。「両方ならどう?」で120秒。最後に物は試しで金剛爪にも振りかけてみたところ150秒に増えた。そして作る度に【菌創薬】もスキルレベルが上がりLv8になった。


「これ楽しいから、これからも汚くなさそうな物はいろいろ試してもいいかもな」

『ゆら?』

『フンス?』


 ネギ坊とリオンはまだ骨粉をかけられた意味が分かってない様子だが、そこまで嫌がってないし、いいよね? え? 虐待じゃないし。相手嫌がってないし。


「じゃ、隠し通路探しながら戻りますか」





「おお、スプラ、聞いたぞ。北の街へのルートを開拓してくれたらしいな」


 報告をしに武器屋に寄ったら早速マークスさんから話を振られた。情報が伝わるのが速いのはゲーム仕様なんだろう。


「ええ、まあ、ルート開拓と言うか、発見したというか」

「どちらも同じことだ。これで北の街から鉄を入荷できるってもんだ。助かったぞ、スプラ」



ピンポーン

『シークレットクエスト<武器屋マークスの困りごと>を完了し…』


「あ、ちょっとマークスさん、実はすでに鉄鉱石を採掘してきたんですよ」


 ピンポンさんがシークレットクエスト完了を告げてくるが、俺の報告はまだ終わっていない。悪いがここは遮らせてもらう。


「採掘って、採掘場は北の街の鍛冶組合の許可なく入れないだろ」

「鍛冶組合?」


「ああ、そうか言ってなかったか。実は北の山地の鉄鉱採掘場は北の街の鍛冶師組合が権利を持っててな。組合の許可を得て採掘するか、北の街で精錬された鉄を買い入れるしかなかったんだ。しかも今は封鎖されてるから入れないはずなんだがな…」


「封鎖ですか? 特に封鎖はされてなかったですけど。仙蜘蛛の親がいた洞窟の奥でしたけど特に封鎖されてる感じじゃなかったです」

「なに?! 仙蜘蛛の親だと? 本当かそれは」


「ええ、本当です。死に戻りそうになりましたけど何とか倒せて、その先の仙湖っていう水場の付近で取れたんですよ。これ取ってきた鉄鉱石です」


 実物を見せたほうが話が早いとカウンターの上に鉄鉱石を出す。するとマークスさんはポカンとしたまま、何も言わない。


 …? あ、そうか、1個だけじゃ話にならんよな。


 「それなら」と言うことで、鉄鉱石をカウンターの上に出しまくる。


 …さすがにもう載らないか。


 カウンターに山積みにされる鉄鉱石。どこまで積めるかゲームって結構楽しいんだよな。あと2,3個なら載るかな…


 ガシャン、ガラン、ゴロンッ。


 鉄鉱石が転げ落ち、ゲーム終了の大きな衝撃音が店内に響く。その音にマークスさんがようやく我に返る。そしてみるみる青ざめていく。


「ちょ、おまっ…なんだこれ…!」

「え、だから鉄鉱石…」


「そんなことは見りゃわかる! この量は何だ…って、もういいから、さっさと仕舞って、工房に入れ!」


 ものすごい剣幕で急かされ、慌てて鉄鉱石をストレージにしまうと、マークスさんが俺の背中をグイグイ押して工房に押し込めてくる。


 …うーん、もしかして、俺、なんかやらかしたか?




❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


小僧さん、それは「加工不可=破壊不可」ってことでさ。

で、小僧さんがさっきまで岩に打ち付けていたソレなんすけど、本来は王宮の保管庫で厳重に管理されるべきものなのですよ。

ゆえに普通に採掘のためにそれを使うとかそんな可能性なんて考慮されてるがわけないのです…


「わかったか、このやろうーーー!!!」

「うわっ。どうしたんすか先輩、なんか渋くキメ顔してるなと思ったら急に叫んだりして、情緒不安定っすよ」


「だってさ、この小僧、この世のすべてを手に入れられるような価値の石を採掘道具に使ったり、レシピ固定なはずの作品級ポーションを勝手に進化させてるんだもん。確かにレシピには菌なんて出てこないから同じNo.1として作ることは仕様上は可能かもしれん、だがな……仕様の使い方が想定外すぎんだろーーー! で、そもそも菌ってなんだよ、菌って。そんな隠しバラメータ入れたらどんだけ追加で電気食うと思ってんだ! 菌創薬なんてスキル作った奴出てこーい!!」



「…ええっと、管理AIが壊れた時の修理先はっと」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・黒曜ダーツで採掘し黒曜ダーツを失う。

・金剛爪なら失わずに採掘可能であることを知ってしまう。

・他の隠し通路の存在の可能性に気が付く。

・菌にハマる。

・製作:【スプラ印の身体強化ポーション】60、90、120、150秒

・習得:【菌創薬Lv8】【採掘Lv10】

・シークレットクエスト完了を遮る。

・鉄鉱石を出してマークスを焦らす。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:創菌薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv9】【寸劇Lv3】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】【採掘Lv10】new!【菌創薬Lv8】new!

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

●特殊クエスト

<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:20

 HP:310

 MP:445

 筋力:48

 耐久:46【+42】

 敏捷:120

 器用:47

 知力:69

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv2】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:3

 耐久:3

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ

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