第166話 リオン救出作戦
【飛蛇の軽羽】×97
【蛇牙】×158
「スプラ、お前、これ…」
マークスさんが目の前の素材の山を見て固まりかけている。土竜鮫の爪を見た時よりも驚いていることがこめかみに浮かぶ青筋が物語っている。
「マークスさん、これで敏捷アップの防具作ってくれませんか? 大至急で」
「大至急って、それはいいんだが、この素材はどうしたんだ」
眉間にシワを寄せたマークスさんの視線が俺の顔へ上げられる。
「これは北の山地で飛蛇の大群に襲われたんで殲滅したんです」
「飛蛇の大群を殲滅? どうやって…それにこの量…」
マークスさんの眉間のシワが深くなる。でも、今は一から説明している時間はない。
「マークスさん、北の山地でリオンが蜘蛛に連れ去られちゃったんで助けに行きたいんです」
「なに、あの星獣が? 北の山地の蜘蛛となると…これは大至急だな。おっし、お前の為なら俺の全てを掛けてでも作ってやる。30分で仕上げてやるから、それまで他の準備して来い。あと、それまでこれ履いてけ」
【飛蛇のローサン】
特急鍛冶師マークスによる作品武具No.6。
飛蛇の軽羽2枚の力を最大に発揮させた逸品。
敏捷+3
「特急鍛冶師? 作品武具? これって…?」
「説明は後だ。とにかく履いて準備して来い」
「あ、はい」
マークスさんに急かされ武器屋を出る。敏捷が1から4に上がっただけで世界は変わる。子供の駆け足程度に速くなったスピードで街を走る。次は薬屋だ。
「マジョリカさん!」
「おや、どうしたんだい、そんなに慌てて」
「実は…」
…
「なんだって! 北の山地で攫われただって!」
マジョリカさんにリオンが蜘蛛に攫われた経緯を伝えると表情が一変する。マジョリカさんの焦る顔って初めて見たんじゃないか?
「だとすると…これを持ってお行き」
「これは?」
マジョリカさんがカウンターの下から取り出したのは見たことのない瓶に入れられたオレンジ色のポーション。
「身体強化ポーションと言ってね。スプラの身体能力を底上げしてくれるはずだ。材料がなくて2本しか作れてないが、こんな時の為に作っておいたもんだ、持ってお行き」
【マジョリカ印の身体強化ポーション】
特殊上級薬師マジョリカの作品ポーションNo.8。
厳選された素材を卓越した技術と磨き抜かれた五感によって加工した特殊ポーションであり、使用者の全ての身体能力を底上げする。
30秒間全てのステータス+30
「さ、30? で、また作品…?」
「スプラさん、わたくしもお供しましょう」
薬房から顔を出したのはセーキマッツ。ってか、まだいたのか。
「下処理から調薬、配達まで全てをやりましたよ。おかげでMPポーション自作の為の全てを手に入れる事ができました」
「ああ、セーキマッツも連れて行くといい。しこたまMPポーション確保してるみたいだからね」
マジョリカさんにそう言われなぜか胸を張るセーキマッツ。でもそうか、今日ずっと手伝いしてたんだな。だからまだ薬房にいたのか。でもありがたい。今はどんな戦力でも助かる。
「スプラさんの星獣に手を出したからにはこのセーキマッツが灰も残らぬほど燃やし尽くしてやりますぞ。ハハハ」
すっごい自信満々なセーキマッツ。今はこのキャラが頼もしく思える。
「スプラ遅い!」
「どわっ」
いつも通りいきなり目の前に現れるミーナ。ログアウトしたんじゃないのか?
「ミーナ、ログアウトして…」
「クソ親父の用事を終わらせてきただけ」
「おお、そのお姿はかの猫姫殿で? でしたら丁度いいところに。実はスプラさんの星獣リオンさんが連れ去られてしまったらしいのでこれから奪還しにいくところなんです」
「ええええええーーー!うそ、ヤダ!行こ!今すぐ行こ!わたし先に行ってる、何処行けばいいの?」
なんかミーナが俺よりも焦りだした。しかし、ミーナさん、あなた覚醒あと1回しか使えないでしょ。一人で行っても飛蛇の時みたいに颯爽と使って戻って来る未来しか見えないんだけど?
「猫姫殿、落ち着きなさいませ。『急いては事を仕損じる』と申しますぞ」
「…誰?」
「あ、こっちはセーキマッツ。北の山地で出会って今まで薬房の手伝いをしてもらってたプレイヤー」
「お初にお目にかかります、猫姫殿」
慇懃なゼスチャーで挨拶するセーキマッツ。もしかしてこれってロールプレイなのか? じゃ、ミーナも腹黒水色銀仮面ロールで返し…
「で、行かないの? 行かないならわたし行くけど」
ミーナが急かしてくる。なんか、ミーナの慌てる姿を見たら逆に俺は落ち着いてきたな。
「いや、それが相手がヤバくてさ。蜘蛛の巣を飛ばしてきてそれに絡め取られると抵抗できずにそのまま連れ去られちゃうから。対策せずに行ったら返り討ちに遭うだけだし、それに実際に何処にいるのか分かんないし、場所を見つけないとだし」
「んじゃ、【追跡NZ】してみようか? リオンちゃんを対象にしたらいいんでしょ?」
あ、そういやそんなのあったな。ってか、この人すでに使った事ある感じなんだが?
「…どうやってやるの?」
「今さっきはスプラを対象にしたら薬屋のすぐ前まで一瞬で来れたから、多分そんな感じだと思う。でも、わたしだけ移動してもって事だよね〜」
…この人、今サラッと俺を対象にしたって言ったよな。え、じゃ、ミーナはいつでも俺を追跡できると? いや、別にいいんだけど…なんかモヤッとするな。GPS付けられた子供の気持ちってこんな感じなのか…。
「でしたら、取り敢えずリオンさんが連れ去られた場所へ行ってそこで猫姫殿にスキルを使っていただきましょう。猫姫殿にロープかなんかを持っていたただくか、居場所をこちらに教える術があればよろしいでしょう。道中の邪魔者はわたくしが消し炭にして差し上げますので」
なんか、セーキマッツが頭のいいことを言ってきた。そうか、ロープとか紐とかがあればいいのか。狼煙的なものでもいいかもな。
…
「よし、出来た」
【打ち上げ狼煙】
衝撃を与えると音を出しながら打ち上がり、上空で弾けて大量の煙を放出する玉。煙にはモンスターを呼び寄せる効果がある。
「ミーナにはこれを使ってもらう」
ちょっと物騒だが煙と言えばこれ、【魔好香】しかない。【魔好香】を手持ちの【爆炎草】と一緒に【古樹液】で固めて作ってみたらなんとか使えそうな物が出来た。もし敵が寄ってきたらセーキマッツに殲滅してもらえばいいしな。
「じゃ、貰っとく。で、もう行く?」
えっと…うん、着く頃にはちょうど30分だな。じゃ、行くか。
「武器屋に寄ってそのまま向かおう」
…
「マークスさーん」
「おう、できてるぞ」
【飛蛇の真道化靴】
特急鍛冶師マークスによる作品武具No.7。
飛蛇の軽羽を存分に用い、靴裏には蛇牙が埋め込まれた逸品。
敏捷+53
「え、53?」
「話は後だ。直ぐに向かえ!」
「はい、ありがとうございます!」
マークスさん、マジョリカさん、本当にありがとう。この恩はいずれまた。
さあ、リオン、ネギ坊待ってろよ。直ぐに助けに行くからな。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
いやいやいやいや、作品級出しちゃったじゃんよ、あのAIたち。
なんなんだよ、サンダルの作品級って。
無駄遣いにも程があるだろうが。
ちゃんと残り数考えてんのか。
で、頼むから勝手に予定を変えんじゃねーー!!
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・取得:【マジョリカ印の身体強化ポーション】✕2、【飛蛇のローサン】、【飛蛇の真道化靴】
・ミーナ、セーキマッツと合流
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:斡旋員
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1(+53)
器用:1
知力:1
装備:男の隠れ家的オーバーオールセット
:勘違い男の品質ダウンジャケット
:飛蛇の真道化靴【敏捷+53】 new!
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv10】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv4】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】【慧眼(薬草)】【薬草学】【採取Lv10】【精密採取fLv4】【採取者の確信】
所持金:約1000万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




