第161話 お手伝いの価値
「これは領主第二夫人から貰った地図ですから」
「え?」
第二夫人? っていうと、ディオーネのことだよな。確か、今は《《元》》第二夫人で犯罪者になってるはずだけど。
「実は、ある人物から第二夫人を紹介されまして。『思う存分MPポーションを使わせてやるからこの地図を持って第二の街へのルートを早々に確保すること』とシークレットクエストを提示されたのです。こう見えてわたくし魔道の道こそ我が道と自負していまして、それで大喜びでこの山地に来たのです。ですが、無制限で魔法をぶっ放せることにちょっとだけ舞い上がり、数日の間羽目を外していましたら急にクエストが消滅したとアナウンスがありまして。それ以降はそれまで自動でストレージに送られてきていたMPポーションも送られてこなくなり、どうしようかと思っていたところで山頂エリアの解放のアナウンス。ちょうどトレントにも飽きてきていたところでしたので、全財産をMPポーションと食料に変えて山頂エリアで炎魔法をぶっ放していたのです。危険察知が反応したら後ろに魔法をぶっ放すだけで大量の【蛇牙】が手に入る。その法則を発見して、ドロップを売ってはMPポーションに変えていたのですが、今回は食料を買い忘れてしまい飢餓状態で噴水にダイブするところだったのです」
えっと、魔法云々は置いといて…。つまり、あれか、ディオーネが王都へ武器を運ぶためのルート開拓をしていたところ、俺の【愛弟子印の超絶美容液】によってメアリーさんが復活したことでディオーネのクエストがなくなってしまったと。そうか、このセーキマッツがあの時の「どこの誰だか」だったのか。なら協力してあげたい気持ちはあるな。俺も目的は同じだし。
「つまり、セーキマッツさんは第二の街へ行きたいと?」
「いえ、わたくしは魔道の道を歩めればそれでよく、別に第二の街へ行きたいわけでもないのです。わたくしが求めるのは2つのみ。MPポーションと魔法を思いっきりぶっぱなせる環境だけなのです」
「あ、そういうことですか…」
つまり魔法を思いっきりぶっ放していたいだけと。うん、分かりやすいっちゃ分かりりやすいな。そうか…あ、じゃあさ、薬房の手伝いとかして調合スキル取ったらいいだけじゃね? 自分で調合したらいいじゃん。
「じゃあ、セーキマッツさん、もし調合関連スキルを習得できる場所があるって言ったらやりたいです?」
「おお、なるほど。市販のポーションを買うからコスパが悪いと。自分で手作りできるならそれが一番と。それは目からウロコ、コロンブスの卵も転がるというもの」
…やっぱ面倒くさいな。ま、でも紹介してマジョリカさんに預けちゃえばいいだけだし。
「ただ、薬房で下働きしないといけないかもしれないですし、絶対にできるとも限りませんけど」
「いえいえ、そういった話をいただけただけでも感謝でございます」
「じゃあ、聞いてみますね」
じゃあ、タラコに聞いてみるかな。えっと、フレコはどうやるんだっけ。確かこの辺のボタンをチョイチョイと。
『はい!スプラさんですよね。早く戻ってきてくれませんか?お願いします!それじゃあ!』
…なんか一方的にしゃべられて切られたんだが? 何がどうした?
「あの、セーキマッツさん、一度街に戻りましょうか?」
「はい、もちろんでございます」
じゃあ、一度戻ろっか。
パッパカ パッパカ
…
…
「スプラさーん、どこ行ってたんですか。いつまでたっても帰ってこないから」
「おや、スプラかい。ちょうど良かったよ。あんたの弟子なんだがね、もうやりたくないって言いだしおってね。困ってたところだったんだ」
タラコとマジョリカさんの距離が遠い。タラコは泣きそうな感じだ。なんでこうなる?
「ちょっと、タラコこっちに」
タラコを薬房から店へ連れ出して話を聞いてみる。
「そっか、なるほどね」
「なので、今日はこの辺で失礼します」
「うん、わかった。お疲れ様」
タラコが薬屋を走り去っていった。
ピンポーン
『弟子プレイヤー「タラコ」が<マジョリカの手伝い3>を放棄したため、斡旋がキャンセルされました。<マジョリカの手伝い3>が戻されました』
タラコから早口でまくしたてられたのはマジョリカさんへの愚痴だった。まあ、一言でいえば「厳しすぎて楽しくないから止めたい」ってことだ。まあ、そうだよな。薬師希望と言っても、ログイン直後からずっと薬房に籠って薬草の仕分けしてたら嫌にもなるか。でもやり切れば報われたと思うけどな。もったいない。
「どうだい、あの娘は。…おや、もう帰ったのかい」
マジョリカさんが薬房から出てくる。
「困ったねえ。まだ半分も仕分けが終わってないのに」
「マジョリカさん、さっきのタラコはスキル習得できましたかね?」
「ああ、薬草の基本知識は身に付いたはずだよ。最後までやれば中級知識や目利きくらいは身に付いただろうに。途中で投げ出したから基本知識止まりだね」
「そうですか。もったいないですね」
ってか、目利きってなんだ。初めて聞くんだが? それに中級知識って? 基本知識EXとどっちが上なんだ? もうこの際、俺もいろいろ学ばせてもらおうかな。
「マジョリカさん、実は手伝いをもう一人連れてきたんですよ。魔法を使うのが好きで、自分でMPポーションを作れるようになりたいって異人なんですけど」
「おや、そうかい。いいけど、それならあんたも一緒にやるんだよ。またあれこれ言い訳されて逃げられたらこっちの仕事も進まないからね。二人でやりな」
マジョリカさんの後に続いてセーキマッツを連れて薬房に入る。
「おおー、コレは、もしや全て薬草の類。お宝の山と言う訳ですな」
「う、うん」
なんかセーキマッツのテンションがすごいんだが? どうした?
「おや、なんだい、さっきのよりやる気があるようだね」
「はい、もちろんですとも。わたくしセーキマッツと申します。ビシバシとご教授くださいませ」
「ほうほう、いいじゃないか。じゃあ、さっそくこの薬草を一本一本手に取って調べて品質ごとに仕分けするんだ。ただし別の薬草も入ってるかもしれないからね。横着するんじゃないよ。さっきのは何度も横着しおったから目が離せなくてね。わたしの仕事が進まなくて大変だったんだよ」
「横着だなんて、なにをおっしゃいます。薬草は一本一本に個性があるもの。その個性を見抜いてこそ最上のMPポーションが作れるというものでしょう」
「おや、あんたはよくわかってるじゃないか。じゃ、特にこの薬草はね…」
「ほうほう、それは素晴らしい。ってこては…」
なんかよくわからんが、二人で盛り上がってるな。じゃあ、俺も仕分けやって行きますか。
ピンポーン
『特定行動により【苦痛耐性Lv1】を習得しました』
ピンポーン
『特定行動により【ルーティンワークLv1】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【薬の中級知識】を習得しました』
ピンポーン
『特定行動により【苦痛耐性Lv1】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【ルーティンワークLv2】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【苦痛耐性Lv2】のレベルが上がりました」
ピンポーン
『特定行動により【目利き(薬草)】を習得しました。【観察眼】と【目利き(薬草)】により【眼力(薬草)】を習得しました。【目利き(薬草)】は【眼力(薬草)】に統合されました。【観察眼】と【眼力(薬草)】により【慧眼(薬草)】を習得しました。【眼力(薬草)】は【慧眼(薬草)】に統合されました。【慧眼(薬草)】を習得したことにより【薬の中級知識】が【薬草学】に変化しました』
ぐぬぬぬ、ごめんなさい。頭が疲れててもう無理です。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
おお、あのMJに気に入られるとかマジか、このプレイヤー。
ってか、小僧を通してMJが心開くプレイヤー爆増したらポーション革命起きちまうぞ。
これはこれで対策を…あああ!そういや、小僧【観察眼】持ちだった。
【慧眼(薬草)】なんて小僧に持たせたら、しかもYR1 もいるとなると。
予測、予測を立てないと…だああ、99.98%要対応事案ってどういうことだ。
くっそーーー!!!
―――――――――――――
◇達成したこと◇
・タラコに逃げられる。
・戻し:<マジョリカの手伝い3>
・セーキマッツとマジョリカの間を取り持つ。
・取得:【苦痛耐性Lv3】【ルーティンワークLv3】【薬の中級知識】【目利き(薬草)】【眼力(薬草)】【慧眼(薬草)】【薬草学】
・消失:【薬の中級知識】【目利き(薬草)】【眼力(薬草)】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:なし
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:男の隠れ家的オーバーオールセット
:勘違い男の品質ダウンジャケット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv9】【依頼収集】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv3】new!【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv3】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】【苦痛耐性Lv3】new!【慧眼(薬草)】new!【薬草学】new!
所持金:約1000万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:14
HP:250
MP:355
筋力:36
耐久:34【+42】
敏捷:90
器用:35
知力:51
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv6】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




