第155話 鍛冶で遊ぶ元ピエロ
ピンポーン
『<武器屋マークスの依頼4>を完了しました。報酬として750Gを得ました。クエスト内の行動により【鍛冶Lv9】のレベルが上がりました。【鍛冶Lv10】及びクエスト内の行動により【融合鍛冶Lv1】を習得しました。【鍛冶Lv10】が【融合鍛冶Lv1】に統合されます』
【融合鍛冶Lv1】
特級鍛冶スキル。武具作成時、素材同士を融合させて作ることができる。レベル上昇と共に融合条件が緩和される。
「ん、どうした? やっぱり金貰っとくか?」
「あ、いえ、大丈夫です。ちょっと別件を考えてて」
「そうか、忙しいな。じゃ、俺はこれを届けてくるから」
マークスさんが工房を出ていった。
「なんかスキル習得したみたいだからさっきのもう1回やってみるか」
ストレージから【土竜爪】と【土竜硬爪】を取り出す。【土竜爪】を上位補助スキルで処理してから【土竜硬爪】を持って構える。
「ああ、なるほどね」
さっきは米粒ほどの黒い点で光度を下げたうえで【遠見】【よく見る】【看破】コンボを使わないと分からなかった点が、今回はピンポン玉くらいの大きさになっている。もちろん【危険察知NZ】の感度を下げなくても余裕でわかる。
「これなら気楽にできるな」
今度は机を盾にすることなく槌でぶっ叩く。
パッキーン
【土竜黒曜爪】
うん、すっごく簡単になった。これはありがたい。…因みにこの【土竜黒曜爪】を上位補助スキルで処理したらどうなるんだ? さらに素材融合出来たりするのか?
…
【黒曜爪の欠片】×42
炉から出して水に入れた時点で粉々になった。どうやら失敗したらしい。仕方がないので水中の欠片を全て掬い取った。こんなところでまたアイテム拾いする羽目になるとは。
「あと3本か…」
ストレージにある【土竜硬爪】はあと3本。どうせ使い道がわからんのだからどんどん使っていくことにする。
「今度はこっちを先に処理してみようか」
【土竜硬爪】の下処理を始める。
「げ、マジか」
【土竜硬爪】を炉に入れた途端に一気に赤くなる。その変化があまりにも速すぎて炉から出すタイミングが遅れてしまった。その結果、【土竜硬爪】は【ゴミ】へと化す。
「これ、十倍速どころじゃないよな。残りあと2本かあ。どうしよ…ま、やっちゃうか?」
続くもう1本を手に持つ。今度は気を抜かずに頭の中で処理の工程を十倍速で再現する。何度もシミュレーションするとなんとかやれそうな気がしてきた。
「じゃあ、やりますか」
手に持つ【土竜硬爪】を炉に入れる。あっという間に赤くなる【土竜硬爪】をさっと取り出す。ゴミ化していないという事は成功したようだ。そこからもすべての工程が【土竜爪】よりもごく短時間で進んでいく。工程を移るタイミングが次々と到来する。非常にシビアな作業だが工程自体は前と変わらない。焦らずシミュレーション通りに進めていく。そして上位補助スキルの補助もあってなんとか下処理を終えることができた。
「で、ここで何かを融合させるんだけど…」
手持ちのモンスター素材で硬くて高温でも燃えないものと言えば…1つしかない。
「ま、これしかないよな」
【土竜硬爪】の最後の1本を手に構える。
「うおお、真っ赤でなんにも見えん」
【土竜硬爪】を手に持った瞬間に視界全体が真っ赤に染まる。何にも見えん。太陽を直接見ちゃいけませんってやつだ。
「ヤバいヤバい。光度を落として…」
光度を最低まで落としていくとようやく目の前の光景がなんとか見えるようになった。金床に置かれた処理済みの【土竜硬爪】が燃えるように赤い。
「針の穴なんてないよな…」
【遠見】【よく見る】【看破】で見ていくが黒い点は見つからない。
ピンポーン
『特定行動により【観察】のスキルを習得しました。【観察】【看破】および上級以上の感知スキル【危険察知NZ】により【観察眼】のスキルを習得しました。【よく見る】【観察】【看破】が【観察眼】に統合されました』
【観察眼】
研ぎ澄まされた感覚を持つ者が観る時、世界はその姿をまた一つ明らかにするのである。
また、ぼんやりとした説明文だな、レイス。って、そんなことよりもこっちこっち。
新しく【観察眼】を習得したら今まで見えなかったものが見えるようになった。目の前の処理済み【土竜硬爪】の表面を米粒くらいの黒い点が移動しているのだ。数字の8の字を描きながら動いている。
「これ、もしかして…タイミングゲーって事か?」
動く速さは1周を約2秒。大きさが米粒ということで結構シビアだが、動きに規則性があるならやれないことはない。これでも高校生時代は学校帰りにゲーセンに入り浸ってこの手のゲームはやり込んでいるのだ。この作業に関して言えば自信しかない。
最後の【土竜硬爪】を左手に、槌を右手に持って構える。
「ここだ!」
パッキーン
ピンポーン
『特定行動により【融合鍛冶Lv1】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【融合鍛冶Lv2】のレベルが上がりました』
ピンポーン
『特定行動により【融合鍛冶Lv3】のレベルが上がりました』
「うん、お見事、俺」
高校時代のしょうもない経験がまさかこの歳で役に立つとは人生分からんもんだ。
【土竜金剛爪】
太古の土竜鮫の爪が地中深くで圧縮されてその姿を変えた。その硬さは如何なる刃も砕き、如何なる加工をも拒絶する。
金床の上のそれを親指と人差し指でつまみ上げる。
「…ちっさ」
刺身包丁程もあったのが俺の手の小指くらいにまで小さくなった土竜の爪。しかし、その様相はガラリと変わった。高級感のある宝石然とした風格。透明で何色にも光を放つそれはまさにダイヤモンド。
「綺麗だな。リアルなダイヤモンドだったらすごい額なんだろうけど」
俺はそれをストレージに放り込む。
いや、だって無理だから。加工できないって書いてあるし。こんなもの売りに出せるわけがない。売れない上に加工すらできん。つまりストレージの肥やしにするしかない。【絶滅除草剤】と同じ枠と言う事だ。
「さて、遊ぶのはこれくらいにして、明日の準備しないとな。もう時間もやばいし」
次に俺が取り出したのはこれ。
【黒曜爪の欠片】×42
ゴミ化していないという事はつまりこれは素材として使えるという事だ。まあ、個数が不吉さを感じさせないこともないがここは日本ではない。FGSなのだ。42が不吉なのは日本だけ。外国なら好んで使われたりする数字なのだ。だから大丈夫、危険なんてない。はず。
鉄不足の今、鉄の代わりになりそうなものはなんだって使うしかないのだ。そしてこの局面ではまさにアレに期待したい。
【黒曜爪の欠弁】に【小鳥の彩羽根】を3枚ピッタリ君でくっつける。なんか、羽子板の羽根みたいになってしまったが、ここで決めゼリフを言えばどうなるか。
『漆黒の黒曜ダーツ完成!』
…?
『漆黒の黒曜ダーツ完成!』
あれ? いつもならここでピッカーンって光ってくるのに。どうした称号さん、もうゴールデンウィークか?
仕方がないので全部の黒曜石の欠片に派手な羽根を2枚ずつくっつけていく。あ、そうだ、もっと派手な羽根もあったな。10個くらいはそっちで作ろうか。
…
「じゃ、行きます!」
『ゆら!』
出来た羽子板の羽根を持って構える。狙うはピッタリ君で壁にくっつけた【土竜金剛爪】。あれに当てれば壁は傷つかない。威力が分からないから下手なものを狙いにできないのだ。ってか、早速役立ったな金剛爪。【絶滅除草剤】枠とか言ってすまんかった。
「狙撃!」
フワッ コトン
投げた羽子板の羽根は空中をフワッとして壁まで届く前に床に落ちる。
「だよな。狙撃の照準がなんかおかしなことになってたもんな…」
ダーツの時と違って、黒曜爪の欠片自体が大きさも形もバラバラ。しかも羽根はピッタリ君でチョンとつけただけ。これじゃあ空気抵抗や気流の乱れで真っ直ぐ飛ぶわけないわな。紙飛行機だってまっすぐ飛ばすの難しいのに、こんなのがまっすぐに飛ぶわけない…。
「あ、ちょっと待てよ。確か…」
【飛翔鳥の飛翔羽】×2
大気の影響を限りなくゼロにする魔力羽根。
「これ使えんかな…」
ジェットな羽根をピッタリ君で黒曜石の欠片にくっつける。あ、せっかくだからもう少しかっこよくするか。例えば3枚の羽根を重ねてバッサリ君で切って形を揃える。それをピッタリ君でバランスよく黒曜爪の欠片にくっつけて…。
「これでどうだ。漆黒の黒曜ジェットダーツ!」
ピッカーン
ぐ、ホントに光った。遊びのつもりだったのに。目が。目がー。
ピンポーン
『称号【不断の開発者】の効果により特殊生産物が生産されました』
【狂気な元道化師のベリーショート】10/10
ミスにより身ぐるみ剥がされた元道化師。その狂気なまでの未練が込められたベリーショートダーツは空気抵抗をものともせずに対象を切り裂くだろう。その殺傷力、もはやダーツの域を超え、狂気なまでの凶器となった。
…出だしは否定できん。しかしピエロには特に未練はないのだが? で、最後な! ちょくちょくダジャレ入れてくんな!
その後、少しだけ色々やってログアウト。始まりと終わりに鍛冶で遊び尽くし、10日目を終えた。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
おいおいおいおいおいおーーーーい。
FGSにダイヤモンドとかまだ存在しないから。
勝手に新しいもん作りだすんじゃねえーーーー!!
そんなもん作ったら、また管理AIの女どもが…ぐすん。
あらま、小僧がサイコパスな武器作りやがった。
これでピエロ装備復活したらマジでヤバい絵になるな。
プロモーションに使って「サイコなFGSがサイコーだぜ!」
って、なるかー、ボケーー!
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◇達成したこと◇
・【融合鍛冶Lv1】を覚えたので遊んでみる。
・習得:【融合鍛冶Lv4】【観察】【観察眼】
・消失:【よく見る】【観察】【看破】
・制作:【土竜金剛爪】【狂気な元道化師のベリーショート】
・10日間のプレイを終える。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:斡旋員
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:男の隠れ家的オーバーオールセット
:勘違い男の品質ダウンジャケット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv9】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv1】【描画Lv1】【危険察知NZ】【散弾狙撃Lv3】【融合鍛冶Lv4】new!【観察眼】new!
所持金:約1000万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密ハンター】【秘密開拓者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:12
HP:230
MP:325
筋力:34
耐久:32 【+42】
敏捷:80
器用:33
知力:48
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv6】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】【かばうLv5】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




