表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/301

第128話 銀の斧と撮影会

ピンポーン

『称号【不断の開発者】の効果により特殊生産物が生産されました』



【男の隠れ家的オーバーオールセット】

大人の色気で隠しきれない内面のヤンチャさ。その絶妙な空気感が醸し出すノストラジーな世界は全ての男性の想いをあの頃の秘密の基地へと誘うだろう。



 …なんで俺の秘密基地の事を知ってるんだよ。俺の癒し空間を。知られたらもう秘密基地じゃなくなるだろ!



「びっくりした、なんだったんだ今…の…?」


 ケンクロウが俺を見て固まる。さっきの困惑して動きが止まる感じじゃなくて見ずにはいられないって感じ。そらそうだ。なんかめちゃくちゃ良い感じの服装に変化しちゃってるもん。


 V字ネックの黒のロングTをインナーに薄ブラウンの片掛けオーバーオール。オーバーオールには大きくヤンチャなSECRETの文字とツリーハウスのポップなイラストがドンと存在感を放つ。頭には同じ薄ブラウンのヘアバンドが深めにつけられてて、足元は濃いブラウンのサンダルシューズ。遊び心全開ながらも大人の色気も感じる…かな? そこまでファッションに詳しくないからな、俺。



「スプラ、お前…それ…」


「おい、あれ…」

「見て、ほら…」

「何あれ…」


「マズイな。スプラ、移動するぞ。ついて来い」


 ケンクロウがステータス画面を弄ると目の前の露店がポリゴンになって消えていく。そして、人垣をかき分けるようにして移動していくケンクロウ。俺もその後をリオンに乗ってついて行く。


パッパカ パッパカ




「ふう、ここなら大丈夫だ」


 着いたのは古臭い感じの鍛冶工房。マークス工房の半分もないこじんまりとした物寂しい雰囲気。



「ここは俺たちの『銀の斧』のクランハウスだ」

「え、クランハウス? クランって…」


 クランとかもう作れたのか?



「ああ、正式ではないから自称クランなんだがな。で、ここはみんなで金出し合って購入した鍛冶工房で、一応俺名義なんだ」

「買ったんすか。凄いっすね」


「まあな。一人800万ほど出したからな。大体4000万だ」

「よ、4千?」


 スッゲ。流石一般プレイヤーは違うな。俺なんかと金銭感覚が違う。



「ま、その話はこれくらいにして、さっきの光の話だが、あれって聞いてもいいのか? 嫌なら言わなくていいんだが」


 うーん、流石に称号持ちとか言えないよな。広まっちゃったら大変なことになるし。【自然保護の魁】が団員たちにバレただけでも結構ドキドキしてるのに。



「すいません、ちょっと…」


「そうか、いや、それならそれでいいんだ。俺だって広まっちゃ困る事あるしな」


 広まっちゃ困ること? この4000万鍛冶工房の他にも何かあるっていうのか? なんだろ。え、なんだ?



「広まっちゃ困ることって、この鍛冶工房以外にもあるんすか?」


「ああ、俺はベータ勢だからな。ベータ時代に培った事が色々とあるんだ」


 おお、ベータ勢か。なんかベータ勢って聞くだけで先輩感が跳ね上がるな。



「因みに、まあ、さっきのあの光景を周りに見せちまった詫びで一つ教えるとな、鑑定系のスキルを持ってるんだ」


「鑑定系…マシで?」


 いや、鑑定とかあったのかよ。俺、鑑定されたらマズイもんいっぱい持ってるんだが? 称号以外にもネギ辺りに3つほど。



「まあ、何でもかんでも鑑定できるわけじゃないから安心しろ。詳細鑑定ができるのは自分が所有したものだけだ。そのポニーも鑑定されたらマズイんだろ? そんな事できないから大丈夫だ」


 そっか、それならひとまず安心だな。いや、待て、ケンクロウが持ってないだけでもしかしたら既に誰かプレイヤー鑑定スキルとか…。いやいや、もしそんなスキル作られてたらレイスに猛クレーム入れてやる。



「ま、だからスプラの服を買ったんだ。詳細鑑定しないとスキル経験値にならないからな。価値が高いものほど経験値が稼げるんだ」


「…価値? ちなみに、なんで俺の服が価値が高いと?」


 俺ですら価値があるなんて知らんかったのに。



「ああ、それはまた別のスキルだ。鍛冶関連のスキルだが、これはちょっと広まるとマズイんだ。悪いな」


 鍛冶関連スキルに他人の装備の価値を知るスキルが存在するのか。ああ、まあ、そうじゃないと買取りなんかできないもんな。広まるとマズイってことは、それに加えてケンクロウが持ってるスキルはなにかが特別なんだろう。



「おっと、悪い、フレコだ。ちょっと失礼するな」


「…」


 なんか、ケンクロウか口パクで話し始めた。フレコってフレンドコールのことだよな。そっか、周りから見るとこんな感じになるのか。


「あ、スプラ、悪いがこれからここに来客があるみたいなんだ。どうする? 別にいてもらっても構わないんだが」


 来客かあ。そんなの、御暇おいとまするに決まってる。コミュ障にとって知り合いの知り合いは気まずさが倍増しただけのただの他人だ。



「じゃ、俺はこれで失礼しますね」



 ガチャ


「あ」

「あれ?」



 俺が工房を出ようとドアに手をかけようとしたら、数瞬早くドアが開いた。そして、目の前には数人の獣人族プレイヤー。



「はえーな、おい。『今から』って『今すぐ』って事かよ」


 ケンクロウが後から声を張り上げる。



「え、今からって言ったら今からドア開けるってことでしょ」


 …いや、誰だか知らんがそれは違うと思うぞ。



「スプラなんでこんなとこにいんの?」

「え?」


 目の前の獣人族の向こうから知った声が聞こえたような?



「あ、ミーナ、なんで?」

「え、知り合いだったの? じゃあオッケーじゃん。良かった良かった」


 目の前のキツネ獣人が俺とミーナを交互に見ながらやったぜ感を出してくる。クソ上司にこの態度取ったら襟首つかまれて引っ張ってかれて廊下で壁ドンだな。



 で、来客が知り合いの知り合いだったはずが、俺の知り合いでもあったことで、結局俺も工房に残ることになった。





「へえ、そんなことがあったんだ」

「ああ、だからお前らも、そのことについて聞かれたら手品師のスキルだってことで広めておいてくれ」

「そりゃそう言っとくしかないね。まさか称号効果で特殊生産物だなんて」

「はあ、すみません、お手数おかけします」


 え、称号効果を伝えたのかって? ああ、伝えたさ。伝えたと言いうか、伝えるしかなくなったというか。


 だって、ミーナが俺の【男の隠れ家的オーバーオールセット】を見て自分のも作れって言うんだもん。だからレシピ探したけど出てこなくて。その辺の仕様がよくわからんかったから、とりあえず作る様子だけでも見てもらって失敗したらミーナも納得するんじゃないかって思って。


 で、ケンクロウからシューズを一つ買って、三種の小道具、バッサリ君、ピッタリ君、カラフル君を使って切っては貼ってを繰り返してさ。本職の生産職を前にした地獄のようなデモンストレーションを何とか終えて「ミーナバージョン完成!」とか言ってごまかしたらまた、ピカーーンって光って。


 で、みんなの前で称号の特殊効果発動してできたのがこれ。



【路地裏工房のオーバーオールセット】

 つなぎとスニーカーを工房スタイルにリメイクした逸品

 職人気質とカジュアルが交錯するクールビューティーは異性同性問わず魅了するはず。


 オレンジのオーバーオールにインナーはアシンメトリの黒Tシャツ、スニーカーは黒をベースに紐と底辺部分は白く清潔感がある。そして薄い蔦柄が入ったブラウンラウンドフレームの眼鏡だ。



 で、それを装備したミーナと俺の二人の撮影会が始まった。クラン『銀の斧』のメンバーによって。いや、なぜだ?


 で、撮影会が終わると今度は自分たちにも作ってほしいとか言われ、「無理です」と答えながら工房の作成リストを見ると、【路地裏工房のオーバーオールセット】が登録されていた。いや、意味が分からん。作った工房に登録される仕様なのか?


 ってことで、クランの女性メンバー3人に色違いで製作してそれぞれ100万Gで売却。300万Gを得た後、ミーナの服もケンクロウが150万Gで購入。俺の服の代金も含め、しめて650万Gの収入になってしまった。ってことで前世に続き再び手持ち金額1000万越えとなった。


 その後は服代の150万Gと俺の手持ちの一角亭弁当と蜥蜴の尻尾亭弁当をすべてミーナに持たせてログアウト。これだけあれば一人でも死に戻りせんだろう。


 イベント明けなのにやたらと慌ただしかった一日が終わった。



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


ちょっとさあ、称号効果出過ぎじゃねえか?

【不断の開発者】だろ?

えっと…どこだっけ

あった。えっと、「作ったものの価値とステータスのギャップが大きいほど発動する」のか。

へえ、じゃあ、小僧… チートじゃねえかよ!


おい、TZ! 

お前が便利道具渡しまくるから称号作成者泣いてんぞ!



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・銀の斧のメンバーと知り合う。

・作成:【路地裏工房のオーバーオールセット】×4

・所持金1000万越え



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:なし

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 装備:男の隠れ家的オーバーオールセット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】【依頼収集】【料理Lv1】【寸劇Lv1】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>




◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:1

 HP:120/120

 MP:160/160

 筋力:12

 耐久:10

 敏捷:25

 器用:11

 知力:15

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv1】【足蹴Lv1】【噛み付きLv1】【運搬(極)】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ