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第173話 北の山地での出会い

「よし、じゃあセメントモリは今見せた事をこれだけ分やっといてくれ」

「はい、承知しました」


 マークスさんと馴染んできたセメントモリを工房に残し、俺とマークスさんは店に出る。


「で、スプラにはコレだな」


 そう言ってマークスさんがカウンターの下から見覚えのある服を取り出す。



仙蜘蛛の真道化服ハーミットシンクラウン

 特級鍛冶師マークスによる作品武具No.8。

 仙蜘蛛の糸に加え飛蛇の軽羽と蜘蛛の足をふんだんに用いて作られた超軽量道化服。蜘蛛の足先を編み込んで作られたその表面は仙蜘蛛の糸の付着を防ぐ効果を持つ。

 耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)



「え、また作品級?」

「いやあ、久々に時間忘れて貫徹しちまったぜ」


 マークスさんが頭を掻く。No.8って…あと2つしか生み出せないじゃん。あ、でもこの先いつ生み出せるかもわからないんだもんな。


「徹夜して作ってくださったんですか?」

「まあな。作業に追われて徹夜するのは勘弁だが、こんな楽しい徹夜なら大歓迎だ。兄弟子のデザインをこれだけ熱心に学ぶ機会なんてそうそうある事じゃないしな」


 なるほど、王都の兄弟子さんのピエロデザインか。俺的には別にピエロ服でなくてもよかったんだがな…。


「ほら、忙しいんだろ? あのゴリラは俺が鍛えといてやっからさっさと装備して行ってこい! あと、別に昼に帰ってこなくてもいいからな。山越えは半日でどうこうできるもんでもねえんだし」


 そう言うマークスさんに押し出されるようにして武器屋を出る。なんか三つも作品級を作らせちゃったな。この恩は早く次の街へのルートを開拓することで返すしかないな。


 ピエロ装備で身を固めて待ち合わせの北の門へ向かう。北門ではすでにセーキマッツとミーナが待っていたのでそのまま合流して山地へと向かう。



「しかし、スプラさんとパーティー組むとモンスターがめっぽう強くなって楽しいですね。ヒャッハー、消し炭になりなさーい」


 セーキマッツが嬉々として炎をぶっ放す。もう何回も見ているのに、未だにリスが燃えながら逃げ惑う様子にはドキドキしまくる。


 セーキマッツがヒャッハーした後には地面に大量のドロップが散乱する。が、今回は時間が大切。大どんぐりと栗の在庫をある程度確保したらドロップは放棄して先を急ぐ。次の街までどれだけ時間がかかるのかわからないから時短できるところはとことん時短していかないといけないのだ。そんな感じで3回の会敵を経てリオンが攫われた場所まで一気に駆け上がる。


「ここですね。ここから上は頂上エリア、右は仙蜘蛛の洞窟。わたしの地図ではここを左に下るということらしいです。その先に洞窟があって次の街へと繋がっているようですね」


 左方向に注意するが危険察知は反応していない。じゃあ進むか。


「右から誰か来るよ」


 ミーナが耳をヒクヒクさせて右の木々の先を伺っている。その耳は自動エフェクトなのか? 一応、確認するが危険察知は反応していない。いったい何が来るんだ?


 ガサガサ


「だあ、やっと出れたぜ」


 草をかき分けて出て来たのは小柄な女性プレイヤー。緑のロングウェービーな髪にヒラヒラドレスを着ている。なんだ? 社交界帰りとかか?


「(聖女よ)」


 ミーナが俺の真横に来てボソッてくる。聖女? なんだっけ。


「おや、あなたは微笑みの聖女様では?」


 セーキマッツの声に聖女の背筋がピーンと伸びる。漫画なら『ギクッ』とか描いてある感じ。


「おほほ、ごきげんよう。皆さまもご探索でして? この辺は物騒なのでお気を付けくださいましね。それでは」


 草をかき分けて出て来た時とは全く別人になった聖女がドレスの裾を上げてトコトコと山を下りていく。なんか濃いキャラだな。


「ちょっと待って」

「きゃっ」


 そんな聖女の前に現れて通せんぼするミーナ。


「な、なんですの? わたくし急いでますのよ」

「あんた、取り巻きはどうしたの」


 取り巻き? ウェイブ時代の三獣士みたいなのか?


「し、知りませんわよ。わたくし一人ですけど」

「あんたが一人でこんなところに来る訳ないでしょ。取り巻き、それに二陣の弟子はどうしたの。星獣がいないあんたがイベント参加してない訳ないわよね」


 ミーナの言葉に再びギャグのようにギクッとなる聖女。なんだこのダチョ〇クラブ顔負けのリアクションは。もしかしてツッコんだほうがいいのか?


「…な、な、なんの事かしら?」

「見えない何かに連れ去られた。違う?」

「ギクッ、し、知りませんわよ。なんですのその見えない何かって」


 この人今、「ギクッ」って言ったよな? セリフで言う人初めて見たんだが? で、そんな反応、「知ってますわよ。でも言えませんの」って言ってるようなもんだろ…やっぱり、俺ツッコんだほうがいいのかな?


「仲間を放って自分一人だけで逃げるつもり?」

「な、なにを言ってるのかしら。逃げるなんてそんなことわたくしがする訳ありませんわ」


 聖女よ、そんな空を見上げてもどんより雲しか見えんぞ。


「はあ、この際だから言っとくわ。仲間に引き込むなら最後まで面倒見なさい。ここぞという時に面倒みられないならはじめから引き込むんじゃないの。わかった?」

「…あ、この感じ、あなた、氷の女王ね。なんで猫なのかは知らないけど、あなたクソ生意気な女王でしょ!」


 お、なんだ知り合いなのか? 女王と聖女。聖女の方が正義っぽいがこの場はなんか逆みたいだな。ミーナも正義ではないと思うが…。


「そんなことばっかりしてたら誰にも相手にされたくなるわよ」

「…はっ、誰にも相手にされなくなったのはどっち、あなたでしょ。あなたのとこの取り巻きはみーんなわたしのところに来たわよ。三行半突きつけられたのはあなたの方!」


 あ、そうか、思い出した。ミーナを泣かせた時に三獣士が「聖女様の方が…」とか言ってたよな。そうか、こいつが元凶だったか。そっかそっか。じゃあ、俺からも言わせてもらおう。


「あの、聖女さん、その三行半突きつけた三人はもうとっくに謝罪して今は畑で頑張ってますよ。聖女さんのことすっごくディスってましたけど」


 ちょっと酷かもしれないが、こういう妄想的な相手には感情で言うより客観的な情報を突きつける方がいい。…と思う。


「あ、え、あの犬っころたちですか。あれはわたしが見放したんです。どうにもならないようなやつらだったんで」

「どうにもならないのなら、それをどうにかなるものにするのが上の立場にある者の責任でしょうが。どうにもならないからって見捨てるんならはじめから誘惑しないの」


 …そういやクソ上司はなんで俺をクビにしなかったんだろうな。俺は会社都合でクビにできないと思ってたけど、異動の時も上司ごと移動だったんだよな。俺を自主退職へ追い込むための虐めかと思ってたけど…うーん。


「あ、あなたに言われる筋合いはないわよ。何様のつもり? じゃあ、あなたはそれができるとでもいうの? 逃げられたくせに」

「…」


 ミーナが口をつぐむ。これ、アレだよな。あの夜の時の事思い出してるよな。ったく、しゃーない米粒っ子だ。


「あのさ、聖女さん。世の中にどうにもならない奴なんてほとんどいないよ。どうにもならない奴じゃなくて、自分をどうしたらいいのかわからない奴がほとんどだと思う(俺もミーナも三獣士もな)。でも、自分の事って意外と自分ではわからないことも多いんだ。だからこそ、子供には親がいるし、学校には教師がいるし、会社では上司がいる。経験豊富な人たちが良く見て知ってそれを教えてあげる必要があるんじゃないの?」


 やばい、すっごく恥ずかしい事言ってる。療養中の身で何言ってんだ俺。しかも経験豊富なクソ上司のこと棚に上げちゃってな。


「…」


 あれ? なんか聖女がうつむいてしまったんだが…。なんか、俺やっちまった? うーん、やっぱり身の丈に合わないことは言わないほうがいいな。


「…そんな事言われても、わたしにはわかんないわよ。そんなことしてもらったことないもん」

「え?」


「わたしのクソ親もクソ教師もみんなわたしのことなんて見てくれなかった。自分の都合ばっかり押し付けて誰もわたしのこと知ろうなんてしてくれなかったもん! うわーん」


「…えっと?」


 ミーナとセーキマッツに助けを求めるが二人とも目を逸らす。だから、二人して空見ても雲しかねえっての。


 で、だれか俺がどうすればいいのか教えてくれ!



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


かあーー、MK、お前小僧の事になるとなんでそうなっちまうんだ。

お前はもっと重要な場面で作品級出すはずだっただろ!

こんなピエロ相手に貴重な3枠も使っちまいやがってもう!



お、小僧が女プレイヤーを泣かしとる。

なかなかやるじゃねえかよ。

そうやってはっきりと言うのが正しいんだ!


「先輩、管理AIの女性たちが先輩の事ディスってましたよ。スペック高いからって調子こいてるって」

「ぐ…そう言う事を本人にはっきり言うんじゃねー」

「え、でもはッきり言わないとわかんないでしょ、先輩」

「だー、もう、いいから小僧の映像編集してーーい!」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・入手:【仙蜘蛛の真道化服】

・北の山地で聖女と出会う。

・聖女を泣かす。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:斡旋員

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+33)

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

●特殊クエスト

<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:14

 HP:250

 MP:355

 筋力:36

 耐久:34【+42】

 敏捷:90

 器用:35

 知力:51

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】【跳躍Lv1】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ



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