第147話 追跡
ピンポーン
『〈特殊クエスト:ネヒルザの落とし物〉か発生しました。このクエストは回避不可です。クエスト中は満腹度が減少しません』
「なんか、また来たんだけど。無視していいかな?」
ミーナが財布を面倒くさそうに見つめる。そりや、ずっとお預けさせられてるもんな。気持ちは分かる。分かるが、ネヒルザ歴の先輩として言わせてもらうと、無視できるわけがない。放っておいたら絶対にもっと面倒くさいなことになる。うん、断言できる。
「いや、ミーナ、なんとなく危険な匂いがする。これ、放っておいたらダメだと思う」
「危険な匂い?」
「だってさ、なんでネヒルザ婆が財布落とすんだよ。財布なかったら誰にもご飯奢れないじゃん。ネヒルザ婆の生命線とも言える財布を落とすなんて絶対にヤバいこと考えてるって、あの人」
「うーん、よくわかんないけど、じゃあ、届けてあげたほうがいいって事?」
「うん、たぶんそんな気がする。このまま持ってたら、あとから何言われるかわからん」
「そっか、じゃ、面倒くさいけど行ってくる。満腹度減らないみたいだし、速攻で見つけて渡してくるからスプラここで待ってて」
そう言って、ミーナが俺の前から姿を消す。
うん、これほ絶対に届けたほうがいい。俺が下駄とチャンチャンコ着た妖怪だったら髪の毛が10本以上立ってるだろう。
「さて、じゃあ、俺は…暇だな」
…
…
ピンポーン
『特定行動により【描画Lv1】を習得しました』
なんか地面に未来の猫ロボットの絵を描いていたらスキルを習得してしまった。
因みに俺に絵を描く才能はこれっぽっちもない。テレビで絵が下手な芸能人が偉そうに笑われていたりするが、俺はその上をいくと自負しているくらいだ。だが、もしかしたらこのスキルを伸ばせば俺も絵が上手くなったりするのか? リアルで叶わなかった事がここでは実現できると?
「じゃあ、今度はでっかい顔がついてる機関車の絵を…」
「衛兵さん、こっちこっち、この辺で落としちゃんだんだよ」
「…げ」
俺が機関車の顔の丸を描いた時、ネヒルザ婆が戻ってきた。しかも、衛兵さんを連れて。
「おかしいねえ、この辺で落としたはずなんだけどねえ…あ、衛兵さん、この異人だよ、あたしを怪しい目で見てたの」
…はい?
ネヒルザ婆が俺を指差してもの凄く不本意な事を言ってくるのだが? 怪しい目ってなんだ。誤解を招くような言い方はやめてほしい。俺のストライクゾーンはセカンドベース上ではないぞ。
「ほう、君か。じゃあ少し話を聞かせてもらってもいいかな?」
「え、俺?」
マジか。え?
「なんならそのポニーも一緒に連れてくるといい」
いやいや、リオンはマズイって。たてがみの中に危険物が3本あるんだから。他の5本だって畑の爺ちゃんが叫んじゃうくらいマズイんだから。
「…いやあ」
「おや、なんだい。来れないってことは何かやましい事でもあるんじゃないのかい? 衛兵さん、これは所持品の検査が必要だよ」
ああ、やっぱりこういう事かよ。ってか、俺財布持ってないんだけど。
「そういや、もう一人いたねえ。すばしっこいのが。あの速さなら財布を盗むくらいは簡単だろねえ。もしかしたら財布持って逃げたのかもしれないねえ」
「まあ、とにかく君だけでも一緒に来てくれるかな?」
いや、ちょっと待って。あ、いかん、俺を敵視してた同僚がクソ上司に告げ口しやがった時の事が…。おえっ。
「お婆ちゃん、はい、コレ」
「ひぁあ」
衛兵の手が俺に触れようと迫ってきた時、ネヒルザ婆の目の前に現れたミーナ。その手には拾った財布が持たれている。あれ? これ、マズイのでは?
「え、衛兵さん、コレだよコレ。あたしの財布だよ」
「君も話を聞かせてもらおうか」
「スプラ、これどういう事?」
えっと、話せば長くなりそう…
「この泥棒猫、あたしの財布盗んでおいてどういう事とはなんだい」
「あ、そういう事。なるほど。なんだ、折角届けてあげようと頑張ったのに」
「届ける? どうせもう金を盗んだ後なんじゃないのかい?」
うん、すっごい分かりやすい言いがかりだな。
「いくら盗んたっていうの?」
「そりゃ…ご、いや100万Gだよ」
今、50万って言いかけたよな。
「君、その財布を渡しなさい」
「はい、どうぞ」
衛兵さんが財布の中を確認する。
「50万Gだな」
「ほらやっぱり盗んだんじゃないか」
ネヒルザ婆、それは詐欺っていう犯罪だそ。ナイナイ詐欺だぞ。
「あのね、お婆ちゃん、わたしたちそんなはした金に興味ないの。スプラ、所持金見せてあげたら?」
「え、あ、はい。こんな感じですけど」
所持金をその場に出してみる。するとステージから山のように積まれた金貨が目の前に現れた。すっげぇ、こんな感じで出てくるのか。
「はえ?」
「ほう、では君たちは本当に盗んでいないと?」
「その子たちは盗みなんかしやしないよ」
「あ、マーサさん」
一角亭から出てきてくれたマーサさん。店から外に出たマーサさんって初めて見るな。
「これは女将さん、いつもお世話になってます」
「お止めよ、こんなところで。で、その子たちはわたしのお客なんだよ。今日はうちで食事する予定でね。勿論わたしの奢りだよ。なのにその前に盗みなんてするわけないじゃないか」
「そ、それとこれとは話が別だよ。盗む奴はいつだって盗むもんだよ。その証拠にこの猫は逃げてたじゃないか。きっと逃げてる最中に財布の金が欲しくなったんだろうよ」
「お婆ちゃん、じゃこれ見る?」
ミーナがステータス画面をチョイチョイ。なんだ?
すると、ミーナの前にネヒルザ婆の後ろ姿のスクショがズラリと並ぶ。日時入りで。
「わたしはお婆ちゃんに財布を届けようとしてたの。でもお婆ちゃん財布落とした素振り見せないから声かけられなくて。違う人の財布だったらどうしようって思ってさ。だからお婆ちゃんにいつでも会えるようにお家までの道を忘れないためにスクショしておいたの」
「ふむ、なるほど。確かに盗む奴がする行動ではないな。わかった、ではこの件はこれで終わりとします」
「衛兵さん、違うよ、この猫は…」
「あなたはこれから話を聞きますのでご同行願います」
「え、ちが…」
ネヒルザ婆が自分が連れてきた衛兵さんに連れられて行った。
ピンポーン
『〈特殊クエスト:ネヒルザの落とし物〉が完了しました。クエスト内の行動により【危険察知NZ】のスキルを習得しました。パーティーメンバー「ミーナ」が【追跡NZ】を習得しました』
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
は?
NZスキルを2個?
何言ってんの?
【逃走NZ】だけであんなことやこんなことが起きちゃってんのに、追加するとか担当のCPU大丈夫か? オーバーヒートでもしたか?
やっぱFGSの労働環境ハード過ぎるんじゃねえか?
AIにも労働の法整備を提案しよっかな。
「さあ、先輩、今日も頑張って行きましょうー!」
「おっせえな!お前、着替えに行ったついでになんか食ってきただろ」
「何言ってんすか。あんまり仕事しすぎるとCPUおかしくなりますよ」
「んぐ」
くっそ。なんか…なんか思ってたのと違う。
モヤモヤする~!
…なんなんだこの感覚は。
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・習得:【描画Lv1】【危険察知NZ】、ミーナ【追跡NZ】
・完了:<特殊クエスト:ネヒルザの落とし物>
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:斡旋員
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:男の隠れ家的オーバーオールセット
:勘違い男の品質ダウンジャケット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv7】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【創薬Lv6】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv8】【寸劇Lv1】【鍛冶Lv4】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【よく見る】【乾燥】【雄叫び】【熟練の下処理】【火加減の極み】【匠の匙加減】【ルーティンワークLv1】【描画Lv1】new!【危険察知NZ】new!
所持金:約1000万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
●特殊クエスト
<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:5
HP:160
MP:220
筋力:20
耐久:18【+42】
敏捷:45
器用:19
知力:27
装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】
:赤猛牛革の鞍【耐久+12】
:赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv4】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




