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第125話 WIN‐WINな関係

「ほれ、まだまだそんなんでは野菜は応えてくれんぞい」

「もういい、応えてくれなくてもいい」


「こら、そんな乱暴に蒔いたら後で間引きが大変になるぞい」

「今が良ければそれでいい…」


「ほれほれ、早く終わらせんか。季節は待ってはくれんぞ」

「お爺ちゃんに待ってほしいのよ〜」


「おーい、そこの…」

「ゼン爺、ちょっといいかな?」



 畑に来てみたら想像通りの展開になっていた。ちょっとほくそ笑んでしまったのは内緒だ。


「どう? 彼女たち」

「そうですな。基礎はできたと思いますぞ。ただまだまだ初級、中級に少しだけ足を踏み入れたってとこですかの」


「そっか、ゼン爺助かったよ。ありがとう」

「いえいえ、まだまだこれからですわい」



「(ひい、まだ続くの?)」

「(もうヤダ)」

「(無理〜)」

「(…ちっ)」



「あのさ、この四人にどうしても頼まないといけないことができちゃって。とりあえず、修行はここまでいいかな」


「ホッホ、そうですな。わしも明日の収穫の準備もありますのでスプラさんが良いのでしたらこの辺にしておきましょうかな」


 ゼン爺がハツラツとした感じで去っていった。なんかシゴいてる時のゼン爺、すっごく生き生きしてたな。【シゴキLv10】とか持ってたりして。



「終わった〜!」

「解放された〜!」

「もう嫌だ〜!」

「…ホッ」




ピンポーン

『特定行動により【料理Lv1】を習得しました』



「お疲れ様、はい、これジュース。疲れが取れると思うよ」


「あ、ありがとうございます!」

「いただきます!」

「やったー!流石スプラさん」

「……ゴクリ」


 ウンウン、仕事の後の一杯ってなんであんなに美味いんだろうな。マジで美味しさ3倍くらいあるもんな。



「あのさ、皆に聞きたいんだけど、農業ギルドマスターのアイザックさんから受けてるクエストがあるんだけど、やってみない? 個人的にいい関係になれるかもしれないからさ」


「ええ、ギルドマスターのクエスト? いいんですか? そんなの。ってか人のクエスト貰うとかできるんです?」


 そうだよな。普通そう思うよな。よく考えたら、この【斡旋】って凄いスキルかもしれん。



【斡旋】

 自身が受けたクエストを他人に斡旋することができる。クエストの斡旋は職業【斡旋員】でいる時にのみ可能。斡旋時は報酬の20%をプレイヤーから受け取る。クエスト達成に関わるその他効果は受け取れない。特殊クエストは斡旋できない。



 うん、俺が受け取るのは報酬の20%だけ。つまり、そこから生まれる信頼関係なんかも引っくるめて斡旋できるってことだ。この子たちがこれから畑をやっていくならアイザックさんとの関係は大切だしな。



「それができるんだよ。まあ、君たちが良ければだけど」


「勿論てす。で、どんな内容ですか? …はっ、まさかまた畑作業をやれとか?」


「違う違う。畑持ちプレイヤーを増やすクエスト。君たち入れてあと30人以上増えたら達成」



 アイザックさん曰く、本当は85人だったんだけど、ネギ肥料効果で30人にハードルが下がったらしい。



「期限とかはありますか?」


「ないけどなる早かな。多分早いほど得るものが大きいと思うよ」



「…やります!やらせてください!」

「それくらいならすぐに達成できそうです」

「ちゃちゃっとやっちゃいますよ」

「…苦手」



 なんかモクレンだけ無理そうだな。俺と同じ匂いがする。まあでも、アイザックさんに頼んで四人でやるクエストにしといたから。モクレンも大丈夫だろ。



「じゃあ斡旋するね」



ピンポーン

『クエスト〈農業ギルドマスターアイザックの相談〉がプレイヤー、サクラ、モモカ、ミズキ、モクレンに斡旋されました。クエスト達成後、報酬の20%を受け取ります』



 よし、これで解放されたな。良かった。じゃあ俺は…あれ? なんか忘れてる気がする…。


 あれ?



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


小僧、そっちはのんびりやってるみたいだけど、相棒のほうは大変そうだぞ。

いいのかー、放っておいて。


しっかし、両方見るのって大変だよな。

そろそろ俺にもスペックアップの機会が訪れるといいんだけど。


でもどうせあの人、言ってものらりくらりはぐらかすんだろうな…。



◆◆◆◆



~第二陣ログイン前夜、リアルのとある居酒屋にて~



 活気のある声や笑い声があふれる店内、その場にとけ込むように座るスーツ姿の男が一人。


「あ、部長、こっちこっち」

「いやあ、悪かったね、急に呼び出して」


 スーツ姿の男が手招きで初老の男を呼び込む。


「いいんですよ。部長には散々お世話になってますから」

「いやいや、飛ぶ鳥を落とす勢いのZ-stream社、西園寺さいおんじ社長を呼び出すなんて、気が引けるよ」


「いえいえ、飛ぶ鳥なんて落とせませんよ。ネガキャンの影響で一時は倒産すら覚悟してたくらいですし。まだ今回のプロモが成功して何とか道筋が見えたってところに過ぎませんから。それに世界の豊産自動車の開発総責任者の大森部長からそんなことを言われるとこの辺りが痒くなりますって」


 お互い相手の肩書と名前だけはボソボソと小声で話す二人。よく見知った関係の様子だ。



「にしても、今日はどうされたんです? 部長も夜8時から酒を飲めるようなスケジュールじゃないはずですよね」

「いや、実は君に折り入って頼みがあってね。うちの療養中の息子がFGSをやってるみたいなんだが…」


「へえ、それは光栄です。ってことはネガキャン真っ最中に買ってくれたありがたいお客様ですね。で、息子さん大丈夫ですか?」

「ああ、初日から随分とのめり込んで楽しんでるみたいだよ。まあ、わたしも今はそれでいいと思ってる。息子は繊細な性格だからね。休息が必要な時期なんだろう」


「そうですか…実は今、一部の医療関係者からFGSの医療への応用の話も持ち込まれてるんです。なかなか浸透しないセラピー分野で効果が期待できるのではないかと。まあそうなると対抗業界からの反発はあるでしょうが」

「なにかを始めようとすれば必ず既得利権と衝突する。無事に乗り切れることを願ってるよ。ただ忘れちゃいけないのは…」


「『競う』と『争う』は違う。ですよね。前者は社会発展、後者は社会混乱に繋がる。争いを避け、社会的意義に向かって邁進するのみ」

「はっは、Z-stream社の社長に講釈は不要か」


「その精神がなかったら某国の世論操作でとっくに諦めてましたよ。部長に叩き込まれておいて良かったです、あっはっは。で、今回は息子さんのことで?」



 その言葉で大森が西園寺に顔を寄せる。


「ああ、息子は今のまま放っておいてくれていいんだが。実はもう一つアカウントをもらえないかと思ってね。いや無理ならいいんだ。第二陣が明日にも始まるって時期に無理なのは承知しているから」

「ああ、そんなことですか、大丈夫ですよ。うちは僕以外、天才の集まりですから何とでもできます。今からでも二陣に入れときますよ」



 大森が静かに息を吐く。


「そうか、それはよかった。実は息子がFGSをやってることを妹の方が知ってしまってね。『自分もアカウント欲しい』の一点張りで…加えて今朝は『アカウントくれないと家を出る』と言って、荷造りまで始める始末でね」

「ははは、それは災難でしたね。と言っても、販売側の僕としては嬉しい限りですが」


 西園寺が頭を掻く。



「部長、ここだけの話ですがね、実は第一陣でもβテスターにアカウント一つねじ込んでるんですよ。誰のアカウントだと思います?」

「お、誰だろうな。わたしが知ってる人間かな?」


「ええ、そりゃもう。よく知ってる方ですよ。取締役の柿崎さんです」

「え、柿崎取締役いとこが?」


「ええ、Z-stream立ち上げに最後まで強硬に反対したあの人です。βテスト開始2日前に訪ねて来られましてね。バツの悪そうな顔で『アカウントを一つなんとかできないか』って。理由を聞くと、顔を赤くして正直に話してくれましたよ。娘さんからどうしてもって頼まれてるって」

「ははは、あの柿崎取締役ひとがそんなことを。昔からエリート意識の塊だったあの人の赤い顔だったらわたしも見たかったな」


「なので、立ち上げの際に最初から最後までご助力頂いた大森部長の頼みなら全く問題ありませんよ。むしろ、部長からだと言えば、うちの連中、特別優遇アカウントとか作りかねないくらいです。だからこの前とは反対の意味で依頼者名は伏せないといけません」

「なかなか癖のある連中だからな。君もよくまとめたもんだな」



「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」


「わたしはオレンジジュースで頼む」

「あ、僕も一緒で」


「え、えっと、以上でよろしかった……ですか?」

「「はい」」


 5分後、二人の姿はすでに居酒屋にはなかった。



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・習得:【料理Lv1】

・四人娘にうまいことクエストを投げる。

・重大なことを忘れる。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:なし

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 装備:なし

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】【依頼収集】【料理Lv1】new!

 所持金:約1万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:1

 HP:120/120

 MP:160/160

 筋力:12

 耐久:10

 敏捷:25

 器用:11

 知力:15

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv1】【足蹴Lv1】【噛み付きLv1】【運搬(極)】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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