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第159話 雪だるま式と冬景色

 グオオオ


 超除草ダーツが巨大トレントに刺さると、次はリスの一斉攻撃。それを【散弾狙撃Lv3】で迎え撃つ。しかし狙撃するのはダーツではない。


「くらえ、散弾どんぐり」


 狙撃されたどんぐりが5つ程の欠片になってリスを範囲攻撃。欠片が当たった3匹がポリゴンになる。同じように範囲をずらしながら連続で狙撃していき、50匹近かったリスの群れが一気にその数を減らしていく。


「よし、最後。ミーナ、よろしく」


 そして、敏捷チートのミーナが弁当片手にあっという間にドロップを拾い集める。


【トレントの香木】

【大どんぐり】×37

【栗】×25


「うーん、やっぱりこういうことだよな…」


 ドロップを見ながら思わず唸る。リスのレアドロップなはずの【栗】のドロップ率が異様に高い。


 実は昨日から気になってはいたのだ。レアドロップが多いなと。で、「そう言えばレアドロップがどうのってアナウンスがあったなような…」と思い出し、ログを確認していたら発見した。山頂エリアを解放した際に、「24時間レアドロップ率アップ」状態になっていたのだ。「もう少し早く気づいていれば、1人でも狩りに向かったのに」と悔しかったのだ。【栗】なんて物はいくらあってもいいですからね。


「栗がいっぱいだね」


 ミーナもドロップを見ながら嬉しそうだ。


「だな」


 しかし、俺にとっては今は栗以上に重要な事がある。


「使った【どんぐり】が24個でドロップの【大どんぐり】が37個…ふむ、これって倒せば倒すほど弾が増えてくってことだよな。しかも上位互換に変わっていくとか…」


 俺、なんだか気づいちゃいけない事に気づいてしまったかもしれない。まさか、消耗品が消耗せずに増え続けるとは…。しかもパワーアップしていくとなると…今この瞬間、雪だるま式武具増産法が確立されてしまった。



「これ、この辺ウロウロしても肉はなさそうよね」

「え、あ、そう…ですか?」


 俺の気持ちをよそにミーナが真逆のことを言ってくる。俺的にはここで大どんぐりを大量にゲットするのはかなりアリなんだが。ミーナの目的は天雷鳥だもんな。しゃーないか。早いとこ天雷鳥探し出して戻ってこよう。


「んじゃ、トレントおじさんはなるべく相手にしないで登っちゃうか?」

「うん」


 パッパカ パッパカ


 因みに、北の山地情報はミーナが掲示板で調査済みだ。それによると、どうも俺たち以外は巨大トレントには出くわしていないらしい。ただ、トレントの枝のリスがトレントと連携してプレイヤーの裏を突いてくる攻撃が多くなっていたり、鳥モンスターのチックリが縦に一列になって突撃してくるといったトリッキーな動きが多くなったりして、一陣でも死に戻るプレイヤーが続出しているらしい。


 だが、俺たちが遭遇するのは今のところ巨大トレントと俺が【爆裂ポーション】で殲滅したチックリの大群くらいで、そういったややこしい動きをしてくる事はない。あ、いや、もしかしたらトレントを一撃で倒したり、チックリを一度に焼き払ったりして連携される前に殲滅してるからかもしれんがその辺はよく分からん。が、ま、とにかくこれと言って支障はない事には変わりない。


 で、山頂エリア情報はというと、足を踏み入れた攻略組は訳もわからないまま死に戻っているらしい。というのは相手を視認する前にやられてしまうから、自分が何にやられたのかもわからないまま、気がついたら噴水前という事らしい。認識できてないからかログを見ても名前は「??」表示なんだそうだ。


『まだ山頂は早すぎる。入山禁止』


という認識が、現在、プレイヤー間で周知されている。


 そしてイベントが始まった今、二陣プレイヤーを連れてそんな危ないところ行ける訳もなく、今日の北の山地エリアはガラガラ状態という訳だ。



 プレイヤーがいない山道をリオンに乗ってパッパカ走る。リオンの上から【遠見】【観察眼】使って天雷鳥を探す。目的はあくまで卵なので鳥の巣を探して木の上の方なんかも見ないといけない。でも、俺がよそ見しててもリオンが道を覚えてくれているようで勝手に目的地に向かってくれる。リオンさん、グッジョブ。


「えっと、この木がこの前来た時の木だから、今日はここを上に登っていこうか。多分この先が山頂エリアじゃないかな。」


「じゃ、先に行って見てくる」


「危険察知は反応してないから大丈夫だとは思うけど、一応気をつけて」


 弁当片手に姿を消すミーナ。最近はプレイヤースキル【食べ歩き】を身に付けたらしく、常に満腹に近い状態をキープしている。


 リアルでも食べるクセがついたらどうするんだろと心配にもなるが、余計なことを言うとつまらんことになるため言っていない。


「ごめん」

「どあっ」


 消えたばかりのミーナが直ぐに帰ってくる。


「ど、どうした?」

「連れてきたかも」


「え、何を?」

「なんか飛んでるやつ。すっごい速くてもう【回避】使っちゃった」


 うん、確かに尻尾が2本ゆらゆらしとる。あ、消えた。15秒って早いな。


「モグモグ、ちょっとヤバイかもよ。どうする?」

「どうするっても、なんも危険反応ないしな」


 うん、危険察知は全く反応していない。逃げたんじゃね?



「じゃ、ミーナはこの辺で待機してて。俺とリオンで行ってくる」

「え、行くの? 本当に速いよ。本当に本当に気をつけてね」


「了解。もしミーナの方でなんかあったらパーティー抜けて逃げちゃっていいから」

「わかった」



 よし、じゃあ、行きましょうか。リオンさん頼みます。


 パッパカ パッパカ



「どわっ、なんだこれ?」


 しばらくリオンに乗って走ると急に視界が赤く染まる。というか、赤くなったり戻ったりをすごい早さで繰り返している。なんか気持ち悪い。


『ブルヒヒン』


 リオンも戸惑っている様子。


「うおっ、今度はなんだよ」


 目の前が急に真っ赤に光り、俺の視界を覆い尽くす。前が見えなくなってしまいすぐに感度を下げる。すると、見える赤い無数の点。それが一斉についたり消えたりしながら少しづつ俺の方に近づいている。


「あの赤いのだよな。【遠見】するか。ちょっと準備だけしてっと」


【遠見】で拡大して確認する。



飛蛇フライングヴァイパー

 魔力に満ちた羽根で空中を激しく飛び回る蛇。その牙は高い攻撃力を誇る。羽根が傷つくと飛べなくなるが、同時にレアドロップも失われる。獰猛かつ憶病。常に群れで行動する。



「おお、あれが飛蛇か…げ、来た」


 俺が【遠見】使ったことで会敵扱いになり一斉に向かってくる飛蛇の大群。まさかこんなすぐに飛蛇と出会えるとは思っていなかった。これはラッキーと言うべきか?


 危険察知が反応する方向を注視していると、まったく音を立てずにそれは現れた。真ん前の木々の上空にパッと姿を現す無数の空飛ぶ蛇。そして消えたと思ったら真後ろに危険察知が反応する。振り向くとまたパッと消えて俺の視界の後ろから危険反応。どうやら俺の真後ろを取りたいようだ。憶病ってのはこういう事なのか。


「なるほどな。こうやって無音で真後ろから一斉攻撃されて死に戻ったら何が起きたのかわからんよな」


 背後を取られては振り返る。どうやらこっちが見ていない時しか攻撃してこないらしい。


「こりゃ【危険察知NZ】がパワーアップしてて助かったな」


 俺の【危険察知NZ】だが、実は【観察眼】を覚えてから効果が変わってきている。まずは赤い反応が敵一体一体を赤く示すようになった。今までは危険の方向が赤く染まったが、それがピンポイントで示されるようになっている。そして、もう一つは第六感が働くようになった。つまり、何となくこっち危険ってのが感覚的に分かるようになったのだ。この2つのパワー効果がなければ死に戻っていたと思う。



「しかし、これいつまで続けりゃいいんだ?とうしよ?」


 延々と続くダルマさんが転んだ状態を何とか続けながら、この飛蛇の群れの殲滅の方法を考える。


 折角出会えたんだから、ピエロ装備に必要な【飛蛇の軽羽】は絶対に欲しい。しかし説明文には羽根を傷つけるとレアドロップがなくなると書いてある。つまりこれは【飛蛇の軽羽】がレアドロップだということだろう。だとしたら羽根を傷つけないように倒さないといけない。そのためには…うん、やっぱこれしかないな。


 俺は後ろから強烈に伝わってくる危険察知をあえて無視する。そして強まる気配。どうやら俺がわざと作った隙を突いて飛び込んでくるようだ。


 俺はそっとストレージからアレを取り出す。


「(【凍結ポーション】&狙撃っ)」


 振り向くことなく後ろの気配の真ん中に向かって【凍結ポーション】を投擲する。そして数瞬遅れて放つどんぐり狙撃。


 キシャーーーーーーー  ピキピキピキ



ピンポーン

『星獣リオンのレベルがあがりました』


ピンポーン

『星獣リオンのレベルがあがりました』



 悲鳴なのか威嚇なのかわからない声が聞こえてくる。逃げながら後を振り返ると上空は真っ白だった。


「うおお、すっげー」


 2度目の使用だが、その威力にビビりまくる俺。その場の空気すら凍らせてるんじゃないかってくらいの目に見えるほどの冷気が飛蛇の群れを覆っている。そして周辺の木々ももれなく真っ白に。「この線から先は冬です」って感じの昔のRPGを彷彿とさせる不自然さ極まりない情景が展開していった。


『ブルヒヒン』


 リオンから「これ本当にいいのか?」的な反応が寄せられるが、死に戻るよりはマシだし。なにより【飛蛇の軽羽】は欲しいじゃん?



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


そら、【流鏑馬】使ってZの敏捷を威力に乗せてたらどんぐりの欠片でもリスくらいなら…ってなるかー!!

おい、Z!

お前、小僧が狙撃する度に瞬間的に【疾走】使って敏捷爆アゲしてやがるだろ!

俺は誤魔化されんぞー!!



あーっ!!

小僧のやつ、またやりやがったー!!

生態系が、生態系がーー!!


―――――――――――――

◇達成したこと◇

・どんぐり増産システムを発見。

・飛蛇発見。

・飛蛇殲滅と共に生態系破壊。

・リオンレベル14


◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:斡旋員

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 装備:男の隠れ家的オーバーオールセット

 :勘違い男の品質ダウンジャケット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv9】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv1】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv3】【融合鍛冶Lv4】【観察眼】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

●特殊クエスト

<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:14(+2)

 HP:250(+20)

 MP:355(+30)

 筋力:36(+2)

 耐久:34(+2)【+42】

 敏捷:90(+10)

 器用:35 (+2)

 知力:51(+3)

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

 :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

 :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv6】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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