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第168話 走れリオン!

ブーン

『パーティーメンバーのセーキマッツが死に戻ったことによりセーキマッツとのパーティーが解除されました』



「え? ちょ、なに?」

「一瞬で死に戻り?」


 セーキマッツの繭が天井に吊り上げられていくのを見ていたら突然のセーキマッツ死に戻りのアナウンス。突然のことで二人とも固まる。すると奥の暗闇の中の赤い危険察知が激しさを増す。セーキマッツが死に戻ったことでターゲットが完全にこちらに向いたらしい。


「ミーナ、出口に! リオン、逃げるぞ」

『ヒヒーン』


 嘶くリオンが物凄い加速で出口に向かう。その先きにミーナの姿はもうない。すでに出口にいるんだろう。俺たちもこの速さなら余裕で…


「どわっ」


 出口に向かって疾走しながら横っ飛びするリオン。振り返ると背後には危険反応で真っ赤な糸が大量に飛ばされてきている。それを横っ飛びで躱していくリオン。



ピンポーン

『星獣リオンの【疾走Lv6】のレベルが上がりました』


 また一段スピードが上がったリオンが背後からの糸をステップを踏みながら器用に躱す。何度も躱しているうちに小さな出口の光が見えてくる。あと少しで出口だ。


『ヒヒヒヒーンン』

「どあっ」


 俺が出口の光に安心した瞬間、リオンが嘶き急に後脚立ちになって停止する。前みたいに後ろに投げ出されそうになるが今回はお尻が鞍にくっついて離れない。俺はバンザイの形で逆さまにされる。その俺の逆さまの視界の足元を過ぎて出口方向に飛んでいく大量の蜘蛛糸。危険反応で真っ赤な絨毯のようになっている。


「ヨイショッっと」


 体を持ち上げて姿勢を正すとリオンの前方が赤い光のカーテンで隙間なく塞がれていた。


「流石にこれは酷い」


 黒曜ダーツを散弾させても破れたカーテン状態になるだけ。半分以上は必ず残ってしまうだろう。触れたら終わりの蜘蛛の巣の隙間なんて無理ゲーだ。それにあれこれしてる間にすぐに補修されるに違いない。リオンが通り抜けるだけの隙間を空ける時間はくれないだろう。


「ここは…これ使わせてもらうか」


 俺はストレージから【マジョリカ印の身体能力強化ポーション】を取り出して飲み干す。すると体中の感覚が研ぎすまされていく。視界はよりクリアに。体の動きは全身に神経が張り巡らされたかのような…。言葉にし難いが、とにかく俺の体にすごい事が起きていることだけは確かだ。


「リオン、降りるからここで待機」

『フンス』


 俺は80越えの敏捷でリオンから降りると瞬時に地面を蹴る。向かう先はカーテン真横の壁だ。壁に着いたらすぐに黒曜ダーツを散弾狙撃。


 ダーツの先の黒曜爪が赤いカーテンを撫でるように切り裂いていく。散弾の仕方も今までよりランダム性が緩和されている。ほぼ横一列になって赤いカーテンを端から端まで切りとった。


「【引馬】」


 絶え間なく飛ばされる糸をステップで避けていたリオンが【引馬】によって俺の傍に瞬間移動する。俺が素早く騎乗するとなぜか洞窟の奥を向くリオン。


『ヒヒヒーン』



ピンポーン

『星獣リオンが【躍動】を習得しました』


 【躍動】の効果か、えげつない加速で疾走を始めるリオン。飛んでくる蜘蛛糸に向かいながらもそのすべてを変幻自在のステップで躱していく。



ピンポーン

『星獣リオンの【疾走Lv7】のレベルが上がりました。【疾走Lv8】及び【躍動】により【跳躍Lv1】を習得しました』



 そのアナウンスと同時に方向を変えるリオン。出口に向かって疾走する。しかし、その先に見えるのは地面に敷かれた赤いカーテン。黒曜爪によって切り裂かれた蜘蛛糸のカーテンが洞窟の地面を絨毯の如く真っ赤に染め上げている。


「げ、そっか、こんなことになるのか」


『ヒヒヒヒーーン』


 嘶くリオンが斜めに方向を変える。向かう先はさっき俺がいた場所。カーテン際の壁手前で【跳躍】し、そのまま更に壁でも【跳躍】。二段跳躍で一気にレッドカーペットを飛び越えると、そのままスピードを落とさす一気に出口まで走り抜けた。


「よし、出口! ミーナ、街に戻… へ?」


 俺とリオンが出口を抜けて洞窟を脱出すると、そこには上空を見上げるミーナの姿。そしてその視線の先には…なんか見たことのあるものが群れを成して飛んでいた。


「えっと、飛蛇?」

「洞窟出たらなんかいたのよ」


 なんか上空で群れる飛蛇。竜巻ごっこでもしてるんかってくらいにグルグルと渦巻き状になって回っている。で、その中心には紫の雲。


「そうだった。この可能性を失念してた。どうしよ、セーキマッツ死に戻っちゃってる」


 シュシュシュシュシュシュ


 背後の洞窟から響いてくる嫌な音。蜘蛛はまだ俺たちを追ってきているようだ。仕方ない。レアドロップもったいないけど、ここは【爆裂ポーション】で飛蛇を殲滅…あ、ダメだ。前を炎で塞いだら後ろの仙蜘蛛からの逃げ道がなくなる。くそ、挟まれるって厄介だな。


「どうする、スプラ」

「どうするって…ん?」


 目の前の飛蛇になんか違和感を感じる。なんだ?


シュシュシュシュシュ


 大きくなる仙蜘蛛の音に後ろを振り返る。すると洞窟の暗闇に赤く点がどんどん増えている。ぐぐ、時間がない。って、ちょっと待てよ…。


「あっ、そういうことか!」


 もう一度前を向いて上空の飛蛇を見る。うん、まったく赤くなっていない。つまり【危険察知NZ】が反応していない。ってことは…あの飛蛇は俺たちを狙っていない?!


「ミーナ、あの飛蛇の下を逃げよう」

「え、あの蛇速いよ。無理じゃない?」

「大丈夫、危険はないから。リオン!」


『ヒヒーン』


 リオンが躍動し一気に加速。飛蛇の下を疾走する。ミーナも姿を消した。意を決してくれたらしい。すぐ上を飛蛇の群れが飛び回る中を上体を低く保って走り向ける。そして飛蛇の下を抜けた時、背後が一気に騒がしくなった。なんだ?どうした?


「ミーナ、ちょっとストップ」

「え、なに?」


「なんか様子がおかしい」

「え?」 


 振り返ると、飛蛇の群れが洞窟に向かって威嚇をしている。そして洞窟の入り口に現れる仙蜘蛛。洞窟からは出ようとしないが、飛蛇の群れの威嚇にひと際甲高い音で威嚇し返している。そして、一匹の飛蛇が消えたと思うと一匹の仙蜘蛛がポリゴンに変わる。


「なんか…戦い出してるな」

「え? 同士討ち?」


 仙蜘蛛がポリゴンになったのを皮切りに次々と姿を消す飛蛇。洞窟の中はポリゴンの光で溢れ返る。だが、飛蛇が仙蜘蛛を圧倒して終わるのかと思った次の瞬間には洞窟の入り口前で数匹の飛蛇が姿を現して地面に落ちる。ばたついているところを見ると、おそらく仙蜘蛛の放った蜘蛛の巣に絡め取られているのだろう。地面に落ちた飛蛇はひとしきりバタついた後、繭に包まれてそのまま洞窟の中に引き込まれていった。


「蜘蛛の巣が見えけど…あ、そっか、【危険察知NZ】が働かないと仙蜘蛛の糸は見えないんだな」


 今までずっと危険察知で見ていた赤い蜘蛛糸。実際には繭になるまで見えない仕様だったらしい。そりゃセーキマッツもあっという間に繭にされるわな。あ、それでもミーナは避けてたよな。


「仲悪いのかな?」


 飛蛇と仙蜘蛛の戦を見ながらミーナがつぶやく。 


「ああ、そういうや蛇を食べる蜘蛛はいるらしいな。蛇が蜘蛛を食べるのは聞いたことないけど、」

「それリアルの話でしょ? わたしどっちも無理だから。ヘビイチゴとか蜘蛛の巣とか見ただけで無理。気配だけでも無理」

「ヘビイチゴと蛇は関係ないけどな」


 なるほど、リアルの強烈な忌避感で蜘蛛の巣を避けたという事か。…いや、どう考えても無理があるだろ。流石にそれは…いやあるのか? VRって意識の世界だもんな。うーん。


「あ、もうすぐ終わるんじゃない?」

「え?」


 目の前で繰り広げられる見えない観戦しながら戦況の変化を待っていると、双方ともに半数以下に数が減っている様子。


ギシャギシャギシャギシャギシャギシャーー


 そして、双方の数が1/3を切った時、洞窟の奥からどデカい声が聞こえてくる。仙蜘蛛の声を太くして濁らせたような声。くっそ不気味な声だ。その声を聞いた飛蛇が一斉に洞窟から距離を取る。そして上空を2回3回と旋回すると山頂方向に飛び去っていった。残された仙蜘蛛はさっきまでの戦闘モードが嘘のように静まり返ると、ゆっくりカサカサと洞窟の中に戻って行く。


「…今の声、もしかしてボスかな?」

「…でしょうね」


 ミーナと見合って背筋を震わせる。仙蜘蛛のボスなんて絶対に戦いたくない。あんなグロい見た目のデカ物とか俺でもマジ勘弁だ。


「ね、スプラ。なんかいっぱい落ちてない?」

「あ、なんか落ちてるな。…まさかドロップとかじゃないよな」


 静かになった洞窟の前にドロップ然としたアイコンが散在している。結構な量だ。


「まさか、スプラさん、何言っちゃってんのよ。なんでモンスター同士の戦闘でドロップが出るっていうのよ」

「だよな。それはわかってるけど、一応見てみるのはアリなのでは?」

「ま、見てみるくらいならアリだわね」


 一応危険察知だけには注意を払って落ちているものに近寄ってみる。で、一つ拾って確認すると。


【仙蜘蛛の糸】


「なんかドロップらしい」

「そうらしいわね」


 ミーナも一つ手にしてマジマジ見つめている。


「拾いますか?」

「拾いましょっか。お弁当ある?」


「こちらをどうぞ」



【蜘蛛の足】×42

【仙蜘蛛の糸】×59


【蛇牙】×70

【飛蛇の軽羽】×38

【飛蛇の指揮羽】×1



ピンポーン

『24時間が経ちましたので北の山地エリアでのレアドロップ率上昇効果は終了しました』



 敏捷チートのミーナとドロップを拾いまくる。ボス蜘蛛が出てこないかヒヤヒヤしながら5分程で拾い終え、少し離れたところで弁当をお食べていたらピンポンさんがボーナス時間の終了を告げてきた。


❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


あーあ、【魔好香】の応用までバレちまったなあ。

MJが【魔好香】を簡単に渡すからだぞ! ったく。


あーあ、レアドロップの山じゃねえかよ。


正規ルートなら冒険者ギルドで「洞窟前で【魔好香】を焚く」ってヒント貰ってからの調査クエスト。戦闘には参加しねえはずだったのに。


ヒントなしで仙蜘蛛を活性化させた上に自力で仙蜘蛛を洞窟の入り口まで引っ張ってきたらそりゃ戦闘扱いだよなあ。


【仙蜘蛛の糸】かあ。またMKが作品作っちまうのが目に見えるんだよな。残り数とか気にしてねえもんなあいつ。絶対に自分の役割忘れてるよな。


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・洞窟を脱出

・リオン:【疾走Lv8】【躍動】【跳躍Lv1】

・仙蜘蛛vs飛蛇の観戦

・獲得:【蜘蛛の足】×42【仙蜘蛛の糸】×59【蛇牙】×70【飛蛇の軽羽】×38【飛蛇の指揮羽】×1

・レアドロップのボーナスタイム終了。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:斡旋員

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1(+53)

 器用:1

 知力:1

 装備:男の隠れ家的オーバーオールセット

 :勘違い男の品質ダウンジャケット

 :飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

●特殊クエスト

<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:14

 HP:250

 MP:355

 筋力:36

 耐久:34【+42】

 敏捷:90

 器用:35

 知力:51

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv8】new!【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】【躍動】new!【跳躍Lv1】new!



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ

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