第124話 面倒な依頼
いつも誤字報告ありがとうございます。
本日分が遅れてしまいました。
大変失礼いたしました。
「はあ、はあ、はあ」
「「……」」
ゼン爺の叫びが畑に響く。
「はっ、スプラさん、大丈夫ですかの」
「う、うん、大丈夫…」
言っておくが、こういう時の大丈夫は決して大丈夫ではない。大丈夫ではない事を素直に伝えられないくらい大丈夫ではないのだ。
「で、こ、この肥料はとこで手に入れられたのですかな? はっ、まさか、かの最難関ダンジョンの最奥のボスドロップとか…」
「違います」
違いますが…え? なに、ダンジョンって。あるの? どこ? 行ってみたい。入り口付近だけでいいから雰囲気を味わってみたい。
「俺が今作ったやつです。畑に撒いたらどうなるかなって。使えそうかな?」
「作った? これを? まさか…いやしかし、スプラさんはあんな農具やこんな農具も作った人、あり得るのか。いやいやしかし…」
…なんか、ゼン爺がブツブツ言い出した。
「これは癒楽草ではない草を燃やした灰を聖水で少しずつ溶かしてからいろいろ加えてできた5種類を混ぜてそれに美容液を加えてブンブンしたやつです」
「…5種類? 美容液? ブンブン?」
「まあ、とにかく使ってみたいんだけど、どこか試せるとこない?」
「は、はあ。では、明日収穫を控えている場所でもよろしければ…」
ゼン爺に案内されて、畑に到着すると一面が早く食ってくれと言わんばかりの瑞々しい野菜で埋め尽くされていた。
「(なにするのかな)」
「(なんか肥料使うんだって)」
「(肥料って臭くない?)」
「(…液は臭くない)」
何故か作業を中断してついてくる四人娘を放っておいて、大きなバケツに入った水に【超絶癒楽液肥】を1滴垂らす。
薄い水色に変色したその水をジョウロに汲んで水をやっていく。よく分からんから、野菜の上からかけていく。
「(へ? なんか大きくなってない?)」
「(見るからに大きくなった気がする)」
「(マジ? そんな事ある?)」
「(…3600倍速再生)」
「な、何という即効性。…しかも土にも優しいとは…」
ゼン爺が根元の土を掘り返してペロリと舐めては頷いている。おお、それ前に動画で見た野菜作り達人がやってたな。確かテロップで「真似しないでください」とか出てたっけ。
「スプラさん、…これは農業に革命が起きますぞ」
「あ、良かったです」
すっごい熱のこもった視線のゼン爺に【超絶癒楽液肥】、要するにネギ液肥を少し渡して俺は畑を後にする。その後ゼン爺に活気マシマシでしごかれるであろう四人娘には心の中で手を合わせておく。無事を祈る。
「アイザックさーん」
「はい、どうされましたでしょうか。あ、もしや実験用の作物でしょうか。それしたらギルドマスター室に鉢植えが…」
「これ使ってください」
説明が面倒なのでとりあえずネギ液肥を目の前に置く。そしてさっき作った耳栓をして…耳に物詰めるだけで聴覚下げられるのは簡単でいいよな、
「なんじゃごらーーーーー!!」
アイザックさんが叫び終わったようなので耳栓を取る。ギルドで仰け反り倒れたらちょっと恥ずいからな。
「す、スプラ様、こ、この液肥は?」
「最難関ダンジョンの最奥ボスのレアドロップでは…」
「やはり、あのダンジョンでしたか。わたしもあそこは怪しいと思ってたのです。そうですか、最奥ボスのレアドロップですか…」
いや、それじゃないと言おうとしたんだが…これは余計にややこしくしてしまったか。にしてもアイザックさんまで食いつくダンジョンは気になるな。
…
…
「なるほど、ではスプラ様があれやこれやを混ぜ合わせてブンブン振り回してできたものがこちらであると」
「はい、そうです」
再び腕を組んで考え込むアイザックさん。これと同じやりとりを既に3回続けているのだが、再びループに突入してしまった。まさか、バグじゃないよな?
「わかりました。ではこちらは農業ギルドで買い取らせていただきます」
バグだったらレイス呼び出すかなあとか思い始めたらアイザックさんがループから抜け出てくれた。助かった。レイスに会わなくて済んだ。
「ただ、現在ここ農業ギルドではこちらの超絶な液肥を買い取る資金がございません。ですので、ご相談なのですが、農業ギルドで取り扱いながら、販売に応じて代金をお支払いするという形を取らせていただけないでしょうか?」
えっと、つまりボックスショップみたいなことか? でも販売と商品補充なんかはギルドでやってくれるってことだよな。
「あの、俺ギルドに常駐とかできないですけど大丈夫ですか?」
「勿論でございます。販売手数料だけギルドでいただきますが。その他の利益はスプラ様にお支払いいたします」
なるほど、じゃあ大丈夫か。ってことはとにかくこれで解決したってことだよな。あとはピンポンさんを待つだけ。
「…」
「どうかなされましたか?」
「いえ、ちょっと…」
ピンポンさんが来ない。そしてアイザックさんのこの様子。もしかしてまだ何かあるのか? いや流石に…
「あの、アイザックさん」
「はい、なんでしょうか?」
「もしかしてまだ他にも問題が?」
「流石スプラ様でございます」
…あるんかい。こうやって小出しにされるのってなあ。向こうは遠慮のつもりなんだろうけど頼まれる方は始めから全部言って欲しいんだよな。段取りとかあるし。
「これが最後の問題なのですが…」
それから何度も最後だと確認しながらアイザックさんの話を聞いた。まあ、内容はそんな難しい事ではなくて、ただ畑を所有するプレイヤーが規定数に達する事が必要なんだそうだ。そもそもFGSバンク方式を取るのも畑プレイヤー数を確保するためだったし、ご尤もと言えばご尤もな話だった。
でもそうなると俺としてはちょっと困る。俺から他のプレイヤーに『畑やろうぜ』なんて言えるわけもない。うーん、どうしよう。なんか面倒臭くなってきた。
「どうかされましたか?」
目をキラキラさせたアイザックさんが聞いてくる。俺にはこの「どうかされましたか?」が「勿論お願いできますよね?」に聞こえて仕方ない。うーん、困った。困ったぞ…あ、そうだ。
ピンポーン
「『斡旋員』に転職しました。【斡旋】を習得しました。次回転職可能まで47:56」
「アイザックさん、今回の依頼、残りはさっきの四人が担当します」
そろそろ、ゼン爺のシゴキに耐えられなくなってるだろうし、きっと飛びついてくるはず…。そう、これは押し付けではない。WIN-WINの関係といやつだ。大人の関係なのだ。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
小僧、一応言っておくが…
斡旋員は面倒くさいクエストを人に押し付けるための職業じゃねえぞ!!
…なんか職業考えてる奴が可哀そうに思えてくるな。
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・転職【斡旋員】
・クエストが面倒くさくなって四人娘を利用することを考える。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:なし
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:なし
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】【依頼収集】
所持金:約1万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
<農業ギルドマスターアイザックの相談>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:1
HP:120/120
MP:160/160
筋力:12
耐久:10
敏捷:25
器用:11
知力:15
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv1】【足蹴Lv1】【噛み付きLv1】【運搬(極)】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




