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第133話 皇子鬼の黒呪大斧

「でっか」

「こんな大きかったんだ〜」


 俺が反り返るようにして見上げるのは鎌倉大仏ではない。俺が起こしたイベントボス戦でゴブリンジェネラルが持っていた大斧だ。いや、こんなデカかったんだな。戦闘中はジェネラルが振り回してたからイマイチわからんかったが、これがあの大斧だと思うと、ジェネラルやエンペラーの規格外さを実感する。


 …よく勝てたな、こんなのに。


「スプラ、ね、スクショ撮ろうよ」

「え、スクショ?」


 なんか、あれだな。これって周りからみたらデート?みたいに思われるよな。



「デートとかじゃないからね。ただの記念撮影」

「…当たり前だ」


 妹より年下を好きとか流石に痛すぎるだろ。あと心の声を正確に読むんじゃない。マジで【心読み】とかのスキル持ってないよな?チョイチョイ。うん、ないな。


 ステータス画面を確認して少し安心する。ってか心を読むスキルなんてあったら大多数の男共はアウトだろうな。あ、でも女性にも腐海の住人がいると聞くし…うん、100%ない方がいいスキルだな。ま、AIならある程度は読んでるんだろうけど。しかし、フルダイブ型VRって潜在思考をどこまで深く読めるのかね。法規制がなかったらどこまででも深く読めそうだけどな。レイスに心の中を全部読まれるとか怖すぎるんだが?



「あ、ほら、人がいなくなったよ、チャンス」

「あ、はいはい」


 一人考え込んでたらミーナに現実に引き戻される。いや、現実ではないか…仮想現実ってややこしいな。



「じゃ、視点この辺でいいかな」

「もうちょっと上まで入るほうがいいんじゃね?」

「それだと視点が下すぎて不細工に写るしこれくらいが限度」

「不細工って猫じゃ…すみません」


 絶対零度の視線にすぐさま降参してスクショを撮る。



「へえ、良く撮れてるな。日光なんかも自動調整入ってるよなこれ。VRならではだな」

「これ、何て言う斧なんだろうね。タイトル入れたいけど分かんないね。『大斧』でいいかな」


「えっと、『皇子鬼の黒呪大斧エンペラーズカースアックス』だって」

「…え?」


「え、だから、『皇子鬼の黒呪大斧』…」

「いや、なんで分かんのよって事」


「いやだから、出てるじゃん」

「どこに?」


「そこ」

「どこ?」


「だからそこ」

「……」



 お互いを見合うこと数秒間。


「スプラさ、もしかしてこれ収納できたりする?」

「まさか、ミーナさんそんな事できるわけ…」



ブーン

『ストレージの容量不足です』



「ストレージの容量不足?」

「容量…じゃ、容量があればいいってこと?」


「容量かあ…」

『フンス♪』


 俺の視線に気がついたリオンが『俺にまかせろ』的な空気を出してくる。まさか…な。


「収納、リオン」


「?」

「??」


 へ? なくなったんだけど。巨大斧どこいった?



ピンポーン

『ゴブリンエンペラーのレアドロップ「皇子鬼の黒呪大斧」が拾得されました。クエスト〈眷属??の絆〉が更新されます』



 …えっとさあ、またピンポンさん配置替えしたでしょ。勝手に配置替えちゃだめだって。レイス、そういうとこよ。



「あれ? この辺だったよな、あの大斧」

「うん、板にあがってた地図だとここのはず」

「地図間違ってね?」

「え、でも、湖のどこにもないよ」



 げ、プレイヤー。見られて…はなさそう。


「ミーナ、逃げるぞ」

「え、え?」

「得意だろ、逃げるの」

「あ?」


 殺気立ったミーナを連れて大至急その場を離れる。ヤバい、ちょっとシャレにならんことになったかもしれん。



パッパカ パッパカ


 南の森を抜けた先の平原のど真ん中。ここならプレイヤーが来たらすぐにわかる。で、リオンレージの中を確認する。ま、確認するまでもないんだが、心を固める意味も込めて。



皇子鬼の黒呪大斧エンペラーズカースアックス

 何を間違ってか世界に誕生してしまったゴブリンエンペラーの呪詛が込められた巨大斧。その刃で切り付けられたものは決して消えることのない呪詛をその身に受け続けるだろう。世界にこの黒呪大斧がある限り。



 うん、あるな。よし、心が固まった。



「リオンのストレージにあの大斧が入ってます」

「…で?」


「で? と申しますと?」

「この後どうすんのってこと!」


「とりあえず、腹ペコ熊さんに森大鹿の肉を置きに行って…」

「違うでしょ。大斧がなくなっちゃったこと」


「…はい」


 現実逃避したい。でもここは現実じゃない仮想世界。逃げるべき現実はどこ行った?



「また人が居ない時に置きに行くとか?」

「それしかないわよね」


「それともここに出そうか? 知らない間に移動してたってことで」

「…ありっちゃありだわね」



 二人で周りを確認する。俺は【遠見】も使って念入りに。


「いないな」

「うん、いない」


「じゃあ」



ブーン

『環境への影響が大きすぎるため取り出せません』



「取り出せないみたい。環境への影響が大きいんだって」

「…ああ、ごもっとも」


 そうだよな。FGSの地理を変えるくらいの大きさだもんな。こんなものがあちこち移動できるようじゃ、それこそ環境保護団体からお叱りを受けてしまう。



「あ、でもなんかアナウンスがあったな」

「アナウンス?」


 えっと、履歴はっと。うん、〈眷属??の絆〉が更新されたらしい。ってことは確認できたりするのか? チョイっと。



〈眷属??の絆〉

 皇子鬼の黒呪大斧によって両前足に傷を負った眷属??はその呪詛により動くことができずにいる。しかし、眷属??は友との約束を果たすために静かに湖底に眠る。



 ああ、そっか、あの時大斧で切られちゃったんだったよな。それで動けないと。俺を待ってるのかあ。…そっか、さすがにこりゃ行くしかないよな。俺のせいで怪我させたんだしな。


 で、場所は湖底か。湖底って、もちろんあの森の湖だよな。



「ごめん、ちょっと戻ろうか」

「え、犯人が犯行現場に戻ったら警察の思うつぼだよ」


 いやまあ、そういうのあるけども。ってか人を罪人扱いすな。



「大丈夫、行くのは湖だから、反対側から回って戻ろう」

「いいけど」



 さあ、湖の底に行く方法を考えながら行くかね。



パッパカ パッパカ



「湖の反対側だな」

「うん、反対側ね」

「向こう側はすごい人っぽいな」

「うん、凄い人っぽいわね」



 なんか大斧が刺さってた場所にすごいたくさんのプレイヤーがいる。なんか騒ぎになってそうで絶対に近寄れん。本当に逮捕されかねん。



「で、どうすんの?」

「それなんだけど…ミーナ潜れたりする?」

「小人君、猫が潜れたりするわけねーだろ」

「だよな。小人も潜れん」



ピンポーン

『星獣リオンがクエスト<眷属??の絆>に反応しました。現状が打開不可能な状況のためリオンのステータスが最適化されます。【水上疾走Lv1】を習得しました』



『フンス♪』


 なんかよくわからんが、とにかくリオンに乗って湖面を移動できるようになったってことだな。すごくご都合主義な気がするけど、リオンが機嫌良さそうだからいっか。



「なんかリオンが水の上を走れるようになったらしい」

「へえ、そうなんだ…。まあ、白馬は空も飛んでたしね。ポニーが水の上ってくらいはあるあるよね」


 いや、ねえだろ。とは言えないので、何も言わずにリオンに乗って水上を走る。ミーナは弁当時間だ。



 戦闘中とは違って威圧的な空気も叫び声もなにもない長閑な時間。白馬の躍動感でもなく、風を切る音でもなく、ポカポカの日差しの中をパッパカパッパカと呑気な音をたてながらポニーに乗って駆ける。うん、なかなか悪くない。むしろ俺にはこっちの方が合ってるかもしれん。平和と長閑が一番いい。 



『フンス♪』


「ん? もう着いたのか? じゃあ、ここから潜らないといけないのか」


『フンスフンス』


「え、そこになにか…あるな。なんだ? 気泡?」



 湖面に小さな気泡が絶え間なくプクプクと上がってきている。これが何かの目印なのか?


『フンスフンス』


 リオンが水面を鼻先で突っつくと水面には同心円上の波紋が広がっていく。



『フンスフンス』


「え、触ればいいの?」


 リオンからその波紋の中心に触るように促され、そっと手を伸ばしてチョンと触れる。



ピンポーン

『特定行動により【念和】のスキルを習得しました』



『やっと来てくれたのか。ママがいるからもっと早く来てくれると思ってたよ』




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


ああああーーー!

Z、お前まさかそのために【運搬(極)】にリソース突っ込んだのか。

ってか、それどうするつもりだ。

Z-2、お前、変なこと言うんじゃねえぞ。

絶対にやめろよ。絶対だぞ!


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・心読みについて考察する。

・女性が好むカメラアングルを知らしめられる。

・取得:【皇子鬼の呪大斧】

・【皇子鬼の呪大斧】(自分のドロップ)を持ち逃げする。

・<白馬??の絆>の更新内容を確認する。

・犯行現場に戻る。

・リオン:【水上疾走Lv1】

・習得:【念和】



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:なし

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 装備:男の隠れ家的オーバーオールセット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】【依頼収集】【料理Lv1】【寸劇Lv1】【鍛冶Lv2】【遠見】【念和】new!

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>




◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:5

 HP:160

 MP:220

 筋力:20

 耐久:18

 敏捷:45

 器用:19

 知力:27

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv3】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】new!



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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